最後の恋人。

かのん

文字の大きさ
上 下
53 / 61

ミサキからの手紙③

しおりを挟む
葵君へ



この手紙を読んでいる時
私はもうこの世にいないと思います。
そう思って手紙を書いています。


葵君に一緒に暮らそうって言われて
本当はすっごく嬉しかった。
だって私は葵君のことが大好きだったから。


だけど、それは許されないから。


葵君と私は正真正銘の兄弟です。
母に会って確認しました。


葵君のこと忘れたくて
他の人とセックスしてみました。
だけど、忘れるどころか
葵君のことがもっと欲しくなりました。
今まではココロだけがほしかったのに
カラダまで葵君のことが…欲しくて……


どうして、私たち兄弟なのって……


生きていても辛い。
葵君とは永遠に結ばれることはできない。
かといって私はもう葵君以外の人好きになれない。
それならこのまま、葵君のことを思いながら……


葵君、
私のこと忘れてほかの人と幸せにって
言いたいけど言えない私を許して。


でも、葵君には幸せになってほしいって思ってる。
だから、美容師になってほしい。
葵君に髪を切ってもらってすごく嬉しかった。
それは髪型が変わるからじゃない。
葵君のキラキラとした楽しそうな顔を見ることができたから。


だから、美容師になって。



最後に、葵君。


















「大好き。」





ずっと言いたかった言葉。
手紙の中だけなら、いいよね?
大好きだよ、葵君。
























「ミサキ…ミサキっ……うっ…ううっ……」


声にならない泣き方ってあるんだな。
呼吸さえうまくできなくなるけど
涙は止まらない。
自分が泣いているのかもわからなくなる。
残酷すぎる現実を1人で受け止めたのかと思うと……
何で気づいてやれなかったんだろう。


ミサキのことが好きなら
悩んでいることを何で気づいてあげれなかったんだろう。


今更悔やんでも悔やみきれないけど
ミサキがいない今、俺はこれからどうすればいいんだろう……。


「葵……ごめん、ごめんっ……」


手紙を読み終わった龍がポロポロと大粒の涙をこぼしながら
謝ってきた。




「何で龍が謝るんだよ……。」


「俺、ミサキが葵のこと好きなの知ってたんだ。だけど俺、ミサキのことが好きで…知らないふりしていた。それに、この間ミサキの……お前の母親にも会ってきた。ミサキと母親は偶然会ったらしい。」


「俺の……母親?」


「ミサキにそっくりの母親だったよ……。」


母親の記憶と言えば手をあげている姿だけで
顔なんて覚えていない。
顔は……覚えていないけど、
そういえば赤ん坊の泣き声がした気がする……。


「ミサキが飲んだ睡眠薬……母親のものらしい。部屋から無くなったって言っていた。ミサキは母親から自分と葵が兄弟だって知ったらしい。」



しおりを挟む

処理中です...