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失恋。
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「今日は途中で帰っちゃってごめんね。」
「いや、全然……」
今日のことも謝りたかったし、智樹なら全部知っていると思った。
裕也のこともお母さんのこともーー
「美咲……」
聞きたいことはいっぱいあるのに怖くて聞き出せない私が言葉を発する前に智樹の口が開いた。
「俺の知っていること何でも話すから、何でも言って……」
「いつから……お母さんと裕也のこと知ってたの?」
「美咲の……お父さんが亡くなって1年後…でもその前から薄々と気づいてた。」
「そんな前から……?」
「裕也がおばちゃんに告白しているところを聞いて……」
「……」
「黙ってないで何で教えてくれなかったのとか聞けよ……」
「さっきお母さんに言った……でも言えるわけないよね。私がお母さんだったら、智樹だったらきっと言わない。でもさっきはお母さんに感情ぶつけちゃった。」
「裕也はずっと片思いしてたんだね……私だけが片思いしていたと思ってた。」
「俺もね……」
「え……?」
「俺もずっとお前に片思いだよ。」
みんなーー
みんなが片思い
私も裕也も智樹も蝶さんも
なんで恋って上手くいかないの?
少しずれれば上手くいくのにどうして……?
だから両思いは奇跡に近いんだ。
「やっぱり私はお母さんの代わりだったんだろうな……」
「……それは裕也に聞かないとわからない。」
「わかるよ。私も裕也を探してたんだ。今ならわかるーー」
裕也は確かに初めて寝たときセフレになろうって言ってきて、私は傷ついた。
だけど体に触れる指は少し震えていて
そっと、大事に触れてきてくれた
初めてということを忘れるぐらいの快感を
時間をかけて与えてくれたーー想いを寄せている人には振り向いてもらえず
この世にいない人に想いを寄せられて……きっと悔しかったと思う。
どうしようもない気持ちを私にぶつけたかったんだ。
私も消えてしまった裕也への想いをぶつけたくて……
裕也と私は同罪だーー
「送るよ。」
「うん。ありがとう。」
学生時代のころ、よくこうやって智樹と一緒に肩を並べて帰ったな…
あの頃は自分の前を歩いている裕也のことが気になって気になって
隣にいる智樹の気持ちに気づけなくて――
前にいる裕也が隣にいる女の子に話しかけている横顔をただただ眺めているだけだった
あの頃も裕也はモテてはいたけど確かに誰とも付き合っていなかった。
「あ、ごめん…」
手の甲がぶつかってとっさに出たのが謝りの言葉
学生時代もきっと何度もこうやって手はぶつかっていたと思うけど
その時はどうしていたんだろう
こうやって謝っていたのかな?
ただ一つ違うのはぶつかった手の甲が熱くて少し気まずい気持ちになる
智樹の顔を見るのが気まずくなって言葉も出なくなる――
「……手つないでもいい?」
そんな風にいきなり聞かれると嫌でもないけど
ただただ恥ずかしくて――
無言で頷くことしかできない
智樹の指が曖昧な態度をとっている私にためらっているのか
少しづつ指に触れてくる
それがまたじれったくて――
智樹が絡めてくる指をずっと眺めているしかできない
感じるところを触れられているわけではないのに、身体の奥から熱くなるのを感じる。
触れられているのはただの指先なのにーー
こんなの初めてだ。
ゆっくりと指先を絡めて5本の指が重なり合うとギュッと智樹が手を握ってきた。
ギュッと握られた瞬間、心臓も握られたような感覚で苦しくなるーー
「蝶さん………」
「え?」
目の前には蝶さんがお母さんの肩を支えて歩いている。
「え!?お母さん!?どうしたの!?」
握っていた手を自分から離してしまった。
離した瞬間冷たくなって、もっと握っていたかった自分がいたことに気づいた。
だけど今は目の前にいるお母さんのことが気になるーー
「飲みすぎただけよ。」
「よかった………蝶さんありがとう。あとは私がやるから。」
「美咲、手伝おう……」
智樹が手伝おうかと聞こうとした瞬間、蝶さんに肩を優しくポンと叩かれた。
「……気をつけて帰れよ。」
「うん。じゃあまたね。」
意識が朦朧としている母親は重いだろうと思っていたけど、その逆で軽かった。
昔は母親におんぶされたり抱っこされたり………支えてもらってばっかりで大きく見えたのに
母親より身長は高くなって体重も母親と変わらない。
体はもう母親と同じぐらいなんだーー
これからは私がお母さんを支えてあげなきゃ………
「お母さん、ごめんね。」
「え………?何であんたが謝るのよ。私が悪いのよ………ごめんね、美咲…」
「私がお母さんなら言えなかった………娘が好きな人が自分を好きだなんて言えないよ。」
「でも………そのせいで美咲も裕也も変わってしまったじゃない。」
「お母さん…」
「裕也を受け入れていれば…あんたがあんな風に次々と男の人と………」
「……心配かけてごめんなさい。」
「美咲を傷つけないようにってしたいたつもりが傷つけて……ごめんね
。」
「お母さん…」
「裕也は…この街を出て行ってからもあんたに会いたがってた。謝りたいって。でも彼にはもう彼女がいたから、余計に美咲を傷つけると思って追い返してた。」
お母さんも智樹も私のことを思って行動してくれてた
私だけが仲間はずれされたわけじゃない。
それがわかっただけで……もう十分だ。
「お母さん……」
「ん?」
「ありがとう…色々。」
「ふふッ……」
「何…?」
「美咲変わったね。葵君に出会ってから……智樹もうかうかしていられないわね。」
葵君に出会ってから、止まっていた時計の針が動き出した気がする
でも時計の針が動き出したのはきっと私だけじゃない。
お母さんも智樹も、蝶さんも――
そして葵君の時計も動き出している。
※修正しています。
「お母さん……私本当に恋をしてもいいのかな?」
「美咲………?」
みんなの時計は前に進みだしているはずなのに
私だけ、止まっていた時計が逆戻りする時がある。
「本当は裕也のこと以外でも何かあったんでしょう?」
「どうして…?」
「私はこれでも美咲の母親よ。智樹も言っていたわ。美咲は何か抱えているって…どうしたの?これからは何でも本音を話していこう。お母さんも美咲を支えたいの………2人しかいない家族なんだから。」
握ってきた母親の手は小さい頃につないだあの頃のままーー
温かくて安心を与えてくれる手だ。
「お母さん、私ーー」
※修正しました
「人を殺してしまったの………」
「いや、全然……」
今日のことも謝りたかったし、智樹なら全部知っていると思った。
裕也のこともお母さんのこともーー
「美咲……」
聞きたいことはいっぱいあるのに怖くて聞き出せない私が言葉を発する前に智樹の口が開いた。
「俺の知っていること何でも話すから、何でも言って……」
「いつから……お母さんと裕也のこと知ってたの?」
「美咲の……お父さんが亡くなって1年後…でもその前から薄々と気づいてた。」
「そんな前から……?」
「裕也がおばちゃんに告白しているところを聞いて……」
「……」
「黙ってないで何で教えてくれなかったのとか聞けよ……」
「さっきお母さんに言った……でも言えるわけないよね。私がお母さんだったら、智樹だったらきっと言わない。でもさっきはお母さんに感情ぶつけちゃった。」
「裕也はずっと片思いしてたんだね……私だけが片思いしていたと思ってた。」
「俺もね……」
「え……?」
「俺もずっとお前に片思いだよ。」
みんなーー
みんなが片思い
私も裕也も智樹も蝶さんも
なんで恋って上手くいかないの?
少しずれれば上手くいくのにどうして……?
だから両思いは奇跡に近いんだ。
「やっぱり私はお母さんの代わりだったんだろうな……」
「……それは裕也に聞かないとわからない。」
「わかるよ。私も裕也を探してたんだ。今ならわかるーー」
裕也は確かに初めて寝たときセフレになろうって言ってきて、私は傷ついた。
だけど体に触れる指は少し震えていて
そっと、大事に触れてきてくれた
初めてということを忘れるぐらいの快感を
時間をかけて与えてくれたーー想いを寄せている人には振り向いてもらえず
この世にいない人に想いを寄せられて……きっと悔しかったと思う。
どうしようもない気持ちを私にぶつけたかったんだ。
私も消えてしまった裕也への想いをぶつけたくて……
裕也と私は同罪だーー
「送るよ。」
「うん。ありがとう。」
学生時代のころ、よくこうやって智樹と一緒に肩を並べて帰ったな…
あの頃は自分の前を歩いている裕也のことが気になって気になって
隣にいる智樹の気持ちに気づけなくて――
前にいる裕也が隣にいる女の子に話しかけている横顔をただただ眺めているだけだった
あの頃も裕也はモテてはいたけど確かに誰とも付き合っていなかった。
「あ、ごめん…」
手の甲がぶつかってとっさに出たのが謝りの言葉
学生時代もきっと何度もこうやって手はぶつかっていたと思うけど
その時はどうしていたんだろう
こうやって謝っていたのかな?
ただ一つ違うのはぶつかった手の甲が熱くて少し気まずい気持ちになる
智樹の顔を見るのが気まずくなって言葉も出なくなる――
「……手つないでもいい?」
そんな風にいきなり聞かれると嫌でもないけど
ただただ恥ずかしくて――
無言で頷くことしかできない
智樹の指が曖昧な態度をとっている私にためらっているのか
少しづつ指に触れてくる
それがまたじれったくて――
智樹が絡めてくる指をずっと眺めているしかできない
感じるところを触れられているわけではないのに、身体の奥から熱くなるのを感じる。
触れられているのはただの指先なのにーー
こんなの初めてだ。
ゆっくりと指先を絡めて5本の指が重なり合うとギュッと智樹が手を握ってきた。
ギュッと握られた瞬間、心臓も握られたような感覚で苦しくなるーー
「蝶さん………」
「え?」
目の前には蝶さんがお母さんの肩を支えて歩いている。
「え!?お母さん!?どうしたの!?」
握っていた手を自分から離してしまった。
離した瞬間冷たくなって、もっと握っていたかった自分がいたことに気づいた。
だけど今は目の前にいるお母さんのことが気になるーー
「飲みすぎただけよ。」
「よかった………蝶さんありがとう。あとは私がやるから。」
「美咲、手伝おう……」
智樹が手伝おうかと聞こうとした瞬間、蝶さんに肩を優しくポンと叩かれた。
「……気をつけて帰れよ。」
「うん。じゃあまたね。」
意識が朦朧としている母親は重いだろうと思っていたけど、その逆で軽かった。
昔は母親におんぶされたり抱っこされたり………支えてもらってばっかりで大きく見えたのに
母親より身長は高くなって体重も母親と変わらない。
体はもう母親と同じぐらいなんだーー
これからは私がお母さんを支えてあげなきゃ………
「お母さん、ごめんね。」
「え………?何であんたが謝るのよ。私が悪いのよ………ごめんね、美咲…」
「私がお母さんなら言えなかった………娘が好きな人が自分を好きだなんて言えないよ。」
「でも………そのせいで美咲も裕也も変わってしまったじゃない。」
「お母さん…」
「裕也を受け入れていれば…あんたがあんな風に次々と男の人と………」
「……心配かけてごめんなさい。」
「美咲を傷つけないようにってしたいたつもりが傷つけて……ごめんね
。」
「お母さん…」
「裕也は…この街を出て行ってからもあんたに会いたがってた。謝りたいって。でも彼にはもう彼女がいたから、余計に美咲を傷つけると思って追い返してた。」
お母さんも智樹も私のことを思って行動してくれてた
私だけが仲間はずれされたわけじゃない。
それがわかっただけで……もう十分だ。
「お母さん……」
「ん?」
「ありがとう…色々。」
「ふふッ……」
「何…?」
「美咲変わったね。葵君に出会ってから……智樹もうかうかしていられないわね。」
葵君に出会ってから、止まっていた時計の針が動き出した気がする
でも時計の針が動き出したのはきっと私だけじゃない。
お母さんも智樹も、蝶さんも――
そして葵君の時計も動き出している。
※修正しています。
「お母さん……私本当に恋をしてもいいのかな?」
「美咲………?」
みんなの時計は前に進みだしているはずなのに
私だけ、止まっていた時計が逆戻りする時がある。
「本当は裕也のこと以外でも何かあったんでしょう?」
「どうして…?」
「私はこれでも美咲の母親よ。智樹も言っていたわ。美咲は何か抱えているって…どうしたの?これからは何でも本音を話していこう。お母さんも美咲を支えたいの………2人しかいない家族なんだから。」
握ってきた母親の手は小さい頃につないだあの頃のままーー
温かくて安心を与えてくれる手だ。
「お母さん、私ーー」
※修正しました
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