したがり人魚王子は、王様の犬になりたいっ!

二月こまじ

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人魚王子、恥ずかしくなる。※

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「何を……」
 
 オルクは絶句した。オレは早くも後悔しつつあった。でも、もう後戻りは出来ないと思い、挑むようにオルクを見上げた。

「オルクにして欲しいんだ。元々それがオレの願いだから。願いが叶ったら、海に帰る。約束するよ」


 オルクは暫くその場で固まっていた。痺れを切らして声を掛けようとしたところで、ぐいっと痛いくらいに手首を掴まれる。

「オ、オルク?」
「本当にいいんだな」

 怖い顔でそう言われ、一瞬怯えた顔をしてしまったようだ。オルクは、すまん、と短く謝ってそっとオレの両手を掴んだ。

「無理はしてないか?」
「む、無理じゃないっ! だってそうして欲しいんだ」
「──では、おいで」

 寝台に誘われ、そっと抱かれて横にされた。オルクが覆い被さるようにしてオレの顔を覗き込んでくる。オルクはまだどこか悩んだような顔をしていた。

「本当に本当にいいんだな」

 オルクが何度めか分からない確認をしてきた。いい加減オレも面倒になって叫んだ。

「いいってば! っていうか、して欲しい。オルクのペニスをお尻に入れたいんだ」

 はっきりと返事をすると、オルクは怒ったようにオレの腰を抱き寄せ、手で口を塞いだ。

「分かった。分かったから、ちょっともう黙っていろ。これじゃあ、俺がもたん」

 なにかまた間違えたかな。心配になっていると、オルクの瞳がふっと和らいだ。

「そんな顔をするな。優しくしたいんだ。お前が望むなら、俺に異論はない。だが、気持ちいいだけではすまないかもしれないぞ? 痛いこともあるかもしれん」

 口を塞いでいた手が、オレの頭を優しく撫でた。

「痛いの? でも、オルクに痛くされるなら別にいいよ」

 オルクがまた困った顔で俺の口を塞ぐ。心なしか顔が赤くなっている。

「だから……もういい。うんと気持ちよくしてやるから、覚悟しろ」

 そう言うと顎を掴まれ、オルクの顔がびっくりするくらい近づいてきた。
 何かと思ったら口同士がくっついた。

「な、なに⁉」
「なんだ、知らないのか。口付けだ」
「な、なにそれ?」
「いきなり、お前の尻に俺のペニスは入らん。まずはお前を気持ちよくトロトロにしてから俺のものをいれるんだ」

 確かに、そう言われてみると魔法使いの家でみた本でも、父上が「溶けちゃうッ」と本の中で言ってたいた気がする。

「口付けをすると、気持ちよくて、トロトロになるの?」
「……努力する」

 オルクがまた困った顔をしたのでオレはもう今度こそ黙る事に決めた。チュッチュッと温かな唇が触れ合うのは、確かに気持ちいいかもしれない。

「口付けの時は、目を閉じるんだ」

 オルクにそう囁かれ、言われるがまま瞼を閉じる。
 優しく下唇を噛まれ、そのうちオルクの舌がそろりと中に入ってきた。はじめはびっくりしたけど、内側を確かめるように、歯茎や歯の裏を、ゆっくりと舌でなぞられると腰骨がゾクリと不思議な感覚に包まれる。
 目を閉じることで、オルクの舌の動きに集中してしまい、感覚が酷く鋭敏になってしまう。まるで、自分の中を内側から擦られるているようだ。

(口付けって、凄い……)

 息を弾ませながら、離れていく濡れた唇を呆然と眺めた。少し満足そうな顔をしたオルクが、俺の唇から溢れた唾液を拭う。

「口付けは気に入ったか?」
「うん……気持ちいい……」
「お前の素直さは、こういう時非常に好ましいな」

 そう言うと、オルクはもう一度顔を近づけてきた。オレが口付けに夢中になっている間に、衣服が一枚、また一枚と剥ぎ取られていく。

「……この服は美しいが、とても危険だな」

 胸元部分のレースを引っ張りながら、オルクは不満そうに呟いた。

「お前の乳首が、簡単に見えそうになってしまう」
「でも、オレの乳首は病気じゃないんでしょう」
「そうだ。美しく、可愛らしい乳首だ。でも、ここを見てもいいのは……俺だけだ」

 低い囁きが、胸をくすぐる。昨日の"キモチイイ"感覚が簡単に蘇り、下半身がむずむずしてきた。

「オ、オルクぅ」
「どうした?」
「な、なんか。そこ、昨日みたいに、して欲しい、かも……」
「……そことは?」
「ち、乳首」
「ここか」

 乳首を指でちょんと弾かれる。それだけで「ひんっ!」と変な声が出てしまった。

「う、うん。そ、そこ」
「乳首を、どうして欲しいんだ」
 
 優しくちょんちょんと触れられて、気持ちいいんだけど。そうじゃない。昨日みたいに、もっと──。

「な、舐めたり、つねったりして欲しい……」
「ちゃんと、俺の目を見て、お願いしてみろ」
 
 オルクが顔を近づけて、低く囁いた。なんで、そんな意地悪なこと言うんだろう。でもオルクにそう言われると、背筋にゾクゾクしたものが走り、なんとも言えない気持ちになる。
 なんだろう。なんだろうこれ!?
 顔も身体もカーッと勝手に熱くなっていくのが、止められない。

「オ、オルクに、オレの乳首、つねったり、舐めたりして欲しい……っ」

 我ながら情けない声を振り絞って言った。

「よく、出来たな。流石、俺のかわいい犬だ」
 
 艶っぽく笑ったオルクに見つめられ、何故か瞳が潤んでしまう。
 やっと乳首をキュッとつねってもらっただけで、昨日覚えたての『イッちゃう』感覚がすぐそこまで近づいてきた。

「あ、あんっ!」
「更に感度が良くなってるな。主人に似て、いい乳首だ」
 
 そう言ってオレの乳首に舌を伸ばそうとするオルクを、慌てて静止した。

「ちょっ、ちょっと待って!」
「……なんだ?」
 
 ハァハァと乱れる呼吸を整えながら乳首を両手で隠すと、若干不満そうなオルクが顔を上げる。

「あ、あの。なんか、昨日と違ってまだ明るいところで、そうやって、オレのち、乳首を見たり、いじられるの、わーって叫びながら部屋中ごろごろしたくなるっ、かも。触って欲しいんだけど、なんか、なんかっ。なんだこれっ⁉︎」

 顔を真っ赤にしてギャーギャー騒ぐオレをオルクは一瞬呆けたように見ていたが、そのうち、くっくっと喉の奥で笑っている声が聞こえてきた。

「笑い事じゃないんだよっ。 なんか、胸がざわざわして……。やっぱり病気かも!」

 涙声で訴えると、オルクは「すまんすまん」と肩を震わせる。絶対笑うのを我慢してるんだ。

「シレーヌ。それはな、恐らく恥ずかしい、という感情だと思うぞ」

 若干笑いを含んだ声で、オルクがおかしそうに言った。

「ハズカシイ……それって、いい事? 悪い事?」

 分からなくて聞くと、オルクは悪戯そうに笑う。馬鹿にされるんだ。そう思ったが、すぐ目の前まで近付いてきた瞳は、予想外に艶めいていた。

「勿論、いい事だ。恥ずかしい方が、うんと気持ちよくなれる」

 そう言ってもう一度深い口づけをしてきたオルクに、その言葉が嘘じゃないことを嫌というほど教えこまれたのだった。
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