したがり人魚王子は、王様の犬になりたいっ!

二月こまじ

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人魚王子、本懐を果たす。※

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「あ……ッ、ぁあッ、もう、やぁぁ……ッ」
「もう少しだ、ほら、三本入るようになったぞ」

 もうどれくらいたったのだろう。
 オルクが花の香りのするトロトロした蜜のようなものをたっぷり手にとり、オレのお尻の中をずっと弄ってから何時間もたっている気がする。でもそれはあくまでオレの体感で、もしかしたらそんなにたっていないのかもしれない。
 初めは痛かっただけなのに、優しくペニスや乳首を撫でられながら、お尻の中を弄られるとたまらない気持ちになって、すぐにでも『イキそう』になってしまう。
 でも、その度にオルクはオレのペニスをぎゅっと掴んで、それを阻止する。ずっと下半身に大きな熱の塊が溜まっていて、どうにかなってしまいそうで勝手に瞳が潤んだ。
 どうしようもないほど気持ちよくて、でもこんな明るいところでずっとお尻をいじられているのが恥ずかしくて、早く『イキたく』て。頭が沸騰しそうになりながら、オルクに懇願した。
 
「もう、イキたいよぉ……っ」
「駄目だ。いま気をやると、後が辛いぞ。ほら、もう少し奥まで入れてみよう……ん?」
「んぁぁッ!」
 
 びっくりするぐらい感じる場所に、オルクの指が当たった。あの形のいい指が自分の中を擦っているんだと思うと、なんともたまらない気持ちになる。
 必死に下半身の刺激から逃げよとう蠢いている俺の上で、オルクが眉間に眉を寄せ首を傾げた。
 
「人魚は……勝手に尻が濡れるのか?」
 
 引き抜いたオルクの指から、白くどろりとしたものが垂れた。昨日、オレのペニスからだした精子にも似ている。お尻の穴を広げる為にオルクが使っていた蜜とは明らかに違うものだ。
 
「っわかんない……ま。人魚に、お尻の穴はないから。もしかしたら、卵があるところと繋がってるのかも」
「卵っ⁉︎ お前は卵を生むのかっ⁉︎」
「……産まないよ。オスだもん」
「そ、そうだよな」
 
 どこか安心した顔でホッと息を吐く様子を見て、胸がツキンと傷んだ。
 卵を生むなんて、やっぱり人間にとっては気持ち悪いのかもしれない。
 
「人魚は卵と精子、両方体の中にあるんだ。でも、オレはオスだから、精子しか使えない」
「そ、そうか……」
 
 本当はそれだけが真実とは言えないけど、オルクはそこまでその事に疑問を抱かなかったみたいだ。というよりも、卵と聞いて心配になったらしい。
 
「し、しかし、大丈夫なのか⁉ そんな場所に繋がっているなら、俺のペニスを入れて……」
「オスだもん。卵は機能してないから大丈夫だよ」
「そうではなくて、お前の体に触るのではないのか?」
 
 本当に心配そうな顔をしているオルクに、胸がキューッと締め付けられるようだった。人を好きになると、痛くなったり苦しくなったり忙しい。胸が何個あっても足りないくらいだ。
 
「大丈夫だよ。オレはオスだし。それに……」
 
 オルクの首にそっと両手をまわす。先程覚えたばかりの口付けを、自分からしてみた。ちゅっと音が響いたのが、なんだか気恥ずかしい。
 
「早く、オルクに入れて欲しい。痛いくらいでも、いいんだ」
 
 オルクが目を見張った。恥ずかしく思いながらも、じっとオルクを見つめていると、その瞳に熱がこもっていくのが分かった。
 
「……いいんだな。正直、俺もそろそろ我慢の限界だ」
 
 ぐいっと下半身を押し付けられる。目眩がするような熱さを布越しに感じ、オルクもオレと『キモチヨク』なりたいんだと思うと、指の先まで震えるような喜びが体を貫いた。
 
「……オルクッ、オルクッ」
 
 叫びだしたいほど嬉しかったが、馬鹿みたいに泣きながらオルクの名を呼ぶ事しか出来ない。オルクの熱を少しでも感じたくて、抱きつきながら思わず自分のお尻をそれに擦りつけてしまった。
 オルクは舌打ちをしながら俺を引き剥がす。
 失望で違う涙が出そうになったが、オルクは獰猛な鮫のように自分の衣服を全身脱ぎ捨て、俺の上に伸し掛かった。裸になったオルクの筋肉は、波打つように綺麗で思わず見惚れた。
 うっとりしている間に、仰向けで大きく足を開かされ、オルクは自身の体を沈めていった。
 
「すまん……ッ」
 
 苦しそうにそう言われたけど、なんで謝るのか分からない。むしろ、して欲しいってお願いしたのはこっちなのに。謝らないで、そう言おうとした。だが──。
 
「あ……あッ、あぁッ⁉︎」
 
 先程までの指とは比べ物にならないほど熱くて大きな熱が、オレの中にメリメリと音を立てて侵入してきた。自分のそこが、有り得ないほど開かれているのが、怖い。
 スープを呑んだとき、痛い! と思った感覚を思い出した。あれは、熱い、という感覚だと後で教えて貰ったけど、いまはお尻も下腹部も、どこもかしかも、熱くて、痛い。
 もう無理だと叫びたかったが、はくはくと喘ぐばかりで声にならない。そうしている間にも、熱塊がどんどん深くに侵入してくる。
 
「あっ、っ、……ッ!」
「……くっ。シレーヌッ、息をゆっくり吐けっ」
 
 オルクが、呻くように言った。苦しげに眉を潜めている。そこで、はじめてオルクも苦しい事に気づいた。そりゃ、そうだ。オレがこれだけ苦しいのだから、同じ場所にペニスを入れているオルクも苦しいに違いない。
 とにかく言われた通りにしてみようと息を吐いた。はぁッと、熱い吐息とともに、強張っていた身体が少し楽になった気がした。オルクがちゅっと口付けてくれた。
 
「いい子だ。暫くこのまま動かないから……安心してくれ」
「……んっ、は、入ったの?」

 なにが、とは問い返さず、オルクが眉を下げて少し困ったように言った。

「ちょっとだけな」
 
 ちょっと⁉︎
 これで、ちょっと⁉︎
 喉からオルクのものが出てしまいそうなほどいっぱい入ってる気がするが。
 これで「キモチイイ」になるのは、絶対ムリだ。そう思ったが、オルクに合わせて呼吸するうちに、段々とはじめの痛みが薄れてきた。
 痛みが引いてくると、熱いものが奥に、奥に少しずつ入ってきていることに気が付いた。
 
「オ、オルクっ、動かないって、言ったのにッ」
 
 抗議の声を上げると、オルクが意地悪そうな顔で言った。
 
「私は動いてないぞ。シレーヌが、私のものをゆっくりと導いているんだ」
 
 そんな馬鹿な。と思ったが、そこに集中してみると、確かに自分の中がオルクのものの輪郭を確かめるように勝手に蠢いているを感じる。
 
「俺が動かせば……こうなる」
 
 低い声でそう囁き、オルクは中を擦り上げるように更に深く入ってきた。
 
「あっ、やぁぁぁッ!」
「深すぎたか? 少し浅くするぞ」
 
 今度はゆっくりと腰を引く。回転させるようにして、ちょっとずつオレの中を広げているみたいだ。
 絶対気持ちよくなんてならないと思っていたが、さざ波のように中を擦られているうちに、じわりじわりと快感が腰に広がっていく。
 
「……あぁんッ!」
「ここが、お前のイイところか」
 
 思わず声をあげると、そこにしつこく腰を打ち付けられた。逃げ場のない快感が、身体中を駆け巡り、ひっきりなしに喘ぐことしか出来ない。

「あ……ッ! ああぁんッ、やぁあッ! あぁぁぁ──……ッ!」
「シレーヌッ、俺の、可愛い……ッ」
 
 腰を穿つスピードはどんどん早くなり、怖いくらいの快感に涙が溢れた。指の先から、つま先まで、痺れるように『キモチイイ』で支配されてしまっている。
 オレの中が、全部オルクになってしまったかのようで。たまらない快感と幸せで、覚えのある感覚が押し寄せる。

「オ、オルクッ! イ、イッちゃう……っ」

 オレの悲鳴のような投げかけにオルクが頷きながら、一段と動きを激しいものにした。昨日よりも、さらに激しい熱の奔流が身体の中で暴れ狂う。
 
「あぁぁ……ッ!」
 
 一際強く穿たれ、なにか熱いものがお腹の中に広がった。
 途端、頭が真っ白になり、身体が宙に浮かんでしまったかのような感覚に襲われる。身体の力がガクンと抜けて、ふわふわとした感覚が続く。今度の『イク』は、どこか遠くへ行ってしまうのかもしれない。
 
「後ろでイッたか……」
 
 呟くようなオルクの声が側で聞こえる。いやだ。オルク、まだ側にいたいんだ。

 本当は、泡になんてなりたくない──。

 遠ざかっていく意識の中で、オレは必死にオルクに腕を伸ばす。
 オルクの手が僅かに触れたと思った瞬間、世界は真っ白になって途絶えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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