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一章

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「言い忘れてましたわ、ルミナリク。わたくし昔っから、あなたのこと大っっっ嫌いですの! それではごきげんよう!!」

 言うなりわたくしは窓枠を掴んだ手とかけた足に力を入れ、そこを乗り越えた。
 ガラスを割った影響で破片が出た部分があり、脚や腕に切り傷ができたけれど気にする余裕など無くて。
 なるべく早く人気のある所に出なくてはと考えながら小走りになっていると、遠くで自分の名前が呼ばれたような気がした。

 「…‥アーラ様! メルティアーラ様~!」

 マリアの声だわ。

 わたくしは思わずほっとしてしまって、足から力が抜けた。

「わたくしはここよ、マリア!!」

 座り込んだまま声を張り上げると、マリアが見つけてくれたようで駆け足でやってきた。
 その目には既に涙が溜まっていてーー

 ああ、頑張って良かったーーと、思った。

「メルティアーラ様!! っこ、こんな、ぼろぼろになってしまわれてっ。あ、歩けますか? えっと、う゛~~一人にするわけにはいかないし……私どうしたらっ」

 焦るマリアに、しっかり休息を取れば歩くわよと言おうとしたら、背後から急に声がし先程のことが思い出されひゅっと息が詰まる。

「背後から失礼致します、殿下の影でございます。くだんの方がまだ貴方様を探しておりまして火急を要すると判断いたしました」

 その声はそう言うなり、失敬、と付け足して私を抱き上げた。

「ボヌルバ様と共に家までお送りさせていただきます。ボヌルバ様は走れますね?」

 びっくりしすぎて固まったわたくしに、マリアの「はい、大丈夫です!」という少し緊張した声が届いた。
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