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第一話 突然の転移
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ワシ、悲しいんじゃ……
夢の中、誰かがなげいている声が聞こえてきた。
誰?
「ワシワシ、ワシじゃ」
ど定番のオレオレ詐欺芸と共にあらわれたのは、ハゲてあごの白い髭がながーく、鼻下の髭は左右にくるるんピンと伸びた、いかにも、な姿形のおじーさんで。
「どわぁっ!!」
だなんて、私の方も定型のおどろく姿で対応したのは、ほんとごめん、なんか、ごめん。
「謝らんでもええぞ、お前さんの夢に勝手にお邪魔しとるんは、ワシじゃからのぅ。して、突然じゃけどお前さんには異世界へ行ってもらいたくてな、今ワシここにおるんじゃ。ええかのぅ?」
「は?」
「うんうん、はい、って言いたいんじゃのー、わかるわかる」
ちょーわかる、とか言いながらもそのおじいさんは上も下もない真っ白な夢の世界の中で、地面方向の白い面に手にしたステッキのようなもので、スラスラスラーっと、漫画とかファンタジーでいうところの魔法陣? てやつを描いている。
「何してるの」
「ん? いやこういうのって雰囲気大事じゃろ、下準備じゃよ、必要ないけど」
言い終わりと同時に描き終わったらしく、外側の円の線は綺麗に閉じられた。と、同時に私の体は宙を浮いた。
白い世界だから浮いたっていうのも絵面じゃわかんないだろうけど、浮遊感っていうやつがあったのだ。そうしてあっという間に魔法陣の中央に下ろされ、おじいさんは手持ちの棒で陣をついた。
光る魔法陣。飲み込まれる私。
そうして私は、強制的に送り込まれてしまったのだった。
異世界、ってやつに。
※
異なる世界。
そこは単純に、私がいたところでは無いところ、だ。
地球人、十二年生とちょっとの私、こと池田万里は中学一年生。中学デビューじゃないけどちょっとお姉さんっぽく髪も伸ばしてロングにして、入学を楽しんだ。
そして入学式から三日目にして、さてこれから部活動楽しみだなーとか、友達できるかなーとか、もしかしたら初めての恋しちゃうかも?! とか、非常に、本当に、ワクドキしていた。
なのに。
なんでかな、今は薄暗く、木の生い茂った場所にうずくまっている。
『ほんと、すまん。けどワシ、どうしても異世界に魔法少女が広めたくてのぅ』
「そんなことより家に帰してっ! 明日はめく学の発売日だったのに!!」
そう、しかも明日はとても楽しみにしていた漫画家行川先生の三年ぶりの最新刊が出るのを買うはずだった。あんまりだ。そもそもあんた誰だ。
『ワシ? ワシ、神様。創造神ってやつかのぅ。よろ!』
「かるっ」
『突然じゃけど、ワシが気になっとる異世界が一つあってのぅ。修正するのに魔法少女の力を普及したかったんじゃが、向こうの女子に、理解してもらえんかってな。だからこう、ちょちょっと、お前さん、よろ』
「よろって気に入ってるでしょ……。気安く言えばホイホイ引き受けてもらえると思わないでよね! てかなんで私の頭の中に話しかけられるわけ? キショ!!」
『ひどい……ワシ、繊細なのに』
「繊細な人は、自分で繊細って言わないのよクソジジイ」
「誰か、いるのかい?」
ぎゃひっ! という色気も何もない悲しい悲鳴は口の中で飲み込んだ。ここはどうやら誰かの居住する場所だったらしい。あたりを見渡すとよく公園で見かける東屋? ってやつに似ている場所や、噴水、花壇なんかが見えた。なんだか、高級そうな場所だ。
声のした方をこっそり覗くと、いわゆる王子様のような格好をした男子がいた。
どうしよう。
声に返事する? 無視を決めこむ? 何が正解かわからない。
すると、後からトン、と人の手のようなものが私の背中を押した。よろけた私は物の見事に茂みに突っ込み飛びころげ出てしまう。
『応援ぢゃ!』
(そんなのいらない!!)
心の叫びもむなしく、私はその王子様の目の前に、今いる。どうしよう。何、すればいいの?!
「あ、やっぱりいましたね。……あれ、君変わった服を着ているね。それに泥だらけだ、こっちおいで」
王子様は糸かってくらい細い、けれど綺麗な紫色の瞳で私を見た後、手をとって歩き始めた。自然、引きずられないように私も立ち上がって歩く。どこへ連れて行かれるんだろう。
お城のような建物が見えてもずんずん相手は歩いていく。その目の前のお城(仮)の中に入り、きらびやかな壁や床や天井のシャンデリアとかに面食らいながらどんどん歩く。迷いのない足取りに、この家? の子なんだろうと思いながらついていくと、とあるドアの前で足が止まり彼がそれを開けた。目的地に着いたみたいだ。
夢の中、誰かがなげいている声が聞こえてきた。
誰?
「ワシワシ、ワシじゃ」
ど定番のオレオレ詐欺芸と共にあらわれたのは、ハゲてあごの白い髭がながーく、鼻下の髭は左右にくるるんピンと伸びた、いかにも、な姿形のおじーさんで。
「どわぁっ!!」
だなんて、私の方も定型のおどろく姿で対応したのは、ほんとごめん、なんか、ごめん。
「謝らんでもええぞ、お前さんの夢に勝手にお邪魔しとるんは、ワシじゃからのぅ。して、突然じゃけどお前さんには異世界へ行ってもらいたくてな、今ワシここにおるんじゃ。ええかのぅ?」
「は?」
「うんうん、はい、って言いたいんじゃのー、わかるわかる」
ちょーわかる、とか言いながらもそのおじいさんは上も下もない真っ白な夢の世界の中で、地面方向の白い面に手にしたステッキのようなもので、スラスラスラーっと、漫画とかファンタジーでいうところの魔法陣? てやつを描いている。
「何してるの」
「ん? いやこういうのって雰囲気大事じゃろ、下準備じゃよ、必要ないけど」
言い終わりと同時に描き終わったらしく、外側の円の線は綺麗に閉じられた。と、同時に私の体は宙を浮いた。
白い世界だから浮いたっていうのも絵面じゃわかんないだろうけど、浮遊感っていうやつがあったのだ。そうしてあっという間に魔法陣の中央に下ろされ、おじいさんは手持ちの棒で陣をついた。
光る魔法陣。飲み込まれる私。
そうして私は、強制的に送り込まれてしまったのだった。
異世界、ってやつに。
※
異なる世界。
そこは単純に、私がいたところでは無いところ、だ。
地球人、十二年生とちょっとの私、こと池田万里は中学一年生。中学デビューじゃないけどちょっとお姉さんっぽく髪も伸ばしてロングにして、入学を楽しんだ。
そして入学式から三日目にして、さてこれから部活動楽しみだなーとか、友達できるかなーとか、もしかしたら初めての恋しちゃうかも?! とか、非常に、本当に、ワクドキしていた。
なのに。
なんでかな、今は薄暗く、木の生い茂った場所にうずくまっている。
『ほんと、すまん。けどワシ、どうしても異世界に魔法少女が広めたくてのぅ』
「そんなことより家に帰してっ! 明日はめく学の発売日だったのに!!」
そう、しかも明日はとても楽しみにしていた漫画家行川先生の三年ぶりの最新刊が出るのを買うはずだった。あんまりだ。そもそもあんた誰だ。
『ワシ? ワシ、神様。創造神ってやつかのぅ。よろ!』
「かるっ」
『突然じゃけど、ワシが気になっとる異世界が一つあってのぅ。修正するのに魔法少女の力を普及したかったんじゃが、向こうの女子に、理解してもらえんかってな。だからこう、ちょちょっと、お前さん、よろ』
「よろって気に入ってるでしょ……。気安く言えばホイホイ引き受けてもらえると思わないでよね! てかなんで私の頭の中に話しかけられるわけ? キショ!!」
『ひどい……ワシ、繊細なのに』
「繊細な人は、自分で繊細って言わないのよクソジジイ」
「誰か、いるのかい?」
ぎゃひっ! という色気も何もない悲しい悲鳴は口の中で飲み込んだ。ここはどうやら誰かの居住する場所だったらしい。あたりを見渡すとよく公園で見かける東屋? ってやつに似ている場所や、噴水、花壇なんかが見えた。なんだか、高級そうな場所だ。
声のした方をこっそり覗くと、いわゆる王子様のような格好をした男子がいた。
どうしよう。
声に返事する? 無視を決めこむ? 何が正解かわからない。
すると、後からトン、と人の手のようなものが私の背中を押した。よろけた私は物の見事に茂みに突っ込み飛びころげ出てしまう。
『応援ぢゃ!』
(そんなのいらない!!)
心の叫びもむなしく、私はその王子様の目の前に、今いる。どうしよう。何、すればいいの?!
「あ、やっぱりいましたね。……あれ、君変わった服を着ているね。それに泥だらけだ、こっちおいで」
王子様は糸かってくらい細い、けれど綺麗な紫色の瞳で私を見た後、手をとって歩き始めた。自然、引きずられないように私も立ち上がって歩く。どこへ連れて行かれるんだろう。
お城のような建物が見えてもずんずん相手は歩いていく。その目の前のお城(仮)の中に入り、きらびやかな壁や床や天井のシャンデリアとかに面食らいながらどんどん歩く。迷いのない足取りに、この家? の子なんだろうと思いながらついていくと、とあるドアの前で足が止まり彼がそれを開けた。目的地に着いたみたいだ。
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