夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸

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第十二話 家族(挿絵あり)

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「そんなわけないじゃない!」

私はそう言って、カイルを抱きしめた。
この子は幼いけど、賢い子だ。
だけど、カイル自身の複雑な状況を理解できるほど大人ではない。

カイルが本当のお父さんだと思っている公爵様は、実は本当の父親の弟だということ。
自分自身が世間的には死んだとされていること。
本当は皇位継承順位が2位で、それが知られると命を脅かされてしまうということ。

全てはカイルを守るためのことだったが、カイル自身がそれを正確に理解するのは、今は年齢的に難しいだろう。
精一杯、理解できるように説明したつもりだったが、寂しい思いをさせてしまったようだ。

「私はカイルのお母さんになったばかりだけど、カイルは私にとってとても大切な存在よ」
「お母さん…も…ぼくにとってたいせつなそんざいだよ」
「ありがとう…」

カイルの言葉が、胸に優しくしみてくる。



「私にはね、家族がいたけど…でも、家族にとって私は大切な存在ではなかったの。だから、カイルが私のことを大切に思ってくれること、本当にうれしい…」

カイルには難しくて伝わらないかもしれないと思ったけど、私は自分の正直な気持ちを打ち明けた。

「お母さんのかぞくは…わるいひと、だったの?」
「うーん…悪い人ではなかったかもしれないけど、でも、私のことは大切じゃなかったと思う」
「かぞくなのに?」
「そう、家族なのに」
「お母さんは、ぼくにとって、たいせつなかぞくだよ」
「本当に嬉しい。ありがとう…」

カイルの言葉を聞いて、不覚にも目のあたりが熱くなってしまう。
私がカイルを慰めなくちゃいけないのに…こんなに小さな子に気を遣わせて、慰めてもらうなんて…。

「お母さん…ないてるの?」
「ごめんね…泣きたいのはカイルのほうなのにね…」

カイルは小さな手で私の頭を撫でてくれる。
その手は小さいはずなのに、とても大きく、温かく感じた。

「ぼくはまだ、わるいひとからお母さんをまもれるほどつよくないけど、でもいつか、お母さんをわるいひとからまもるよ」
「すごく頼もしい、ありがとう」

私が涙を拭いながら笑うと、カイルも笑顔を見せてくれた。


とりあえず、カイルは私の話に納得してくれたようだった。
だけど、本当に子どもは驚くほど意外な行動に出ることがあるので、使用人たちにも注意して見ていてもらう必要があるだろう。
カイルとの話が終わったら公爵様へ報告に行く予定だったが、カイルの前で泣いてしまったこともあり、いったん部屋に戻ることにした。
公爵様には私の目が赤いというのは見えないだろうけど、見えないからといって、泣き顔のまま会うのは気が引けた。

(前世と今世でいろんなことを経験して強くなったつもりだったけど…カイルの言葉でこみ上げてくるものを抑えられなかった…)

「家族…か…」

私は前世でも今世でも、家族とは縁が薄かった。
必要とされたいと思って必死に頑張っても、それが裏目に出ることも多かった。
カイルは突然、母親になった私を受け入れ、家族だと認めてくれた。
それがとてもうれしかった…。
私は前世でも今世でも、大切な家族として受け入れてもらいたかったのだ。
それを、カイルとの会話で気づかされた。

(カイルは家族の意味もよく分かっていないのかもしれないけど…でも…)

思い出すとまた涙がこみ上げてきそうになって、私は目のあたりを拭った。

(部屋に戻って、顔を洗ってから、公爵様の部屋に…)

しかし、振り返ったところに、公爵様が立っていた。

「あ…す、すみません…」

声で私だと公爵様は分かったようだった。

「シャーレットさんでしたか。話は終わりましたか?」
「お、終わりましたっ、い、今から報告に行こうと…っ…」

(顔を洗って気持ちを落ち着けてから…のつもりだったんだけど…)

「声がいつもと違う気が…」

公爵様が私の声を聞いて首をかしげる。

「え、ええと、風邪かも…あっ、そうそう、カイルは心配ありません。ちゃんと理解してくれました」

まだ涙が止まらない状態だけど、公爵様の目が見えないのが幸いだった。
声がおかしいということには気づかれたけど、泣いていることには気づかれないはずだ。

「……ひょっとして、泣いているのですか?」

目が見えない人の中には、その分他の器官が優れていることがあると聞いたことがあるけれど。
公爵様も、目が見えない分、耳がとても良いのかもしれないと思った。

「違います…泣いてないです。大丈夫です」

私は何とか気持ちを落ち着けて答えた。
でもたぶん、これ以上話を続けていると、バレてしまう。

(とりあえず、この場を離れないと…)

「あの、ちょっと用事を思い出したので…」
「待ってください」

そのまま逃げるように立ち去ろうとしたとき、公爵様の手が私の腕をつかんだ。
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