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第九十四話 嫌な予感しかしない…
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皇女様がさまざまな可能性を考えた結果、ラウル様を軍のまとめ役として選んだということはよく分かった。
「ラウルには、嫌な役を背負わせてしまうことになるけど、私が帝位に就いたら、皇帝として彼を全力で守ることを約束する。だからシャーレットにも、ラウルを支えてもらいたいの。分かってると思うけど、ラウルはあまり自分に頓着しない性格だから…」
「はい、もちろんそのつもりです」
皇女様の言うとおりだった。
ラウル様は自分のことにあまり頓着しておらず、軽く考えているようなところがある。
だからいつも、心配になってしまう。
きっと皇女様も、同じ心配をしているに違いない。
私がどこまで支えになれるかは分からないけれど、できることは何でもしたいと思う。
話が落ち着いたところで、私は皇女様に謝罪しなければならないことを思い出した。
「あ、皇女様からいただいたブレスレットなんですが…こんなふうになってしまって…」
私は水晶や宝石が欠けてしまったブレスレットを、布の上に置いて皇女様に見せた。
戻ってきた時には形を保っていたのが、箱の中にしまっているうちに、いつの間にか石がかけてしまっていたのだ。
「あー…これはもう使えないわね。使った力の大きさによって、寿命があるの。でも、また作っておくわ。首都に来たときに渡すから」
「すみません…でも、命を助けて頂きました。ありがとうございました」
「それなら良かった」
そう言って笑ってから、皇女様は思い出したように言った。
「そういえば、ヘレフォード伯爵令嬢に恋人ができたそうよ」
「え?そうなんですか?そういえば、エルザさんとはお会いになられたんですか?」
「会う約束をしようとした時に、こっちに来ることになったから。首都に戻ったら、会うかもしれない。なんか手紙のやり取りの雰囲気だと、以前とはずいぶん変わったみたいね、彼女」
「はい。このお城では大きな声では言えませんが、私はお友達だと思っています。恋人って、どんな方なんですか?」
「けっこう意外な相手だったけど…名前は忘れちゃった。身分は確か男爵だったかな…」
「建国祭の時に再会できると思うので、聞いてみます」
「あ、建国祭といえば、首都から皇室専用のデザイナーに大急ぎで来るように言ってあるから、ラウルと一緒に正装を作ってもらって」
「あの、ドレスなら実家から持たされたものが山のようにありますし、公爵家のカラーに合わせた正装のドレスも、着たことのないものを含めて何着かあるのですが…」
公爵家に嫁ぐことが決まった後、シャーレットの父親のグリーン侯爵は、デザイナーを呼んで大急ぎで複数のドレスを作らせた。
実家にいたときにはほとんどドレスを作ってもらった記憶はなかったけれど、侯爵家の娘として嫁に行く以上、恥をかくことがあってはならないと考えたのだろう。
「シャーレットは今回が社交界デビューでしょ。それ用のものを作らなきゃ。といっても、建国祭直前でたぶんデザイナーは捕まらないと思うから呼んだのよ。ラウルも公爵家の正装でいいとか言い出しそうだけど、おそろいのものを作らせるから。ちゃんと採寸してもらえるように見張っててね」
「いえ…でも、何だか申し訳ないですし…」
「気にしなくていいのよ。あなたの社交界デビューのプレゼントと侍女としてのお給料の前払いとでも思って受け取って」
公国から帰城した2日後、皇女様と皇軍は慌ただしく首都に戻っていった。
公国について、今後のことを早急に決める必要があったからだ。
しかしお城が静かになったと思ったのもつかの間、すぐに皇女様が言っていた皇室のデザイナー一行が血相を変えてやって来た。
ラルウ様は「必要ない」と拒絶しようとしていたが、皇女様ではなく皇帝陛下が手配されたものだと判明し、断ることができなくなったようだった。
(確か皇女様は、私の社交界デビューのお祝いと侍女としての報酬の前払いと言っていたような気がするけど…どこで皇帝陛下の依頼にすり替わったんだろう…)
私は不思議に思ったが、確認しようにも皇女様はもういない。
デザイナー一行は、採寸と生地合わせを終えると、慌ただしく首都に戻っていった。
仮縫いは首都で行われるので、当初の予定よりも一週間前倒しして首都に入ることになった。
「嫌な予感しかしない…」
ベッドの上でつぶやく声に、私は顔を上げる。
ラウル様は何か不吉な予感を感じ取っているようで、憂鬱そうな表情をしていた。
「気にしすぎではないでしょうか?」
ラウル様は私の体を引き寄せながら言った。
「あの親子の親切に裏がないと考えるのは危険です」
あの親子…というのは、皇女様と皇帝陛下のことだろう。
その発言は侮辱罪にならないのだろうかと少し心配になる。
「でも、皇帝陛下のご厚意のおかげで、私たちは結婚できましたよね。悪いことばかりではないですよ、たぶん」
「それは確かにそうですが…でも、今回のことは、絶対に裏があると思います」
ラウル様は何かを確信しているかのように言った。
ただ、今更いろいろ不安に思ってみても仕方のないことだった。
私は話題を変えるように言った。
「首都に戻るのは久しぶりなので、少し緊張します」
「私は5年ぶりですね」
私は久しぶりといっても5ヶ月ぶりだけど、ラウル様は5年ぶり…。
5年間の間、全ての行事への欠席も認められ、まるで隠遁生活を送るように過ごしてきたのに。
これからは首都で表舞台に引きずりだだれるのだと思うと、他に適任者がいないとはいえ、気の毒な気がした。
「今回は建国祭のために戻るだけですけど、本格的にあちらに移るのはいつ頃になりそうですか?」
「皇女は今年の話ではないと言っていましたが…実は陛下からも同じような提案を何度か頂いたことがあるので、年内にとなるかもしれません」
それは初耳だった。
おそらく、皇帝の代理の指揮官として、皇軍をまとめてほしいというような話だったのかもしれない。
今回の皇女様が提案してきたのは、代理指揮官ではなく正規の指揮官、しかも職位を新設する話なので、重さはずいぶんと違うのだろう。
「では、ここで過ごせるのも、あと少しなんですね…」
「そうなりますね…」
ここへ来たときには、辺りは一面の雪景色だった。
今はもう雪は山のほうに残っているだけで、木々も芽吹き始めている。
「首都に引っ越すときには、馬は持っていきましょう。首都の本邸はこの城ほど広くはないですが、馬場はあるので」
「はい。カイルも喜びますね。やっとシャルロットに乗れるようになったところだから」
「シャーレットさんも、コツさえ覚えれば、すぐに慣れますよ」
皇女様たちが首都に戻った後、マルティン卿の指導を受けながら乗馬の練習を始めたのだけど。
その日のうちに子馬に乗れるようになったカイルとは異なり、私はまだ、まともに乗ることもできない状態だった。
想像していたよりも馬の背が高く、不安定さもあって、姿勢を保つことができなかったのだ。
結局、馬にしがみついていただけで終わってしまった。
「何だか一生乗れる気がしないのですが…」
「大丈夫ですよ。今度一緒に乗りましょう。そうすれば、コツが分かると思います」
「いいんですか?」
「はい。それは他の者には任せたくないので」
ラウル様はそう言って、私の首筋に何度もキスをしてくる。
最近のラウル様は、独占欲をあらわにするときにこういうことをする。
くすぐったさに身をすくめていると、唇が重なってきた。
「ラウルには、嫌な役を背負わせてしまうことになるけど、私が帝位に就いたら、皇帝として彼を全力で守ることを約束する。だからシャーレットにも、ラウルを支えてもらいたいの。分かってると思うけど、ラウルはあまり自分に頓着しない性格だから…」
「はい、もちろんそのつもりです」
皇女様の言うとおりだった。
ラウル様は自分のことにあまり頓着しておらず、軽く考えているようなところがある。
だからいつも、心配になってしまう。
きっと皇女様も、同じ心配をしているに違いない。
私がどこまで支えになれるかは分からないけれど、できることは何でもしたいと思う。
話が落ち着いたところで、私は皇女様に謝罪しなければならないことを思い出した。
「あ、皇女様からいただいたブレスレットなんですが…こんなふうになってしまって…」
私は水晶や宝石が欠けてしまったブレスレットを、布の上に置いて皇女様に見せた。
戻ってきた時には形を保っていたのが、箱の中にしまっているうちに、いつの間にか石がかけてしまっていたのだ。
「あー…これはもう使えないわね。使った力の大きさによって、寿命があるの。でも、また作っておくわ。首都に来たときに渡すから」
「すみません…でも、命を助けて頂きました。ありがとうございました」
「それなら良かった」
そう言って笑ってから、皇女様は思い出したように言った。
「そういえば、ヘレフォード伯爵令嬢に恋人ができたそうよ」
「え?そうなんですか?そういえば、エルザさんとはお会いになられたんですか?」
「会う約束をしようとした時に、こっちに来ることになったから。首都に戻ったら、会うかもしれない。なんか手紙のやり取りの雰囲気だと、以前とはずいぶん変わったみたいね、彼女」
「はい。このお城では大きな声では言えませんが、私はお友達だと思っています。恋人って、どんな方なんですか?」
「けっこう意外な相手だったけど…名前は忘れちゃった。身分は確か男爵だったかな…」
「建国祭の時に再会できると思うので、聞いてみます」
「あ、建国祭といえば、首都から皇室専用のデザイナーに大急ぎで来るように言ってあるから、ラウルと一緒に正装を作ってもらって」
「あの、ドレスなら実家から持たされたものが山のようにありますし、公爵家のカラーに合わせた正装のドレスも、着たことのないものを含めて何着かあるのですが…」
公爵家に嫁ぐことが決まった後、シャーレットの父親のグリーン侯爵は、デザイナーを呼んで大急ぎで複数のドレスを作らせた。
実家にいたときにはほとんどドレスを作ってもらった記憶はなかったけれど、侯爵家の娘として嫁に行く以上、恥をかくことがあってはならないと考えたのだろう。
「シャーレットは今回が社交界デビューでしょ。それ用のものを作らなきゃ。といっても、建国祭直前でたぶんデザイナーは捕まらないと思うから呼んだのよ。ラウルも公爵家の正装でいいとか言い出しそうだけど、おそろいのものを作らせるから。ちゃんと採寸してもらえるように見張っててね」
「いえ…でも、何だか申し訳ないですし…」
「気にしなくていいのよ。あなたの社交界デビューのプレゼントと侍女としてのお給料の前払いとでも思って受け取って」
公国から帰城した2日後、皇女様と皇軍は慌ただしく首都に戻っていった。
公国について、今後のことを早急に決める必要があったからだ。
しかしお城が静かになったと思ったのもつかの間、すぐに皇女様が言っていた皇室のデザイナー一行が血相を変えてやって来た。
ラルウ様は「必要ない」と拒絶しようとしていたが、皇女様ではなく皇帝陛下が手配されたものだと判明し、断ることができなくなったようだった。
(確か皇女様は、私の社交界デビューのお祝いと侍女としての報酬の前払いと言っていたような気がするけど…どこで皇帝陛下の依頼にすり替わったんだろう…)
私は不思議に思ったが、確認しようにも皇女様はもういない。
デザイナー一行は、採寸と生地合わせを終えると、慌ただしく首都に戻っていった。
仮縫いは首都で行われるので、当初の予定よりも一週間前倒しして首都に入ることになった。
「嫌な予感しかしない…」
ベッドの上でつぶやく声に、私は顔を上げる。
ラウル様は何か不吉な予感を感じ取っているようで、憂鬱そうな表情をしていた。
「気にしすぎではないでしょうか?」
ラウル様は私の体を引き寄せながら言った。
「あの親子の親切に裏がないと考えるのは危険です」
あの親子…というのは、皇女様と皇帝陛下のことだろう。
その発言は侮辱罪にならないのだろうかと少し心配になる。
「でも、皇帝陛下のご厚意のおかげで、私たちは結婚できましたよね。悪いことばかりではないですよ、たぶん」
「それは確かにそうですが…でも、今回のことは、絶対に裏があると思います」
ラウル様は何かを確信しているかのように言った。
ただ、今更いろいろ不安に思ってみても仕方のないことだった。
私は話題を変えるように言った。
「首都に戻るのは久しぶりなので、少し緊張します」
「私は5年ぶりですね」
私は久しぶりといっても5ヶ月ぶりだけど、ラウル様は5年ぶり…。
5年間の間、全ての行事への欠席も認められ、まるで隠遁生活を送るように過ごしてきたのに。
これからは首都で表舞台に引きずりだだれるのだと思うと、他に適任者がいないとはいえ、気の毒な気がした。
「今回は建国祭のために戻るだけですけど、本格的にあちらに移るのはいつ頃になりそうですか?」
「皇女は今年の話ではないと言っていましたが…実は陛下からも同じような提案を何度か頂いたことがあるので、年内にとなるかもしれません」
それは初耳だった。
おそらく、皇帝の代理の指揮官として、皇軍をまとめてほしいというような話だったのかもしれない。
今回の皇女様が提案してきたのは、代理指揮官ではなく正規の指揮官、しかも職位を新設する話なので、重さはずいぶんと違うのだろう。
「では、ここで過ごせるのも、あと少しなんですね…」
「そうなりますね…」
ここへ来たときには、辺りは一面の雪景色だった。
今はもう雪は山のほうに残っているだけで、木々も芽吹き始めている。
「首都に引っ越すときには、馬は持っていきましょう。首都の本邸はこの城ほど広くはないですが、馬場はあるので」
「はい。カイルも喜びますね。やっとシャルロットに乗れるようになったところだから」
「シャーレットさんも、コツさえ覚えれば、すぐに慣れますよ」
皇女様たちが首都に戻った後、マルティン卿の指導を受けながら乗馬の練習を始めたのだけど。
その日のうちに子馬に乗れるようになったカイルとは異なり、私はまだ、まともに乗ることもできない状態だった。
想像していたよりも馬の背が高く、不安定さもあって、姿勢を保つことができなかったのだ。
結局、馬にしがみついていただけで終わってしまった。
「何だか一生乗れる気がしないのですが…」
「大丈夫ですよ。今度一緒に乗りましょう。そうすれば、コツが分かると思います」
「いいんですか?」
「はい。それは他の者には任せたくないので」
ラウル様はそう言って、私の首筋に何度もキスをしてくる。
最近のラウル様は、独占欲をあらわにするときにこういうことをする。
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