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平蜘蛛と姫――歪んだ愛(1)
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「可那、今日も良い天気だね」
ぼんやりと空を眺めながら、傍らの義兄は微笑む。
「はい、とても良いお天気です。気持ちがいいですね。お義兄さま」
「うん、とても気持ちがいい」
穏やかな表情を浮かべる義栄を見て、可那もまた嬉しくなってくる。
義兄の穏やかな時間だけが、可那の日々の願いだった。
その義兄、足利義栄は可那の従兄弟にあたる。年のころは二十代の半ば程度といったところだろうか。
理由あって可那は幼い頃にこの四国の足利家へ養女に来たので、義栄は従兄弟ではなく、現在は義兄ということになっている。
義兄は何不自由ない暮らしを約束された将軍家ゆかりの家に生まれながら、心身の健康には恵まれなかった。特に心がとても繊細で、可那以外の人間とはまともに会話もできず、人前に出ることを極端に怯えてしまうのだ。
義栄が住むこの四国の屋敷の使用人たちに対しても、義栄は心を許していない。かろうじて身の回りの世話を出来る者が数名いる程度だ。それらの者たちにも、義栄は怯えを見せつつ、何とか耐えているといった状態だ。
この屋敷で傍にいても義栄が怯えることもなく、なおかつまともな会話が成立するのは可那ぐらいのものだろう。
(お義兄さまの傍には、私がついていないと)
可那は四国へ来た当初から、そう思っていた。義栄にとって、可那だけが特別な存在だということに、幼い彼女は気づいていた。
可那自身も、こうして義兄に必要とされていることに喜びを感じていた。さらには可那が傍にいることによって、何かしら役に立てているということに誇りも感じていた。
けれども、実は可那自身も、義栄には感謝している。
四国へ来た当初は、どうして自分だけが家族から引き離されたのか、その理由が分からず悲しい思いをした。
環境もまったく違い、知る人もいないこんな片田舎の屋敷に送り込まれ、最初のうちは泣いてばかりいた。
でも、義栄がずっと傍にいてくれた。泣いている可那をいつも慰めてくれ、時には一緒に泣いてくれた。
いつしか、傍に義兄がいることで、可那は安らぎを感じるようになっていた。
だから、義栄にとって可那は大切な存在なのだろうけど、可那にとってもか義栄はかけがえのない大切な存在だった。
(それに……ここも今は自分の故郷みたいだし……)
初夏の花が咲き乱れる花畑。どれもこれも、自然に咲いたものばかりだ。屋敷の周囲には可那が植えた花があるけれども、こうして誰の手の力も借りず、咲き乱れる可憐な花を眺める暮らしは悪くない。
京のような華やかさはないにしろ、こうして自然が豊かで穏やかな地での暮らしも気に入っていた。
城下まで行けば市が立つこともあるけど、可那が住むところには市などというものは立たない。たまに行商の商人がやってくる程度だ。
それでも生活に不自由はないし、何よりこの静かな環境を可那は気に入っていた。義栄だって、たぶんそうだろうと思う。
京は賑やかで市もしょっちゅう立つけど、戦も絶えなかった。
可那にとっての京は、醜い争いの思い出しかない。
(義輝お兄様は……どうしているのかしら……)
可那はふと、実兄である現在の室町幕府将軍、足利義輝のことを思い出していた。
彼が将軍位をついだ当初は亡命中であったり、畿内を制する三好軍との戦闘で敗れたりと、さんざんな様子だったけど、近頃では義輝に関して良い噂しか聞かない。
現在の義輝は三好家と和解し、京へ戻っている。
剣の腕も立ち、政治に関しても明るく、積極的に各地の大名家の仲立ちをつとめるなど、久しぶりに武門の棟梁らしい将軍だと、この四国でも評判になっているほどだ。
可那は遠いこの地で義輝の噂を聞くたびに、誇らしい気持ちになった。
義輝はたびたびこの四国の地をお忍びで訪れていた。その際に、可那だけでなく、義栄とも交流を持った。最初のうちは義栄も義輝を警戒していたが、すぐに打ち解け、会話も出来るようになった。
義栄が義輝に対して珍しくほとんど人見知りをしなかったのは、可那の信頼する兄だから、ということもあったのかもしれない。
ただ、ここ最近の義輝は政務も日々忙しいようで、四国を訪れる機会もほとんどなくなった。二年ほど前に会ったっきり、会うことも出来ていない状態だった。
けれども、折に触れて文を送り、可那や義栄のことを気にかけてくれている。京の珍しいものを送ってくれることもたびたびあった。
京を離れてもう何年にもなる妹を、義輝が遠くはなれた地にいても気にかけてくれていることは、可那にとって嬉しいことだった。そして、可那にとっては大切な義兄である義栄のことも、義輝はまるで本当の弟のように気にかけてくれている。
可那は義輝が以前のように気軽にこの四国の地を尋ねて来れなくなったのは、義輝にとっても足利将軍家にとっても、良いことなのだと思っている。
それだけ義輝が将軍としてこの国に必要とされているということだ。京を離れる暇もないほどに。
多少は寂しくもあるけれど、今度はいつか自分から京の兄を尋ねて行ってみよう……そう思っていた。
「お手紙でも書いてみようかな」
思わず口にした言葉に、傍らの義栄が首をかしげる。
「て、手紙? よ、義輝様に?」
義栄には可那が考えていることがすぐに伝わったみたいだ。可那はにっこりと微笑んで、頷いた。
「はい。義輝兄さまにお手紙を書こうかなって」
「そ、そういえば……さ、最近、よ、義輝様……来ないよね……」
義栄は少し寂しそうだ。可那以外に心を許せるただ一人の人間だからだろう。
「な、何て……て、手紙……か、書くの?」
「ええっと、最近はお忙しいみたいだから、お体を労わってくださいねとか……そんなふうに書こうかなと思っています」
「そ、そうか、じゃあ、ぼ、僕も書こうかな」
「ええ。そうしましょう。きっとお兄様も喜んでくれます」
「う、うん……な、何を書いていいのか、わ、分からないけど……頑張ってみるよ」
「この間いただいた南蛮のお菓子のお礼を書いてみたら?」
「そ、そうだね……あ、あれは美味しかったね……」
思い出したように微笑む義栄につられて、可那もまた微笑んだ。
義栄はもうすっかり兄の義輝に心を許している。
義輝に打ち解けてからの義栄は、義輝のことを本当の兄のように慕った。
もう何年も傍に仕えている使用人や女房たちでさえ、口を利くことも難しいのに。
(義輝兄さまは人の心の痛みも優しさも分かる人だから……きっとそれがお義兄さまに伝わったのね)
可那はそう思った。
義栄と一緒に義輝に手紙を書こう。
そしていつか、京がもっと落ち着いて安全になったら、義栄を連れて今度はこちらから義輝に会いに行くのもいい。
実際に義栄の状態は昔に比べると少しずつ良くはなってきているようで、最近ではこうして屋敷の外へも出ることが増えてきた。
きっと船に乗って京へ行く事だって、そのうちに出来るようになるかもしれない。
可那は義栄にもっと広い世界を見せてあげたいと思っていた。ただそれは急ぐのではなく、義栄の速度で、無理のないように。彼が自然に受け入れていける流れで、いつかそうなればいいなと思っている。
「可那姫さまっ、大変ですっ!」
のどかな風景には似つかわしくない声が、背後から聞こえた。義栄はその声に怯えるように、可那の着物の袖を強く掴んだ。
慌しく可那の前に膝をついたのは、長年この屋敷の護衛を務める十兵衛だった。
もともとは京の足利家に仕えていたのだが、可那が四国へ養女に来たときに、その護衛として同行し、そのまま四国の足利家に仕えることになった。
武芸に秀で、兄の義輝も信頼を置いていた人物だ。可那ももちろん、何かと頼りにしている。
しかし、義栄が傍にいる時は近づかない、大声を出さないというのがこの屋敷の決まりだ。それを知らない十兵衛でもないのに、今の慌てぶりは異常だった。
可那の胸がとくんと嫌な音を立てる。
一体、何があったのだろう……。
「何事ですか?」
可那はあえて落ち着いた様子で十兵衛に対峙する。可那までが取り乱してしまっては、義栄をさらに怯えさせてしまう。
可那の着物を掴む義栄の手は、細かく震えている。
そのことにようやく気づいたのか、何かを訴えるように十兵衛は可那を見つめた。義栄の前では話すことを憚られる内容なのだろう。
可那は義栄の手をそっと取った。
「お義兄さま、中に戻りましょうか。そろそろ風も冷たくなってきましたし」
「う、うん……」
可那はまず、義栄を促して屋敷へと戻った。
一体何があったのか……本当はすぐにでも話を聞きたい。けれども、十兵衛が義栄を見て話をためらったのは、彼には聞かせることの出来ない類の話だからだ。
だからまず、義栄を安全な場所へ避難させなくてはならない。
可那は焦る気持ちを堪えながら、義栄を自室へと連れて行き、落ち着かせた後、再び十兵衛を自分の部屋に呼んだ。
ぼんやりと空を眺めながら、傍らの義兄は微笑む。
「はい、とても良いお天気です。気持ちがいいですね。お義兄さま」
「うん、とても気持ちがいい」
穏やかな表情を浮かべる義栄を見て、可那もまた嬉しくなってくる。
義兄の穏やかな時間だけが、可那の日々の願いだった。
その義兄、足利義栄は可那の従兄弟にあたる。年のころは二十代の半ば程度といったところだろうか。
理由あって可那は幼い頃にこの四国の足利家へ養女に来たので、義栄は従兄弟ではなく、現在は義兄ということになっている。
義兄は何不自由ない暮らしを約束された将軍家ゆかりの家に生まれながら、心身の健康には恵まれなかった。特に心がとても繊細で、可那以外の人間とはまともに会話もできず、人前に出ることを極端に怯えてしまうのだ。
義栄が住むこの四国の屋敷の使用人たちに対しても、義栄は心を許していない。かろうじて身の回りの世話を出来る者が数名いる程度だ。それらの者たちにも、義栄は怯えを見せつつ、何とか耐えているといった状態だ。
この屋敷で傍にいても義栄が怯えることもなく、なおかつまともな会話が成立するのは可那ぐらいのものだろう。
(お義兄さまの傍には、私がついていないと)
可那は四国へ来た当初から、そう思っていた。義栄にとって、可那だけが特別な存在だということに、幼い彼女は気づいていた。
可那自身も、こうして義兄に必要とされていることに喜びを感じていた。さらには可那が傍にいることによって、何かしら役に立てているということに誇りも感じていた。
けれども、実は可那自身も、義栄には感謝している。
四国へ来た当初は、どうして自分だけが家族から引き離されたのか、その理由が分からず悲しい思いをした。
環境もまったく違い、知る人もいないこんな片田舎の屋敷に送り込まれ、最初のうちは泣いてばかりいた。
でも、義栄がずっと傍にいてくれた。泣いている可那をいつも慰めてくれ、時には一緒に泣いてくれた。
いつしか、傍に義兄がいることで、可那は安らぎを感じるようになっていた。
だから、義栄にとって可那は大切な存在なのだろうけど、可那にとってもか義栄はかけがえのない大切な存在だった。
(それに……ここも今は自分の故郷みたいだし……)
初夏の花が咲き乱れる花畑。どれもこれも、自然に咲いたものばかりだ。屋敷の周囲には可那が植えた花があるけれども、こうして誰の手の力も借りず、咲き乱れる可憐な花を眺める暮らしは悪くない。
京のような華やかさはないにしろ、こうして自然が豊かで穏やかな地での暮らしも気に入っていた。
城下まで行けば市が立つこともあるけど、可那が住むところには市などというものは立たない。たまに行商の商人がやってくる程度だ。
それでも生活に不自由はないし、何よりこの静かな環境を可那は気に入っていた。義栄だって、たぶんそうだろうと思う。
京は賑やかで市もしょっちゅう立つけど、戦も絶えなかった。
可那にとっての京は、醜い争いの思い出しかない。
(義輝お兄様は……どうしているのかしら……)
可那はふと、実兄である現在の室町幕府将軍、足利義輝のことを思い出していた。
彼が将軍位をついだ当初は亡命中であったり、畿内を制する三好軍との戦闘で敗れたりと、さんざんな様子だったけど、近頃では義輝に関して良い噂しか聞かない。
現在の義輝は三好家と和解し、京へ戻っている。
剣の腕も立ち、政治に関しても明るく、積極的に各地の大名家の仲立ちをつとめるなど、久しぶりに武門の棟梁らしい将軍だと、この四国でも評判になっているほどだ。
可那は遠いこの地で義輝の噂を聞くたびに、誇らしい気持ちになった。
義輝はたびたびこの四国の地をお忍びで訪れていた。その際に、可那だけでなく、義栄とも交流を持った。最初のうちは義栄も義輝を警戒していたが、すぐに打ち解け、会話も出来るようになった。
義栄が義輝に対して珍しくほとんど人見知りをしなかったのは、可那の信頼する兄だから、ということもあったのかもしれない。
ただ、ここ最近の義輝は政務も日々忙しいようで、四国を訪れる機会もほとんどなくなった。二年ほど前に会ったっきり、会うことも出来ていない状態だった。
けれども、折に触れて文を送り、可那や義栄のことを気にかけてくれている。京の珍しいものを送ってくれることもたびたびあった。
京を離れてもう何年にもなる妹を、義輝が遠くはなれた地にいても気にかけてくれていることは、可那にとって嬉しいことだった。そして、可那にとっては大切な義兄である義栄のことも、義輝はまるで本当の弟のように気にかけてくれている。
可那は義輝が以前のように気軽にこの四国の地を尋ねて来れなくなったのは、義輝にとっても足利将軍家にとっても、良いことなのだと思っている。
それだけ義輝が将軍としてこの国に必要とされているということだ。京を離れる暇もないほどに。
多少は寂しくもあるけれど、今度はいつか自分から京の兄を尋ねて行ってみよう……そう思っていた。
「お手紙でも書いてみようかな」
思わず口にした言葉に、傍らの義栄が首をかしげる。
「て、手紙? よ、義輝様に?」
義栄には可那が考えていることがすぐに伝わったみたいだ。可那はにっこりと微笑んで、頷いた。
「はい。義輝兄さまにお手紙を書こうかなって」
「そ、そういえば……さ、最近、よ、義輝様……来ないよね……」
義栄は少し寂しそうだ。可那以外に心を許せるただ一人の人間だからだろう。
「な、何て……て、手紙……か、書くの?」
「ええっと、最近はお忙しいみたいだから、お体を労わってくださいねとか……そんなふうに書こうかなと思っています」
「そ、そうか、じゃあ、ぼ、僕も書こうかな」
「ええ。そうしましょう。きっとお兄様も喜んでくれます」
「う、うん……な、何を書いていいのか、わ、分からないけど……頑張ってみるよ」
「この間いただいた南蛮のお菓子のお礼を書いてみたら?」
「そ、そうだね……あ、あれは美味しかったね……」
思い出したように微笑む義栄につられて、可那もまた微笑んだ。
義栄はもうすっかり兄の義輝に心を許している。
義輝に打ち解けてからの義栄は、義輝のことを本当の兄のように慕った。
もう何年も傍に仕えている使用人や女房たちでさえ、口を利くことも難しいのに。
(義輝兄さまは人の心の痛みも優しさも分かる人だから……きっとそれがお義兄さまに伝わったのね)
可那はそう思った。
義栄と一緒に義輝に手紙を書こう。
そしていつか、京がもっと落ち着いて安全になったら、義栄を連れて今度はこちらから義輝に会いに行くのもいい。
実際に義栄の状態は昔に比べると少しずつ良くはなってきているようで、最近ではこうして屋敷の外へも出ることが増えてきた。
きっと船に乗って京へ行く事だって、そのうちに出来るようになるかもしれない。
可那は義栄にもっと広い世界を見せてあげたいと思っていた。ただそれは急ぐのではなく、義栄の速度で、無理のないように。彼が自然に受け入れていける流れで、いつかそうなればいいなと思っている。
「可那姫さまっ、大変ですっ!」
のどかな風景には似つかわしくない声が、背後から聞こえた。義栄はその声に怯えるように、可那の着物の袖を強く掴んだ。
慌しく可那の前に膝をついたのは、長年この屋敷の護衛を務める十兵衛だった。
もともとは京の足利家に仕えていたのだが、可那が四国へ養女に来たときに、その護衛として同行し、そのまま四国の足利家に仕えることになった。
武芸に秀で、兄の義輝も信頼を置いていた人物だ。可那ももちろん、何かと頼りにしている。
しかし、義栄が傍にいる時は近づかない、大声を出さないというのがこの屋敷の決まりだ。それを知らない十兵衛でもないのに、今の慌てぶりは異常だった。
可那の胸がとくんと嫌な音を立てる。
一体、何があったのだろう……。
「何事ですか?」
可那はあえて落ち着いた様子で十兵衛に対峙する。可那までが取り乱してしまっては、義栄をさらに怯えさせてしまう。
可那の着物を掴む義栄の手は、細かく震えている。
そのことにようやく気づいたのか、何かを訴えるように十兵衛は可那を見つめた。義栄の前では話すことを憚られる内容なのだろう。
可那は義栄の手をそっと取った。
「お義兄さま、中に戻りましょうか。そろそろ風も冷たくなってきましたし」
「う、うん……」
可那はまず、義栄を促して屋敷へと戻った。
一体何があったのか……本当はすぐにでも話を聞きたい。けれども、十兵衛が義栄を見て話をためらったのは、彼には聞かせることの出来ない類の話だからだ。
だからまず、義栄を安全な場所へ避難させなくてはならない。
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