年下将軍に側室として求められて

梵天丸

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side story1 ~出陣前夜~

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 これは本編第10話で義藤が出陣する前夜の物語――。

 義藤よしふじ芭乃はのの膝に頭を乗せて横になり、何か考え事をしているようだった。
 芭乃はそれを邪魔しないように、ただじっと、義藤の頭を自分の膝で支え続けた。
 今宵は特に、義藤の頭の中はめまぐるしいのだろうと芭乃は考えている。
 明日から義藤は戦に出る。
 このところの戦続きで、見送ることには慣れてきたつもりだったが、家臣たちの話によると、次の戦はかなり厳しいものになりそうだということだった。
「しばらく芭乃の膝枕ともお別れだな」
「戻って来られたら、いつでもしてさしあげますよ」
「ああ……戻って来られたら、な……」
 『戻って来られたら』の意味が、芭乃の使ったものと義藤の使ったものとでは異なっている。
「義藤様、必ず戻っていらしてください」
 芭乃が顔を引き締めて言うと、義藤は苦笑する。
「そうだな。戻ってくるよ。ごめん、少し弱気になっていた」
 弱気になるのが普通だし、当然だと思う。
 義藤は芭乃よりも年下なのに、将軍という重責を背負わされている。
 だから、軽々しく弱音を吐くことすら許されない。
 せめて芭乃の前ぐらいでは、そんな弱音も遠慮なく吐いてくれたら良いのにと思う。
「芭乃の膝はどんな枕よりも心地よいな」
「それは褒めていただいているのでしょうか?」
「もちろん、褒めているんだ」
「それなら……いいですけど……」
 肉付きが良くなった……などと言われたらどうしようと芭乃は一瞬焦ったが、義藤はそんなことは言わない。
 義藤の頭の重みが、芭乃にも心地よかった。
 そんなふうに自分が感じていることに、芭乃は少し驚いた。
(まだ義藤様が赤ん坊の頃からお世話をさせていただいたんだもの。傍にいて嬉しいというのは、当然の感情よね……)
 芭乃は自分の中に感じた違和感を、そんなふうに考えて納得させた。
 特に今夜は出陣前夜だから、余計に義藤と触れあうことに安堵を感じるのかもしれない。
 きっと今頃、明日出陣する他の兵たちも、芭乃と義藤のように、大切な誰かと寄り添いながら過ごしていることだろう。
 その寄り添いが、最後になるかもしれないと覚悟もしながら――。
 義藤は腕を伸ばして、芭乃の手を握りしめる。
 義藤の手は随分と大きくなったし、身体も鍛えられてはいるが、やはり他の将兵たちに比べると、華奢だという印象はぬぐえない。
(こんなに華奢な身体で、大きなものを背負って、義藤様は戦に挑まれる……)
 厳しい戦ともなれば、多くの将兵たちの命も失う。もちろん、義藤だって、敵将に捕らえられればほぼ間違いなく殺されるだろう。
 正当な将軍である義藤は、敵にとっては邪魔で仕方がないのだから。
 武家の娘として、そして、武士の妻として、大切な人の死に対する覚悟はいつも持っていなければならないが、やはり死んで欲しくないと思ってしまう。
 そんなことは気軽に口に出すことはできないが……。
「芭乃……俺はお前に……」
「え……?」
 義藤は言いかけた何かを飲み込んでしまったようだった。
「いや、何でもない」
「な、何ですか? 言いかけてやめられたら、気になって眠れません」
 芭乃が苦情を言うと、義藤は視線を向けてくる。
「芭乃、まさか今宵は眠れるとでも思っていたのか?」
 にやりと笑う義藤を見て、何となく墓穴を掘った気持ちに芭乃はなってしまう。
「えっと……少しぐらいは眠れるかな、と……」
「ふーん……なるほど」
 義藤は起き上がると、そのまま芭乃の身体を布団に押さえつけるようにした。
「俺は芭乃を眠らせるつもりなんてないぞ」
 義藤の顔が芭乃を見下ろしながら、ゆっくりと近づいてくる。
「んっ、ぁ……よしふじ……さ……んんっ」
 唇を丁寧に舐められ、舌を差し入れられると、芭乃も自ら舌を出してそれを受け止める。
 明日のためにも早く眠って欲しいのに、困った人だなと思いつつも、芭乃の身体はすでに喜びをあらわにしていた。
 義藤が生きているからこそ感じることのできる温もり……。
 明日出立してしまえば、もう一度、こうして接吻することができるかどうか分からない。義藤の生還を信じたいが、戦というものは時に残酷な結果をもたらすこともあるものだ。
 義藤の身体も、いつも以上に熱くなっているのを感じる。
 義藤自身は弱音を吐くことはないが、内心ではさまざまな思いが交錯しているに違いない。
「芭乃……っ……」
 義藤は芭乃の身体をまさぐりながらも、気を遣ってくれているようだった。
 先日、『俺を思って気を遣れ』と命じられて以降、義藤は芭乃を抱くとき、とても優しい。
 身体を這う手の動きや、接吻にも、義藤の優しさが溢れていた。
 優しくされればされるほどに、芭乃の身体は昂ぶってしまう。恥ずかしい声を上げ、身体を熱くし、あの場所をたっぷりと濡らしてしまうのだ。
「あっ、ぁっ、義藤様……っ……んっ、ぁっ、はぁ……っ……」
 まだ前戯だというのに、芭乃の息はすっかり乱れてしまっている。
 もうそろそろ挿入しても良い頃合いなのに、義藤は念入りに芭乃の身体の愛撫を続けていた。
「ん、ふ……ぁんっ、義藤様ぁ……んっ、ぁっ、ぁんっ……」
 腰が自然と動いてしまう。
 義藤のものが、自分の身体を深々と貫くあの感覚を求めてしまうのだ。
「ん、ぁっ、義藤……んぁっ、ん、ぁんっ……!」
 言葉にならない声が、芭乃の唇から漏れ続ける。
 早く貫いて欲しい……本当はそう告げたいのに、そればかりは恥ずかしくて言葉にすることができない。
「そろそろ頃合いだな」
 義藤はようやく愛撫の手を止めると、下帯を解いて自らの昂ぶりを芭乃の熱く濡れたその場所に押し当てる。
 そして、すぐにそれが芭乃の身体を貫いてきた。
「ああぁぁっ!」
 芭乃の唇から思わず悲鳴が漏れる。
 馴染んだ感覚とはいえ、やはり最初に貫かれるときの衝撃や快楽を伴う感覚には、不意打ちを食らったような反応をしてしまう。
「あっ、んんっ……あ、ぁ……義藤様……っ……!」
 義藤が本格的に腰を揺らし始めると、芭乃はもう何も考えられなくなっていく。
 義藤は芭乃の身体の細部までを把握している。
 だから、どう動いてどこを突き上げれば芭乃が喜ぶのか、義藤はよく知っているのだ。
「あっ、や、ぁっ、あぁっ……あ、ひ、ぅ……はぁっ……!」
 義藤に顔を見られ、声を聞かれていると思うと、恥ずかしい気持ちはある。
 けれども、『素直になっていい』と義藤が言ってくれたことで、芭乃の気持ちは楽になり、今は何の罪悪感もなしに義藤の与えてくれる快楽に身を委ねることができていた。
「んふ、ぁっ、義藤様ぁ……んっ、ぁっ、ひ、ぁっ、ぁあっ……」
「芭乃……好きだ……好きだ……!」
 義藤は荒く呼吸を乱しながら、芭乃の耳元で囁く。
 その囁きに、さらに身体を熱くし、芭乃は快楽の階段を駆け上がっていく。
「あ、んっふ……ぁぅ、んっ、あ、ぁっ、はぁっ!」
 義藤が芭乃の身体を突き上げるたび、満たされていく感覚が広がっていく。
 つい先日までは、こんな感覚を感じることはなかった。
 快楽を感じる自分に戸惑うことはあっても、満たされていると感じることはなかったのだ。
「あ、ぁ、はぁ……義藤……さ……あっ、は、ぁっ、ぁぁっ!」
 すっかり息があがってしまい、言葉をつむぐ余裕さえない。
 義藤の動きはさらに加速し、せわしなくなっていく。
 限界が近づいているのかもしれなかった。
「あっ、ぁぁっ……義藤様……っ……わ、私……もう……っ……!」
「ああ、果てても良いぞ。俺ももう……!」
「義藤様っ、ぁぁっ!! あぁっ!」
 ひときわ大きな悲鳴をあげて果てた芭乃の後を追うように、義藤の放った熱い迸りが、芭乃の身体の奥深くまで流れ込んできた。

「芭乃、大丈夫か?」
 放心したように息を喘がせる芭乃を、義藤が心配そうに見つめている。
「はい……大丈夫です……」
 明日は出陣なのだから、芭乃としては義藤に早く眠ってもらいたい気持ちがあった。
 しかし、義藤は芭乃を解放せず、何度も何度も求めてきたのだ。
 その結果、今の芭乃の状態がある……。
 義藤に責められ続けた芭乃は、情けなくも何度も達してしまった。
 義藤も何度か精を放ったが、おおそらく芭乃が果てた回数のほうが倍ほど多いだろう。
「しばらく会えないと思ったから……少し無理をさせてしまったな」
「いえ……気にしないでください、義藤様。私は……大丈夫ですから……」
 そう言って芭乃が微笑むと、義藤は汗に濡れた髪を優しく撫でてくれる。
「もうすぐ夜明けだな」
「はい……でも、芭乃はすぐにまた……義藤様にお会いできると……信じています……」
「ああ、そうだな。すぐに戻ってくるよ」
 義藤のその言葉を聞いて芭乃は微笑んだが、すぐに限界が来たように静かな寝息を立て始めた。
 義藤は芭乃を起こさないようにそっと接吻し、隣に身を横たえると、まるで宝物でも見るようにその寝顔を見つめた。
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