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テリーサの恋②
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「どうぞ、お掛けください。」
寄り添って座るケヴィン様とトンプソン公爵令嬢の前に座らされる。
「貴女、この人には婚約者がいる事を知っていたのよね?」
トンプソン公爵令嬢は私の目を見てそう言った。
「・・・はい。知っておりました。」
「知っていて、何度も2人きりで会っていたのよね?婚約者でもない2人が密会してもいいのかしら?これは不貞だとご存知?」
私は心からケヴィン様を愛していた。ただ純粋に想っているだけ。いずれ、お互い結婚する時が来たら婚約者と結婚するつもりだ。婚約者から奪おうとは思っていなかった。不貞ではない。トンプソン公爵令嬢に弁解しなければと思った。
「私はただ彼を想っていただけです。結婚するつもりとか、トンプソン公爵令嬢から奪うつもりもありませんでした。」
「だから、何?」
「・・・だから、何って・・・、だって」
「私達は貴族なのよ。想っているだけだから、結婚するつもりはなかったからで不貞ではない訳がないじゃない?2人きりで何度ともなく会っている、もうそれは不貞なのよ。2人が不貞を認めて、例え平民になっても結婚したいと言うのなら反対はしないわ。」
「そんなつもりでは「すまなかった!」
私の言葉を遮る様に、ケヴィン様が謝罪した。
「結婚前につい遊んでしまった。フレデリカ、君に不快な思いをさせて申し訳なかった。心から謝罪したい。」
彼の言葉は・・・。いつも私に甘く囁く彼の声は、私を遊びだと切り捨てるものだった。そこに恋愛感情はなく、遊びだと。「ただ想いあっている」ではなく、本当に私が「ただ想っている」だけだったのか。
心に石が詰め込まれた様に重くなる。
「では、貴方はこの女性を愛してはいないの?彼女は貴方を、愛してるらしいわよ。」
「私は愛してはいない。」
ケヴィン様の声は決して大きくはなかったのに、私の耳にはこれ以上ないほど大きな声に聞こえた。もう何も聞こえないほどに。
公爵令嬢は「そう」と軽く頷いた後、私に問いかけた。
「こう言われているけれど、貴女はどうなのかしら?今後、また2人で会ったりするのならば、慰謝料を請求しようかしら。貴女も伯爵令嬢ならば、家門の事も考えるでしょう?家門に慰謝料を請求されて、さらにこんな風に言われてもまだこの男が好きなの?」
私の事を愛してはいないという言葉に衝撃を受けている私に、さらに慰謝料という言葉がのしかかる。
もともと、ケヴィン様の結婚までの間だけ。ケヴィン様がトンプソン公爵令嬢と結婚するなんて、初めからわかっていた事。なのに、何故か胸が痛い。
我が家は伯爵家。公爵家に慰謝料請求などされてしまえば、金銭面でも苦しいがそれ以上にもう我が家と付き合いたい家門もなくなってしまう。
私はレスター様といずれは結婚するつもりだった。結婚して、ハリス伯爵家を継ぐ。
慰謝料を請求されることも、トンプソン公爵家が敵対する事も嫌だった。
それに・・・ケヴィン様も、もう私と2人で会う事もなさならないだろう。もう楽しい時間は終わってしまったのだ。
「・・・大変申し訳ありませんでした。2度とお二人には近づかないのでお許しください。」
私がそう告げると、トンプソン公爵令嬢は鷹揚に微笑んだ。
「もう行って。」
そう言われて、部屋を出た。この部屋に来た時の浮ついた気持ちが嘘の様だった。
涙が溢れてきた。
邸に戻ってもお父様には何も言われなかった。トンプソン公爵令嬢は、お父様に言う事はしなかった様だと胸を撫で下ろした。
寄り添って座るケヴィン様とトンプソン公爵令嬢の前に座らされる。
「貴女、この人には婚約者がいる事を知っていたのよね?」
トンプソン公爵令嬢は私の目を見てそう言った。
「・・・はい。知っておりました。」
「知っていて、何度も2人きりで会っていたのよね?婚約者でもない2人が密会してもいいのかしら?これは不貞だとご存知?」
私は心からケヴィン様を愛していた。ただ純粋に想っているだけ。いずれ、お互い結婚する時が来たら婚約者と結婚するつもりだ。婚約者から奪おうとは思っていなかった。不貞ではない。トンプソン公爵令嬢に弁解しなければと思った。
「私はただ彼を想っていただけです。結婚するつもりとか、トンプソン公爵令嬢から奪うつもりもありませんでした。」
「だから、何?」
「・・・だから、何って・・・、だって」
「私達は貴族なのよ。想っているだけだから、結婚するつもりはなかったからで不貞ではない訳がないじゃない?2人きりで何度ともなく会っている、もうそれは不貞なのよ。2人が不貞を認めて、例え平民になっても結婚したいと言うのなら反対はしないわ。」
「そんなつもりでは「すまなかった!」
私の言葉を遮る様に、ケヴィン様が謝罪した。
「結婚前につい遊んでしまった。フレデリカ、君に不快な思いをさせて申し訳なかった。心から謝罪したい。」
彼の言葉は・・・。いつも私に甘く囁く彼の声は、私を遊びだと切り捨てるものだった。そこに恋愛感情はなく、遊びだと。「ただ想いあっている」ではなく、本当に私が「ただ想っている」だけだったのか。
心に石が詰め込まれた様に重くなる。
「では、貴方はこの女性を愛してはいないの?彼女は貴方を、愛してるらしいわよ。」
「私は愛してはいない。」
ケヴィン様の声は決して大きくはなかったのに、私の耳にはこれ以上ないほど大きな声に聞こえた。もう何も聞こえないほどに。
公爵令嬢は「そう」と軽く頷いた後、私に問いかけた。
「こう言われているけれど、貴女はどうなのかしら?今後、また2人で会ったりするのならば、慰謝料を請求しようかしら。貴女も伯爵令嬢ならば、家門の事も考えるでしょう?家門に慰謝料を請求されて、さらにこんな風に言われてもまだこの男が好きなの?」
私の事を愛してはいないという言葉に衝撃を受けている私に、さらに慰謝料という言葉がのしかかる。
もともと、ケヴィン様の結婚までの間だけ。ケヴィン様がトンプソン公爵令嬢と結婚するなんて、初めからわかっていた事。なのに、何故か胸が痛い。
我が家は伯爵家。公爵家に慰謝料請求などされてしまえば、金銭面でも苦しいがそれ以上にもう我が家と付き合いたい家門もなくなってしまう。
私はレスター様といずれは結婚するつもりだった。結婚して、ハリス伯爵家を継ぐ。
慰謝料を請求されることも、トンプソン公爵家が敵対する事も嫌だった。
それに・・・ケヴィン様も、もう私と2人で会う事もなさならないだろう。もう楽しい時間は終わってしまったのだ。
「・・・大変申し訳ありませんでした。2度とお二人には近づかないのでお許しください。」
私がそう告げると、トンプソン公爵令嬢は鷹揚に微笑んだ。
「もう行って。」
そう言われて、部屋を出た。この部屋に来た時の浮ついた気持ちが嘘の様だった。
涙が溢れてきた。
邸に戻ってもお父様には何も言われなかった。トンプソン公爵令嬢は、お父様に言う事はしなかった様だと胸を撫で下ろした。
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