【R18】堕ちた神父と血の接吻【完結済】

譚月遊生季

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第一章 彷徨の秋

第2話「お赦しください」※

 ギシギシとベッドが揺れ、組み敷いた裸体が跳ねる。
 銀色の長い髪がシーツに散っていて、指ですくうとサラサラと流れた。オレの髪は傷んでガサガサだけど、何の違いでここまで変わるんだろうな……?

「神父様、気持ちいい?」
「く……っ、う、だま、れ……ッ」

 神父様は抱かれている時も、ほとんど甘い言葉を言わない。
 とろけた顔を見せたくないからか、ランプや蝋燭をつけるのすら嫌がる。ちなみに神父様の快楽に耐える顔は格別にヤバい。とにかくエロい。……だから、オレは月の夜が大好きだ。

「ぁ……あっ、やめ、そこは……あぁあっ」

 深々と貫いたブツをちょこっとだけ手前の方に引き抜いて、弱い部分に擦り付ける。こうすると、声を抑えきれずに喘いでくれるのがなんとも癖になる。

「へへ。神父様って、ここグリグリされるの好きだよなぁ……」
「き、さま……っ、あ……っ! ぅ……調子に……ンッ、乗る、なぁあ……ッ」

 組み敷いた身体はそれなりに鍛えられていて、ちゃんと戦えば下手すりゃオレより強いだろうに、神父様は返り血がつくのを嫌う。……血、飲むのは好きなくせに。
 毎回これは救世主の血……つまりワインだって言い張るけど、どう考えてもアンタを殺しに来たヤツらの血なんだよなぁ。

 つか、そもそもこうやって男に抱かれるの自体、聖職者としてはアウトだよな。
 そこら辺は、神罰下ってなかったらまだ赦されてるって考えてるらしい。苦しい言い訳だと思うけど、指摘したら口をきいてもらえなくなる。……ったく、可愛い人だ。

「ひっ、……ぁ、あ……し、ごくな……っ、はな、せぇ……っ」
「……ッ、こんな綺麗な顔なのに、ブツはついてんの……やっぱ、堪んねぇっすわ……」
「あぁあ! く、う、ぅううっ……」

 竿を上下にしごいたら歯を食いしばって苦しそうだから、力が抜けるよう耳元で囁く。
 オレもそろそろ余裕がなくて、意図せず息を吹きかけちまう。そうすると更にビクビク跳ねるから、可愛くて仕方がない。
 腹を撫でると、指先にでこぼことした感覚が触れ、大きな傷痕があると分かる。胸に手を滑らせると、そこにも似たような痕があった。
 ……ここに深々とナイフを突き刺され、神父様は、一度死んだ。

 ──とどめを……

 息も絶え絶えに言われた言葉が、脳裏に蘇る。
 生きるために人を殺してきたオレが、あの時だけは、どうしても命を奪えなかった。
 ……あの躊躇ためらいを……「生かす」ことを選択したオレを、神父様は恨んでいるだろうか。

「はぁ、ァ、たまんね……。ケツだけでイきたいなら……それも……アリ、ですよ……っ」

 先走りを垂れ流す竿を握り込むと、神父様は切なそうに喉を鳴らす。

「……ッ、はや……く……っ」
「はやく……なんです? 腰、もっと速くします?」
「ちが……っ、あぁあっ、あっ、~~~~ッ」

 激しめに揺さぶると、神父様は身体を震わせて呆気なくイッてしまった。
 はぁ、はぁと肩で息をしながら、しわくちゃになったシーツを握り締めて放心している。
 いつもの気位高そうな姿も良いが、この姿もなかなか……いや、いつも澄ましているからこそ、この乱れようが余計にクる。

「……ッ、あー……ナカに出されるの、嫌でしたっけ……」

 確認すると、弱々しく「ん」と言うので、ずるりと引き抜いて顔の方へと持っていく。抜いた時、「あ……」と僅かに名残惜しそうな声が漏れて、思わず暴発しそうになった。
 パンパンに張り詰めたオレ自身をぼーっと眺め、神父様はボソリと「神よ、お赦しください」と呟いた。まぐわう時は、似たようなことを必ず言っている気がする。
 そのまま神父様はあろうことか先端をくわえ、あふれてきた白濁を飲み下し始める。
 ……一応、「体液」なら血じゃなくてもアリらしい。絶対不味いと思うんだけど、神父様の場合はそうでもないのかもしれない。

 本人はまだ認めたがらないが、彼は他人の体液をすすらなければ生きていけない身体だ。
 夜闇の中、赤く染まった眼が光る。じゅる、じゅるといやらしい音を立てて、あの神父様がオレの息子にむしゃぶりついている。……その事実だけで、また元気になっちまいそうだった。



 オレは図体のデカさ自体は大したことないが、とにかく力が強い。
 娼婦と一発よろしくするつもりで、うっかり死なせちまったこともある。……いや、盗賊稼業でも、元から殺す気だったことなんかなかったか。
 オレが殺意を持って殺すのは、神父様に危害を加える相手だけだし。

 神父様は「あの日」を境にヒトじゃなくなった。今は頑丈さも回復力も桁違いだから、ちっとばかし理性を吹っ飛ばしても安心して抱ける。……いや別に、せっかくなら気持ちよくなって欲しいし、酷いことをするつもりなんかこれっぽっちもねぇんだけど。

「ヴィル」
「ん?」

 ぼうっと考え事をしていると、普段は「貴様」としか呼ばない神父様が、オレの名前を呼ぶ。なんか、久しぶりに呼ばれた気がするな。

「…………後悔はないか」

 神父様は抱かれたあと、時々しおらしくなる。
 可愛らしいのでギュッと抱き締めると、振り払われた。冷たい。

「まあ……オレ、元から人殺しなんで、今更っつぅか……」
「悔い改めろ」
「でも、今は神父様のためにしか殺さねぇです」
「……」
「まだ神罰下ってないなら、オレもセーフですよ、きっと」
「貴様の場合は、とうに地獄行きが決まっているだけに思うがな」
「え、ええー……そんなぁ……」

 涙目になるオレにふいっと背を向け、神父様は静かに寝息を立て始めた。それにつられて、オレのまぶたも自然と重くなる。幼子のような寝息が、取り留めのない思考を呼んでくる。

 神父様はたぶん、オレと大して変わらない年齢だと思う。少なくとも外見はそうだ。だけど、時々すごく歳上にも見えるし、歳下にも見える。……ああ、でも、初めて会った頃はお兄さんって印象があったのを覚えてる。
 まあ、オレは自分の本当の歳を知らねぇし、神父様の歳も知らねぇんだけどな。オレはヒゲの伸びようによっちゃ老けて見えることもあるらしいけど、神父様は何年も変わらず美しいし……

 体温の低い身体を抱き締める。傷のある胸が上下していることに安堵しつつ、オレも眠りの世界へと落ちていく。
 起きるのはゆっくりでいい。神父様はもう、朝に起きられないのだから。
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