【R18】堕ちた神父と血の接吻【完結済】

譚月遊生季

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Die Geschichte des Vampirs1 ― Wandernder Herbst ―

第7話 Dummes Spiel ※

 ノックの音で目を覚ました。いつの間にやら、廊下で倒れていたらしい。
 キッチンの方からは、焼いた卵の匂いが漂ってくる。
 調理後の記憶がないが、燭台しょくだいには蝋燭の火が揺らめいていた。無意識に、夜の準備をしていたのだろう。
 エントランスは窓をすべて塞いであるため、外の様子は分からない。

 ノックの相手はおそらくヴィルだろうが、それ以外の可能性がないとは言えない。
 扉を開ける前に顔に触れ、吐いた血がついていないか確認する。
 ゆっくりと扉を開くと、隙間から暗くなった空が目に入る。更に開くと、息を切らせたヴィルと目が合った。

「いい感じのが見つかったっす。明日、一緒に見に行きましょ」

 明るい笑顔で伝えてくるヴィルに「そうか」と返し、中に手招く。
 ヴィルは宣言通り、今日中に次の拠点を探し出してきた。……ならば、私も約束を守らねばなるまい。

 部屋の隅に移動し、「ここで」と伝える。

「……ッ」

 あえて蝋燭の光が届かない位置に移動したが……どうにも、悩ましい。
 私は、果たして口付けだけで済ませられるだろうか。ヴィルの舌を傷つけ、そのまま血を……

 想像するだけで、恍惚こうこつとした予感が背筋を駆け抜けた。
 あのたくましく、健康な肉体によって生み出された血液を、唾液と共にむさぼるなどと……嗚呼……そんなことは……考えただけで、

 ヴィルは、静かに待ってくれている。
 そろそろと肩に手を伸ばし、襲い来る食欲をどうにか自制する。
 軽く唇を押し当て、離す。……暗がりの中で、ヴィルの口角が緩く持ち上がったのが見えた。

「……それだけで、良いんです?」

 挑発するような言葉が、私の理性を揺るがす。
 肩に伸ばした手がこわばる。……これだけで、「足りる」はずがない。
 再び、今度は先程よりも深く、口付ける。
 ……まずい。これ以上は……

「怪我を、するぞ」

 ヴィルは不思議そうに瞬きをしていたが、やがて、嬉しそうに私を抱き締めた。今度は、彼の方から口付けられる。

「ん……っ」
「……っ、は……。別に良いのに……」

 何度も何度も口付けられ、意識がとろけていく。
 いつの間にやら、口の中に血の味が滲む。

 嗚呼……これだ。これが、欲しかった。……いいや、欲しくなかった。怪我をさせたかったわけではない。
 だが……美味い。胸の、腹の傷がうずく。もっと、もっと欲しいと、私の身体が養分を欲しがる。

「……どうです?」

 少しだけ低い位置から、茶色の瞳が私を見上げる。
 鋭くあやしい光が、おすの本能を宿し、煌めく。

「……ッ、ぁ……」

 足取りがふらつき、思考が心地よい熱に侵される。
 ヴィルの手が私の腰に触れ、そのまま下の方へと伸びるのが分かった。
 ロザリオを握り締める。
 静寂の中、はぁ、はぁ、と、互いの荒い吐息が響く。

「……神父様……っ、オレ……」

 熱に浮かされた囁きが、私を求める。

「お赦し、ください」

 私はロザリオを握り締めたまま、自らの上着に手をかけた。



***



 上着を脱ぎ、丁寧に畳む。手が震え、少々時間がかかったが、ヴィルは待っていてくれた。
 ロザリオを首から提げ、ヴィルの方を向く。

「あれ? 外さないんです?」
「……ここでするなら、『かかる』こともなかろう」

 首にかかる重量が、指先に食い込む感触が、私の罪を糾弾する。
 主よ、お赦しください。
 快楽を欲する私を。
 激しい苦難と、焼き付いた痛みに耐えられなかった私を……

「なら、今回は飲まなくていいってことです?」
「……血は足りている」
「ナカに出すのは?」
「好きにしろ」
「へーい。じゃ、さっそくヤりましょ」

 ちらりとヴィルの「そこ」に目をやる。
 もう既に、大きく膨れ上がっている。……私は今から、これに貫かれるのだ。

「じゃ、壁に手ぇついてください」

 言われるがまま手をつくと、背後から覆い被さられる。

「ぃ、あ……っ」

 毎日のようにいじられたせいか、胸を少しまさぐられただけで声が漏れてしまった。
 ヴィルは手慣れた様子で、突起を摘まんでは弾く。腹の奥が、「その先」を求めて熱く疼くのを感じた。

「……ちょっと痩せました?」

 ヴィルは肌着の中に手を入れ、腰を執拗なほどに撫でさする。

「余計な……こと、は……っ、い……ぁ、く……ぅうっ」

 腹筋に指を這わされ、嬌声が喉の奥から漏れ出してしまう。
 歯を食いしばって声を堪えていると、下の方に触れられた。

「あ、勃ってる」
「……わ、わざわざ言うな……っ、あっ!?」

 男根を握り込まれ、文句は喘ぎにかき消された。小さく腰が跳ねる。

「へへ……気持ち良さそ……」
「ぐ……! やめ、握……っ、んん……ッ!?」

 そのまま上下にしごかれ、脚ががくがくと震える。ヴィルは、崩れ落ちそうな私を片腕で支えると、自身のそれを私の腿に擦り付けた。

「……ッ」

 嗚呼、ついに。
 ついに、抱かれてしまう。

「……欲しいです?」

 鼓膜を、吐息混じりの声がくすぐる。ヴィルは昂りを腿にゆっくりと擦り付けながらも、私自身を責める指を止めない。

「う、ぁあっ、……きさま……っ」
「欲しいなら、そう言ってみてくださいよ。……ねぇ?」

 胸や腹を、丁寧に愛撫される。肌着の上から傷痕を撫でられ、感情が昂っていく。

「……ッ、どうなんっすか。オレ、おねだり聞きたいです」

 やめろ。言わせるな。
 ……そう断るつもりが、私の理性は既に快楽に屈していた。

「……く……ぅ……、ほ、欲しい……」

 自分の意思に反し、喉から嘆願が溢れ出す。
 快楽に堕とされた身体が、獣のめすのように、おすを求める。

「は……ッ、めっちゃイイ……。ありがとうございます、サイコーに興奮してきました……ッ」
「あぁっ!?」

 互いの吐息は熱く乱れ、ヴィルの責めが激しくなっていく。 

「挿れますね。……孕んでください、神父様」
「わ、私は男だ……ッ、ぁ、待っ……くっ、ふ……ぅう……!」

 孕むわけがない。そう告げる余裕はすぐに失われた。

「大丈夫です……っ、神父様、なら、絶対……ぜったい、孕めます……! そんな顔してるし!」
「あ、ぅ……ん、く……っ! ……ど、どんな顔……だ……っ!」

 突き上げられ、ナカを抉られ、言葉は喘ぎに飲み込まれる。
 どこが良いのか、何が良いのか、それすらも考えられなくなっていく。

「……やっぱ、まだ子供は早いですかね……っ?」
「はぁっ!? ぁ、んぁっ、は……早いも、何も……ぉッ、で、できな……ぁあっ!!」

 私を貫く間でさえも、ヴィルの手は止まらない。
 胸を探り、突起を摘んでは弄ぶ。

「あぁあッ、ぃ、イく……っ」
「……! え……っ、イキ顔見たいです」
「なっ、ぁ、あっ、体位……今、変え……ッ!?」

 片脚を持ち上げられ、秘処からずるりと熱い塊が引き抜かれる。身体を反転させられた……かと思えば、再び一気に挿入された。

「やめ……っ、見る、な……! ……ぁ、~~~~ッ!!」

 瞬く間に絶頂に導かれ、視界が真っ白に染まる。
 ヴィルは崩れそうな私の身体を抱き留め、支えてくれた。

「は……、やっべえ……」

 どくどくと、肚の中に欲望が注がれる。
 私の肉体が、細胞の一つ一つが、ヒトの体液に悦んでいるのがわかる。

「……ちょっと意地悪しちまいましたね。すみません」
「ん……」

 優しく頭を撫でられ、安らぎと多幸感に包まれた。
 罪深い行為だというのに、あまりにも心地が良すぎる。

 嗚呼、主よ。
 どうか……私を……私達を……

「……お赦しください……」

 溢れ出した不安に耐えかね、彼の背中に縋り付いた。
 ヴィルは震えの止まらない身体を優しく抱き締め、背中を撫でてくれる。

「泣いたって、笑ったっていいんだよ、神父様」

 穏やかな声が、ひび割れた心を包み込む。

「アンタはじゅうぶん頑張ったし、じゅうぶん傷付いたろ」

 私に……そして、見えない「誰か」に伝えるよう、優しい言葉が紡がれていく。

「……神様が許さなくても、オレはアンタを許すから」

 済まない、ヴィル。
 私にはもう、上手な泣き方も、笑い方もわからない。
 おまえの愛に応えることも、おまえを解き放ってやることも選択できない。
 何が正しいのか、何を選択すべきか、何もかもを見失ってしまった。

 ……それでも、確かなことはある。

 ヴィル。おまえの隣は、居心地がいい。
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