70 / 88
Die Geschichte des Vampirs3 ― Zwiespältiger Winter ―
第5話 Der Kampf hört nie auf
「オットー・シュナイダーはね……本来、50年ほど前……『諸国民の春』の時代に生きた人物なのよ」
話を聞くうちに、どうにか頭が動き始める。
「諸国民の春」。欧州各地で巻き起こった革命の時代だ。
「しょこくみんのはる?」
ヴィルは、聞き慣れない単語に困惑した様子で聞き返している。
解説をしてやりたいところだが、何というのか……短時間で済ませるのは難しいというか……
「……革命の時代ですね。なるほど、社会主義を勘違いし妙な方向に拗らせたような思想も頷けます。当時はまだ、黎明期でしょうから」
ともかく、襟を正してマルティンとの会話に望む。
まだ頭痛や不快感は残っているが、ヴィルに理解が難しい以上、私ができる限りの情報を集めておくべきだろう。
「しゃかいしゅぎ?」
ヴィルはやはり理解できていないようで、目を白黒させている。
申し訳ないが、今は情報収集に力を割く他ない。
「ああー……確かにそうね。おそらくだけど、彼の中の人類は『秩序正しい一般市民』と『それを脅かす悪党』にくっきり別れてるわ。資本家階級を必要以上に敵視する過激な労働者階級と構図は少し似ているかしら……?」
「ぶ、ぶるじょ……? ぷろれたり……?」
「ええ。……もっとも、悪意の矛先はより共感されやすい属性ではありますが」
済まない、ヴィル。もう少しだけ我慢していてくれ。
「貴族の処刑ブームを正義と持て囃す民衆がいたように、彼が盗賊をいたぶり殺すことを持て囃す民衆もいた。だから、時と場合によっては英雄視されることもあるんだったかな」
テオドーロも話に入り、ヴィルは「お前もか」といった様子でそちらを二度見した。
「よくある名前だとは思っていましたが……著名人だったとは」
「まぁ……特定の界隈ではね。数年前にイギリスで『切り裂き魔』が出たでしょ? あんな感じの『著名』よ。もっと古く遡れば、少年を殺しまくったフランスの『青ひげ』男爵と同じ系統ってこと」
……なるほど。名が広まるのは、必ずしも栄誉あることとは限らない。それが、悪名である場合も充分にある。
しかし、悪に魅了される者も少なくはない。あの男……司祭エマヌエルにも、常に取り巻きがいた。
私を穢れた血と断罪し、時に水をかけ、ものを隠し、面倒な仕事を押し付け、そのたびに私の反応を見ては嘲笑った者達だ。決して喜ばせないよう冷静に振舞えば、やがて嫌がらせは収まったが……その後私は吸血鬼と化し……奴らのあの目は……あの、声は……
──穢れた血の死に損ないが、何を乞いに来たというのだね
……いいや、これは、今考えることではない。今は、あくまで目の前のことに専念するべきだ。
そう思えば思うほど、思考がどす黒い怒りに呑まれていく。
「……っ」
……と、その瞬間。
下腹部の違和感に思わず声を上げそうになった。
何というのか……吸収しきれていなかった分を、身体が飲み始めたというのか……
ぞくぞくと、背筋に快感が駆け抜ける。舌で味わう時とはまた別種の「味」が肉体に染み渡っていく。
「あら、どうしたの?」
「い、いや、大したことでは……」
マルティンの問いには、言葉を濁す。どうにか、気付かれないようにしなくてはならない。
ヴィルの視線を感じる。何かを察したのか口元がわずかに緩んでいるようだが、誰のせいだと思っているのだ。
「……異形化した殺人鬼……と、言っていましたね」
話題を切り替え、どうにか誤魔化す。
「ああ。オットーはあくまで『自分の快楽のために』盗賊をいたぶり殺した。もっともな理屈を並べていたようだけど、それらはいわば言い訳だ。彼は次第に些細な不道徳行為を行ったものですら狙い、最期は皮肉にも処刑された。……けれど、彼はなぜか死ななかった。いや、『確かに死んだのに、彼は存在し続けた』」
「……彼も、吸血鬼だったのですか」
しかし、異形を憎んでいる、もしくは嫌悪しているような口ぶりだったが、オットー本人も異形だったとは。
「いや、吸血鬼とはまた別物だ。彼は『他人の屍を餌にし、自分の肉体を再構築できる』。……そういう存在と化していたんだ」
……なるほど。話が見えてきた。
「他人の屍を餌に…………あっ、それで、さっきの消えた悪魔祓いの話と繋がるのか!」
どうやら、合点が行ったのはヴィルも同じだったらしい。
「おお! その通りさ! 君、意外と頭が切れるね」
テオドーロはそう言うが、そもそもヴィルは「頭が悪い」わけではない。
「ヴィルは物覚えも良く、知能は決して低くありません。知識が足りないように見えるのは、学習の場に恵まれなかっただけです」
と、補足したところ……
「……あらあら」
「何ですか」
「いえ、何でもないわ」
マルティンの方から、生あたたかい視線を感じる。
しばらく黙っていたかと思えば、やけに楽しそうというのか、嬉しそうというのか……。
「……私はただ、事実を言ったまでです」
腕を組み、目線を逸らす。何だ、この気まずさは。
「それで、修道士マルティン。消えた悪魔祓いは黒髪に鳶色の目だったのですか」
ともかく、今は話を先に進めるべきだろう。
私の質問に、マルティンの表情から微笑が消える。彼(いや、彼女か?)……は、ふっと視線を落とし、俯いた。
「……ええ。大量の血痕を残して、教会から借り受けた武器ごと消えていたの。その武器が『いわく付き』だったから、まさか……と思ったのだけど……嫌な予感は当たるものね……」
「……。そう、ですか……」
……身内を失う辛さは、私にも理解できる。
しかし、彼らが元はと言えば「私を殺しに来ていた」と考えれば、複雑だ。
なるべく戦いにならないよう動いていたのも、事実ではあるが……
「オットーの使っていた剣は、彼が悪意を向けそうな相手にほど効果的でね。対異形用の武器として保管されていた。ただ、取り扱いが難しいし、下手をすれば宿った『オットー・シュナイダー本人』に餌にされてしまう。まさしく両刃の剣、というわけだ」
テオドーロの説明を、マルティンが引き継ぐ。
「……わたしの責任よ」
その表情は、ひどく曇っていた。
「元々はわたしの不手際で、彼も『司祭コンラート』が吸血鬼化したことを知ってしまって……それで、この仕事を手伝わせてしまうことになったの。せめて戦闘はわたし一人でやるって言ったんだけど……倒せず怪我をして帰ってきたから、彼……武器を調達してくるって聞かなくて……」
マルティンの首元からは、包帯が覗いている。
……私がつけた傷だ。
おそらくは、この傷から分析したのだろう。遠隔武器ではなく、近接武器の方が有利だと……
「……よほど強い相手だと、誤解を与えてしまったのですね」
あの時。
本来であれば、負けていたのはこちらだ。
しかし、マルティンは私達に情けをかけ、見逃した。
その選択が、仲間の死を招いてしまったということになる。
「そうね。あんたのは馬鹿力と回復力を当てにしたただの特攻よ。戦法も何もあったもんじゃないし、そこら辺、もうちょっとそこのチンピラに教えて貰った方がいいわ。料理で例えるなら、高級素材をただ焼いただけみたいな状態ね。ある程度までの相手になら通用するけど、無謀な特攻は身を滅ぼすだけだわ」
「…………。……参考になります」
マルティンの戦闘への指摘は、あまりにも的確だった。ぐうの音も出ない、とはこのことだ。
しかし……本来は敵対関係にあると考えれば、この忠告もあまりに親切すぎる。以前私を見逃したことと言い、お人好しなのは間違いないだろうが……
「大丈夫だよコンラートくん。無理して戦わなくたっていい。君は生きているだけで素晴らしいんだ。なぜなら、その美貌と匂いが僕の心を癒してくれるからね。……ああ、愛らしい吸血鬼くん。良かったら僕の妻にならないかい?」
テオドーロが、爽やかな笑顔を向けてくる。いつの間にやら手を握られているのだが、彼の距離感はいったいどうなっている……?
「もちろん、ヴィルくんとの関係はそのままで問題ないよ。僕の方だって、たくさん妻がいるわけだし」
「は、はぁ……???」
本当に何を言っているのだ。この男は。
「どさくさに紛れて口説くな変態。神父様から離れろ。あと死ね」
「コンラート、気を付けなさい。あんたは完全にテオドーロの守備範囲内なの。油断してたら触手に絡まれるわよ」
「痛い痛い痛い!!! ただのスキンシップじゃないか! 耳!! 耳が取れる!!」
マルティンがテオドーロの耳を引っ張り、私から引き剥がす。
そのまま私の身体はヴィルに抱き寄せられた。……いや、どういう状況だ? これは。
「その……どういうことなのだ? 修道士テオドーロももちろん聖職者で……しかし既に妻がいて……そして、男の私を妻に迎えたくて……いや、どういうことなのだ……?」
「……ッ、可愛いなぁもうー」
ヴィルに尋ねると、なぜか愛おしそうに抱き締めてくるわ頭を撫でてくるわ……本当に訳が分からない。
その瞬間、ズキン、と頭が痛んだ。
頻繁に起こることではあるが、この痛みはいつもと質が違う。
視界がぐにゃりと歪む。
暗い路地裏の光景が、引き潰された肉塊の姿が、まざまざと視える。
激しい殺意と悪意の渦が、頭の内側から私に牙を剥く。
脳裏に呪詛が響く。
オ マ エ モ
コ ロ ス
小柄な手が、転がった剣を拾い上げる。
……オットーは、剣が本体だと聞いた。
そして……
他人の屍を餌にする、と……。
話を聞くうちに、どうにか頭が動き始める。
「諸国民の春」。欧州各地で巻き起こった革命の時代だ。
「しょこくみんのはる?」
ヴィルは、聞き慣れない単語に困惑した様子で聞き返している。
解説をしてやりたいところだが、何というのか……短時間で済ませるのは難しいというか……
「……革命の時代ですね。なるほど、社会主義を勘違いし妙な方向に拗らせたような思想も頷けます。当時はまだ、黎明期でしょうから」
ともかく、襟を正してマルティンとの会話に望む。
まだ頭痛や不快感は残っているが、ヴィルに理解が難しい以上、私ができる限りの情報を集めておくべきだろう。
「しゃかいしゅぎ?」
ヴィルはやはり理解できていないようで、目を白黒させている。
申し訳ないが、今は情報収集に力を割く他ない。
「ああー……確かにそうね。おそらくだけど、彼の中の人類は『秩序正しい一般市民』と『それを脅かす悪党』にくっきり別れてるわ。資本家階級を必要以上に敵視する過激な労働者階級と構図は少し似ているかしら……?」
「ぶ、ぶるじょ……? ぷろれたり……?」
「ええ。……もっとも、悪意の矛先はより共感されやすい属性ではありますが」
済まない、ヴィル。もう少しだけ我慢していてくれ。
「貴族の処刑ブームを正義と持て囃す民衆がいたように、彼が盗賊をいたぶり殺すことを持て囃す民衆もいた。だから、時と場合によっては英雄視されることもあるんだったかな」
テオドーロも話に入り、ヴィルは「お前もか」といった様子でそちらを二度見した。
「よくある名前だとは思っていましたが……著名人だったとは」
「まぁ……特定の界隈ではね。数年前にイギリスで『切り裂き魔』が出たでしょ? あんな感じの『著名』よ。もっと古く遡れば、少年を殺しまくったフランスの『青ひげ』男爵と同じ系統ってこと」
……なるほど。名が広まるのは、必ずしも栄誉あることとは限らない。それが、悪名である場合も充分にある。
しかし、悪に魅了される者も少なくはない。あの男……司祭エマヌエルにも、常に取り巻きがいた。
私を穢れた血と断罪し、時に水をかけ、ものを隠し、面倒な仕事を押し付け、そのたびに私の反応を見ては嘲笑った者達だ。決して喜ばせないよう冷静に振舞えば、やがて嫌がらせは収まったが……その後私は吸血鬼と化し……奴らのあの目は……あの、声は……
──穢れた血の死に損ないが、何を乞いに来たというのだね
……いいや、これは、今考えることではない。今は、あくまで目の前のことに専念するべきだ。
そう思えば思うほど、思考がどす黒い怒りに呑まれていく。
「……っ」
……と、その瞬間。
下腹部の違和感に思わず声を上げそうになった。
何というのか……吸収しきれていなかった分を、身体が飲み始めたというのか……
ぞくぞくと、背筋に快感が駆け抜ける。舌で味わう時とはまた別種の「味」が肉体に染み渡っていく。
「あら、どうしたの?」
「い、いや、大したことでは……」
マルティンの問いには、言葉を濁す。どうにか、気付かれないようにしなくてはならない。
ヴィルの視線を感じる。何かを察したのか口元がわずかに緩んでいるようだが、誰のせいだと思っているのだ。
「……異形化した殺人鬼……と、言っていましたね」
話題を切り替え、どうにか誤魔化す。
「ああ。オットーはあくまで『自分の快楽のために』盗賊をいたぶり殺した。もっともな理屈を並べていたようだけど、それらはいわば言い訳だ。彼は次第に些細な不道徳行為を行ったものですら狙い、最期は皮肉にも処刑された。……けれど、彼はなぜか死ななかった。いや、『確かに死んだのに、彼は存在し続けた』」
「……彼も、吸血鬼だったのですか」
しかし、異形を憎んでいる、もしくは嫌悪しているような口ぶりだったが、オットー本人も異形だったとは。
「いや、吸血鬼とはまた別物だ。彼は『他人の屍を餌にし、自分の肉体を再構築できる』。……そういう存在と化していたんだ」
……なるほど。話が見えてきた。
「他人の屍を餌に…………あっ、それで、さっきの消えた悪魔祓いの話と繋がるのか!」
どうやら、合点が行ったのはヴィルも同じだったらしい。
「おお! その通りさ! 君、意外と頭が切れるね」
テオドーロはそう言うが、そもそもヴィルは「頭が悪い」わけではない。
「ヴィルは物覚えも良く、知能は決して低くありません。知識が足りないように見えるのは、学習の場に恵まれなかっただけです」
と、補足したところ……
「……あらあら」
「何ですか」
「いえ、何でもないわ」
マルティンの方から、生あたたかい視線を感じる。
しばらく黙っていたかと思えば、やけに楽しそうというのか、嬉しそうというのか……。
「……私はただ、事実を言ったまでです」
腕を組み、目線を逸らす。何だ、この気まずさは。
「それで、修道士マルティン。消えた悪魔祓いは黒髪に鳶色の目だったのですか」
ともかく、今は話を先に進めるべきだろう。
私の質問に、マルティンの表情から微笑が消える。彼(いや、彼女か?)……は、ふっと視線を落とし、俯いた。
「……ええ。大量の血痕を残して、教会から借り受けた武器ごと消えていたの。その武器が『いわく付き』だったから、まさか……と思ったのだけど……嫌な予感は当たるものね……」
「……。そう、ですか……」
……身内を失う辛さは、私にも理解できる。
しかし、彼らが元はと言えば「私を殺しに来ていた」と考えれば、複雑だ。
なるべく戦いにならないよう動いていたのも、事実ではあるが……
「オットーの使っていた剣は、彼が悪意を向けそうな相手にほど効果的でね。対異形用の武器として保管されていた。ただ、取り扱いが難しいし、下手をすれば宿った『オットー・シュナイダー本人』に餌にされてしまう。まさしく両刃の剣、というわけだ」
テオドーロの説明を、マルティンが引き継ぐ。
「……わたしの責任よ」
その表情は、ひどく曇っていた。
「元々はわたしの不手際で、彼も『司祭コンラート』が吸血鬼化したことを知ってしまって……それで、この仕事を手伝わせてしまうことになったの。せめて戦闘はわたし一人でやるって言ったんだけど……倒せず怪我をして帰ってきたから、彼……武器を調達してくるって聞かなくて……」
マルティンの首元からは、包帯が覗いている。
……私がつけた傷だ。
おそらくは、この傷から分析したのだろう。遠隔武器ではなく、近接武器の方が有利だと……
「……よほど強い相手だと、誤解を与えてしまったのですね」
あの時。
本来であれば、負けていたのはこちらだ。
しかし、マルティンは私達に情けをかけ、見逃した。
その選択が、仲間の死を招いてしまったということになる。
「そうね。あんたのは馬鹿力と回復力を当てにしたただの特攻よ。戦法も何もあったもんじゃないし、そこら辺、もうちょっとそこのチンピラに教えて貰った方がいいわ。料理で例えるなら、高級素材をただ焼いただけみたいな状態ね。ある程度までの相手になら通用するけど、無謀な特攻は身を滅ぼすだけだわ」
「…………。……参考になります」
マルティンの戦闘への指摘は、あまりにも的確だった。ぐうの音も出ない、とはこのことだ。
しかし……本来は敵対関係にあると考えれば、この忠告もあまりに親切すぎる。以前私を見逃したことと言い、お人好しなのは間違いないだろうが……
「大丈夫だよコンラートくん。無理して戦わなくたっていい。君は生きているだけで素晴らしいんだ。なぜなら、その美貌と匂いが僕の心を癒してくれるからね。……ああ、愛らしい吸血鬼くん。良かったら僕の妻にならないかい?」
テオドーロが、爽やかな笑顔を向けてくる。いつの間にやら手を握られているのだが、彼の距離感はいったいどうなっている……?
「もちろん、ヴィルくんとの関係はそのままで問題ないよ。僕の方だって、たくさん妻がいるわけだし」
「は、はぁ……???」
本当に何を言っているのだ。この男は。
「どさくさに紛れて口説くな変態。神父様から離れろ。あと死ね」
「コンラート、気を付けなさい。あんたは完全にテオドーロの守備範囲内なの。油断してたら触手に絡まれるわよ」
「痛い痛い痛い!!! ただのスキンシップじゃないか! 耳!! 耳が取れる!!」
マルティンがテオドーロの耳を引っ張り、私から引き剥がす。
そのまま私の身体はヴィルに抱き寄せられた。……いや、どういう状況だ? これは。
「その……どういうことなのだ? 修道士テオドーロももちろん聖職者で……しかし既に妻がいて……そして、男の私を妻に迎えたくて……いや、どういうことなのだ……?」
「……ッ、可愛いなぁもうー」
ヴィルに尋ねると、なぜか愛おしそうに抱き締めてくるわ頭を撫でてくるわ……本当に訳が分からない。
その瞬間、ズキン、と頭が痛んだ。
頻繁に起こることではあるが、この痛みはいつもと質が違う。
視界がぐにゃりと歪む。
暗い路地裏の光景が、引き潰された肉塊の姿が、まざまざと視える。
激しい殺意と悪意の渦が、頭の内側から私に牙を剥く。
脳裏に呪詛が響く。
オ マ エ モ
コ ロ ス
小柄な手が、転がった剣を拾い上げる。
……オットーは、剣が本体だと聞いた。
そして……
他人の屍を餌にする、と……。
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。