11 / 92
序章 迷い蛾
11. 幕間
しおりを挟む
ロー兄さんは、いつの間にか姿を消していた。「調書」を一通り読み終えてから、電話をかける。弱りきった声だが、確かに「ロバート」の声音だとわかった。
「ロバート、この原稿お前が書いたのか?」
『警察署……? 資料漁った記憶があるから、たぶん……?』
どうやら、ガチで警察署があるらしい。……本当に、どういう場所なんだ?
「……そこ、どんな雰囲気だ?」
『えーと……職場の近くとそんなに変わらない、かも』
「お前の職場を俺が知ってるわけねぇだろ……」
『見慣れた光景……としか……。あ! 写メ送るね』
と、すぐさまパソコンの通知が鳴る。メールに添付されて、真っ黒な画面が送られてきた。……くそ、泣けてくる。どうしろってんだよ……?
『あ、そうそうロッド兄さん、送ってくれた原稿、だいたい読んだよ』
今度はいきなり編集者みたいな台詞が出やがった。勘弁してくれ。
パソコン画面から目を離し、煙草を吸い殻の溜まりに溜まった灰皿に押し付ける。
『……なんか……キース、性格悪くない?』
「そりゃあお前がモデルだから……」
『どういう意味!?』
「そのまんまだよ」
今回みたいな仕事……仕事? は初めてだ。ノンフィクション風のフィクション……とも言いがたいのに、ドキュメンタリーとも言いがたい。……しかも、本気で誰かしらの命がかかってるとくる。
あとロバート、こいつ自分の状況ちゃんとわかってんのか?
『警察官にしてはアドルフに舐められ過ぎだよね』
……どうやらロバートは色々と混乱しているらしい。「取り憑いた誰か」を刺激しないよう、探りを入れるしかねぇ、か。
「警察の制度調べるのだるかった」
『そんな理由なんだ……』
「後年齢はお前の童顔さ考えて引き下げた」
『童顔なのは変えてくれない辺り流石はロッド兄さんだよね!』
頼む、いい加減気づけ。こちとら気が気じゃねぇんだよ。
相談は特になく、失礼な文句ばかり出てくるが、まあ、ロバートは昔からそんな奴だ。……相手が俺だからかもしれねぇが。
『後さ、サーラって誰?』
「お前がいつも言ってる女への愛をイメージして出した」
『僕ジャンヌに対してこんなに気持ち悪いかな!?』
「正直もっとキモい」
『やっぱり交遊関係の狭さは世間をどう見るかに出るんだね……』
「殴んぞ」
ちっちゃいとこにしか文句が出ないあたり、内容にはさほど気にすることがないらしい。……その方が大問題なんだけどな。
とりあえず探るのはそこまでにして、こちらから踏み込んだ。
「カミーユさんは何て?」
接触してるなら、よく話してそうだと思った名前を口にする。……俺の直感でしかないが、何となく相性がいい気が……しなくも、ない。
『来ると思った……。あのね、「流石はお兄さんだね。粘着質かつ世間知らずなのに口だけいっちょ前なあたり、特徴が完璧!」……だって。腹立つ』
「いちいち言われたこと覚えてるから粘着質って言われんだろ」
ロバートの居場所は、まだ検討もつかない。死ぬなよとは言ったが、どうなるもんか……。
……正直、下手に触るわけにはいかない。下手に動いたら、何が起こるかわかったもんじゃない。
『……あ、ロー兄さんが呼んでる。またね』
……行けたのか、あの人。
それとも……元から行ける人だったのか。
もし、もしもだ。ロバートも、もう死んでしまっていたら……?
嫌な汗が吹き出す。気を紛らわせるためか、いつの間にか無意味に更新ボタンを幾度となく押していた。
何度繰り返そうが変化のなかった画面が、やがて、ひとつの投稿を読み込む。
題名は「Leviticus」、投稿者名は「R.H」。……よくある頭文字だが、少しだけ、気になりはした。
「ロバート、この原稿お前が書いたのか?」
『警察署……? 資料漁った記憶があるから、たぶん……?』
どうやら、ガチで警察署があるらしい。……本当に、どういう場所なんだ?
「……そこ、どんな雰囲気だ?」
『えーと……職場の近くとそんなに変わらない、かも』
「お前の職場を俺が知ってるわけねぇだろ……」
『見慣れた光景……としか……。あ! 写メ送るね』
と、すぐさまパソコンの通知が鳴る。メールに添付されて、真っ黒な画面が送られてきた。……くそ、泣けてくる。どうしろってんだよ……?
『あ、そうそうロッド兄さん、送ってくれた原稿、だいたい読んだよ』
今度はいきなり編集者みたいな台詞が出やがった。勘弁してくれ。
パソコン画面から目を離し、煙草を吸い殻の溜まりに溜まった灰皿に押し付ける。
『……なんか……キース、性格悪くない?』
「そりゃあお前がモデルだから……」
『どういう意味!?』
「そのまんまだよ」
今回みたいな仕事……仕事? は初めてだ。ノンフィクション風のフィクション……とも言いがたいのに、ドキュメンタリーとも言いがたい。……しかも、本気で誰かしらの命がかかってるとくる。
あとロバート、こいつ自分の状況ちゃんとわかってんのか?
『警察官にしてはアドルフに舐められ過ぎだよね』
……どうやらロバートは色々と混乱しているらしい。「取り憑いた誰か」を刺激しないよう、探りを入れるしかねぇ、か。
「警察の制度調べるのだるかった」
『そんな理由なんだ……』
「後年齢はお前の童顔さ考えて引き下げた」
『童顔なのは変えてくれない辺り流石はロッド兄さんだよね!』
頼む、いい加減気づけ。こちとら気が気じゃねぇんだよ。
相談は特になく、失礼な文句ばかり出てくるが、まあ、ロバートは昔からそんな奴だ。……相手が俺だからかもしれねぇが。
『後さ、サーラって誰?』
「お前がいつも言ってる女への愛をイメージして出した」
『僕ジャンヌに対してこんなに気持ち悪いかな!?』
「正直もっとキモい」
『やっぱり交遊関係の狭さは世間をどう見るかに出るんだね……』
「殴んぞ」
ちっちゃいとこにしか文句が出ないあたり、内容にはさほど気にすることがないらしい。……その方が大問題なんだけどな。
とりあえず探るのはそこまでにして、こちらから踏み込んだ。
「カミーユさんは何て?」
接触してるなら、よく話してそうだと思った名前を口にする。……俺の直感でしかないが、何となく相性がいい気が……しなくも、ない。
『来ると思った……。あのね、「流石はお兄さんだね。粘着質かつ世間知らずなのに口だけいっちょ前なあたり、特徴が完璧!」……だって。腹立つ』
「いちいち言われたこと覚えてるから粘着質って言われんだろ」
ロバートの居場所は、まだ検討もつかない。死ぬなよとは言ったが、どうなるもんか……。
……正直、下手に触るわけにはいかない。下手に動いたら、何が起こるかわかったもんじゃない。
『……あ、ロー兄さんが呼んでる。またね』
……行けたのか、あの人。
それとも……元から行ける人だったのか。
もし、もしもだ。ロバートも、もう死んでしまっていたら……?
嫌な汗が吹き出す。気を紛らわせるためか、いつの間にか無意味に更新ボタンを幾度となく押していた。
何度繰り返そうが変化のなかった画面が、やがて、ひとつの投稿を読み込む。
題名は「Leviticus」、投稿者名は「R.H」。……よくある頭文字だが、少しだけ、気になりはした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる