12 / 92
序章 迷い蛾
12. Leviticus
しおりを挟む
──祭司が生贄を捧げて贖えば、彼の犯した罪は許される
脚が熱い。焼けるように痛い。霞んだ視界が、ようやく戻っていく。
……は?
何でこんなに人が倒れて何でこんなに風景がおかしくて何でこんなに部屋が荒れて何でこんなに……酷い臭いが……?
自分の手をみる。液体がべっとりとついている。何が起こった。何が、ああああ脚が痛い太ももなのかなんだこれはあついあついいたいいたい何でこんなことがわからないわからないなにもかもわからない
目の前に、警察の人が立っている。そう言えば、目の前にたおれてるのもけいかんで、ああ、冷たい目で、俺を見ている。見て、みている。あの、しせんは、なん、で、なんでなんで、こんな
「……さすがに可哀想…………仕事…………悪く……」
金属音。そこからはわからない。
「……どう思う?」
嫌味な芸術家……名前はカミーユとかいうらしい。彼が見せてきたのは、汚い字で書かれた文章。……彼も小説を書くのかと思ったけど、どうにも雰囲気が深刻だった。
「えーと、……精神に異常をきたした人が人を殺しちゃって捕まるところ、とか?」
「……やっぱりそう見えるよね」
意味深な言葉。気になって意図を尋ねると、彼は苦い顔で告げる。
「どちらが被害者か、情報だけならわからないのにね」
「え?」
「……彼、脚を撃たれてるの、わかる?」
その瞬間、思い出したのは、「警察が善とは限らない」という、わかりきっていたはずの現実。
「……これ、どういう……?」
「まあ、単なる例文だと思ってよ。……一人の青年の心を、ぼろぼろに破壊し尽くす原理を示してるのかもね」
「……なに、それ」
以前整理した情報と合わせると、これは、まさか……
「……何で、誰も気づかなかったんだろう」
「わかるわけないよ。……この二人以外、現場には誰も……」
長い沈黙。ようやく破ったのは、カミーユの言葉。
「わかるわけないのに、彼にもわからないのに……「罪」は彼のものなんだよね」
きっと、それは、
地獄と呼ぶのも生ぬるいほどの、苦痛だったに違いない。
「……俺だけは、信じてやるべきだったよ」
電話の向こうで、アドルフさんはぽつりと呟いた。
僕は、その辛さと、ほんの少しだけ似た感覚を知っていた。
「とうさん」
彼が、必死に手を伸ばす先には、父の形見
ずっと、彼は生きようとしていた。いつだって、諦めずに抗った。それなのに、未来は閉ざされた。……いや、奪われた
その気持ちは、ワタシたちと同じだ
なあ、レヴィ。生きたいか?
壊れるのが嫌なら、何度でも治して……
何度でも、生かしてやる
***
投稿日時は表示されない。文字化けのような、潰れたような……読めない文字に起き代わっている。
コピー&ペーストして残そうと、テキストエディタを開く。……と、
『「ロバートくん、久しぶり。……そんなに嫌そうな顔しなくてもいいのに。僕と話すの嫌?」
クス、と笑って、カミーユは僕を探るように見ていた。……居心地が悪いから、そんなに話したくない。』
身に覚えのないデータが書き込まれていた。
脚が熱い。焼けるように痛い。霞んだ視界が、ようやく戻っていく。
……は?
何でこんなに人が倒れて何でこんなに風景がおかしくて何でこんなに部屋が荒れて何でこんなに……酷い臭いが……?
自分の手をみる。液体がべっとりとついている。何が起こった。何が、ああああ脚が痛い太ももなのかなんだこれはあついあついいたいいたい何でこんなことがわからないわからないなにもかもわからない
目の前に、警察の人が立っている。そう言えば、目の前にたおれてるのもけいかんで、ああ、冷たい目で、俺を見ている。見て、みている。あの、しせんは、なん、で、なんでなんで、こんな
「……さすがに可哀想…………仕事…………悪く……」
金属音。そこからはわからない。
「……どう思う?」
嫌味な芸術家……名前はカミーユとかいうらしい。彼が見せてきたのは、汚い字で書かれた文章。……彼も小説を書くのかと思ったけど、どうにも雰囲気が深刻だった。
「えーと、……精神に異常をきたした人が人を殺しちゃって捕まるところ、とか?」
「……やっぱりそう見えるよね」
意味深な言葉。気になって意図を尋ねると、彼は苦い顔で告げる。
「どちらが被害者か、情報だけならわからないのにね」
「え?」
「……彼、脚を撃たれてるの、わかる?」
その瞬間、思い出したのは、「警察が善とは限らない」という、わかりきっていたはずの現実。
「……これ、どういう……?」
「まあ、単なる例文だと思ってよ。……一人の青年の心を、ぼろぼろに破壊し尽くす原理を示してるのかもね」
「……なに、それ」
以前整理した情報と合わせると、これは、まさか……
「……何で、誰も気づかなかったんだろう」
「わかるわけないよ。……この二人以外、現場には誰も……」
長い沈黙。ようやく破ったのは、カミーユの言葉。
「わかるわけないのに、彼にもわからないのに……「罪」は彼のものなんだよね」
きっと、それは、
地獄と呼ぶのも生ぬるいほどの、苦痛だったに違いない。
「……俺だけは、信じてやるべきだったよ」
電話の向こうで、アドルフさんはぽつりと呟いた。
僕は、その辛さと、ほんの少しだけ似た感覚を知っていた。
「とうさん」
彼が、必死に手を伸ばす先には、父の形見
ずっと、彼は生きようとしていた。いつだって、諦めずに抗った。それなのに、未来は閉ざされた。……いや、奪われた
その気持ちは、ワタシたちと同じだ
なあ、レヴィ。生きたいか?
壊れるのが嫌なら、何度でも治して……
何度でも、生かしてやる
***
投稿日時は表示されない。文字化けのような、潰れたような……読めない文字に起き代わっている。
コピー&ペーストして残そうと、テキストエディタを開く。……と、
『「ロバートくん、久しぶり。……そんなに嫌そうな顔しなくてもいいのに。僕と話すの嫌?」
クス、と笑って、カミーユは僕を探るように見ていた。……居心地が悪いから、そんなに話したくない。』
身に覚えのないデータが書き込まれていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる