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明日を生き残る為に
何故お前は戦う。
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「君が神木蓮か病み上がりで呼び出してすまないね。」
「いえ、葉子隊長に完治されたので平気です。」
「彼女と楽しくやれてるみたいで良かったよ。」
「(楽しく?)」
今回、神の子であるノアと接触をしたと言うことで新たに情報を得ていないか確認するために呼び出された。
目の前の男はこのHRIの所長である片麻大地だ。初見の雰囲気は普通の成人男性と言った感じだ。何文ここに来てから、天竹さん然り葉子隊長然り、とても癖の強い人しか会ったことがないから紳士的な落ち着いた佇まいというのを珍しく感じてしまう。
「それじゃあ、君が見たノアの姿から教えてくれるかな」
「はい」
ノアと名乗った生き物は、ショートアップの青い髪とそれと同じ様に蒼い瞳をした若い女性の見た目をしていた。服装は量産型?ゴスロリ揶揄される様な派手な格好をしていて背筋がまっすぐ伸びていた。
「玲衣君の報告通りだね。それじゃあ次は雰囲気はどうだった?」
ノアは初め、見た目とは乖離が生じる様な大和撫子と言う様な丁寧な感じがした。しかし話をする中で暴れる様な、荒っぽい口調になったのを覚えている。
「点数を測られたかい?」
「はい、確か最後は41点と言われました。」
俺が答えると大地所長はハハッと笑う。
「そうかい、そうかい。アイツから合格点を貰うとは随分と気に入られちゃったね」
「???」
訳が分からず困惑する俺にその説明をしてくれる。
「実は神の子の中でノアだけは何度か接触したことがあるんだ。確か前回は玲衣君だったね。」
なるほど、2人が因縁ありげに対話をしていたのは一度会っていたからなのか。
「その時は14点と言われていたよ。人間の試験では満点ばっかだった玲衣君はそれで腹が立って、『私が倒す』なんて柄にもないこと言ってさ」
「そ、そうですか…」
ノアは敵だ。それなのに、ここまで対話が出来るなら人を失わない方法もあるんじゃないか?
「神木蓮。今、戦うことを躊躇したかい?会話ができる相手なら穏便に済ませることもできるんじゃないかって」
「いえ!そんな事はありません!」
今、所長からは初見に感じた人の良さは感じない。鷹の様に俯瞰する態度で冷たく見つめられ、萎縮した俺の体温が下がっていく感じがする。
「およそ4万6千人。のち内訳、植物硬化病4万、プラントの襲撃による被害者6千人。これは過去400年の記録だが、増加の割合はこの3年で大幅に増え今後数年で指数関数的に増加するかも知れない。」
冷たい雰囲気に、別な感情を見つけた。所長は怒っていたのだ。
「これは終末の開花での被害を除いた死亡者数だ。会話が通じても意味がない。特に幹部、神の子達は人間の絶滅を望んでいるのだから。」
だから戦うしかないんだ。HRIは。
「我々は皆、個々の目的を持ち戦う。家族を守る為、友を、人類を守る為。お前は何故戦う。神木蓮。」
─『人類の底力を知れ!!』
懸命に戦った4万6千分の1の男の言葉を思い出した。
「俺には力があるから…守れる力があるから戦います。」
「それは強く生まれた者としての責任感か?」
「勿論です。俺に力があるなら、もう目の前で無惨に殺される人達を見殺しにしない。」
片麻所長から怒りが感じれなくなった。代わりに驚いているように見える。
「そうか…意地の悪い質問をして悪かった。君は思ってたより此方側だったんだね。」
「…?」
「その調子で力を高めなさい。きっと君は人類を救うことができる。」
固い表情を崩し笑みを浮かべる片麻所長。きっと素はこっちなのだろう。
「あと、葉子くんや紫苑のイジメが悪化したときは私に言いなさい。ある程度は改善出来るはずだ。」
「本当ですか!」
「彼女らの上司は私だからね。…って、どうして泣くんだ。そんなに辛かったのか?」
俺はその優しさに胸を打たれた。
「(この人について行こう。)」
──
湿地帯の奥深く、雷鳴が走る。
「母君、ノアから報告です。敵組織にて半身を持つであろう男を見つけたとのこと。まだ部分的にですが、開花の兆候があるとの事です。」
「そうか、ノアが。長子と末子は頼りになるわね。」
老人は母が背を向けているのを良いことに喜びに身を捩らせる。
「母君の全盛を待ち望んでおりますゆえ…」
「ふふ、そうね。貴方達の為にも早く回復しないと。」
「それでは母君、私もノアと共に奪還に動きます。」
「ええ、いってらっしゃい。」
雷が辺りを照らす。
──
日本の何処か、廃れた工場に雷が落ちる。白髪の老体は何処からともなく現れ、埃の被った大型の機械の間をすり抜け奥へ進む。
「お前はここが好きじゃのう」
錆びれたオイル缶の上に似合わないくらい綺麗な青髪の少女が座っている。
「僕がここのヒトを殺したからね。所有権は僕のさ。」
「バアルは?」
「HRIの本部見つけるとかで下水に入ったよー、馬鹿だね。」
「適当にするじゃないぞ。俺達は母君に期待されているんじゃからのう。」
ゼウスのトゲのある口調にノアがムッとする。
「僕だって真面目さ。ただ僕が得意なのは大規模な攻撃であって、敵を炙り出すことじゃない。人に任せれるから多様性が生まれて、選別が出来るんだ。」
「その調子だから玲衣を殺せないんじゃ」
「それとこれは話が違うだろ!今ドキ流行んないよマザコン老人なんてジャンル!」
「何だと…!……この、量産型め!」
「はーん!言い淀んじゃって、僕が可愛くてごめんね~」
2人の間に殺意が生まれた。
日本内陸某所、突然の大雨・雷警報が発表される。
「いかんいかん。貴様も殺気を消さんかい。奴らに見つかったら面倒じゃからのう」
「…」
雷雲は次第に東北部へと流れていった。
「本当に、HRIは何処から来てるんだか。何だっけアイツ、三年前アグニ兄ちゃんを追い詰めた女。その女さえ居なければ、暴れ回って神木蓮を炙り出すのも簡単なのに。」
「天竹紫音、じゃったか。忌まわしい。アグニとは連絡は取れずじまいで戦力は減るわ、全力は出せないわで、本当に人類の要じゃのう。」
フレームが歪んでいる窓に苦戦しながらも、バン!と勢いよく開ける。工場から外に強い風が流れる。
靡く青髪を覗けば曇りの空も青空に見えてくる。
「また家族団欒したいね。」
「そうじゃな。」
「いえ、葉子隊長に完治されたので平気です。」
「彼女と楽しくやれてるみたいで良かったよ。」
「(楽しく?)」
今回、神の子であるノアと接触をしたと言うことで新たに情報を得ていないか確認するために呼び出された。
目の前の男はこのHRIの所長である片麻大地だ。初見の雰囲気は普通の成人男性と言った感じだ。何文ここに来てから、天竹さん然り葉子隊長然り、とても癖の強い人しか会ったことがないから紳士的な落ち着いた佇まいというのを珍しく感じてしまう。
「それじゃあ、君が見たノアの姿から教えてくれるかな」
「はい」
ノアと名乗った生き物は、ショートアップの青い髪とそれと同じ様に蒼い瞳をした若い女性の見た目をしていた。服装は量産型?ゴスロリ揶揄される様な派手な格好をしていて背筋がまっすぐ伸びていた。
「玲衣君の報告通りだね。それじゃあ次は雰囲気はどうだった?」
ノアは初め、見た目とは乖離が生じる様な大和撫子と言う様な丁寧な感じがした。しかし話をする中で暴れる様な、荒っぽい口調になったのを覚えている。
「点数を測られたかい?」
「はい、確か最後は41点と言われました。」
俺が答えると大地所長はハハッと笑う。
「そうかい、そうかい。アイツから合格点を貰うとは随分と気に入られちゃったね」
「???」
訳が分からず困惑する俺にその説明をしてくれる。
「実は神の子の中でノアだけは何度か接触したことがあるんだ。確か前回は玲衣君だったね。」
なるほど、2人が因縁ありげに対話をしていたのは一度会っていたからなのか。
「その時は14点と言われていたよ。人間の試験では満点ばっかだった玲衣君はそれで腹が立って、『私が倒す』なんて柄にもないこと言ってさ」
「そ、そうですか…」
ノアは敵だ。それなのに、ここまで対話が出来るなら人を失わない方法もあるんじゃないか?
「神木蓮。今、戦うことを躊躇したかい?会話ができる相手なら穏便に済ませることもできるんじゃないかって」
「いえ!そんな事はありません!」
今、所長からは初見に感じた人の良さは感じない。鷹の様に俯瞰する態度で冷たく見つめられ、萎縮した俺の体温が下がっていく感じがする。
「およそ4万6千人。のち内訳、植物硬化病4万、プラントの襲撃による被害者6千人。これは過去400年の記録だが、増加の割合はこの3年で大幅に増え今後数年で指数関数的に増加するかも知れない。」
冷たい雰囲気に、別な感情を見つけた。所長は怒っていたのだ。
「これは終末の開花での被害を除いた死亡者数だ。会話が通じても意味がない。特に幹部、神の子達は人間の絶滅を望んでいるのだから。」
だから戦うしかないんだ。HRIは。
「我々は皆、個々の目的を持ち戦う。家族を守る為、友を、人類を守る為。お前は何故戦う。神木蓮。」
─『人類の底力を知れ!!』
懸命に戦った4万6千分の1の男の言葉を思い出した。
「俺には力があるから…守れる力があるから戦います。」
「それは強く生まれた者としての責任感か?」
「勿論です。俺に力があるなら、もう目の前で無惨に殺される人達を見殺しにしない。」
片麻所長から怒りが感じれなくなった。代わりに驚いているように見える。
「そうか…意地の悪い質問をして悪かった。君は思ってたより此方側だったんだね。」
「…?」
「その調子で力を高めなさい。きっと君は人類を救うことができる。」
固い表情を崩し笑みを浮かべる片麻所長。きっと素はこっちなのだろう。
「あと、葉子くんや紫苑のイジメが悪化したときは私に言いなさい。ある程度は改善出来るはずだ。」
「本当ですか!」
「彼女らの上司は私だからね。…って、どうして泣くんだ。そんなに辛かったのか?」
俺はその優しさに胸を打たれた。
「(この人について行こう。)」
──
湿地帯の奥深く、雷鳴が走る。
「母君、ノアから報告です。敵組織にて半身を持つであろう男を見つけたとのこと。まだ部分的にですが、開花の兆候があるとの事です。」
「そうか、ノアが。長子と末子は頼りになるわね。」
老人は母が背を向けているのを良いことに喜びに身を捩らせる。
「母君の全盛を待ち望んでおりますゆえ…」
「ふふ、そうね。貴方達の為にも早く回復しないと。」
「それでは母君、私もノアと共に奪還に動きます。」
「ええ、いってらっしゃい。」
雷が辺りを照らす。
──
日本の何処か、廃れた工場に雷が落ちる。白髪の老体は何処からともなく現れ、埃の被った大型の機械の間をすり抜け奥へ進む。
「お前はここが好きじゃのう」
錆びれたオイル缶の上に似合わないくらい綺麗な青髪の少女が座っている。
「僕がここのヒトを殺したからね。所有権は僕のさ。」
「バアルは?」
「HRIの本部見つけるとかで下水に入ったよー、馬鹿だね。」
「適当にするじゃないぞ。俺達は母君に期待されているんじゃからのう。」
ゼウスのトゲのある口調にノアがムッとする。
「僕だって真面目さ。ただ僕が得意なのは大規模な攻撃であって、敵を炙り出すことじゃない。人に任せれるから多様性が生まれて、選別が出来るんだ。」
「その調子だから玲衣を殺せないんじゃ」
「それとこれは話が違うだろ!今ドキ流行んないよマザコン老人なんてジャンル!」
「何だと…!……この、量産型め!」
「はーん!言い淀んじゃって、僕が可愛くてごめんね~」
2人の間に殺意が生まれた。
日本内陸某所、突然の大雨・雷警報が発表される。
「いかんいかん。貴様も殺気を消さんかい。奴らに見つかったら面倒じゃからのう」
「…」
雷雲は次第に東北部へと流れていった。
「本当に、HRIは何処から来てるんだか。何だっけアイツ、三年前アグニ兄ちゃんを追い詰めた女。その女さえ居なければ、暴れ回って神木蓮を炙り出すのも簡単なのに。」
「天竹紫音、じゃったか。忌まわしい。アグニとは連絡は取れずじまいで戦力は減るわ、全力は出せないわで、本当に人類の要じゃのう。」
フレームが歪んでいる窓に苦戦しながらも、バン!と勢いよく開ける。工場から外に強い風が流れる。
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