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日本防衛編
迫り来る大災害。
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「蓮!お前、もう大丈夫なのか?」
「心配かけたな。」
「何かあったら僕らがサポートするから、無理しないでね。」
「リク、お前も重症だったんだからあんま気にすんなよ。」
2人は俺が回復するまで毎日医務室に来てくれていた。精神状態が優れなかった俺は、そんな彼らの優しさを無碍にしていた訳だが。
それでも、こうして心配してくれる友の存在は非常にありがたく思う。
「そう言えば蓮。ここにいるってことは例の件伝わったんだな?」
「…あぁ。俺もノアと戦うぞ。」
「ハハっ!頼もしいな。盾役頼むぜ。」
ドンッと俺の胸を叩く八重筒。少し痛かったが、ほんの少しだけだ。心が温かくなる懐かしさを感じる。
「そろそろ作戦の説明会だ。作戦、それに伴う部隊編成の変更。民間人への情報漏洩対策について話されるらしい。」
「そうか。情報が民間人に漏れるのも避けなくちゃか。」
「あぁ、身近にあんなバケモノ達が蔓延ってるってなったら動揺が生まれるからな。」
HRIの戦闘部隊は秘匿されている。復興に注視したい現状に害敵は邪魔すぎる。だから厳重な情報管理がされているのだ。
「でも、神の子ノアが攻めてくるってどうして分かったんだろう。蓮が対面した時の話だと、普通の人間のサイズだったんでしょ?」
リクの疑問は正しい。普通なら感知のしようがない。上はどのように、途方もない予知をしているのだろうか。
「それもこの後話されるだろう。俺らは編成されてその通りに動くだけだ。」
「八重筒の言う通りだな。大ホールへ行こう。」
──
「うお、もう結構人いるな。」
「ランキングで見かけた面も多いな。」
「まだ帰ってない人も多かったからね。」
あの激闘からまだ4日。それなのに大規模招集が掛かるんだ、事態は急を要しているのが分かる。
そして、相変わらずの視線。俺達はランキングで目立ちすぎたみたいだった。様々な声が聞こえる中、1人現れた。
「ッ!蓮、お前もう大丈夫なのか?」
「阿波木副隊長!」
見知った顔だった。この人と死地を共にしたこともある。彼は俺の顔を見ると、緊張した顔を少し和らげた。
「少しですが、気持ちの整理が付きました。」
「そうか…お前は強いな。だが、無理はするなよ。また心が折れそうになったら、人を頼れ。お前には味方はいるからな。」
「はいッ!」
ポンと肩を叩いてくれる阿波木副隊長だった。彼からの評価は力強く、また一歩進めそうな気がした。
「大隊編成だが、また第二と組めそうだぞ。」
「…え?マジスカ。」
「そう楽しみそうにするな!」
ドンッと俺の胸を叩く阿波木副隊長。彼からの言葉は俺の心を地に落とした。
笑顔で去っていく副隊長、それを見守る俺に八重筒達は同情の目を向けた。
「早く行こうぜ。そろそろ時間だ。」
「そう落ち込むなよ!大丈夫、地獄の第二の訓練でもお前なら生き残れる!」
含み笑いで語る八重筒の腹を条件反射で俺は殴る。ついでに後ろでくすりと笑ったリクの脛を蹴った。
『後五分で説明会を開始する。皆、着席するように。』
遂に始まる。喧騒に包まれた大ホールは瞬時に静まり返った。
──
『第二の癒瘡木だ。今回の説明の前に脅しを入れておこう。』
まず登壇したのは癒瘡木隊長だった。尋常ではない緊張感。彼の立ち姿に怯える隊員もいた。
『聞いている者もいるだろうが、これから私達はプラントの最高戦力の一柱、神の子ノアを討つ。その戦いは熾烈なモノとなるだろう。』
規律に溢れていた空間が動揺に包まれた。一般隊員は大隊編成の理由を今初めて知ったからである。
──バンッ!
癒瘡木は演説台を強く叩く。静まれ、言葉でなくても意味は理解できた。
『当然。我々の被害はゼロでは済まない、確実に死人は出る。いいか。これは脅しだ。例え死ぬとあっても、神を討たんとする者だけこの場から残れ!!』
鼓膜が張り裂けそうな大声量。これでマイク使ってないんだぜ。
この癒瘡木の脅しの効果は確かだった。欠ける者はゼロ。皆、命知らずの神殺しに名乗りを上げるのだった。
『感謝する。今貴様らの勇気が日本を、アジアの未来を大きく変えた。必ず勝つぞ。』
大規模編成に必要なのは士気。癒瘡木は見事、最大まで上げることに成功した。
ここで癒瘡木は降壇する。次上がってきたのは、第一の天竹紫苑であった。
『これより、任務についての説明に入る。まず神の子ノアの現在の状況だ。』
壇の後ろには大型のモニターがあり、日本近海の天気図が映されている。
『諸君らはそろそろ夏も終わり秋が来ると思う者が多いだろう。だが、今年は秋なぞ来ないぞ。』
予想天気図が1日ずつ移り変わる。そんな中、小笠原近くの太平洋上に大きな影が移ってきた。
『夏の終わりを告げる、秋雨前線。台風が来ることで大雨を降ろす。そして、今観測史上最大の台風が訪れようとしている。』
『事前情報として、神の子ノアには水を操る力が確認されている。さて、この世で最もエネルギーを持つものといえばだが、それは水だ。あいつらが状態をコロコロ変えるせいで台風なんて馬鹿な事が起きる。』
勘の良い隊員には分かったろう。天竹紫苑は言う。
『この台風は意図して行われている。ほれは神の子ノアが規模な能力を行使して行っているのだ。それを我々は感知した。』
そう言うことで俺達は戦う準備を進めるわけか。納得がいった。
『今回は市街地戦を想定している。そもそも太平洋上のノアを相手取る事は不可能だからだ。部隊は三つ、一般市民の避難隊。直接ノアを叩く本隊。そしてその他のプラントを叩く遊撃隊。これより各部隊の隊長を発表する。』
『まず、避難隊。ここは第四の葉子に担当してもらう。技術が必要になってくるチームだ。配属された者は責任をもって任務に励んで欲しい。』
呼ばれると、いつもの見慣れた風貌の女性が登壇し始める
…?!葉子隊長が!
第四小隊は思わず顔を合わせた。恐らく、葉子隊長は癖者揃いの小隊長の中で最も人の心がないからだ。配属された人には同情するしかない。
『次に遊撃隊。隊長は第三の宵茸。本隊が邪魔を喰らわないようにプラントを間引く隊だ。隠密に長けた者を配属する。』
宵茸隊長。恐らくHRIで最も影が薄い男だ。もちろん悪い意味ではない、闇に紛れて敵を屠る例えるなら忍者だ。同じ隊の人でも会話をした人は少ないらしい。
『最後に本隊だ。真っ向から神の子ノアの力に向かう強靭さと逆境を乗り越える能力を備える者に我々の未来を託したい。』
未来を託す。この本隊は日本及び、アジアの人間の命を背負うことになる。負ければ終わり。また終末の開花の様に空は暗雲に包まれ、身動きの取れないほどの大雨に溺れるのだろう。
今度こそ、負けられない。負ければ生存できない。
『この隊を任せるのは、第二癒瘡木硬樹だ。個の力はトップクラス、大隊クラスの人数を動かす能力もある。適任だ。』
最後に癒瘡木隊長も登壇する。迫力は桁違い。体格は葉子隊長のトリプルスコアだろうか。この背中に未来を託すのなら、問題ない。広く大きな責任感だ。
大隊長達は各々抱負を述べるみたいだ。
『避難隊、葉子だ。民間人の被害を抑えるのは我々の役割だ。人が死ねばそれだけ我々の責任になる。覚悟して参加してきて欲しい。』
『…宵茸。黙って戦え。以上。』
『癒瘡木だ。俺から言えるのはただ一つ。この隊の者は俺が選別した者だ。各人が力を出しきれば必ず勝てる。背中を任せるぞ。』
──ピロン。
説明会は終わった。連絡を待つ俺らに通知が入る。
『部隊編成について。』
「来たぞ八重筒!」
「俺は、本隊だ。」
「マジか!」
八重筒に続き俺も確認すると、
『神木蓮。本隊にて、ノア討伐の任を命ず。』
「俺もだ…!」
「背中任せるぜ。」
「勿論だ。」
八重筒とグータッチで押し合う。不安はあれど、力を大きく感じた。
「で、リクはどうだ?」
「…僕?僕は本隊じゃなかったよ。火祭リク、遊撃隊での任を命ず。だって。」
「遊撃か!」
「うん。2人が安心して戦えるように露払い頑張るよ。」
リクはこの数ヶ月で大きく精神が成長した。死地を経験したからか。とても頼もしい。
「俺達で人類を救うぞ。」
「あぁ!」
「うん!」
─
「異常発達した台風が近づこうとしています。」
天気予報のコーナー。3年前に日本が半壊までと追い詰められた経験から、異常気象があれば30分以上も語られる大きなモノになってしまった。
女キャスターは白髪の研究者に話を振る。
「今年は特に規模が大きいです。これが秋雨前線と衝突すれば、また大雨が訪れるでしょう。」
「──。」
小難しい話をする白髪に、熱心に耳を傾ける女の構図。昔から変わりはしない。
もうすでに異変は一般人も認知している。
神が選択を迫るまであと2日。
「心配かけたな。」
「何かあったら僕らがサポートするから、無理しないでね。」
「リク、お前も重症だったんだからあんま気にすんなよ。」
2人は俺が回復するまで毎日医務室に来てくれていた。精神状態が優れなかった俺は、そんな彼らの優しさを無碍にしていた訳だが。
それでも、こうして心配してくれる友の存在は非常にありがたく思う。
「そう言えば蓮。ここにいるってことは例の件伝わったんだな?」
「…あぁ。俺もノアと戦うぞ。」
「ハハっ!頼もしいな。盾役頼むぜ。」
ドンッと俺の胸を叩く八重筒。少し痛かったが、ほんの少しだけだ。心が温かくなる懐かしさを感じる。
「そろそろ作戦の説明会だ。作戦、それに伴う部隊編成の変更。民間人への情報漏洩対策について話されるらしい。」
「そうか。情報が民間人に漏れるのも避けなくちゃか。」
「あぁ、身近にあんなバケモノ達が蔓延ってるってなったら動揺が生まれるからな。」
HRIの戦闘部隊は秘匿されている。復興に注視したい現状に害敵は邪魔すぎる。だから厳重な情報管理がされているのだ。
「でも、神の子ノアが攻めてくるってどうして分かったんだろう。蓮が対面した時の話だと、普通の人間のサイズだったんでしょ?」
リクの疑問は正しい。普通なら感知のしようがない。上はどのように、途方もない予知をしているのだろうか。
「それもこの後話されるだろう。俺らは編成されてその通りに動くだけだ。」
「八重筒の言う通りだな。大ホールへ行こう。」
──
「うお、もう結構人いるな。」
「ランキングで見かけた面も多いな。」
「まだ帰ってない人も多かったからね。」
あの激闘からまだ4日。それなのに大規模招集が掛かるんだ、事態は急を要しているのが分かる。
そして、相変わらずの視線。俺達はランキングで目立ちすぎたみたいだった。様々な声が聞こえる中、1人現れた。
「ッ!蓮、お前もう大丈夫なのか?」
「阿波木副隊長!」
見知った顔だった。この人と死地を共にしたこともある。彼は俺の顔を見ると、緊張した顔を少し和らげた。
「少しですが、気持ちの整理が付きました。」
「そうか…お前は強いな。だが、無理はするなよ。また心が折れそうになったら、人を頼れ。お前には味方はいるからな。」
「はいッ!」
ポンと肩を叩いてくれる阿波木副隊長だった。彼からの評価は力強く、また一歩進めそうな気がした。
「大隊編成だが、また第二と組めそうだぞ。」
「…え?マジスカ。」
「そう楽しみそうにするな!」
ドンッと俺の胸を叩く阿波木副隊長。彼からの言葉は俺の心を地に落とした。
笑顔で去っていく副隊長、それを見守る俺に八重筒達は同情の目を向けた。
「早く行こうぜ。そろそろ時間だ。」
「そう落ち込むなよ!大丈夫、地獄の第二の訓練でもお前なら生き残れる!」
含み笑いで語る八重筒の腹を条件反射で俺は殴る。ついでに後ろでくすりと笑ったリクの脛を蹴った。
『後五分で説明会を開始する。皆、着席するように。』
遂に始まる。喧騒に包まれた大ホールは瞬時に静まり返った。
──
『第二の癒瘡木だ。今回の説明の前に脅しを入れておこう。』
まず登壇したのは癒瘡木隊長だった。尋常ではない緊張感。彼の立ち姿に怯える隊員もいた。
『聞いている者もいるだろうが、これから私達はプラントの最高戦力の一柱、神の子ノアを討つ。その戦いは熾烈なモノとなるだろう。』
規律に溢れていた空間が動揺に包まれた。一般隊員は大隊編成の理由を今初めて知ったからである。
──バンッ!
癒瘡木は演説台を強く叩く。静まれ、言葉でなくても意味は理解できた。
『当然。我々の被害はゼロでは済まない、確実に死人は出る。いいか。これは脅しだ。例え死ぬとあっても、神を討たんとする者だけこの場から残れ!!』
鼓膜が張り裂けそうな大声量。これでマイク使ってないんだぜ。
この癒瘡木の脅しの効果は確かだった。欠ける者はゼロ。皆、命知らずの神殺しに名乗りを上げるのだった。
『感謝する。今貴様らの勇気が日本を、アジアの未来を大きく変えた。必ず勝つぞ。』
大規模編成に必要なのは士気。癒瘡木は見事、最大まで上げることに成功した。
ここで癒瘡木は降壇する。次上がってきたのは、第一の天竹紫苑であった。
『これより、任務についての説明に入る。まず神の子ノアの現在の状況だ。』
壇の後ろには大型のモニターがあり、日本近海の天気図が映されている。
『諸君らはそろそろ夏も終わり秋が来ると思う者が多いだろう。だが、今年は秋なぞ来ないぞ。』
予想天気図が1日ずつ移り変わる。そんな中、小笠原近くの太平洋上に大きな影が移ってきた。
『夏の終わりを告げる、秋雨前線。台風が来ることで大雨を降ろす。そして、今観測史上最大の台風が訪れようとしている。』
『事前情報として、神の子ノアには水を操る力が確認されている。さて、この世で最もエネルギーを持つものといえばだが、それは水だ。あいつらが状態をコロコロ変えるせいで台風なんて馬鹿な事が起きる。』
勘の良い隊員には分かったろう。天竹紫苑は言う。
『この台風は意図して行われている。ほれは神の子ノアが規模な能力を行使して行っているのだ。それを我々は感知した。』
そう言うことで俺達は戦う準備を進めるわけか。納得がいった。
『今回は市街地戦を想定している。そもそも太平洋上のノアを相手取る事は不可能だからだ。部隊は三つ、一般市民の避難隊。直接ノアを叩く本隊。そしてその他のプラントを叩く遊撃隊。これより各部隊の隊長を発表する。』
『まず、避難隊。ここは第四の葉子に担当してもらう。技術が必要になってくるチームだ。配属された者は責任をもって任務に励んで欲しい。』
呼ばれると、いつもの見慣れた風貌の女性が登壇し始める
…?!葉子隊長が!
第四小隊は思わず顔を合わせた。恐らく、葉子隊長は癖者揃いの小隊長の中で最も人の心がないからだ。配属された人には同情するしかない。
『次に遊撃隊。隊長は第三の宵茸。本隊が邪魔を喰らわないようにプラントを間引く隊だ。隠密に長けた者を配属する。』
宵茸隊長。恐らくHRIで最も影が薄い男だ。もちろん悪い意味ではない、闇に紛れて敵を屠る例えるなら忍者だ。同じ隊の人でも会話をした人は少ないらしい。
『最後に本隊だ。真っ向から神の子ノアの力に向かう強靭さと逆境を乗り越える能力を備える者に我々の未来を託したい。』
未来を託す。この本隊は日本及び、アジアの人間の命を背負うことになる。負ければ終わり。また終末の開花の様に空は暗雲に包まれ、身動きの取れないほどの大雨に溺れるのだろう。
今度こそ、負けられない。負ければ生存できない。
『この隊を任せるのは、第二癒瘡木硬樹だ。個の力はトップクラス、大隊クラスの人数を動かす能力もある。適任だ。』
最後に癒瘡木隊長も登壇する。迫力は桁違い。体格は葉子隊長のトリプルスコアだろうか。この背中に未来を託すのなら、問題ない。広く大きな責任感だ。
大隊長達は各々抱負を述べるみたいだ。
『避難隊、葉子だ。民間人の被害を抑えるのは我々の役割だ。人が死ねばそれだけ我々の責任になる。覚悟して参加してきて欲しい。』
『…宵茸。黙って戦え。以上。』
『癒瘡木だ。俺から言えるのはただ一つ。この隊の者は俺が選別した者だ。各人が力を出しきれば必ず勝てる。背中を任せるぞ。』
──ピロン。
説明会は終わった。連絡を待つ俺らに通知が入る。
『部隊編成について。』
「来たぞ八重筒!」
「俺は、本隊だ。」
「マジか!」
八重筒に続き俺も確認すると、
『神木蓮。本隊にて、ノア討伐の任を命ず。』
「俺もだ…!」
「背中任せるぜ。」
「勿論だ。」
八重筒とグータッチで押し合う。不安はあれど、力を大きく感じた。
「で、リクはどうだ?」
「…僕?僕は本隊じゃなかったよ。火祭リク、遊撃隊での任を命ず。だって。」
「遊撃か!」
「うん。2人が安心して戦えるように露払い頑張るよ。」
リクはこの数ヶ月で大きく精神が成長した。死地を経験したからか。とても頼もしい。
「俺達で人類を救うぞ。」
「あぁ!」
「うん!」
─
「異常発達した台風が近づこうとしています。」
天気予報のコーナー。3年前に日本が半壊までと追い詰められた経験から、異常気象があれば30分以上も語られる大きなモノになってしまった。
女キャスターは白髪の研究者に話を振る。
「今年は特に規模が大きいです。これが秋雨前線と衝突すれば、また大雨が訪れるでしょう。」
「──。」
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