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7 終章 加護の森と百鬼夜行・改
7-4. 終章 加護の森と百鬼夜行・改
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空に凶星が浮かび上がり、大地が割れて白い煙が吹き上がり、全てが死に絶えることを予感したあの日。
死は退けられ、この目にまた鮮やかな世界が取り戻された。
あの奇跡の出来事が、イグドラシルの巫覡であるエルフのおかげだと聞いて、ウッパラは一目でもいい、そのエルフに是非お会いしたいと思っていた。
その願いがこんなに早く叶うなんて。
ただ、蛟と話せる者を寄こすようにいう要望には、正直応えられる自信はない。
だが、大僧正のご命令とあらば、否やはない。向こうも、可能性を試すだけだから、そう難しく考えないでいいと仰っているようなのが、救いではある。
隣国イグドラム国の国境を、生まれて初めて越え、そこからは迎えの飛行竜にて、首都セイヴ手前の飛行竜の竜舎で降り、豪華な馬車へ乗り継いであっという間にイグドラム国立図書館、イグドラシルへと辿り着いた。
イグドラシルの正面の広場で、イグドラシルの司書達が出迎えてくれている中、その中央に他と違う色の服を着た黒髪のエルフと悪魔がいた。
話に聞いていた第一司書の容貌と、護衛の悪魔であることがすぐに分かった。
馬車から降りると、第一司書自らやって来て、手を取って下さる。
「ようこそ、お出で頂き感謝する」
髪と同じ、赤みを帯びた黒い瞳で真っ直ぐ見つめてこられる。
「貴方の事は伺っております。その歌声で、陸の王ともいわれる三觭獣を退けたとか。どうか、お力を貸していただきたい」
「はい、もちろんです。そのために参りました。私はヴィドラ連邦大僧正の甥にあたりますウッパラと申します。変態を経ていない若輩者ではございますが、精一杯努めさせていただきます」
「ありがとう、私はソゴゥ、こちらは護衛のヨルだ」
第一司書に会えた感激のあまり、つい目を潤ませてしまう。
「サンダーソニア、また数日よろしく頼む」
ソゴゥ様は振り返られ、山吹色をした長い髪の赤い司書服の女性に言った。
「かしこまりました。いってらっしゃいませ、館長」
「早速、私の生家へ案内させていただく。荷物はそちらで全てかな?」
「はい」
「よし、直ぐに出発する。少し強引な移動方法のため、気分が悪くなったら、すぐに知らせて欲しい」
「私はこう見えても軍属ですので、多少の事は問題ありません」
私の体と荷物を護衛の悪魔が持ち上げると、ソゴゥ様はにっこりと笑い「では、お言葉に甘えて」と言った瞬間、視界が空の中に変わった。
「へ?」
「瞬間移動だ、繰り返して遠距離を移動する。気持ち悪かったら目を瞑っているといい」
「いえ、面白いです」
「そうか、それは良かった」
悪魔の魔法かと思っていたら、ソゴゥ様の目が緑色に光る度に景色が変わるので、この瞬間移動はソゴゥ様の能力なのだという事が分かった。
やがて、森の中の大きな城のような建物の前に到着し、その門扉の前で丁寧に降ろされた。
「ここが、私の家だ」
ソゴゥ様が門扉の鳥の意匠に声を掛けると、扉が開き、中からエルフの使用人と思しき服装の女性と、屋敷の女主人と思われるエルフが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ! ようこそイグドラム十三領ノディマー家へ。私は当主の母であり、そちらのソゴゥ母のヒャッカと申します。ここを我が家と思って、どうぞ、おくつろぎください」
「ありがとうございます。ヴィドラ連邦国より参りましたウッパラと申します」
「ウッパラさんは、きっとソーちゃんと同じ年くらいね、ソーちゃんのお友達になってあげてくださいな」
「え? そうなの?」とソゴゥ様がこちらを見てこられる。
「ナーガ族の方は、幼生期間が長いのよね。エルフも長生きの種族ですけど、成人体になるのは、二十年前後と、人間と同じくらいなのに対して、大ナーガとなるウッパラさんの種族の方は特に幼生期間が長い傾向があるから、幼く見えても精神的には成熟されている方が多いのよ」
「母さんは、前大司書で、妙な能力があるから、相手の事がなんとなくわかるらしいんだ。ここはもう、俺の家だし、堅苦しいのは無しにしよう。俺の事はソゴゥと呼びつけてくれ、俺もウッパラと呼ぶ」
「それは、恐れ多いです。貴方はこの国の王と並ぶ方、それにこの大陸中の命を救い、この星にとって最も重要な方です」
「そう堅苦しくなるな、マスターは友人が欲しいのだ」
「おい、人を友達いない奴みたいに言うな。お前も、いい加減マスター呼びはやめろって言ったよな? 罰ゲーム決めたぞ! お前を王都のデザイナーに貸し出してやる! モデルが欲しいって言っていたそうだ、イセ兄が執拗に勧誘されて困っているって愚痴っていたからな」
「ま、ソゴゥ、それは考え直してもらえまいか?」
「もう遅い」
「ソーちゃん、ウッパラさんは遠路はるばる来られて、きっとお疲れでしょうし、先ずは客室にご案内して差し上げて」
「ごめんウッパラ、二階の客室に案内するよ」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは、俺たちの方だ、本当に遠いところまで来てくれてありがとう」
またしても、感動で泣きそうになるのを何とか堪えた。
ソゴゥは相手の性別を最初に聞かされていから良かったが、そうでなければとんでもない美少女が来たと緊張していただろう。
白い肌に、紺色の長い髪、白い角と紺色の蛇足。ぱっちりとした紺色の瞳の中央に金の瞳孔が縦に光っている。
声が完全な少年の声だが、年齢までは分からず、ずっと年下だと思っていた。
二階に上がる際に、もともと台車用のスロープがあったが、ナーガ族を招待すると決まった時にきちんとした絨毯に張り替えて、ナーガ族の生態に適した環境に部屋を整えておいた。
「この部屋を用意したんだけど、何か不足や困ったことがあったら教えて。そういうのも知りたいんだ。俺たちの体のつくりの違いで、気づけていない事や、至らないことがあったら、遠慮なく指摘してくれると、こちらも勉強になるんでね」
「分かりました、ありがとうございます」
「どう? ざっと見て、何か問題点はない?」
「そうですね、椅子やテーブルの高さも問題ありませんし、基本的にはナーガもエルフ式のトイレやベッド、それに食器も使えますから、そんなにお気遣いいただかなくても大丈夫なんです。実は階段も上り下りできます」
「そうなのか」
「はい、でもお気遣いがとても嬉しいです」
「良かった」
ウッパラの言葉が本心と感じられ、ソゴゥは安心した。
「それじゃあ、着替えてからまた来るから、お茶でも飲んでいて」
ラタン敷の床に座り、低いテーブルの前にウッパラは落ち着く。
ヨルは彼の荷物をラタンベッドの脇に置くとその向かいに座り、使用人のピリカが置いたお茶をすすめる。
ウッパラとヨルはお茶を飲み、一息つく。
死は退けられ、この目にまた鮮やかな世界が取り戻された。
あの奇跡の出来事が、イグドラシルの巫覡であるエルフのおかげだと聞いて、ウッパラは一目でもいい、そのエルフに是非お会いしたいと思っていた。
その願いがこんなに早く叶うなんて。
ただ、蛟と話せる者を寄こすようにいう要望には、正直応えられる自信はない。
だが、大僧正のご命令とあらば、否やはない。向こうも、可能性を試すだけだから、そう難しく考えないでいいと仰っているようなのが、救いではある。
隣国イグドラム国の国境を、生まれて初めて越え、そこからは迎えの飛行竜にて、首都セイヴ手前の飛行竜の竜舎で降り、豪華な馬車へ乗り継いであっという間にイグドラム国立図書館、イグドラシルへと辿り着いた。
イグドラシルの正面の広場で、イグドラシルの司書達が出迎えてくれている中、その中央に他と違う色の服を着た黒髪のエルフと悪魔がいた。
話に聞いていた第一司書の容貌と、護衛の悪魔であることがすぐに分かった。
馬車から降りると、第一司書自らやって来て、手を取って下さる。
「ようこそ、お出で頂き感謝する」
髪と同じ、赤みを帯びた黒い瞳で真っ直ぐ見つめてこられる。
「貴方の事は伺っております。その歌声で、陸の王ともいわれる三觭獣を退けたとか。どうか、お力を貸していただきたい」
「はい、もちろんです。そのために参りました。私はヴィドラ連邦大僧正の甥にあたりますウッパラと申します。変態を経ていない若輩者ではございますが、精一杯努めさせていただきます」
「ありがとう、私はソゴゥ、こちらは護衛のヨルだ」
第一司書に会えた感激のあまり、つい目を潤ませてしまう。
「サンダーソニア、また数日よろしく頼む」
ソゴゥ様は振り返られ、山吹色をした長い髪の赤い司書服の女性に言った。
「かしこまりました。いってらっしゃいませ、館長」
「早速、私の生家へ案内させていただく。荷物はそちらで全てかな?」
「はい」
「よし、直ぐに出発する。少し強引な移動方法のため、気分が悪くなったら、すぐに知らせて欲しい」
「私はこう見えても軍属ですので、多少の事は問題ありません」
私の体と荷物を護衛の悪魔が持ち上げると、ソゴゥ様はにっこりと笑い「では、お言葉に甘えて」と言った瞬間、視界が空の中に変わった。
「へ?」
「瞬間移動だ、繰り返して遠距離を移動する。気持ち悪かったら目を瞑っているといい」
「いえ、面白いです」
「そうか、それは良かった」
悪魔の魔法かと思っていたら、ソゴゥ様の目が緑色に光る度に景色が変わるので、この瞬間移動はソゴゥ様の能力なのだという事が分かった。
やがて、森の中の大きな城のような建物の前に到着し、その門扉の前で丁寧に降ろされた。
「ここが、私の家だ」
ソゴゥ様が門扉の鳥の意匠に声を掛けると、扉が開き、中からエルフの使用人と思しき服装の女性と、屋敷の女主人と思われるエルフが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ! ようこそイグドラム十三領ノディマー家へ。私は当主の母であり、そちらのソゴゥ母のヒャッカと申します。ここを我が家と思って、どうぞ、おくつろぎください」
「ありがとうございます。ヴィドラ連邦国より参りましたウッパラと申します」
「ウッパラさんは、きっとソーちゃんと同じ年くらいね、ソーちゃんのお友達になってあげてくださいな」
「え? そうなの?」とソゴゥ様がこちらを見てこられる。
「ナーガ族の方は、幼生期間が長いのよね。エルフも長生きの種族ですけど、成人体になるのは、二十年前後と、人間と同じくらいなのに対して、大ナーガとなるウッパラさんの種族の方は特に幼生期間が長い傾向があるから、幼く見えても精神的には成熟されている方が多いのよ」
「母さんは、前大司書で、妙な能力があるから、相手の事がなんとなくわかるらしいんだ。ここはもう、俺の家だし、堅苦しいのは無しにしよう。俺の事はソゴゥと呼びつけてくれ、俺もウッパラと呼ぶ」
「それは、恐れ多いです。貴方はこの国の王と並ぶ方、それにこの大陸中の命を救い、この星にとって最も重要な方です」
「そう堅苦しくなるな、マスターは友人が欲しいのだ」
「おい、人を友達いない奴みたいに言うな。お前も、いい加減マスター呼びはやめろって言ったよな? 罰ゲーム決めたぞ! お前を王都のデザイナーに貸し出してやる! モデルが欲しいって言っていたそうだ、イセ兄が執拗に勧誘されて困っているって愚痴っていたからな」
「ま、ソゴゥ、それは考え直してもらえまいか?」
「もう遅い」
「ソーちゃん、ウッパラさんは遠路はるばる来られて、きっとお疲れでしょうし、先ずは客室にご案内して差し上げて」
「ごめんウッパラ、二階の客室に案内するよ」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは、俺たちの方だ、本当に遠いところまで来てくれてありがとう」
またしても、感動で泣きそうになるのを何とか堪えた。
ソゴゥは相手の性別を最初に聞かされていから良かったが、そうでなければとんでもない美少女が来たと緊張していただろう。
白い肌に、紺色の長い髪、白い角と紺色の蛇足。ぱっちりとした紺色の瞳の中央に金の瞳孔が縦に光っている。
声が完全な少年の声だが、年齢までは分からず、ずっと年下だと思っていた。
二階に上がる際に、もともと台車用のスロープがあったが、ナーガ族を招待すると決まった時にきちんとした絨毯に張り替えて、ナーガ族の生態に適した環境に部屋を整えておいた。
「この部屋を用意したんだけど、何か不足や困ったことがあったら教えて。そういうのも知りたいんだ。俺たちの体のつくりの違いで、気づけていない事や、至らないことがあったら、遠慮なく指摘してくれると、こちらも勉強になるんでね」
「分かりました、ありがとうございます」
「どう? ざっと見て、何か問題点はない?」
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「そうなのか」
「はい、でもお気遣いがとても嬉しいです」
「良かった」
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