異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

文字の大きさ
13 / 42
3 真夜中の攻防

3-3. 真夜中の攻防

しおりを挟む
王都の外れにある地下四十メートルの警察機関の研究施設で、空間遮断のボタンが押されたことが、地上へと伝えられた。
その後間もなく、地下から轟音と共に赤い光を纏った黒い砂が、施設建物を突き破って吹き上がった。
施設から王都の中心街まで大地が大きく揺れ、吹き上がった赤い光は、王都セイヴの外からでも観測できるほどの高さに達していた。

緊急招集により、周囲巡回の警邏と寮にいた警察官達が先ず初めに集まってきた。
街のなかは、軍部と宮廷騎士が警察機関の要請により警戒態勢を取り、王の緊急事態対処命令を待っていた。
吹き上がった黒い砂は上空でワダカマった後、回転しながら地上へと塊となって降下して来た。
黒い砂が触れた地表は、七から八メートルほどの多角錐に変形しトゲの様に突き出した。その中心を、黒い砂が人の形となって進む。
最初に現着ゲンチャクした警察官達は、その中心の黒い人型の砂を取り押さえようと捕縛を開始する。
そのうち近づいた一人が、砂に体を貫かれて倒れた。
倒れたエルフは黒い砂を纏って立ち上がり移動を始めると、その場に別のエルフが倒れていた。

「ありゃ、アレって魔法安全対策課の班長さんじゃないっすかね?」
黒い砂を纏って移動するエルフを警戒しつつ、ピラカンサスが抜け殻のように打ち捨てられた人物の人着から、箱の管理責任者のイフェイオンではと推測する。
眠っていたところを起されたらしい、凶悪な人相のニトゥリーが躊躇なく、黒い砂まみれで横たわっているイフェイオンの襟首を掴み上げる。
その顔を覗き込み、舌打ちをして地面に転がした。
「しぶとい奴よ、衛生科を呼びや」
「またまた、班長、めちゃくちゃ心配だったくせに、この班長さんが生きているか確認するまで、顔色悪かったっすよ」
「そうかよ、こいつには、こんな夜中に起こされて、仕事を増やされた愚痴を聞かせにゃあならんからのう」
医療行為のできるエルフがイフェイオンを連れていき、その他にも治癒魔法を持つエルフが、黒い砂の移動する方向に距離を取って追尾を始めた。
ニトゥリー班も、大地をトゲの林に変えながら移動する黒い砂を追って移動した。
黒い砂が移動の先々で大地を硬質化させて、鋭利で巨大なトゲを形成し、その地面から突き出た柱が、集まってきた警察官達の攻撃や接近を妨害していた。
攻撃魔法を当てたり、土魔法で壁を作って砂の進行を何とか阻もうとするも、魔術による攻撃は、砂を覆う分厚い魔力に吸収され、土壁は、砂が触れた途端崩れてしまい、土属性魔法はまったく意味をなさかった。金属で出来た武器も、砂に数秒当たっていると錆びて壊れ、警察官が持つ捕縛用の革の鞭や、木で出来た警棒でなら、対象に攻撃を当てることが出来たが、その際に近づいたエルフが砂の餌食になっていた。
取り込まれたエルフは、次のエルフが取り込まれる際に吐き出され、また、別の者の体が砂に貫かれて持っていかれる事を繰り返している。
ニトゥリーは邪魔な下草を退かすような仕草で、硬い柱を素手でなぎ倒して道を作り、真っ直ぐ砂を追っている。
「相変わらず、班長の魔力はえげつないですね、俺たちが壊そうとしてもびくともしない柱を、撫でるだけで倒していくなんて」
イソトマはピラカンサスと共に、ニトゥリーの直ぐ後を付いて走る。
彼の得物であるロープは、魔術で自在に操って対象物を絡め捕ったり、硬質化させて棍棒のようにしたり、粘度を持たせることも可能だ。
また、ピラカンサスは達人級の武術を扱い、ニトゥリーと同様に素手で戦うスタイルだ。
人を拘束する際は、相手の関節を外して動けなくするため、拘束具が不要である。
そしてニトゥリーは、視界に入った自分より弱い者を動けなくでき、悪夢を見せるなどの精神攻撃で戦意を消失させることも可能だった。
ノディマー家の者は、もともと魔力量の多いエルフの中にあって、皆が桁違いの魔力を持っており、身体強化を使えば、一騎当千の兵となる。
そのノディマー家においても一線を画す、もはや人類という括りでは収まらない魔力を保有する者がいる。そんな彼に対し、ニトゥリーは兄として心配が尽きない。
ソゴゥはイグドラシルの中にいる限り無敵だ。
イグドラシルの中では、司書以外魔法は使えない、そしてソゴゥには本人の魔力とイグドラシルから供給される魔力により、一回発動するのに数千のエルフが同時に魔力を供給する必要のある超高等魔術を、一人で連打できる。
その気になれば、大陸の半分を数か月とかからず制圧できるだろう。
ソゴゥが暴走したとして、自分は味方にしかならないつもりだが、それ以前に、そんな事には絶対ならない。

信じているとかではなく、分かるのだ。
ソゴゥは力に溺れたりすることはなく、自己肯定や顕示欲が他者を陥れるものへと向くこともない。
暴力を嫌い、他人を傷つける事を嫌い、きつい言葉を嫌っている。もしそう言う事をしてしまえば、彼自身が傷つくため、そうならないように行動している。
ここぞというときは、ちゃんと暴力と向き合うこともするが、陽だまりを好む猫の様に、温かく、明るい方を向いて生きている。
ただ、ちょっと悪いものに憧れたり、自分には良く分からない独特な感性というか、趣味があるようだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。 ◽️第二部はこちらから https://www.alphapolis.co.jp/novel/664600893/865028992

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

処理中です...