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3 真夜中の攻防
3-3. 真夜中の攻防
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王都の外れにある地下四十メートルの警察機関の研究施設で、空間遮断のボタンが押されたことが、地上へと伝えられた。
その後間もなく、地下から轟音と共に赤い光を纏った黒い砂が、施設建物を突き破って吹き上がった。
施設から王都の中心街まで大地が大きく揺れ、吹き上がった赤い光は、王都セイヴの外からでも観測できるほどの高さに達していた。
緊急招集により、周囲巡回の警邏と寮にいた警察官達が先ず初めに集まってきた。
街のなかは、軍部と宮廷騎士が警察機関の要請により警戒態勢を取り、王の緊急事態対処命令を待っていた。
吹き上がった黒い砂は上空で蟠った後、回転しながら地上へと塊となって降下して来た。
黒い砂が触れた地表は、七から八メートルほどの多角錐に変形しトゲの様に突き出した。その中心を、黒い砂が人の形となって進む。
最初に現着した警察官達は、その中心の黒い人型の砂を取り押さえようと捕縛を開始する。
そのうち近づいた一人が、砂に体を貫かれて倒れた。
倒れたエルフは黒い砂を纏って立ち上がり移動を始めると、その場に別のエルフが倒れていた。
「ありゃ、アレって魔法安全対策課の班長さんじゃないっすかね?」
黒い砂を纏って移動するエルフを警戒しつつ、ピラカンサスが抜け殻のように打ち捨てられた人物の人着から、箱の管理責任者のイフェイオンではと推測する。
眠っていたところを起されたらしい、凶悪な人相のニトゥリーが躊躇なく、黒い砂まみれで横たわっているイフェイオンの襟首を掴み上げる。
その顔を覗き込み、舌打ちをして地面に転がした。
「しぶとい奴よ、衛生科を呼びや」
「またまた、班長、めちゃくちゃ心配だったくせに、この班長さんが生きているか確認するまで、顔色悪かったっすよ」
「そうかよ、こいつには、こんな夜中に起こされて、仕事を増やされた愚痴を聞かせにゃあならんからのう」
医療行為のできるエルフがイフェイオンを連れていき、その他にも治癒魔法を持つエルフが、黒い砂の移動する方向に距離を取って追尾を始めた。
ニトゥリー班も、大地をトゲの林に変えながら移動する黒い砂を追って移動した。
黒い砂が移動の先々で大地を硬質化させて、鋭利で巨大なトゲを形成し、その地面から突き出た柱が、集まってきた警察官達の攻撃や接近を妨害していた。
攻撃魔法を当てたり、土魔法で壁を作って砂の進行を何とか阻もうとするも、魔術による攻撃は、砂を覆う分厚い魔力に吸収され、土壁は、砂が触れた途端崩れてしまい、土属性魔法はまったく意味をなさかった。金属で出来た武器も、砂に数秒当たっていると錆びて壊れ、警察官が持つ捕縛用の革の鞭や、木で出来た警棒でなら、対象に攻撃を当てることが出来たが、その際に近づいたエルフが砂の餌食になっていた。
取り込まれたエルフは、次のエルフが取り込まれる際に吐き出され、また、別の者の体が砂に貫かれて持っていかれる事を繰り返している。
ニトゥリーは邪魔な下草を退かすような仕草で、硬い柱を素手でなぎ倒して道を作り、真っ直ぐ砂を追っている。
「相変わらず、班長の魔力はえげつないですね、俺たちが壊そうとしてもびくともしない柱を、撫でるだけで倒していくなんて」
イソトマはピラカンサスと共に、ニトゥリーの直ぐ後を付いて走る。
彼の得物であるロープは、魔術で自在に操って対象物を絡め捕ったり、硬質化させて棍棒のようにしたり、粘度を持たせることも可能だ。
また、ピラカンサスは達人級の武術を扱い、ニトゥリーと同様に素手で戦うスタイルだ。
人を拘束する際は、相手の関節を外して動けなくするため、拘束具が不要である。
そしてニトゥリーは、視界に入った自分より弱い者を動けなくでき、悪夢を見せるなどの精神攻撃で戦意を消失させることも可能だった。
ノディマー家の者は、もともと魔力量の多いエルフの中にあって、皆が桁違いの魔力を持っており、身体強化を使えば、一騎当千の兵となる。
そのノディマー家においても一線を画す、もはや人類という括りでは収まらない魔力を保有する者がいる。そんな彼に対し、ニトゥリーは兄として心配が尽きない。
ソゴゥはイグドラシルの中にいる限り無敵だ。
イグドラシルの中では、司書以外魔法は使えない、そしてソゴゥには本人の魔力とイグドラシルから供給される魔力により、一回発動するのに数千のエルフが同時に魔力を供給する必要のある超高等魔術を、一人で連打できる。
その気になれば、大陸の半分を数か月とかからず制圧できるだろう。
ソゴゥが暴走したとして、自分は味方にしかならないつもりだが、それ以前に、そんな事には絶対ならない。
信じているとかではなく、分かるのだ。
ソゴゥは力に溺れたりすることはなく、自己肯定や顕示欲が他者を陥れるものへと向くこともない。
暴力を嫌い、他人を傷つける事を嫌い、きつい言葉を嫌っている。もしそう言う事をしてしまえば、彼自身が傷つくため、そうならないように行動している。
ここぞというときは、ちゃんと暴力と向き合うこともするが、陽だまりを好む猫の様に、温かく、明るい方を向いて生きている。
ただ、ちょっと悪いものに憧れたり、自分には良く分からない独特な感性というか、趣味があるようだが。
その後間もなく、地下から轟音と共に赤い光を纏った黒い砂が、施設建物を突き破って吹き上がった。
施設から王都の中心街まで大地が大きく揺れ、吹き上がった赤い光は、王都セイヴの外からでも観測できるほどの高さに達していた。
緊急招集により、周囲巡回の警邏と寮にいた警察官達が先ず初めに集まってきた。
街のなかは、軍部と宮廷騎士が警察機関の要請により警戒態勢を取り、王の緊急事態対処命令を待っていた。
吹き上がった黒い砂は上空で蟠った後、回転しながら地上へと塊となって降下して来た。
黒い砂が触れた地表は、七から八メートルほどの多角錐に変形しトゲの様に突き出した。その中心を、黒い砂が人の形となって進む。
最初に現着した警察官達は、その中心の黒い人型の砂を取り押さえようと捕縛を開始する。
そのうち近づいた一人が、砂に体を貫かれて倒れた。
倒れたエルフは黒い砂を纏って立ち上がり移動を始めると、その場に別のエルフが倒れていた。
「ありゃ、アレって魔法安全対策課の班長さんじゃないっすかね?」
黒い砂を纏って移動するエルフを警戒しつつ、ピラカンサスが抜け殻のように打ち捨てられた人物の人着から、箱の管理責任者のイフェイオンではと推測する。
眠っていたところを起されたらしい、凶悪な人相のニトゥリーが躊躇なく、黒い砂まみれで横たわっているイフェイオンの襟首を掴み上げる。
その顔を覗き込み、舌打ちをして地面に転がした。
「しぶとい奴よ、衛生科を呼びや」
「またまた、班長、めちゃくちゃ心配だったくせに、この班長さんが生きているか確認するまで、顔色悪かったっすよ」
「そうかよ、こいつには、こんな夜中に起こされて、仕事を増やされた愚痴を聞かせにゃあならんからのう」
医療行為のできるエルフがイフェイオンを連れていき、その他にも治癒魔法を持つエルフが、黒い砂の移動する方向に距離を取って追尾を始めた。
ニトゥリー班も、大地をトゲの林に変えながら移動する黒い砂を追って移動した。
黒い砂が移動の先々で大地を硬質化させて、鋭利で巨大なトゲを形成し、その地面から突き出た柱が、集まってきた警察官達の攻撃や接近を妨害していた。
攻撃魔法を当てたり、土魔法で壁を作って砂の進行を何とか阻もうとするも、魔術による攻撃は、砂を覆う分厚い魔力に吸収され、土壁は、砂が触れた途端崩れてしまい、土属性魔法はまったく意味をなさかった。金属で出来た武器も、砂に数秒当たっていると錆びて壊れ、警察官が持つ捕縛用の革の鞭や、木で出来た警棒でなら、対象に攻撃を当てることが出来たが、その際に近づいたエルフが砂の餌食になっていた。
取り込まれたエルフは、次のエルフが取り込まれる際に吐き出され、また、別の者の体が砂に貫かれて持っていかれる事を繰り返している。
ニトゥリーは邪魔な下草を退かすような仕草で、硬い柱を素手でなぎ倒して道を作り、真っ直ぐ砂を追っている。
「相変わらず、班長の魔力はえげつないですね、俺たちが壊そうとしてもびくともしない柱を、撫でるだけで倒していくなんて」
イソトマはピラカンサスと共に、ニトゥリーの直ぐ後を付いて走る。
彼の得物であるロープは、魔術で自在に操って対象物を絡め捕ったり、硬質化させて棍棒のようにしたり、粘度を持たせることも可能だ。
また、ピラカンサスは達人級の武術を扱い、ニトゥリーと同様に素手で戦うスタイルだ。
人を拘束する際は、相手の関節を外して動けなくするため、拘束具が不要である。
そしてニトゥリーは、視界に入った自分より弱い者を動けなくでき、悪夢を見せるなどの精神攻撃で戦意を消失させることも可能だった。
ノディマー家の者は、もともと魔力量の多いエルフの中にあって、皆が桁違いの魔力を持っており、身体強化を使えば、一騎当千の兵となる。
そのノディマー家においても一線を画す、もはや人類という括りでは収まらない魔力を保有する者がいる。そんな彼に対し、ニトゥリーは兄として心配が尽きない。
ソゴゥはイグドラシルの中にいる限り無敵だ。
イグドラシルの中では、司書以外魔法は使えない、そしてソゴゥには本人の魔力とイグドラシルから供給される魔力により、一回発動するのに数千のエルフが同時に魔力を供給する必要のある超高等魔術を、一人で連打できる。
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信じているとかではなく、分かるのだ。
ソゴゥは力に溺れたりすることはなく、自己肯定や顕示欲が他者を陥れるものへと向くこともない。
暴力を嫌い、他人を傷つける事を嫌い、きつい言葉を嫌っている。もしそう言う事をしてしまえば、彼自身が傷つくため、そうならないように行動している。
ここぞというときは、ちゃんと暴力と向き合うこともするが、陽だまりを好む猫の様に、温かく、明るい方を向いて生きている。
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