異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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5 嵐の夜の諍い

5-4. 嵐の夜の諍い

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数日前に手紙で相談を受けていた、ブロン・サジタリアスとの面会があり、ソゴゥは時間に応接室向かった。
ドアを開けると既にブロンが来ており、そして何故かカルラ王子とイセトゥアンも同席していた。
ソゴゥは困惑したように、カルラ王子を見つめる。
「カルラ王子、サジタリアス氏と面識がおありでしたか」
「ええ、ロブスタス王子に、サジタリアス家の者を紹介していただきました」
「ブロンさん、今日の相談はカルラ王子が同席されていても、大丈夫な内容なのでしょうか?」
「それが、大変個人的な相談事で、一国の王子であらせられるカルラ王子にお聞かせするような内容ではないのですが」
カルラ王子はニコニコしながら「私は、貴方の悩みが分かりますよ、妹さんのことですね」とブロンに言った。
「はい、そうです、妹のブロンテについてです。ですが、本当に恥ずかしい内容でして」
「まあまあ、私も王族の端くれ、民の悩みを聞くのが仕事ですので、貴方の悩みにも何かお力になれることがあるかもしれません。どうか私にも聞かせてください」
カルラ王子にそこまで言われては、断るすべもなくブロンは話し出した。
「実は、妹のブロンテの金銭の使い方が激しいと、妹の嫁ぎ先であるドナー男爵家に、妹と一緒に男爵家入りした使用人の者から、生家である我が家に連絡が来たのです。男爵も盲目的に、妹に金銭を与えているようで、しかも領地の税率を操作したらしく、領民から不満聞こえてきているというのです」
「そのお金を、何に使っているのでしょう?」とソゴゥがブロンに問う。
「全く、見当がつきません」
「失礼ですが、兄の貴方から見て、妹さんの容姿はどうだったのでしょう? パーティーの中心となるような魅力を持った容姿をされていたのでしょうか?」と、カルラ王子が尋ねる。
「いえ、ブロンテは内気で大人しく、地味な砂色の髪を嫌っておりましたし、女性にしては切れ長の険しく見える目をコンプレックスに感じているようで、自分からあまり人前に出ることを好んで居りませんでした。他の姉妹が侯爵家や伯爵家に嫁いでいるのに対し、自分だけが男爵家に嫁いだことを、容姿のせいと考えてもいるようでした」
「なるほど、では貴方は男爵については、どのような印象をお持ちでしょうか?」
「男爵ですか? 彼はイヲンの街を管理する、サジタリアス家の使用人頭でしたが、妹が嫁ぐ際に、第九領の領地を分け与えられて、イヲンを含む周辺の領地を治めています。真面目で大人しい、妹とよく似た者で、私欲のために金銭を浪費するイメージからはかけ離れた人物です」
「という事は、もともと二人は派手な浪費をする者達ではなく、妹さんは、昨日の様にパーティーの主役となるような人物ではなかったという事ですね?」
「妹がパーティーの主役ですか? ありえません」
「昨日は、間違いなくとても目立っていらっしゃいましたよ」
「本当ですか?」
「私もカルラ王子の歓迎パーティーの会場にいたので、その様子を見ておりました」
「どういう事でしょう?」
困惑するブロンに、カルラ王子が「では、確かめてみませんか?」と提案する。
「直接彼らの家に行って、そのお金が何に使われ、誰の手に渡っているのか確かめる必要がありますね。私も、彼らに会ってみたい。ブロンさん、一緒に行って確かめようではありませんか」
ブロンは、カルラ王子の後ろに控える上司のイセトゥアンに目を向ける。
「カルラ王子をご案内して差し上げろ、第九領まで行くなら、ヴィント・トーラスも呼んで、二人には王子の案内と護衛の手伝いをしてもらうとしよう」
「分かりました、隊長の許可が下りましたので、カルラ王子をイヲンのドナー男爵の家にご案内いたします」
「あと、第一司書殿にも一緒に来ていただきたい」
カルラ王子がソゴゥに言う。
ソゴゥは咄嗟に断りかけた言葉を飲み込み、イヲンの小さな図書館の事を思い出して、ついでに自分の目で見てくることを思いたち、了承するように頷いた。
「分かりました、こちらは私とヨル、それともう一人、司書を連れていきます。出発はいつにしますか?」
「直ぐにでも」とカルラ王子が言う。
「ブロン、男爵家に連絡を、どのような用事よりも優先するように伝え、明日の昼には到着すると伝えろ」
「承知致しました、隊長」
「では、竜舎で待ち合わせましょう。ノディマー隊長、飛行竜の手配はお任せしても?」
ソゴゥの問いかけにイセトゥアンが応える。
「はい、お任せください、では、二時間後に」
「分かりました、ではカルラ王子、ブロンさん、後ほど」

打ち合わせを終え、三人がイグドラシルを後にすると、ソゴゥは直ぐにレベル5の司書であるセアノサスがいるであろう共有の執務室へ赴き、これから一緒にイヲンに行くことを告げた。

「かしこまりました、館長。直ぐに支度を整えます」
ソゴゥの出て行った執務室で、アベリアが「こんなことなら、私がイヲンに行くと言っておけば・・・・・・」と、バイブレーションを利かせ過ぎた低い声に、セアノサスは心の内で恐怖に悲鳴を上げていた。
ソゴゥが荷物をまとめるため、自分の部屋に戻ると樹精獣達がやって来た。
「これから、第九領管轄のイヲンという街に行って来るから、今日はここへは戻らないんだ。ちゃんと、みんなでご飯を食べて、早く寝るんだよ?」
キュエと樹精獣達がそれぞれに返事をする。
ジェームスがソゴゥの元までやって来て、小さなガラスの瓶と、タンポポの綿毛に似た小さな植物を、ソゴゥに掲げて見せてくる。
「キュエエッ」
「え? 血をください?」
「え? 血をくださいとは、何であるか?」
ヨルは、ソゴゥの言葉に反応して、復唱していた。
「キュジュエ」
「何も言わずに、下さい」と訳しながらソゴゥは腕を差し出す。
「はい、どうぞ、って、喋っちゃった。何も言っちゃダメだったのに」
「いや、そこは『訳を聞かずに、下さい』だったのであろう」
ジェームスは小さな花の茎で、ソゴゥの親指チョンッと突いた。
ソゴゥの皮膚は傷つけられることもなく茎が血を吸って、花部分が赤くなっていく。
その花をジェームスがガラスの瓶に入れて、栓をした。
「これだけでいいの?」
キュエッツとジェームスが鳴いて、ソゴゥに抱き着く。
「大丈夫だよ、嫌じゃなかったよ、何か事情があるんだね? 別に、事情が無くても全然いいんだよ? 俺の兄さんたちなんて、理由なき暴力を振るってくることなんて、しょっちゅうだけど、嫌いになったりしないし。まあ、あいつらにはやり返すけど」
いつもは樹精獣達がソゴゥにするように、ソゴゥはジェームスの背中をポンポンと叩いた。
ソゴゥとヨルは着替えなどの荷物をまとめたカバンを持ち、樹精獣達を振り返る。
「じゃあ、行ってくるね」
樹精獣達がいつもより長めに、ソゴゥに引っ付いて来る。それと、信じられない事に、ヨルにも引っ付いていた。
嬉しいけれど、永遠の別れみたいで、少し怖くなる。
俺は油断しないし、背中にだって気を配るし、ヨルだっている。
でも、なんでこんなに不安なんだろう。
けれど、ジェームスが別れ際にヨルとソゴゥに向けて言った言葉を聞いて、ソゴゥは少し安心した。
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