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これが王宮いじめですか!?
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「味が薄い。やり直し」
これで2度目の紅茶入れ直し宣告。その前は温いということでやり直しだった。
一口付けただけの紅茶カップを無表情ですっとこちらに寄せてくる。机の上に肘を立て、頬をつくあたりが嫌みったらしい。
(何よ!ちょっと味が薄いくらい男なら黙って我慢しなさいよ!紅茶の色はちょうどいいじゃない!熱さだって完璧なのに!)
「返事は?」
「かしこまりました……」
言いたいことは山ほどあったけれど、相手は第一王子、こちらは侯爵令嬢であることを伏せて見習い騎士では文句を言うなんてできない。ロイドはすぐ側でルイスの書類を整理しているし、少し離れたところには衛兵にも見られている。
(顔と性格は絶対一致しないわね!どんなに顔が良くたってキラキラしていても、性格は嫌味ったらしいし意地悪だし!こんなのが王様になるなんて、この国の未来が不安でならないわ!)
紅茶カップを下げてカートから新しいカップを取り出して、もう一度最初から紅茶を淹れなおす。まわりは綺麗な花が咲き乱れている庭園なのに、私の心はバラの棘だらけで花なんて一個も咲いていない。
こうなったら1日でも早く騎士になって婚約破棄!自由の身となってルイスの側からおさらばよ!
「ロイド、これから予定はこの後どうなっている?」
「ノエラ公爵と公爵令嬢マーガレット様がこの後いらっしゃる予定です。先日のパーティーにご出席いただいたことへのお礼をルイス様に直接述べたいと」
「またあの方か…。いい加減しつこいな……」
ロイドの話を聞いた途端、ルイスは表情を顰め、小さく舌打ちしたのを聞き逃さない。
あら、珍しい。この人もこんな顔をするのね。どこの誰かは知らないけれど、ルイスに何か言い寄ってきているのかしら。だとするなら、ルイスの弱点かもしれないからちょっとでも話を聞きたいのだけれど。弱みを握れるものなら握っておくにこしたことはないものね。
「リリー。お茶を淹れ直したら下がっているように」
「はい」
せっかくだからルイスが苦手意識を持っている相手との話を聞きたかったのに。内心ぶーたれつつも、淹れ直したお茶をルイスの方に差し出した。
けれど私が下がるより先に相手がやって来たらしい。
「王子殿下、ノエラ公爵と公爵令嬢マーガレット様がいらっしゃいました」
「……わかった。通してくれ」
言われてロイドが、例の2人を庭へと案内してくる。私が王宮にやってきた時とは違う取次ぎの速さに、何気にイラッとしたなんて微塵もないですから!
庭の入り口の方からロイドに案内されてやって来たのは貴族然とした装いに白い髭を貯えた壮年の男と、その後ろからパーティーでもないのに煌びやかなドレスに豪華なジュエリーを身に付けた女性だった。
とくに真っ赤な口紅が印象的で、昼間からコルセットでこれでもかと寄せた胸元の谷間は見ているだけでお腹一杯になる。おまけに隣に立っているわけではないのに、つけている香水の匂いも風に乗って香ってきた。どれだけたっぷり振りまけばこの距離まで香ってくるのだろう。
(頭の中まで色気しかつまってなさそうな方ね)
第一印象というか、それしかない。王子付きの見習い騎士になってから王宮で貴族女性とすれ違うことがあったけれど、ここまであからさまにルイスにアピールしてくる女性はいなかった。
「これはノエラ公爵、マーガレット嬢。よくいらっしゃって下さいました。どうぞそちらに座りください」
ついさっきまでの嫌そうな顔は完全に消え去り、ニコリと微笑んだルイスからまた謎キラキラが放たれる。金髪碧眼、長身、美形。この3つにキラキラが加わったらもう最強である。
(ここしばらく近くでルイスを見てきて段々わかってきたのだけれど、これは『外面』ってやつですわね。でも『外面』って判っていても、このキラキラを向けられると眩しくて断れなくなるから性質がわるいわ)
これで2度目の紅茶入れ直し宣告。その前は温いということでやり直しだった。
一口付けただけの紅茶カップを無表情ですっとこちらに寄せてくる。机の上に肘を立て、頬をつくあたりが嫌みったらしい。
(何よ!ちょっと味が薄いくらい男なら黙って我慢しなさいよ!紅茶の色はちょうどいいじゃない!熱さだって完璧なのに!)
「返事は?」
「かしこまりました……」
言いたいことは山ほどあったけれど、相手は第一王子、こちらは侯爵令嬢であることを伏せて見習い騎士では文句を言うなんてできない。ロイドはすぐ側でルイスの書類を整理しているし、少し離れたところには衛兵にも見られている。
(顔と性格は絶対一致しないわね!どんなに顔が良くたってキラキラしていても、性格は嫌味ったらしいし意地悪だし!こんなのが王様になるなんて、この国の未来が不安でならないわ!)
紅茶カップを下げてカートから新しいカップを取り出して、もう一度最初から紅茶を淹れなおす。まわりは綺麗な花が咲き乱れている庭園なのに、私の心はバラの棘だらけで花なんて一個も咲いていない。
こうなったら1日でも早く騎士になって婚約破棄!自由の身となってルイスの側からおさらばよ!
「ロイド、これから予定はこの後どうなっている?」
「ノエラ公爵と公爵令嬢マーガレット様がこの後いらっしゃる予定です。先日のパーティーにご出席いただいたことへのお礼をルイス様に直接述べたいと」
「またあの方か…。いい加減しつこいな……」
ロイドの話を聞いた途端、ルイスは表情を顰め、小さく舌打ちしたのを聞き逃さない。
あら、珍しい。この人もこんな顔をするのね。どこの誰かは知らないけれど、ルイスに何か言い寄ってきているのかしら。だとするなら、ルイスの弱点かもしれないからちょっとでも話を聞きたいのだけれど。弱みを握れるものなら握っておくにこしたことはないものね。
「リリー。お茶を淹れ直したら下がっているように」
「はい」
せっかくだからルイスが苦手意識を持っている相手との話を聞きたかったのに。内心ぶーたれつつも、淹れ直したお茶をルイスの方に差し出した。
けれど私が下がるより先に相手がやって来たらしい。
「王子殿下、ノエラ公爵と公爵令嬢マーガレット様がいらっしゃいました」
「……わかった。通してくれ」
言われてロイドが、例の2人を庭へと案内してくる。私が王宮にやってきた時とは違う取次ぎの速さに、何気にイラッとしたなんて微塵もないですから!
庭の入り口の方からロイドに案内されてやって来たのは貴族然とした装いに白い髭を貯えた壮年の男と、その後ろからパーティーでもないのに煌びやかなドレスに豪華なジュエリーを身に付けた女性だった。
とくに真っ赤な口紅が印象的で、昼間からコルセットでこれでもかと寄せた胸元の谷間は見ているだけでお腹一杯になる。おまけに隣に立っているわけではないのに、つけている香水の匂いも風に乗って香ってきた。どれだけたっぷり振りまけばこの距離まで香ってくるのだろう。
(頭の中まで色気しかつまってなさそうな方ね)
第一印象というか、それしかない。王子付きの見習い騎士になってから王宮で貴族女性とすれ違うことがあったけれど、ここまであからさまにルイスにアピールしてくる女性はいなかった。
「これはノエラ公爵、マーガレット嬢。よくいらっしゃって下さいました。どうぞそちらに座りください」
ついさっきまでの嫌そうな顔は完全に消え去り、ニコリと微笑んだルイスからまた謎キラキラが放たれる。金髪碧眼、長身、美形。この3つにキラキラが加わったらもう最強である。
(ここしばらく近くでルイスを見てきて段々わかってきたのだけれど、これは『外面』ってやつですわね。でも『外面』って判っていても、このキラキラを向けられると眩しくて断れなくなるから性質がわるいわ)
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