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女神と宝石

第九章 騎士団入隊

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 うららかな午後の昼下がり。
 少しづつ春が近づいていることを感じさせる暖かな日差しが気持ち良い。敷地内に植えられた木々も春を待ちわびたように、若葉を茂らせようとし、小さな草花がその根元に蕾をつけている。

 しかし、騎士団敷地内を歩むグレンの表情は、普段より3割増しで硬い。今から厳しい冬を迎えんとしているかのようなオーラを纏わせていた。

 廊下の先から歩いてくる副将軍の姿にすれ違った騎士たちは慌てて敬礼を取った。若くしてギルバートの信頼を得て、副将軍の地位にまで上り詰めた知将。

 ギルバートが王になれば次の将軍職にはグレンが就くのでは?と、まことしやかに噂が流れている。
 けれど、周囲から自分に向けられる羨望の眼差しなどどこ吹く風で、グレンは第2騎士団長ハロルド・ヴォルアゼンの執務室の扉を叩いた。

「失礼」

 部屋主の返事を待たずに、グレンはコココンと素早くノックして執務室に入る。
 そこにはグレンよりさらに表情を曇らせたハロルドが、机に両肘をつき、重そうに俯かせている顔を上げた。部屋にはハロルドしかおらず、悲壮感が満ちている。

(問題なく終わったのかどうか判断つかないな)

一見しただけでは首尾がどうだったのか判断つかず、

「お疲れ様です。今朝の入団紹介は首尾よく終わりましたか?」

「ええ。妻帯者が多いウチに配属されるには、随分年若いのが配属されたものだと話が盛り上がる程度で済みましたよ」

「ちなみに彼女を怪しむ者は?」

「今のところ誰にも気づかれていない筈です。容姿は母親似ということにして、年齢的にもまだ中性的な特徴が残っていてもおかしくありません。さらにグレン殿からの紹介状とご親戚という触れ込みであれば、その素性を誰も疑う者はいないでしょう」

「それは良かった。これなら上手くやり過ごせそうですね」

 これで第1関門クリアと、グレンとハロルドは同時にため息をついた。
 いくらギルバートたっての頼みとはいえ、やはり女を騎士団に入団させるのは厳しい。ならば男と偽って入団すればいいと話は落ち着いた。

 一昨日、グランディ家にグレンとハロルドは共に招かれた。

 そこでギルバートから紹介された目を見張るほどに美しい少女。
 話に聞いていた通り薄桃色を帯びた長い銀糸は、サイドを少し残して後ろでひとつに纏められ、白い小さな顔に髪と同じ銀の睫毛に縁取られた大きな金の瞳。


 騎士団に入る前に、騎士の作法を学んでいる途中ということで煌びやかなドレスではなく、貴族子弟が着ている貴公子風の男装を着ていた。

 しかしその上からでも分かる華奢な体躯。細い手は簡単に握りつぶされてしまいそうだ。これで本当に重い剣を持ち上げられるのか疑わしい。

(この子は本当に人なのか?)

 お世辞ではなく本気でグレンは思った。
 動いている方が不思議に思えるほどの人離れした美しさは、一歩間違えれば畏怖の範疇に入る。

 ギルバートが女神だと言っていたのも、あながち恋に盲目になっていた所為だけではなかったらしい。窓から差し込む日差しに銀の神が光り輝き、金の瞳はグレンとハロルドを前にして不安げに揺れ、儚げで今にも消えてしまいそうな美しさだった。

 しかしこれだけの美しさなら、社交界に止まらず王都、もしかすれば国内で必ず噂にのぼるだろう。あの夜会に出席できるだけの階級身分があるなら尚更だ。あの夜会は半ばギルバートの婚姻相手を見つけるために催されたような夜会だから。

 だが、グレンはあれからギルバートに無駄だと言われても、夜会出席者の身元はもちろん、貴族に限らず平民まで少女の外見と一致する者を探したが見つからなかった。

 つまり誰も目の前の奇跡のように美しい少女を知らないのだ。

 名前はアイカ

 たったそれだけだ。ファミリーネームもミドルネームもない。
 騎士団に男と偽って入団するのに、その身元は知れない。

(いくらなんでも不用心過ぎないか?)

 と、グレンは内心疑ったが、アイカを目に入れても痛くない様子のギルバートに言うのは憚られた。
 何しろ、騎士団入団まであと3日ということで緊張した面持ちのアイカが、胸の前で両手を組み、不安そうにギルバートを見上げると、

「どうしよう。急に緊張してきちゃった。ギルバート、私上手くやれるかな?」

「俺が礼儀作法を教えただろう?アイカは物覚えがいいから、上手くやれるよ。騎士団に入団するギリギリまで俺も付き合うから」

「私がんばって覚えるから!」

「その意気だ」

 と、女性に対して見せたこともないような笑顔で、将軍であるギルバート自ら礼儀作法を指南していると聞いたときは、グレンとハロルドの2人揃って、呆気に取られ何も言えなかった。
 
 あのギルバートがここまで態度を変えるとは。
 それだけギルバートが少女に対して本気だということが伺える。

 おまけに帰り間際、玄関先どころか帰りの馬車前までわざわざ見送りに来て、

「2人とも、くれぐれもアイカのこと、頼んだからな?」

 ついさっきまでアイカに向けていた笑顔とは正反対の、悪鬼の形相で念押しされた。そんな顔は戦場を剣を片手に馬を駆けていた頃以来だ。

(そんなに男ばかりの騎士団に入れたくなければ、上手く言いくるめて入れなければ誰もこんな苦労はしないものを)

 なのにギルバートはアイカに何でも言うことを聞くと言ってしまったらしい。(馬鹿だ)

「そういえば、部屋も個別に離れを用意したんでしたね」

「大部屋なんて無理でしょう。万が一にも彼女の着替えているところを見られたら一発で終わりですからな。急な入団で部屋が用意出来なかったことにして、離れをこっそり改修しました。一見して他の部屋と変わらない質素な部屋ですが、隠し部屋に繋がってます」

(隠し部屋?)

 事前の打ち合わせでは聞いていないハロルドの説明に、グレンの眉間がピクリと反応した。

「もちろんギルバート様が隠れてアイカに逢引するための部屋です。あの方の髪色は良くも悪くも目立ちますからな。ダメだと言ってもあのご様子でしたら、毎晩でも通われるでしょう」

「それは……ご配慮感謝いたします……」

「グレン殿、これだけは先にお伝えしておきます。ギルバート様が入団したばかりの見目の良い見習い騎士の部屋に入っていったなんて噂が立った日には、私は全て自分の一存で彼女を入団させたことにし、騎士団長を引退させて頂く覚悟です」

「ご心中、承りました……」

 生真面目なハロルドにグレンも思わず同情する。なかなか結婚しないギルバートが実は美少年趣味で、しかも自分の騎士団配属の見習い騎士と逢瀬しているなどと噂が立てば、誤解であったとしても王に忠誠を誓う騎士として責任を感じずにはいられないだろう。

 実直な性格のハロルドなら尚更だ。
 そこまでの覚悟をハロルドにさせたのであれば、尚更ギルバートには是非とも結婚してもらわなくてはならない。

(いつまで見習い騎士をさせるつもりか知らないが、こんな事をしている暇があるなら子作りしていたほうがまだ国の為になるんじゃないか?)

 そうすれば国王のセルゲイからグレンを通してギルバートの周りにいい相手がいないのか、探りを入れられることもなくなるだろう。どこまでもグレンは現実主義である。

 ちなみに何故ハロルドの第2騎士団を選んだのか、その理由をこっそりギルバートに尋ねたところ、アイカに最初愛を囁いて「おじさんは嫌だ」と言われたのだと気落ちした声で教えてくれた。

 アイカの年齢を考えれば確かに36歳のギルバートはおじさんの部類に入るかもしれないが、国の英雄であり次期国王をおじさんと拒んだ度胸は大物だろう。

 そこでアイカと同じか近い年齢の騎士、または騎士見習いが多く配属されている騎士団は除外し、最終的に消去法で残ったのが平均年齢が高く、妻帯者が多い第2騎士団だったらしい。

 しかし、さすがにそれをハロルドに教えるのは気が引けて、グレンは言わないでおくことにしたのだ。


▼▼▼


 騎士団はまず第一に剣の鍛錬。体力作り。

 戦争は終わっても、あくまで停戦中。いつなんどきまた戦争が始まるか分からない。また王に忠誠を近い、国を守る騎士として、常に剣の鍛錬は欠かしてはならない。

 そして騎士は剣を通して礼節を学び、弱者を守り、己を律する者でもある。

 というのは建前で、街の見回りや、市民から寄せられる苦情受付相談、各所警備担当の打ち合わせや備品の管理発注、その他諸々の雑用をこなし、合間を見つけて鍛錬というのが騎士団の現状であった。

(つまり、便利屋ってことね………)

 そして騎士団に入団すれば、即騎士というわけではない。誰しも最初は見習い騎士から始まるらしい。ずっと剣を振っているだけというより、よっぽど現実味がある仕事内容だ。少しファンタジーを夢見すぎていたのかもしれない。

「アイン!アイン・キャベンディッシュ!」

「はっ!」

 名前(偽名)を呼ばれて運んでいた荷物を床に置いて、アイカは敬礼を取った。
 敬礼は足を閉じて先を45度開く、背筋は伸ばして額にかざす腕は肩より上に、右手は-30度。反対の左手は真っ直ぐ身体のラインに沿って指先まで伸ばす。

 ギルバートが毎日朝から晩まで教えてくれた騎士として最初に学ぶ敬礼様式である。

「私物を部屋に運び終えたら、届いた備品を各所に届けにいく。荷物の整理は夜空いてる時間にしろ」

「はっ!了解いたしました!」

 声を張り上げ返事をする。ここでは自分が一番下っ端だ。自分とギルバートの関係はもとより、性別が女であることも秘密となっている。知っているのは事前に紹介してもらった副将軍のグレンと、騎士団長のハロルドのみ。他の騎士たちには女であるとバレないように、男のフリもしなくてはならない。

 騎士団に入団するための偽名は『アイン・キャベンディッシュ』

 グレン副将軍の遠縁の親戚という触れ込みと紹介状で、見習い騎士として季節はずれの入団が許可された。
 通例ならば夏前に揃って入団するらしい。

「しかしお前、近くで見ると本当に女顔だな」

 いきなり顔を近づけられアイカはドキリとする。
 かといって敬礼している姿勢をやめて、後ろに下がるというのはきっとダメだ。

(やばいっ、近寄らないでっ!離れて!)

 とたんにどっと冷や汗が流れる。しかし、すぐに相手は顔を遠ざけ

「ウチはもう落ち着いた妻帯者が多い騎士団だからまだいいが、それだけ綺麗な見てくれだと、他の隊だと血気盛んなヤツラに酒に酔った勢いで襲われたかもしれんぞ」

 ハッハッハッ、と陽気に笑いながら肩を手加減なくバシバシ叩き、同じ第2騎士団の騎士だろう40歳前後と思われる相手は倉庫の方へと大股で歩いて行ってしまった。

 どうやらバレずに済んだようで、ほっと胸を撫で下ろす。
 にしても――

(痛い……なんて力なの……。それに皆の名前も早く覚えなくちゃ。せめて同じ隊の上司の名前くらい早く覚えないと失礼よね)

 骨が折れるんじゃないかと思うくらい強く叩かれて痛む肩をさする。
 まだ入団してそう時間は経ってないのに冷や汗が止まらない。

 そのまま突っ立っていても何も始まらないので、足元に置いていた荷物をまた抱え、自分の部屋があるという離れに運ぶ。

 離れというだけあって持ってきた荷物を運ぶのに時間がかかるけれど、自分自身が言い出し、ギルバートだけでなくグレンやハロルドの協力も得て無理に入団させてくれたのだろうことを考えれば、部屋までの距離など贅沢は言っていられない。

 荷物は一先ず自分の部屋に急いで運んで、荷解きは夜に。
 そして言われた通りに倉庫に向えば、そこには先ほど運んだ自分の荷物が軽く思えるほどの大きな荷が大量に山積されていた。

「これを街の指定の場所に指定の数だけ配っていくんだ。荷の数をこのリストごとに今日中に分けるのがお前の仕事だ。いいな」

「い、イエッサー!」

「よし!いい返事だ。じゃあ頑張れよ」

 バンッと胸に押し付けられるようにして渡される紙の冊子。
 そして相手は倉庫から出て行ってしまい、ポツンと1人倉庫に残される。

(こ、この量を1人で運んで分けないといけないの!?しかも今日中!!さっき入団したばかりなのに!?)

 まずどの荷に何が入っているかも分からない。
 荷を開けて中身と数を確認してから、それから……?考えるだけで気が遠くなってくる。
 しかし、入団初日に初めて任された仕事だ。やりとげなければ無能と思われてしまうかもしれない。

「やってやろうじゃない!」

 着ていた上着を脱ぎ捨て、シャツの袖を捲り上げ、見習い騎士としてアイカは初仕事に取り掛かった。


▼▼▼


 陽が落ちてすっかり夜になった時間帯。
 騎士団詰め所の離れの室内で、一見壁と思われる場所がカタリと音を立てゆっくりと内側に開く。そこには在るはずのない隠し通路が続き、そして物音を立てないようにそっと入ってきたのは、漆黒の執務服を着て、手に燭台を持ったギルバートだった。

「アイカ?」

 すでに部屋に戻っている時間だ。なのに部屋の明かりはなく、隠し部屋に通じている廊下を通るときに持ってきた燭台の、心許ない明かりだけが室内を照らす。

 そこにギルバートが通ってきた隠し通路から、するりと足元を通りぬける3色の毛玉。外でよく見る虎模様柄でも、2色でもない3色の毛色を持った珍しい柄の猫。

 アイカが友達のココだと言ってギルバートにも紹介してくれたが、女神と知り合いの猫となると、とたんに普通の猫には思えなくなる。屋敷にいた筈なのに、こうしてギルバートの後をいつの間にかくっついてきて、ちゃっかりアイカの部屋に入り込むあたり勘ぐらずにはいられない。

 そして薄暗闇の部屋をココは迷いなく歩いていき、ぴょんと飛び乗ったのはベッドだ。そこに燭台の明かりを向けると、上着を脱いで白いシャツを着た人影が横たわっていた。

「疲れて寝てしまったのか……」

 運びこんだ荷も荷解きされないまま部屋の中央にまとめられ、硬いスプリングの簡易ベッドに、着替えもせずに横たわり深く眠っているアイカの姿があった。疲れきって身体を拭く気力もなく、ベッドに突っ伏したのだろう光景が思い浮かんで苦笑がこぼれる。

 持っている燭台を机の上に置き、眠るアイカを上向かせるとシャツのボタンを上から2つほど外し、後ろでまとめているリボンもとってやる。

(今日は本当にアイカが心配で何も手につかなかったな)

 執務机の上にグレンから報告書類を出されても、サインするためのペンを持つどころか、書類に目を通す気にもなれなかった。何度アイカがいるという倉庫の様子を見に行こうとしたかわからない(その度にグレンに睨まれた)。

「愛している。どこにも行かないでくれ。ずっと俺の傍に」

 常にギルバートの頭の隅には、池へ走り逃げていくアイカの後ろ姿がある。
 その光景が過ぎる度、ギルバートの胸は締め付けられる。

(このまま眠るアイカを屋敷に連れ帰れたらどんなにいいか)

 反応が返ってくることはないと分かっていて、深く眠っているアイカの唇にギルバートは指を差し込み、薄く開いた唇に口付けた。

 しばらくアイカの唇を楽しんだ後、ギルバートは頬から銀糸の髪へと指を滑らせ、ベッドの下の方に畳まれたままの布団をそっとかけてやる。

 一緒に夜食を、と思って持ってきたハムを挟んだサンドイッチはもう無理だろう。しかし明日の朝くらいなら朝食にまだ食べられるだろうと籠を机の上に置く。
 それから――

「次はお前の飯も持ってきてやるよ。だからここで騒ぎを起こすんじゃないぞ?」

 サンドイッチの入った籠の中から、カットされたチーズを一枚取って、ベッド脇に丸まって毛づくろいしているココの方に差し出すと、軽く自分とチーズを見比べてから食べ始めた。

(やはりこの猫、ただの猫じゃないな。屋敷でもあれからは暴れることなく大人しくしているし、壁で爪とぎもしない)

 猫だというのに騎士団では静かにしないといけないというのを理解しているかのように、チーズを差し出しても全く啼かない。先ほどチーズと自分を見比べたのも、品定めされた気がするのは考え過ぎではないだろう。

「そんなに心配なら騎士ごっこなんてさせてないで、娘一人くらい屋敷に閉じ込めておけばいいじゃないですか」

 背後からかけられた声は同じく隠し通路から姿を現したグレンだ。入団初日から隠し通路を使って、さっそくアイカの部屋にきたギルバートを呆れ顔で見ている。

「お前なら愛した女性を無理矢理屋敷に閉じ込めることができるのか?」

 問われて軽く肩を竦めてグレンはおどける。グレンも何人か女性と付き合ったことがあるが、いまだに独身だ。付き合ってきた女性たちの中に、ギルバートのように1人しか見えないほど惚れたという相手はいない。

 返答の出来ない質問だ。

 それから声をいくぶん事務的なもの変えてしてグレンはポケットからシルクのハンカチに包んだものを取り出す。

「ギルバート様、頼まれておりました石の鑑定ですが」

「本物だったか?」

「はい。鑑定した宝石商にはこのダイヤモンドの原石をどこで手に入れたのか、しつこく食い下がられましたよ」

「そうか……」

取り出した石をハンカチに包んだまま差し出すと、ギルバートはそれをハンカチごと受け取り自身のポケットにしまう。

「これほどの大きさの原石、それもかなり純度が高い。磨けば最高級クラスの宝石になるでしょう。ギルバート様はこれをどちらで手に入れられたのか、自分にも教えてはいただけないのでしょうか?」

「今は言えないとだけ言っておく」

「アイカですか?」

 グレンの勘の良さに、ギルバートは忌々しそうに眉間に皺を寄せた。

「この件については他言無用だ。いいな」

「かしこまりました」

 グレンに口止めをしたものの、ギルバートの不安は増す一方だった。

 アイカが炭をダイヤモンドに変えたときの光景をギルバートは思い返す。出来上がったそれをアイカは苦笑して失敗作だと言ったが、ギルバートにはとても失敗作には見えなかった。

(黒い炭がアイカの手の下で光り、ダイヤに変わる。あれは神のみが為せる業であり奇跡そのものだ)

 磨かれる前のダイヤの原石。
 研磨すればどれだけ輝くか未知数の宝玉。

 キラキラしていないからダイヤモンドじゃないと言っていた言葉から考えるに、アイカはもしかすると研磨した後のダイヤモンドを作ろうとしていたのかもしれない。
 しかし、出来上がったのはまだ研磨されておらず光を反射しない原石で失敗作だと判断した。

 女神として生まれたばかりで世界のことを何も知らないと言いながら、炭とダイヤモンドは元は同じモノだと言ったりもする。

 あのとき、アイカがした説明の半分もギルバートは理解できなかった。しかし炭をダイヤモンドの原石に変えることが出来る力はとんでもない力だ。

 他にどんな力をアイカが持っているのか分からないが、本人は自分の力に無頓着のようで力を使うときには気をつけるように注意してみたものの、果たしてどうだろうか。

 これが誰かに知られれば、アイカは欲にまみれた者たちに狙われることになるだろう。

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