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女神と宝石
番外1 都合のよい偽り※
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「アイカは疲れています。ですが次の日も仕事です。それを十分考えてから手を出して下さい。寝坊でもしたら、今後一切触れさせてもらえなくなりますよ」
一日の仕事を終えて、離れに行こうとしたギルバートに後ろからかけられたグレンの言葉。
淡々した口調は念押し程度だろう。
それくらい言われずとも分かっている、と内心思ったが、けれどすぐさま『本当に?』と自問自答して答えられず、結局グレンに何も返せないまま騎士団の自室を出た。
アイカの部屋になっている離れは、騎士たちが寝泊りする大部屋とも離れているうえ、さらに隠し部屋の隠し通路を使って部屋にいくため、とても遠回りをする。
(俺が部屋に出入りするのを見られたら騒ぎになるのは分かるが、隠れながらというのもなかなか面倒だな)
少しでも、1秒でも長くアイカの傍にいたい。直接部屋にいければその分長くいれるのに。そう欲がでてしまう自分を自嘲する。
グレンやハロルドがアイカを騎士団に入れるのにどれほど苦労したのか知っているのに、こんな身勝手なことを自分も考えるのだとアイカに会って初めて知った。
「アイカ、俺だ。はいるぞ」
「きゃっ!?」
「え、あ、すまない!!」
隠し通路の扉から離れの部屋に入る時、事前にノックはした。しかし着替えている際、胸を押さえ込むための厚布を口に咥えていた相手は返事が出来なかったらしい。
着替えている途中の乱入に悲鳴を上げて座り込むアイカに、ギルバートは慌てて後ろを向いた。
「ごめんなさい!もうすこし待って!」
背後で慌てて着替えている服の衣擦れ音が耳に届く。既に何度となくアイカの肌を見ていても、相手の着替えの最中というのは、それとは別の背徳感を刺激されてしまう。
「いいわ、もう大丈夫……」
「いや、俺も着替えている最中にすまない……」
許可が出てギルバートが振り返れば、長い髪は結ばずそのままに流してズボンに白シャツ姿のアイカが恥ずかしそうに立っていた。近くのテーブルに、今日も持ってきた籠を乗せる。
「今日も一日働いて疲れたんじゃないか?すこし持ってきたから食べるといい。体力をつけないとバテてしまう」
「あ、この前も来てくれたよね?起きたら机にサンドイッチが置いてあったわ。朝、ココと一緒に食べ……」
言っている途中のアイカをギルバートは腕に抱きしめた。
風呂に入って汗を流した後だろうか、慣れ親しんだ石鹸の香りが鼻腔をつつく。
もちろん風呂と言ってもグランディ邸のように温かな湯にゆっくり浸かるなんてこの離れでは出来ない。ギルバートも騎士団に寝泊まりする時は水浴びして絞った布で拭く程度だ。
アイカも同じく桶に水を入れてそれで身体を拭いたりするのが精々だろうし、誰かに見られないように常に気をつけなくてはならない。女性にそんな不遇を強いてしまっていると思うと、今すぐにでも騎士団を辞めさせてグランディ邸に連れ帰りたくなる。
(アイカが実は女神の力を使って、一瞬で身体を清めていたのをギルバートが知ったのはまだまだ先のことである。)
「同じ敷地内にいるというのに昼間はこうして会えないというのも、中々どうしてじれったいな」
ひょいと横抱きにして備え付けの簡易ベッドに腰を下ろすと、
「騎士団の仕事は慣れたか?騎士と言っても、戦争中でもない限り、街の見回りや仲裁、配達といった雑用がほとんどだ。思っていたのとは違うんじゃないか?」
「そうね、思っていたのとは違ったし毎日忙しくて疲れるけれど、私にはこちらの方が嬉しいかもしれない」
「嬉しい?どうして?」
「それって平和ってことでしょう?戦争するより平和の方がいいし、それに街の様子とか人々の暮らしとか見られて面白いもの」
「確かに戦争より平和の方がいいにこしたことはないね」
「それにね、例えば今日はコインの種類とか価値について教えてもらったから、これで自分でもお金を使ってお買い物できるわ」
教えてくれたフレッドには「コインを触ったことも見たこともないのか?」と随分呆れられてしまったけれど、金の価値を知らなければ、配達の仕事にも差し支えると丁寧に教えてくれた。
自信たっぷりにアイカに言われてしまうとギルバートも苦笑するしかない。お金の種類やコインの価値は確かにグランディ邸では教えてくれる者はいないだろう。それどころかアイカにモノを買わせてしまったことを詫びてくるかもしれない。
(俺の希望としては理想と違う騎士に幻滅してもう見習い騎士は止めたいと言ってくれる方が嬉しかったんだがな)
先日のスリに襲われた件もある。
だが、この様子では、もう騎士を辞めないか?とギルバートが言ったところで首を横に振られるだろう。
「しかし、それだと給料日が怖いな」
「見習いでもお給料が貰えるの?」
「見習いは騎士としての作法を騎士団で学ぶという一面も兼ねているから、正式な騎士に比べれば微々たるものだが、ちゃんとお給料は月の初めに支払われる」
「嬉しい!楽しみ!!」
これだけ喜ぶということは、すでに何か欲しいものに目をつけているのだろうか。何がほしいのか教えてもらえれば、すぐにでもギルバートが用意して贈るのは簡単だ。
しかし、アイカのそれは単にモノだけが欲しいではなく、『自分が働いて得たお金で買いたい』という部分も含まれている。
(自分で働いたお金で買物がしたいという貴族令嬢なんていないだろうな。コインの価値も俺が教えたかったくらいだ。女神でありながら普通に働きたいとか外に出たいとか、アイカには驚かされることばかりだ)
アイカにコインの価値を教えたという相手に、ギルバートは小さな嫉妬を覚える。
生まれたばかりのアイカが少しずつ外の世界を知っていくのが嬉しい反面、自分の手の中からも飛び出て、手の届かないところへ行ってしまいそうで怖い。ギルバートの元からいなくなるくらいなら、いっそのこと屋敷に閉じ込めてしまおうかと一瞬考えが過って、顔を横に振ってその考えをうち消す。
(そんなことをすれば女神が自分を愛してくれることは絶対になくなる)
「アイカ」
喜ぶアイカの唇に口付けると、一瞬目を見開き、そして瞳をゆっくり閉じて口付けを受け止める。甘やかな唇を食み、舌を絡めては離し、また深く口付けるのを何度か繰り返した。
膝の上に乗ったアイカを左手で支え、右手でそっと閉じられたボタンを外す。
「男物の服を脱がすというのも、そそられるものがあるな」
ドレスだと背中のリボンやホックを解いてしまえば一気に脱げてしまうが、シャツのボタンは1つ外すたびに、肌がすこしづつ露になる。
急いで巻いたのだろう胸の厚布には悪いが布の止め具を外し厚布を弛めると、押さえつけられていた柔らかな双丘がでてきて、形のよいその胸に手を這わせていく。
「んんっ、ぁっ……、あ、んっ……」
シルクのように滑らかで、しっとりと手のひらに吸い付き、胸の頂は触られるのを心待ちにしてるかのように固くなっている。先端をこねたりつまんだり、押しつぶしたりする度にアイカの体がピクリと反応する。
(なんて可愛らしいんだ。長いまつげを震わせて、頬を上気させて、こんなに細い体で俺を受け入れてくれる)
膝の上に乗せていたアイカの身体をベッドに横たわらせ、固くなった胸の頂きを唇に含むともうそれだけで甘い味がする。
しかし、自分を押しのけるように肩に手を置いたアイカは、首を横に振り、涙目で自分を拒んできた。
「やだ……お願い離して、ギルバート………」
「どうした?」
最初の頃を別として、快楽を少しづつ教えてきたアイカが自分を拒むことは無くなっていた。
それなのにどうしたのかと問えば、顔を真っ赤にして、
「この前、ギルバート、中で……中に出したら……」
子供ができると言われて、それかと思い当たり、どういい訳しようか思案する。
アイカの股の間で擦るのも気持ちいいが、できるなら中で達したいのが男としての本音であって、勢いに任せて先端だけ入れて中に出してしまった。
また中に入れて出さないかアイカが恐れているのは分かる。
しかし、奥まで入れられなくても、アイカの中で出す気持ちよさを知ってしまった後では、もう股の間で擦るだけでは物足らない。
「……アイカ、勘違いをしているようだが、中に出すと言っても一番奥で出さなければ子供は生まれないんだよ」
「え?」
咄嗟にでた嘘に、アイカは目を大きく見開く。
「アイカは俺以外とこういうことをしたことが?」
「な、ないけれど……」
そもそも前世でも、アイカは行為どころか彼氏すら一度もいなかったので、全てギルバートが初めてだ。
「だろう?であれば子宮膜があって中で出しても奥まで届かない」
そこで一旦区切り、あたかもそれが本当のような説明を付け加える。
「一度奥まで入れてしまうと子宮膜が破れてしまって、先しか入れなくても中に出したものが奥まで届いてしまうけれど」
嘘だ。奥に出さなければ子供が生まれないなんて、ありえるわけがない。
しかし性交に疎いアイカは半信半疑でも信じている。
「ほ、ほんとう?」
「ああ、本当だとも」
だから心配しなくても大丈夫だと言うと、アイカはほっとしたように息を吐く。もしかすると前に中に出してしまった時から自分が妊娠していないか不安だったかもしれない。
しかし、アイカが妊娠したならしたでギルバートにとっては非常に都合がいいのも事実だった。アイカが身体を許してくれるのはそれが気持ち良いものだとギルバートが教えたからだ。
ギルバートの愛に告白に対してまだ返事はもらっておらず、自分を愛してもらえたのかは分からない。
だが、子供が出来たとなれば、アイカも本気で考えてくれるだろう。
(本当ならアイカが自分の愛を受け入れてくれてからの方がいいんだが、そんな悠長なことを言っているうちにキミは他の目新しいものに興味を持って、自分から去ってしまわないか怖くてたまらないんだ)
同じ人ではなく女神を愛するということが、こんなにも焦燥を伴うものなのだとギルバートは思い知らされない日はない。
安堵したらしいアイカに行為を再開し、白シャツを残し服を脱がせていく。女性が男モノの服を着る機会はないに等しい。現にギルバートがこれまで抱いてきた女性の中にも、男物のシャツを着て誘ってくる相手はいなかった。
騎士になりたいというアイカの願いから始まったことだが、それを肩まで落ちたシャツをまとい、長い髪が流れて所々肌を隠す。背徳感を伴う淫らさに、生唾を飲み込んだ。
奥へと伸ばした指を蜜口に添えると、すでにとろとろの愛液が溢れでてきて指を濡らす。
「もうこんなに濡れて、たっぷり中を擦ってやる」
「ひあっ!あっ!んんっ、そこっ、だめっ!」
弱い部分を擦られてアイカはギルバートの首に手を回した。シャツ以外脱がされてしまったアイカと違って、ギルバートはまだシャツのボタンを数個外しただけで服を着たままだ。
しかし、まだベルトも外していないズボンの下でギルバートのモノが大きく主張し始めていることに気づいて、アイカの下半身に熱が集まっていく。下を指で解しながら、胸への執拗な愛撫も与えられ、胸の先がじんじんしてもっと触ってほしい。
(ギルバートの触れるところが全部気持ちいい……。何も考えられなくなって体に力が入らなくなる……)
ギルバートのことは嫌いではない。けれどギルバートがアイカに向けてくるような愛情を同じように持っているか?と問われたら、答えに困ってしまう。
そうして悩んでいるうちに与えられる快楽に流されてしまう。
もっとギルバートの指を感じたくて蜜口に差し込まれた指を締め付けると、あやすように額にキスを落とされる。
「股を閉じたら指が動かせない。力を抜いて、ほら、ここがアイカのいいところだ」
「んんんッ!!そこばっかり!」
咄嗟に閉じようとした股を開かせて、アイカの蜜口の奥にあるヒダがざらついる部分をギルバートは中指の腹で撫でながら押し込んでやると、びくりと身体が跳ねてまた内肉が喜ぶように指を締め付けてくる。
しかし漏れでる嬌声を手のひらで口を覆い出ないようにしていることに気づく。
(ここが離れだから近くを通った誰かに聞かれないように声を殺しているのか)
ならばと指の数を増やし激しく出し入れする。そのたびにじゅぷっじゅぷっと卑猥な水音がたった。
「も、もうっ、私!あん!」
「気持ちいいか?」
「そこ気持ちいいっ!」
アイカの内肉が痙攣し始め絶頂が近づいているのを見て、ギルバートはズボンの下でいきり立っている自身を取り出した。
触れてもいなかったのにそれは既にガチガチに固くそそり立ち、血管が浮かび先端の鈴口から先走りの透明の液が漏れている。
アイカの蕩けた目がこちらを見ていたが、微かに怯えてはいても抵抗する様子がないのを確認して、股を閉じさせてその間に屹立を挟み込む。
愛液の滑りを塗りこむように股の割れ目に擦りつけ、ぷくりと腫れた花弁にこすり付ける。
「でるッ……」
なんてもどかしいのだろう。
今すぐにでもこの細腰を掴み思うがままに屹立を腹の奥まで打ち付けてやりたい衝動を堪えて、ギルバートはイク寸前に股を開かせ、先端をアイカの中に入れた。同時にイッたらしいアイカの蜜口が太い亀頭部分をおいしそうにしゃぶり、きゅっと締め付けた。
「あっ、んっ、んっ」
イっている体に熱い精液を何度も出されて、けれどアイカは自分の嘘を信じて、まさか子供が本当に出来るなんて本気で考えてはいないのだろう。
先端を抜くと、股の間から白い体液が溢れ出てくる。その光景にゾクリとして果てたばかりの屹立がまた固さを取り戻す。
(まだ全然足らない。もっとアイカを抱いていたい)
騙してしまっていることに申し訳ないと思いつつ、けれど今更真実を話すには、目の前にぶら下がった快楽があまりにも気持ちよかった。
▼▼▼
「ギルバート様。昨日、あれだけ念押しましたよね?」
執務室の椅子に座ったギルバートを見下ろすグレンの眼差しはどこまでも冷たい。
結局、あれから3度やってしまい、当然アイカは朝起き上がれなかった。なので、朝のうちにグレンにアイカの仕事をずらせないかできないか頼んだが、
「面目ない」
いい訳のしようもないので、ギルバートは素直に謝る。アイカが見習い騎士として騎士団に入って、仕事になれず疲れているだろうとずっと我慢していたこともあってか、一度抱いてしまうと歯止めがきかなかった。
「アイカは今日一日休みにしておきました。礼はハロルド殿に言ってください。胃のあたりを手で抑えていらっしゃいましたよ」
「わかった…いい胃薬を彼に贈っておく」
言うと、一礼してグレンは部屋から出て行ったが、あれでも自分なりにセーブしたつもりではあったのだ。それでも次の日の仕事を考えると別のやり方を考えなくてはならないのだろう。
次の日にまで影響しないやり方を。
一日の仕事を終えて、離れに行こうとしたギルバートに後ろからかけられたグレンの言葉。
淡々した口調は念押し程度だろう。
それくらい言われずとも分かっている、と内心思ったが、けれどすぐさま『本当に?』と自問自答して答えられず、結局グレンに何も返せないまま騎士団の自室を出た。
アイカの部屋になっている離れは、騎士たちが寝泊りする大部屋とも離れているうえ、さらに隠し部屋の隠し通路を使って部屋にいくため、とても遠回りをする。
(俺が部屋に出入りするのを見られたら騒ぎになるのは分かるが、隠れながらというのもなかなか面倒だな)
少しでも、1秒でも長くアイカの傍にいたい。直接部屋にいければその分長くいれるのに。そう欲がでてしまう自分を自嘲する。
グレンやハロルドがアイカを騎士団に入れるのにどれほど苦労したのか知っているのに、こんな身勝手なことを自分も考えるのだとアイカに会って初めて知った。
「アイカ、俺だ。はいるぞ」
「きゃっ!?」
「え、あ、すまない!!」
隠し通路の扉から離れの部屋に入る時、事前にノックはした。しかし着替えている際、胸を押さえ込むための厚布を口に咥えていた相手は返事が出来なかったらしい。
着替えている途中の乱入に悲鳴を上げて座り込むアイカに、ギルバートは慌てて後ろを向いた。
「ごめんなさい!もうすこし待って!」
背後で慌てて着替えている服の衣擦れ音が耳に届く。既に何度となくアイカの肌を見ていても、相手の着替えの最中というのは、それとは別の背徳感を刺激されてしまう。
「いいわ、もう大丈夫……」
「いや、俺も着替えている最中にすまない……」
許可が出てギルバートが振り返れば、長い髪は結ばずそのままに流してズボンに白シャツ姿のアイカが恥ずかしそうに立っていた。近くのテーブルに、今日も持ってきた籠を乗せる。
「今日も一日働いて疲れたんじゃないか?すこし持ってきたから食べるといい。体力をつけないとバテてしまう」
「あ、この前も来てくれたよね?起きたら机にサンドイッチが置いてあったわ。朝、ココと一緒に食べ……」
言っている途中のアイカをギルバートは腕に抱きしめた。
風呂に入って汗を流した後だろうか、慣れ親しんだ石鹸の香りが鼻腔をつつく。
もちろん風呂と言ってもグランディ邸のように温かな湯にゆっくり浸かるなんてこの離れでは出来ない。ギルバートも騎士団に寝泊まりする時は水浴びして絞った布で拭く程度だ。
アイカも同じく桶に水を入れてそれで身体を拭いたりするのが精々だろうし、誰かに見られないように常に気をつけなくてはならない。女性にそんな不遇を強いてしまっていると思うと、今すぐにでも騎士団を辞めさせてグランディ邸に連れ帰りたくなる。
(アイカが実は女神の力を使って、一瞬で身体を清めていたのをギルバートが知ったのはまだまだ先のことである。)
「同じ敷地内にいるというのに昼間はこうして会えないというのも、中々どうしてじれったいな」
ひょいと横抱きにして備え付けの簡易ベッドに腰を下ろすと、
「騎士団の仕事は慣れたか?騎士と言っても、戦争中でもない限り、街の見回りや仲裁、配達といった雑用がほとんどだ。思っていたのとは違うんじゃないか?」
「そうね、思っていたのとは違ったし毎日忙しくて疲れるけれど、私にはこちらの方が嬉しいかもしれない」
「嬉しい?どうして?」
「それって平和ってことでしょう?戦争するより平和の方がいいし、それに街の様子とか人々の暮らしとか見られて面白いもの」
「確かに戦争より平和の方がいいにこしたことはないね」
「それにね、例えば今日はコインの種類とか価値について教えてもらったから、これで自分でもお金を使ってお買い物できるわ」
教えてくれたフレッドには「コインを触ったことも見たこともないのか?」と随分呆れられてしまったけれど、金の価値を知らなければ、配達の仕事にも差し支えると丁寧に教えてくれた。
自信たっぷりにアイカに言われてしまうとギルバートも苦笑するしかない。お金の種類やコインの価値は確かにグランディ邸では教えてくれる者はいないだろう。それどころかアイカにモノを買わせてしまったことを詫びてくるかもしれない。
(俺の希望としては理想と違う騎士に幻滅してもう見習い騎士は止めたいと言ってくれる方が嬉しかったんだがな)
先日のスリに襲われた件もある。
だが、この様子では、もう騎士を辞めないか?とギルバートが言ったところで首を横に振られるだろう。
「しかし、それだと給料日が怖いな」
「見習いでもお給料が貰えるの?」
「見習いは騎士としての作法を騎士団で学ぶという一面も兼ねているから、正式な騎士に比べれば微々たるものだが、ちゃんとお給料は月の初めに支払われる」
「嬉しい!楽しみ!!」
これだけ喜ぶということは、すでに何か欲しいものに目をつけているのだろうか。何がほしいのか教えてもらえれば、すぐにでもギルバートが用意して贈るのは簡単だ。
しかし、アイカのそれは単にモノだけが欲しいではなく、『自分が働いて得たお金で買いたい』という部分も含まれている。
(自分で働いたお金で買物がしたいという貴族令嬢なんていないだろうな。コインの価値も俺が教えたかったくらいだ。女神でありながら普通に働きたいとか外に出たいとか、アイカには驚かされることばかりだ)
アイカにコインの価値を教えたという相手に、ギルバートは小さな嫉妬を覚える。
生まれたばかりのアイカが少しずつ外の世界を知っていくのが嬉しい反面、自分の手の中からも飛び出て、手の届かないところへ行ってしまいそうで怖い。ギルバートの元からいなくなるくらいなら、いっそのこと屋敷に閉じ込めてしまおうかと一瞬考えが過って、顔を横に振ってその考えをうち消す。
(そんなことをすれば女神が自分を愛してくれることは絶対になくなる)
「アイカ」
喜ぶアイカの唇に口付けると、一瞬目を見開き、そして瞳をゆっくり閉じて口付けを受け止める。甘やかな唇を食み、舌を絡めては離し、また深く口付けるのを何度か繰り返した。
膝の上に乗ったアイカを左手で支え、右手でそっと閉じられたボタンを外す。
「男物の服を脱がすというのも、そそられるものがあるな」
ドレスだと背中のリボンやホックを解いてしまえば一気に脱げてしまうが、シャツのボタンは1つ外すたびに、肌がすこしづつ露になる。
急いで巻いたのだろう胸の厚布には悪いが布の止め具を外し厚布を弛めると、押さえつけられていた柔らかな双丘がでてきて、形のよいその胸に手を這わせていく。
「んんっ、ぁっ……、あ、んっ……」
シルクのように滑らかで、しっとりと手のひらに吸い付き、胸の頂は触られるのを心待ちにしてるかのように固くなっている。先端をこねたりつまんだり、押しつぶしたりする度にアイカの体がピクリと反応する。
(なんて可愛らしいんだ。長いまつげを震わせて、頬を上気させて、こんなに細い体で俺を受け入れてくれる)
膝の上に乗せていたアイカの身体をベッドに横たわらせ、固くなった胸の頂きを唇に含むともうそれだけで甘い味がする。
しかし、自分を押しのけるように肩に手を置いたアイカは、首を横に振り、涙目で自分を拒んできた。
「やだ……お願い離して、ギルバート………」
「どうした?」
最初の頃を別として、快楽を少しづつ教えてきたアイカが自分を拒むことは無くなっていた。
それなのにどうしたのかと問えば、顔を真っ赤にして、
「この前、ギルバート、中で……中に出したら……」
子供ができると言われて、それかと思い当たり、どういい訳しようか思案する。
アイカの股の間で擦るのも気持ちいいが、できるなら中で達したいのが男としての本音であって、勢いに任せて先端だけ入れて中に出してしまった。
また中に入れて出さないかアイカが恐れているのは分かる。
しかし、奥まで入れられなくても、アイカの中で出す気持ちよさを知ってしまった後では、もう股の間で擦るだけでは物足らない。
「……アイカ、勘違いをしているようだが、中に出すと言っても一番奥で出さなければ子供は生まれないんだよ」
「え?」
咄嗟にでた嘘に、アイカは目を大きく見開く。
「アイカは俺以外とこういうことをしたことが?」
「な、ないけれど……」
そもそも前世でも、アイカは行為どころか彼氏すら一度もいなかったので、全てギルバートが初めてだ。
「だろう?であれば子宮膜があって中で出しても奥まで届かない」
そこで一旦区切り、あたかもそれが本当のような説明を付け加える。
「一度奥まで入れてしまうと子宮膜が破れてしまって、先しか入れなくても中に出したものが奥まで届いてしまうけれど」
嘘だ。奥に出さなければ子供が生まれないなんて、ありえるわけがない。
しかし性交に疎いアイカは半信半疑でも信じている。
「ほ、ほんとう?」
「ああ、本当だとも」
だから心配しなくても大丈夫だと言うと、アイカはほっとしたように息を吐く。もしかすると前に中に出してしまった時から自分が妊娠していないか不安だったかもしれない。
しかし、アイカが妊娠したならしたでギルバートにとっては非常に都合がいいのも事実だった。アイカが身体を許してくれるのはそれが気持ち良いものだとギルバートが教えたからだ。
ギルバートの愛に告白に対してまだ返事はもらっておらず、自分を愛してもらえたのかは分からない。
だが、子供が出来たとなれば、アイカも本気で考えてくれるだろう。
(本当ならアイカが自分の愛を受け入れてくれてからの方がいいんだが、そんな悠長なことを言っているうちにキミは他の目新しいものに興味を持って、自分から去ってしまわないか怖くてたまらないんだ)
同じ人ではなく女神を愛するということが、こんなにも焦燥を伴うものなのだとギルバートは思い知らされない日はない。
安堵したらしいアイカに行為を再開し、白シャツを残し服を脱がせていく。女性が男モノの服を着る機会はないに等しい。現にギルバートがこれまで抱いてきた女性の中にも、男物のシャツを着て誘ってくる相手はいなかった。
騎士になりたいというアイカの願いから始まったことだが、それを肩まで落ちたシャツをまとい、長い髪が流れて所々肌を隠す。背徳感を伴う淫らさに、生唾を飲み込んだ。
奥へと伸ばした指を蜜口に添えると、すでにとろとろの愛液が溢れでてきて指を濡らす。
「もうこんなに濡れて、たっぷり中を擦ってやる」
「ひあっ!あっ!んんっ、そこっ、だめっ!」
弱い部分を擦られてアイカはギルバートの首に手を回した。シャツ以外脱がされてしまったアイカと違って、ギルバートはまだシャツのボタンを数個外しただけで服を着たままだ。
しかし、まだベルトも外していないズボンの下でギルバートのモノが大きく主張し始めていることに気づいて、アイカの下半身に熱が集まっていく。下を指で解しながら、胸への執拗な愛撫も与えられ、胸の先がじんじんしてもっと触ってほしい。
(ギルバートの触れるところが全部気持ちいい……。何も考えられなくなって体に力が入らなくなる……)
ギルバートのことは嫌いではない。けれどギルバートがアイカに向けてくるような愛情を同じように持っているか?と問われたら、答えに困ってしまう。
そうして悩んでいるうちに与えられる快楽に流されてしまう。
もっとギルバートの指を感じたくて蜜口に差し込まれた指を締め付けると、あやすように額にキスを落とされる。
「股を閉じたら指が動かせない。力を抜いて、ほら、ここがアイカのいいところだ」
「んんんッ!!そこばっかり!」
咄嗟に閉じようとした股を開かせて、アイカの蜜口の奥にあるヒダがざらついる部分をギルバートは中指の腹で撫でながら押し込んでやると、びくりと身体が跳ねてまた内肉が喜ぶように指を締め付けてくる。
しかし漏れでる嬌声を手のひらで口を覆い出ないようにしていることに気づく。
(ここが離れだから近くを通った誰かに聞かれないように声を殺しているのか)
ならばと指の数を増やし激しく出し入れする。そのたびにじゅぷっじゅぷっと卑猥な水音がたった。
「も、もうっ、私!あん!」
「気持ちいいか?」
「そこ気持ちいいっ!」
アイカの内肉が痙攣し始め絶頂が近づいているのを見て、ギルバートはズボンの下でいきり立っている自身を取り出した。
触れてもいなかったのにそれは既にガチガチに固くそそり立ち、血管が浮かび先端の鈴口から先走りの透明の液が漏れている。
アイカの蕩けた目がこちらを見ていたが、微かに怯えてはいても抵抗する様子がないのを確認して、股を閉じさせてその間に屹立を挟み込む。
愛液の滑りを塗りこむように股の割れ目に擦りつけ、ぷくりと腫れた花弁にこすり付ける。
「でるッ……」
なんてもどかしいのだろう。
今すぐにでもこの細腰を掴み思うがままに屹立を腹の奥まで打ち付けてやりたい衝動を堪えて、ギルバートはイク寸前に股を開かせ、先端をアイカの中に入れた。同時にイッたらしいアイカの蜜口が太い亀頭部分をおいしそうにしゃぶり、きゅっと締め付けた。
「あっ、んっ、んっ」
イっている体に熱い精液を何度も出されて、けれどアイカは自分の嘘を信じて、まさか子供が本当に出来るなんて本気で考えてはいないのだろう。
先端を抜くと、股の間から白い体液が溢れ出てくる。その光景にゾクリとして果てたばかりの屹立がまた固さを取り戻す。
(まだ全然足らない。もっとアイカを抱いていたい)
騙してしまっていることに申し訳ないと思いつつ、けれど今更真実を話すには、目の前にぶら下がった快楽があまりにも気持ちよかった。
▼▼▼
「ギルバート様。昨日、あれだけ念押しましたよね?」
執務室の椅子に座ったギルバートを見下ろすグレンの眼差しはどこまでも冷たい。
結局、あれから3度やってしまい、当然アイカは朝起き上がれなかった。なので、朝のうちにグレンにアイカの仕事をずらせないかできないか頼んだが、
「面目ない」
いい訳のしようもないので、ギルバートは素直に謝る。アイカが見習い騎士として騎士団に入って、仕事になれず疲れているだろうとずっと我慢していたこともあってか、一度抱いてしまうと歯止めがきかなかった。
「アイカは今日一日休みにしておきました。礼はハロルド殿に言ってください。胃のあたりを手で抑えていらっしゃいましたよ」
「わかった…いい胃薬を彼に贈っておく」
言うと、一礼してグレンは部屋から出て行ったが、あれでも自分なりにセーブしたつもりではあったのだ。それでも次の日の仕事を考えると別のやり方を考えなくてはならないのだろう。
次の日にまで影響しないやり方を。
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