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第07章 チームエイジ
第19話 処刑
しおりを挟む今日の昼にまた王城に行かないといけない。
魔族の処刑執行人として呼ばれているのだ。
まったく不本意な役目だが、決まってしまったものには逆らえない。冒険者ギルドのトップであるワプキンス公爵に逆らえるほど俺は豪胆ではない。
まして、王様も処刑を見学に来るそうだから、断るイコール国に逆らう反逆者と見られる事にもなりかねない。
そんな事を俺にできるはずがない。
断言しよう、俺には絶対断れない。
だが、処刑執行人も嫌だ。なんとかして逃れる手は……思いつかない。
もう逃れられないのだからやるしかないのかなぁ。嫌だなぁ。
約束の時間に王城に来てみると、門には昨日の隊長がいて、もう俺を待ち構えていた。
当然のごとくドナドナされて行く俺。
連れて行かれた先は、知っての通り処刑場だ。
今回、処刑場に当てられた場所は修練場。見た目はまんま闘技場だが、観客席は少ない。誰かが見学する程度の規模しかなく、一〇〇人も入れないだろう。観客席というより視察席って感じだな。
中央にある武舞台は二〇メートル角の正方形で一メートル程高くなっている。
魔族の処刑というからもっと開けた広い所で見せしめに公開処刑にするか、逆にもっと狭い所で完全非公開だと予想していたから、中途半端だというイメージを持った。
聞く所によると、闘技場は別の場所にあり、もっと武舞台も大きく観客席は三万人収容できる大規模のものがあるらしい。
それで、場所をここにした理由を隊長が説明してくれた。別に聞いたわけではない、隊長が自慢したくて話してくれたのだと思う。
「ここは部外者は一切入って来れない場所で、外からも覗き見る事が出来ない場所だ。しかも、武舞台には結界が施してあり、ひと度武舞台に上がってしまえば外部とは完全に遮断されるのだ。本日は王も見学に来ておられるが、こちらへの危険は一切無いから貴殿も遠慮なく全力を振るってくれ」
全力ね。だったらあんた達が全力を振るえばいいのに。
「それなら外から魔法で攻撃しても逃げられないのでは?」
当たり前の疑問を隊長に投げてみた。
「貴殿は私の話を聞いていなかったのかね。完全に遮断されるのだ、それは外からも同じ事。外部からの攻撃も一切受け付けないのだよ」
いや、聞いてたけどさ。結界って自分達に都合よく構造を組めそうじゃん。事実、衛星の張った結界って外敵は入れないけど【星の家】の子達は素通りだし、精霊達も通ってるよ。そういうのはできないのかと思ったんだよ。
据え置き型次元魔法陣なんかできれば、武舞台に設置してそこに連れて行って放置してればいいんじゃないかと思ったりもしたんだよ。
出来の悪い子扱いしてんじゃねーよ。
そんな事もあったが、武舞台には俺と四人の魔族を残し、全員が武舞台の袖や小さな視察席から俺達を見守っている。ま、見張られてるとも言うが。
ガレンダ・レギオンとタレラン・レギオンの二人が以前領主様の城で捕らえた魔族で、ビランデル・ラングルドとヘリアレス・ラングルドがボッシュール領で捕らえた魔族だ。
四人ともグルグル巻きで転がされてるから、後は止めを刺すだけなんだけど、俺って一度も武器で相手を傷つけた事もないんだよな。
対人経験はベンさんに稽古をつけてもらったぐらいだ。
となると、少し離れた所からずっと練習を続けてきた弓でやるか。そうだな、それがよさそうだ。今の腕前なら少々離れても狙いは外さないだろう。
そう、練習だけは続けてきたからな、練習だけはな……努力を続けてきた事を確認してるだけなのに辛くなってくるのはなぜなんだろう。実戦経験ができないんだから仕方が無いじゃないか。これぐらいで泣くんじゃない俺。負けるな俺。
転がされている魔族に近寄り、最後の言葉を聞いてやる。これは隊長に言われたのだ。武人として最後の言葉を聴いてやる義務があると。
俺は武人じゃないし、魔族だって武人じゃ無いと思うんだけど、隊長に逆らえるわけがない。
隊長の命令通り、魔族に話しかけた。
「最後に何かありますか」
「最後にお館様のご尊顔を拝見できただけで、もう望みはございません」
「はい、その上お館様にお声まで掛けていただけて私は幸せ者でございます」
おーい、この魔族いかれちまってるぞー。
誰が”お館様”だ! そんなの聞かれたら俺の立場が危ないってーの!
ガレンダ・レギオンとタレラン・レギオンの二人は以前地下牢で衛星が俺の奴隷にしちゃったから俺の事を”お館様”なんて言いやがる。ヤバイ発言だ、ここが隔離ゾーンでよかったよ。
「最後に話だけでも聞いてもらえないだろうか」
先日、交渉をして来たビランデル・ラングルドが話だけでも聞いて欲しいと懇願してきた。
もう一人のヘリアレス・ラングルドは、俺の顔を見るなり青い顔をして目を逸らしている。鼻詰めの刑がまだ有効みたいだ。
ま、隊長からは聞けって言われてるから聞くしかないか。
「うん、話だけは聞くよ。最後に聞いてやれって言われてるから」
「有り難い。では……」
少し長めの話だったが、ビランデル・ラングルドは他の二人の魔族と共にボッシュールの用心棒として雇われていた。
領主様が倒した奴はダッパー・レギオンという奴で、ビランデルもヘリアレスもそれぞれ旅をしている時に知り合ったそうだ。
ダッパーの誘いでボッシュールの仕事を請け負ったそうだが、実行するのはダッパーで、ビランデルもヘリアレスも人間には興味はなく、ただの数合わせとしていたのだという。
「でも、あの時俺達を倒そうとしたじゃないか」
「私も武人だ、おめおめとやられたりはしない。降りかかる火の粉は自ら振り払っている」
確かに、あの時は衛星に勝手に連れて来られたのだし、やられそうな状況なら抵抗はするか。
でも、こいつって武人だったのか。最後の言葉を聞きに来てよかったよ。
「そっちの奴なんかノリノリだったと思うけど」
ノリノリだったのは、奴の荒っぽい口調のせいで、その言動から勘違いされやすいが、ビランデルから言わせると男気のある正義漢なのだそうだ。
「ヘリアレスとは武者修行の旅で知り合ったのだが、こいつも武者修行中だったところ、龍討伐で偶然居合わせ、そのまま共闘してから一緒にいるが、この仕事が終わったらまた別行動にしようと話していた所だったのだ」
魔族が正義漢って言われても、納得できないなぁ。
そもそも魔族の事を良く知らないからな。
「私は人間を虐殺した事は無い。それはヘリアレスも同じだ。武者修行中に武人に挑まれて倒した事はあるが、自ら人間に挑んだ事も無い。それなのに何故処刑されなければいけないのだ」
そうなの? そんな話は初耳だよ?
「え、でも、魔族って人間を虐殺するんじゃないの? 人間達を混乱させて戦争をしたいとか思ってるんじゃないの?」
「それは、そっちのレギオン族の奴らだ。私達ラングルド族は純粋に武を磨いている。魔族が強くなるためには魔石が多く必要だが、そのために魔物を多く倒したが、弱い人間に手を出した事など一度も無い!」
どゆこと? 俺は罪無き者を処刑するとこだったって事?
「そこで、叶う事ならば取引がしたい。私とヘリアレスを見逃してくれれば秘密のダンジョンの場所を教えよう。攻略を手伝ってもいい。だから、どうか助けてほしい」
これは困った。悪者だから処刑は仕方が無いと思ってたのに、こいつって悪者じゃない? これって冤罪?
その判断を俺がこの場でしないとダメなの? そんなの出来ないって。
『タマちゃん、これってどうすればいいの?』
『もう解決しました』
はい?
『えーと…何が解決したのかな?』
『全て解決しました』
『全て?』
『はい、全てです』
どういう事なのかなぁ……嫌な予感しかしないんだけどなぁ。
だって、魔族を仲間にしろって言ってたし、魔族の処刑が終わってないに解決って、ありえないんだけど。
『では、魔族は先に宿の部屋に連れて行きます』
おい! やっぱり魔族を仲間にする気じゃないか! ダメだって!
魔族一人に衛星が一つ付き、魔族を空高く浮かせた。ちょうどその時結界が消え、そのまま衛星が魔族を連れて行ってしまった。
おーい! ホントにダメだって。
結界が消えると続々と武舞台に人が上がって来た。
隊長や兵士はもちろん、貴族や王様まで上がって来て、部舞台の上は人で溢れかえった。
今、見ていた人達が全員上がって来たようだ。
全員で五〇人程だが、周りを埋め尽くされて身動きが取れない。人口密度高すぎ!
口々に絶賛する言葉が聞こえてくる。
「いや~、興奮した!」
「流石は国家公認冒険者だ!」
「剣の腕前も中々だな」
「いやいやあのような大魔法も使えるとは」
「魔族もあれでは生きてはおれまい」
「初めの魔族を倒した剣技が見事だった」
「いやいや、二番目の魔族を倒した槍技など、地味なようだが実力がないとああはできまい」
「なんのなんの、最後に纏めて燃やし尽くした火炎魔法こそ絶賛すべきだ」
「武器も相当な業物なのだろう」
「魔族が真っ二つとは恐れ入った」
「流石は四連月勲章」
「首を刎ねたあとに、胴を真っ二つにし、最後に燃やし尽くす念の入れよう。万全を期する仕事だな」
「床にすら焦げ跡を残さぬとは、完璧に魔法を制御できている証だな」
俺の周りに集まった人達が、俺のことを絶賛しまくる。
意味が分からないが、どうやらこの人達は、俺が四人の魔族を完璧な仕事で処刑を執行したと言ってるみたいだ。
衛星の仕業だろうな。そういう映像か幻を全員に見せたのだろう。
だって、実際には魔族には何もしてないし、衛星が連れ去って行ったんだから。全て解決したとも言ってたしね。
連れ去るのも、他からは姿を見えないようにして行ったんだろうな。
結果は俺が魔族の処刑を確実に執行し、俺の実力も示せて(実際は何もしてないけど)全員が納得した。
俺も嫌な処刑をせずに済んだし、魔族は命が助かり俺の部屋にいる。
うーん、最後のがいらないんだけど。
最後に王様が来て「大儀であった」というお言葉を頂くと、場はそのまま解散の流れとなった。
今日の所は帰っていいと言われたが、明日は三度王城へ登城を命じられた。
王家主催のパーティに招かれた。
一連の魔族の件がこれで終わりとなり、その祝賀会なのだろう。
俺はパーティどころじゃないってのに。宿に戻ったら面倒事が満載だよ。
これで全部解決したって? 今から面倒事が始まるんだよ!
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