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第一章 始まりは最悪?
第二十話 運命なのか偶然なのか
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おはよう、異世界。
こっちに来てからドタバタしてたけど、三日目の今日にしてようやく落ち着いた朝を迎えられた。
実は、またアミラと一悶着あったのだが、それ以外は本当に素晴らしい朝、でもないか……。
パンのようなものを主食とした朝食に、昨夜とは違って様々な宿泊者によって活気溢れる宿のレストランやロビー。
皆、今日の予定などを楽しそうに話していた。
そんな良い雰囲気に包まれて、俺も気持ちが良くなるはずだったのだ……。
ところで、宿泊者を見ると冒険者のような旅人っぽい人はほとんどいなく、商人や下級の貴族のような小金持ちが多く見受けられたのだが、この宿は少し高めなのだろうか。
まぁ、そんなわけで、朝食を済ませた俺とアミラは昨日決めた予定に従って、アミラの馬車を止めてある車庫まで来ている。
「まずは例の魔道具屋に行くんだよな?」
「……」
俺の問いに、アミラはそっぽ向いてそそくさと歩いて行く。
アミラは今朝からずっとこの調子だ。
「裸を見ちゃったことは本当にごめんって。でも、あれは油断しすぎていたアミラも悪いんだからな」
「そんなことわかってるわよ! まさかあんたがあそこまで変態だとは思わなかったの!!」
「おいおいおい。それは酷くないか!? 声をかけただけでアミラの集中力が切れて仕切り代わりのシーツが落ちる、なんて予想できるわけないだろ!」
「何それ!? そのくらい察しなさいよ!!」
(あぁ、めんどくさい)
正直、そんな声が漏れそうになっていたが、済んでのところで止めた。
あんたは邪魔だから来んなと言われ、車庫に一人で入って行くアミラを見据えながら、俺は今朝から何回目になるかわからないため息をしていた。
そう、今朝、俺はアミラの裸を見たのだ。ほんの一瞬だけど。
と言ったら、まるで俺が見たくて見たように聞こえるが、実際には違う。
朝、何か水が流れるような音がするなと思って目を開けてみると、その先には宙を浮いているシーツがあったのだ。
そのシーツが障壁となって水の音の正体がわからなかったので、とりあえず、ベッドにいたはずのアミラがいないことから、彼女の名前を呼んでみたところ、シーツの奥にいたらしいアミラがやけに慌てた声をあげた直後に、仕切りのシーツが落ちて、水浸しになっている全裸のアミラが現れたのである。
もちろん、俺がアミラの裸を見たのはほんの刹那の間で、俺はすぐに目を逸らしたし、アミラもすぐにシーツをまた宙に浮かせて隠れていた。
後に聞いてわかったのだが、その時アミラは入浴していたらしい。
この世界の一般的な宿には風呂というものが付いていなくて、ほとんどの人が布のようなもので体を拭くことでそれを済ませているらしく、魔法を巧みに使えるアミラはそれでは満足できないのでいつも水を宙に浮かせてその摩擦で体を洗っているそうだ。
てっきり風呂は別室や別の施設にあると思い込んでいた俺は、まさかシーツの向こう側の、ただの部屋の一角でアミラが体を洗ってるなんて想像つかなくても当然のこと。
それにもう一度裸を見ているどころか胸まで揉んでいるというのに、アミラはずっと不機嫌でいる。
まぁ、申し訳ないとは思うが、少し面倒になってきたところだ。
「それでその、目的地は……ってこの馬車、どこかで見覚えが……」
そうこうしていると、アミラが準備を整えて馬車を俺の待っていた表まで出して来た。
その馬車にどうも既視感を覚えた俺は、思い出そうとこれまでこの世界で見て来た馬車を時系列とは逆順に思い起こそうとして、すぐに思い出す。
「あぁ! 俺の宿の向かいに止まってた馬車だ! 八百屋で魔法使いが乗っていったやつ…………ってもしかしてあの時の魔法使いって!?」
この馬車は紛れもなく、あの時の馬車で、よくよく思い返してみると、あの時の魔法使いとアミラは似ているかもしれない。というか絶対本人だろう。
思わぬ過去の出会いに感動していると、アミラが不愉快そうな顔を横窓から出して俺に怒鳴ってくる。
「なに一人で騒いでんのよ! 早く乗りなさい!」
そんなアミラを無視して、それどころではないと、俺はアミラに真偽を問う。
「アミラ! お前、二日前の朝に八百屋で開店の手伝いしてなかったか? この馬車を八百屋の前に駐車して」
「なんで知ってるの?」
俺の言葉に、アミラは難しい顔をして考え込んでいた。
アミラが正解にたどり着くまで待ちきれなかった俺は真実を告げる。
「あの時、向かいから見てたんだよ!」
「ええ!? ……あぁ!!!! あんた、あの時向かいの建物から、遠く離れている私のところまで聞こえるくらいに鼻息を荒げて私を覗き見してた挙句、奇声をあげて興奮してたあの変態!?」
「変態じゃないわ!! ……いや、まぁそうだけども!!」
偶然とは重なるものなのかもしれない。
目的が同じ人と出会って、しかもそれが最強の魔法使いだってだけでものすごい偶然だろうに、まさかその人と前にもあっていたなんて――。
アミラはとても驚いたように俺を見つめ、そして何を思い出したのか顔を青め身震いしていた。
そんなにあの時の俺は変態的だったのか!?
こっちに来てからドタバタしてたけど、三日目の今日にしてようやく落ち着いた朝を迎えられた。
実は、またアミラと一悶着あったのだが、それ以外は本当に素晴らしい朝、でもないか……。
パンのようなものを主食とした朝食に、昨夜とは違って様々な宿泊者によって活気溢れる宿のレストランやロビー。
皆、今日の予定などを楽しそうに話していた。
そんな良い雰囲気に包まれて、俺も気持ちが良くなるはずだったのだ……。
ところで、宿泊者を見ると冒険者のような旅人っぽい人はほとんどいなく、商人や下級の貴族のような小金持ちが多く見受けられたのだが、この宿は少し高めなのだろうか。
まぁ、そんなわけで、朝食を済ませた俺とアミラは昨日決めた予定に従って、アミラの馬車を止めてある車庫まで来ている。
「まずは例の魔道具屋に行くんだよな?」
「……」
俺の問いに、アミラはそっぽ向いてそそくさと歩いて行く。
アミラは今朝からずっとこの調子だ。
「裸を見ちゃったことは本当にごめんって。でも、あれは油断しすぎていたアミラも悪いんだからな」
「そんなことわかってるわよ! まさかあんたがあそこまで変態だとは思わなかったの!!」
「おいおいおい。それは酷くないか!? 声をかけただけでアミラの集中力が切れて仕切り代わりのシーツが落ちる、なんて予想できるわけないだろ!」
「何それ!? そのくらい察しなさいよ!!」
(あぁ、めんどくさい)
正直、そんな声が漏れそうになっていたが、済んでのところで止めた。
あんたは邪魔だから来んなと言われ、車庫に一人で入って行くアミラを見据えながら、俺は今朝から何回目になるかわからないため息をしていた。
そう、今朝、俺はアミラの裸を見たのだ。ほんの一瞬だけど。
と言ったら、まるで俺が見たくて見たように聞こえるが、実際には違う。
朝、何か水が流れるような音がするなと思って目を開けてみると、その先には宙を浮いているシーツがあったのだ。
そのシーツが障壁となって水の音の正体がわからなかったので、とりあえず、ベッドにいたはずのアミラがいないことから、彼女の名前を呼んでみたところ、シーツの奥にいたらしいアミラがやけに慌てた声をあげた直後に、仕切りのシーツが落ちて、水浸しになっている全裸のアミラが現れたのである。
もちろん、俺がアミラの裸を見たのはほんの刹那の間で、俺はすぐに目を逸らしたし、アミラもすぐにシーツをまた宙に浮かせて隠れていた。
後に聞いてわかったのだが、その時アミラは入浴していたらしい。
この世界の一般的な宿には風呂というものが付いていなくて、ほとんどの人が布のようなもので体を拭くことでそれを済ませているらしく、魔法を巧みに使えるアミラはそれでは満足できないのでいつも水を宙に浮かせてその摩擦で体を洗っているそうだ。
てっきり風呂は別室や別の施設にあると思い込んでいた俺は、まさかシーツの向こう側の、ただの部屋の一角でアミラが体を洗ってるなんて想像つかなくても当然のこと。
それにもう一度裸を見ているどころか胸まで揉んでいるというのに、アミラはずっと不機嫌でいる。
まぁ、申し訳ないとは思うが、少し面倒になってきたところだ。
「それでその、目的地は……ってこの馬車、どこかで見覚えが……」
そうこうしていると、アミラが準備を整えて馬車を俺の待っていた表まで出して来た。
その馬車にどうも既視感を覚えた俺は、思い出そうとこれまでこの世界で見て来た馬車を時系列とは逆順に思い起こそうとして、すぐに思い出す。
「あぁ! 俺の宿の向かいに止まってた馬車だ! 八百屋で魔法使いが乗っていったやつ…………ってもしかしてあの時の魔法使いって!?」
この馬車は紛れもなく、あの時の馬車で、よくよく思い返してみると、あの時の魔法使いとアミラは似ているかもしれない。というか絶対本人だろう。
思わぬ過去の出会いに感動していると、アミラが不愉快そうな顔を横窓から出して俺に怒鳴ってくる。
「なに一人で騒いでんのよ! 早く乗りなさい!」
そんなアミラを無視して、それどころではないと、俺はアミラに真偽を問う。
「アミラ! お前、二日前の朝に八百屋で開店の手伝いしてなかったか? この馬車を八百屋の前に駐車して」
「なんで知ってるの?」
俺の言葉に、アミラは難しい顔をして考え込んでいた。
アミラが正解にたどり着くまで待ちきれなかった俺は真実を告げる。
「あの時、向かいから見てたんだよ!」
「ええ!? ……あぁ!!!! あんた、あの時向かいの建物から、遠く離れている私のところまで聞こえるくらいに鼻息を荒げて私を覗き見してた挙句、奇声をあげて興奮してたあの変態!?」
「変態じゃないわ!! ……いや、まぁそうだけども!!」
偶然とは重なるものなのかもしれない。
目的が同じ人と出会って、しかもそれが最強の魔法使いだってだけでものすごい偶然だろうに、まさかその人と前にもあっていたなんて――。
アミラはとても驚いたように俺を見つめ、そして何を思い出したのか顔を青め身震いしていた。
そんなにあの時の俺は変態的だったのか!?
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