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神決め大会 予選一日目
鶴太郎と神 拓郎Ⅲ
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「ニケが母さんに?」
俺の問いかけに鶴太郎さんが頷く。
「ああ」
俺はニケの方を見た。ニケはきょとんとしている。
「拓郎が君のことを気にかけていたのは、もちろん、誰一人見捨てないという正義感もあるが、彼が愛した人にニケくんが瓜二つだったことも関係があるだろう」
ニケに語り掛ける鶴太郎さんは昔を懐かしむような表情で話していた。
「で、でも、そんなこと一度も『元』神様は……」
言わなかったのか……。いや、言わなかったのではなく、言えなかったのかもしれない。俺にはその気持ちが少し分かる気がする。
「そもそも気になっていたのですが、『魔人』とは一体なんなのですか?」
俺はニケと出会ってからずっと抱いていた疑問を鶴太郎さんにぶつけた。
「『魔人』が一体なんなのか……か」
鶴太郎さんは、神妙な顔になって俺の問いかけを繰り返した。
「はい」
ニケの方を見ると、ニケも「うんうん」と答えを待っている。
「……正直なところ、私も分からん」
「「へ?」」
俺とニケの声が重なる。
「ど、どういうことですか? というか、神様だった鶴太郎さんが知らないことって、それってつまり……」
鶴太郎さんも頷く。なるほど。世界は広い……。
「え? つまり何? どういうことー?」
ニケだけが分からず、困惑している。
「つまりだ。『魔人』が一体なんなのか? それは誰も知らないってことだ」
「んー?」
ニケは分からなかったらしい。首をかしげ、両手をお手上げという風に挙げたあと、ニケは佐藤さんの方に向かっていった。話に飽きたのだろう。ニケにグイグイ話しかけられて、佐藤さんは困惑している。
それにしても……。少しでも分かることは知っておきたかったが、ますます謎が深まった。
「少年、私も神の時代に、一度『それ』を追求しようとした。だが、答えにたどり着く前に大きな『壁』にぶつかった」
「『壁』?」
「『神選』さ。魔人の誕生には『神選』が間違いなく関わっている」
「『神選』ですか……」
謎の多い集団だ。神選、神様候補を選出し、神様を任命する組織だとニケから聞いてはいるが、本当にそれだけなのだろうか。
「やがて、私は、そんな疑問を持ったことも『忘れて』、神の任期を全うした。持っていたはずのその『疑問』は私の中で『盲点』になっていたのだ」
「忘れた?」
「そうだ。再び、私がそれに気づいたのは人間界に着いた頃だった」
「何かの魔術の影響ですか?」
ビクトリアが使っていた能力、いや魔術のようなものを見たことで、その可能性も自然に視野に入れることが出来た。
「……分からない。天界に戻れない私に、それを確かめる術はもうない」
「『戻れない』?」
「疑問は尽きないだろうから、そろそろ話を戻そうか。……と、その前に、佐藤くん、アレを拓真くんに!」
その呼びかけに、佐藤さんが動く。……いや、動いたと思ったら、すでに鶴太郎さんのそばに立っていた。
10メートルは離れていたはずだ……。彼女も人間ではないのか?
消えるように動いた佐藤さんを見失い、ニケはこちらに戻ってくる。
「な、なんでー!?」
ニケも驚いている。
「相変わらず、佐藤くんは早いね! ありがとう! 少年、そして、ニケくん、これを食べておきなさい」
佐藤さんが持っていた皿を受け取る。その上には、切られた果物(?)が置かれている。
「これは?」
「切った『桃』だ」
鶴太郎さんはニヤニヤしている。俺は、これがただの『桃』ではないことは分かっている。
「まぁ、正確には『天界桃』という名前だ。食べてみなさい」
「うっわ、すげー!」
口に入れた瞬間に、パワーがみなぎる。
「パクパクいけちゃうね!!!」
そう言いながら、ニケはバクバクと『天界桃』を食べている。気づけば、ニケの体からオーラのようなものが出て……というか、発光している? ニケが発光している!
「お、おい! ニケ! 鶴太郎さん、これ大丈夫なんですか!?」
「……どうだ? ニケくん!」
「元気もりもりですー!!!!」
ガッツポーズを俺にしてくるが、心配でならない。ビクトリア戦のことを思い出す。あの時、ニケが止めに入らなければ、俺はきっと、アイツを……。
「だそうだ、少年!」
鶴太郎さんの声にハッとした。
「だそうだ! 拓真くん!」
鶴太郎さんのマネをするニケ。
「大丈夫! では、続きを話そうか。『襲撃』の話を。その前に、佐藤くん」
鶴太郎さんの呼びかけに、佐藤さんが部室の電気を消した。ニケの発光がより目立つ。ニケはこのままでいいのか。
「では、話を再開しよう。再び、能力を使おう。少年、ニケくん、私の手の上に手を置きたまえ」
言われるがままに手を重ねると、目の前に光が広がった。
「……拓真くん!」
誰かに揺さぶられて、俺は目を覚ました。薄暗い。目の前にはニケがいた。
「……ニケ? ここはどこなんだ」
「ちょっと待ってね……えっと……これかな? ポチッと」
周りが明るくなる。眩しい。目が慣れてきた。小部屋のようだ……。!?
「魔法のランプがいっぱい……だね」
部屋の中央に置かれたテーブルの上に、魔法のランプがぎっしりと置かれていた。
「この中に魔人が……」
言いながら手を伸ばした瞬間、横から手を掴まれた。
「少年、待ちたまえ。やっと見つけた」
「どひゃあああああああああああああああああああああ」
「鶴太郎さん!」
ニケはすっとんきょうな声を上げて驚いた。鶴太郎さんは壁をすり抜けて、俺たちを探していたらしい。鶴太郎さんの記憶の中なのだから、非現実的なことも出来るようだ。
「だったら、僕が今この魔法のランプを触っても問題がないのでは?」
「それは違う。確かに、これは、私の記憶。だが、この能力は記憶に潜り込むだけではない。記憶を変えることも出来ないことはない。だが、それを行うのは『リスク』が生じるんだ」
「どういうことですか?」
「その記憶の変更の規模の大きさによって、『天界力』を消費するんだ。そして、その消費量に対して、所持する『天界力』が足りなければ……そいつは記憶の狭間に消える」
「……とんでもないですね」
能力のことも俺は全然知らない。容易に動くのは控えた方がよさそうだ。
「鶴太郎さん! ここって」
「ニケくん、ここは、『魔人保管部屋』だ。君たちはこの後、拓郎と対面するんだ」
「そうだったんですね」
そういうことか。でも、なぜここに俺たちは居たのだろうか。
「本来は、次期、神が決まった直後に入るつもりだったんだが……」
そう言いながら、ニケの方を見る。
「……私?」
「ニケくんの『天界力』が高すぎてズレてしまったんだ」
鶴太郎さんの言葉にニケは分かりやすく落ち込んだ。
「で、でも、また飛べるんですよね」
俺がニケを気遣って鶴太郎さんに問いかける。
「少し時間が掛かるけど、大丈夫だ。そうだ、その間に、この『神様宮殿』を見て回ってみてはどうだ?」
「いいんですか?」
「ああ! ニケくん、案内出来る? 君しかいない!」
「わ、分かりました!!!」
ニケの機嫌は一気によくなった。鶴太郎さんもニケの機嫌の取り方を分かってきたようだ。少々雑にも感じるが……。
こうして、俺とニケは『神様宮殿』を見て回ることになった。
俺の問いかけに鶴太郎さんが頷く。
「ああ」
俺はニケの方を見た。ニケはきょとんとしている。
「拓郎が君のことを気にかけていたのは、もちろん、誰一人見捨てないという正義感もあるが、彼が愛した人にニケくんが瓜二つだったことも関係があるだろう」
ニケに語り掛ける鶴太郎さんは昔を懐かしむような表情で話していた。
「で、でも、そんなこと一度も『元』神様は……」
言わなかったのか……。いや、言わなかったのではなく、言えなかったのかもしれない。俺にはその気持ちが少し分かる気がする。
「そもそも気になっていたのですが、『魔人』とは一体なんなのですか?」
俺はニケと出会ってからずっと抱いていた疑問を鶴太郎さんにぶつけた。
「『魔人』が一体なんなのか……か」
鶴太郎さんは、神妙な顔になって俺の問いかけを繰り返した。
「はい」
ニケの方を見ると、ニケも「うんうん」と答えを待っている。
「……正直なところ、私も分からん」
「「へ?」」
俺とニケの声が重なる。
「ど、どういうことですか? というか、神様だった鶴太郎さんが知らないことって、それってつまり……」
鶴太郎さんも頷く。なるほど。世界は広い……。
「え? つまり何? どういうことー?」
ニケだけが分からず、困惑している。
「つまりだ。『魔人』が一体なんなのか? それは誰も知らないってことだ」
「んー?」
ニケは分からなかったらしい。首をかしげ、両手をお手上げという風に挙げたあと、ニケは佐藤さんの方に向かっていった。話に飽きたのだろう。ニケにグイグイ話しかけられて、佐藤さんは困惑している。
それにしても……。少しでも分かることは知っておきたかったが、ますます謎が深まった。
「少年、私も神の時代に、一度『それ』を追求しようとした。だが、答えにたどり着く前に大きな『壁』にぶつかった」
「『壁』?」
「『神選』さ。魔人の誕生には『神選』が間違いなく関わっている」
「『神選』ですか……」
謎の多い集団だ。神選、神様候補を選出し、神様を任命する組織だとニケから聞いてはいるが、本当にそれだけなのだろうか。
「やがて、私は、そんな疑問を持ったことも『忘れて』、神の任期を全うした。持っていたはずのその『疑問』は私の中で『盲点』になっていたのだ」
「忘れた?」
「そうだ。再び、私がそれに気づいたのは人間界に着いた頃だった」
「何かの魔術の影響ですか?」
ビクトリアが使っていた能力、いや魔術のようなものを見たことで、その可能性も自然に視野に入れることが出来た。
「……分からない。天界に戻れない私に、それを確かめる術はもうない」
「『戻れない』?」
「疑問は尽きないだろうから、そろそろ話を戻そうか。……と、その前に、佐藤くん、アレを拓真くんに!」
その呼びかけに、佐藤さんが動く。……いや、動いたと思ったら、すでに鶴太郎さんのそばに立っていた。
10メートルは離れていたはずだ……。彼女も人間ではないのか?
消えるように動いた佐藤さんを見失い、ニケはこちらに戻ってくる。
「な、なんでー!?」
ニケも驚いている。
「相変わらず、佐藤くんは早いね! ありがとう! 少年、そして、ニケくん、これを食べておきなさい」
佐藤さんが持っていた皿を受け取る。その上には、切られた果物(?)が置かれている。
「これは?」
「切った『桃』だ」
鶴太郎さんはニヤニヤしている。俺は、これがただの『桃』ではないことは分かっている。
「まぁ、正確には『天界桃』という名前だ。食べてみなさい」
「うっわ、すげー!」
口に入れた瞬間に、パワーがみなぎる。
「パクパクいけちゃうね!!!」
そう言いながら、ニケはバクバクと『天界桃』を食べている。気づけば、ニケの体からオーラのようなものが出て……というか、発光している? ニケが発光している!
「お、おい! ニケ! 鶴太郎さん、これ大丈夫なんですか!?」
「……どうだ? ニケくん!」
「元気もりもりですー!!!!」
ガッツポーズを俺にしてくるが、心配でならない。ビクトリア戦のことを思い出す。あの時、ニケが止めに入らなければ、俺はきっと、アイツを……。
「だそうだ、少年!」
鶴太郎さんの声にハッとした。
「だそうだ! 拓真くん!」
鶴太郎さんのマネをするニケ。
「大丈夫! では、続きを話そうか。『襲撃』の話を。その前に、佐藤くん」
鶴太郎さんの呼びかけに、佐藤さんが部室の電気を消した。ニケの発光がより目立つ。ニケはこのままでいいのか。
「では、話を再開しよう。再び、能力を使おう。少年、ニケくん、私の手の上に手を置きたまえ」
言われるがままに手を重ねると、目の前に光が広がった。
「……拓真くん!」
誰かに揺さぶられて、俺は目を覚ました。薄暗い。目の前にはニケがいた。
「……ニケ? ここはどこなんだ」
「ちょっと待ってね……えっと……これかな? ポチッと」
周りが明るくなる。眩しい。目が慣れてきた。小部屋のようだ……。!?
「魔法のランプがいっぱい……だね」
部屋の中央に置かれたテーブルの上に、魔法のランプがぎっしりと置かれていた。
「この中に魔人が……」
言いながら手を伸ばした瞬間、横から手を掴まれた。
「少年、待ちたまえ。やっと見つけた」
「どひゃあああああああああああああああああああああ」
「鶴太郎さん!」
ニケはすっとんきょうな声を上げて驚いた。鶴太郎さんは壁をすり抜けて、俺たちを探していたらしい。鶴太郎さんの記憶の中なのだから、非現実的なことも出来るようだ。
「だったら、僕が今この魔法のランプを触っても問題がないのでは?」
「それは違う。確かに、これは、私の記憶。だが、この能力は記憶に潜り込むだけではない。記憶を変えることも出来ないことはない。だが、それを行うのは『リスク』が生じるんだ」
「どういうことですか?」
「その記憶の変更の規模の大きさによって、『天界力』を消費するんだ。そして、その消費量に対して、所持する『天界力』が足りなければ……そいつは記憶の狭間に消える」
「……とんでもないですね」
能力のことも俺は全然知らない。容易に動くのは控えた方がよさそうだ。
「鶴太郎さん! ここって」
「ニケくん、ここは、『魔人保管部屋』だ。君たちはこの後、拓郎と対面するんだ」
「そうだったんですね」
そういうことか。でも、なぜここに俺たちは居たのだろうか。
「本来は、次期、神が決まった直後に入るつもりだったんだが……」
そう言いながら、ニケの方を見る。
「……私?」
「ニケくんの『天界力』が高すぎてズレてしまったんだ」
鶴太郎さんの言葉にニケは分かりやすく落ち込んだ。
「で、でも、また飛べるんですよね」
俺がニケを気遣って鶴太郎さんに問いかける。
「少し時間が掛かるけど、大丈夫だ。そうだ、その間に、この『神様宮殿』を見て回ってみてはどうだ?」
「いいんですか?」
「ああ! ニケくん、案内出来る? 君しかいない!」
「わ、分かりました!!!」
ニケの機嫌は一気によくなった。鶴太郎さんもニケの機嫌の取り方を分かってきたようだ。少々雑にも感じるが……。
こうして、俺とニケは『神様宮殿』を見て回ることになった。
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