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神決め大会 予選八日~
拓真と巫女さんⅡ
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しーちゃんの依頼は『お姉さんを探してほしい』だ。しーちゃんによると、お姉さんは一週間前に突然姿を消したという。
「そのお姉さんの写真とかってありますか?」
俺がそう言うと、しーちゃんは写真を懐から取り出した。その仕草に俺は少しドキッとする。
「これです」
手渡された写真を見て俺は驚いた。
「双子ですか?」
そこには、目の前にしーちゃんと瓜二つの女性が写っていた。しーちゃんは、髪で『右目』が隠れているのだが、よく見るとお姉さんは『左目』が隠れている。2人ともにこやかにピースをしていた。場所は……どこだろうか。木々が写っている。森の中で撮影したのだろうか。
「はい」
「名前とかって教えていただくことは」
「テー……えっと、『てっちゃん』です」
まただ。何かを言いかけて、とっさに愛称を俺に言っている。そんな気がする。だが、やむを得ない事情があるのかもしれない。何より、困っていることは確かだ。だったら、今は、それを解決出来るようにすることが最優先するべきことだろう。
「分かりました。とにかく、探してみます!」
「あ、拓真さん!!」
しーちゃんは出会った中で一番大きな声を出した。
「え、どうしましたか?」
「私も……拓真さんが探すときに……私も……私も一緒に探したいです……ダメでしょうか?」
しーちゃんは真剣な顔だ。……断る要素は一つもない。
「一緒に探していただけるなら、俺も嬉しいです」
俺がそう言うと、しーちゃんは嬉しそうに笑った。
「あ、それと……」
少し斜めに目線を落としながら、何かを呟いた。聞き取れなかった俺は聞き返す。
「なんて言いました?」
「……敬語じゃなくていいです」
「あ、えっと、分かりました! あ、敬語になってしまった」
いきなり敬語を止めるのは難しいものだ。その様子に、しーちゃんは笑っていた。
「私、これから少し用事があって……明日から一緒に探していただいても」
「了解! じゃあ、連絡先を交換しよう」
こうして、俺はしーちゃんと連絡先を交換し、明日から共に『お姉さんの『てっちゃん』』を探すことを約束した。あれこれと話をしていて、すっかり外は日が暮れていた。
俺は一度、お助け部に向かうことにした。
「青年!! あの少女は何者だ!!」
お助け部の部室に入るなり、鶴太郎さんが言い寄ってきた。……そうか、モニターで学内の様子を見ているんだった。忘れていた。
「いや、えっと、依頼主です」
「どんな依頼をされたの?」
モニターに向かっていた佐藤さんがこちらを向いて言う。
「いや、たいしたことじゃないので、僕一人で大丈夫ですよ」
「そっかー、てっきり大きな依頼かと思っちゃった」
そう言いながら、佐藤さんはまたモニターに向かった。
「青年も成長してきたということか! 私は嬉しいよ」
鶴太郎さんはニコニコ笑っている。
「そういえば、ニケは来てますか?」
俺がそういうと、佐藤さんが俺を呼んだ。
「これ見てみ」
モニターを指さす佐藤さん。見ると、ニケが映っていた。ひたすら、部屋を走っている? いや、何かから逃げているのか?
「よく見ててね」
佐藤さんはそう言って、手元のボタンを押す。すると、ニケがいる部屋の壁の四方八方から何かが発射された。
「え!?」
それをニケは避け続けていた。いや、全てではない。少し当たっているのか。血が出ている。
「驚いた? ニケちゃんはこの『修行』をあの鴨川の日からずっと続けてる」
「ニケが、毎日? そんなこと何も言ってなかった」
俺は知らなかった。ニケがこんなにもボロボロになりながら、強くなるために努力していたことを。
「この修行がニケちゃんの能力を開放するキッカケになるわけじゃない。でも、『強くなりたい』って言ってきてね、『私はもう魔人じゃない、だからこそ、強くならなきゃいけないんだ』って」
「ニケ……」
「拓真くん、私たちを頼ってね。一人でなんとかしようとするのも大事なんだけど、私たちがしてあげられることを私たちは全力でするつもりだから」
「え!?」
一人で焦っていたことを見透かされたようで、俺は驚いた。人に頼る……。言葉の意味は分かる。だが、それを俺が実践することは苦手……なのかもしれない。いつだって俺は一人でなんとかしてきた。しなくてはいけなかった。だから、人に素直に頼るのはあまり経験がない。
「ね?」
佐藤さんは俺の肩に手を置いて、笑いかけた。
「そうだぞ、青年!! 私から見れば、まだまだひよっこなのだからな!」
「ありがとうございます」
人の優しさ。なんて温かいのだろうか。
『ブブッ』
その時、ポケットに入れていたスマホが震えた。この振動は『LINE』だ。
「ちょっとすいません……!?」
スマホの画面を見て、俺は驚いた。同時に、気持ちが高まる。
「どうした、青年?」
鶴太郎さんが聞いてくるが、俺の意識は完全にアッチだ。
「え、いや、なんでもありません! すいません、僕、急用で」
「お、おう、そうか」
「佐藤さん! ニケに先に帰っておいてくれって伝えといてください!」
「え、いいけど、拓真くんはどこか行くの?」
「友達に会いに! では、失礼します」
「青年!! 一応、これを持っていけ」
鶴太郎さんが、机に置いてあった『桃』を一つ取って、俺にさし出してきた。
「鶴太郎さん、僕、急いでいて……『特殊天界桃』ですか?」
俺の問いに頷く。
「そうだ、私の『創造-身体能力向上-』が入っている」
「必要ないと思いますが……ありがとうございます!」
俺がこれから会うのは『アイツ』だ。必要ないだろう。
「気をつけろよ」
「? とにかく、ありがとうございます、失礼します」
鶴太郎さんの謎の忠告を聞きつつ、俺は『アイツ』のところへ向かった。
「『田中』、心配したんだぞ!!! 話したいことがいっぱいあるんだ」
俺は『LINE』をくれた友達『田中』に会いに、鴨川に向かった。
「鶴太郎さん、さっきの『気をつけろ』って」
佐藤は拓真がお助け部を去ったあとに尋ねた。鶴太郎の表情は厳しい。
「『予知』で視みたんだ」
鶴太郎はそれ以上口を開くことはなかった。
「そのお姉さんの写真とかってありますか?」
俺がそう言うと、しーちゃんは写真を懐から取り出した。その仕草に俺は少しドキッとする。
「これです」
手渡された写真を見て俺は驚いた。
「双子ですか?」
そこには、目の前にしーちゃんと瓜二つの女性が写っていた。しーちゃんは、髪で『右目』が隠れているのだが、よく見るとお姉さんは『左目』が隠れている。2人ともにこやかにピースをしていた。場所は……どこだろうか。木々が写っている。森の中で撮影したのだろうか。
「はい」
「名前とかって教えていただくことは」
「テー……えっと、『てっちゃん』です」
まただ。何かを言いかけて、とっさに愛称を俺に言っている。そんな気がする。だが、やむを得ない事情があるのかもしれない。何より、困っていることは確かだ。だったら、今は、それを解決出来るようにすることが最優先するべきことだろう。
「分かりました。とにかく、探してみます!」
「あ、拓真さん!!」
しーちゃんは出会った中で一番大きな声を出した。
「え、どうしましたか?」
「私も……拓真さんが探すときに……私も……私も一緒に探したいです……ダメでしょうか?」
しーちゃんは真剣な顔だ。……断る要素は一つもない。
「一緒に探していただけるなら、俺も嬉しいです」
俺がそう言うと、しーちゃんは嬉しそうに笑った。
「あ、それと……」
少し斜めに目線を落としながら、何かを呟いた。聞き取れなかった俺は聞き返す。
「なんて言いました?」
「……敬語じゃなくていいです」
「あ、えっと、分かりました! あ、敬語になってしまった」
いきなり敬語を止めるのは難しいものだ。その様子に、しーちゃんは笑っていた。
「私、これから少し用事があって……明日から一緒に探していただいても」
「了解! じゃあ、連絡先を交換しよう」
こうして、俺はしーちゃんと連絡先を交換し、明日から共に『お姉さんの『てっちゃん』』を探すことを約束した。あれこれと話をしていて、すっかり外は日が暮れていた。
俺は一度、お助け部に向かうことにした。
「青年!! あの少女は何者だ!!」
お助け部の部室に入るなり、鶴太郎さんが言い寄ってきた。……そうか、モニターで学内の様子を見ているんだった。忘れていた。
「いや、えっと、依頼主です」
「どんな依頼をされたの?」
モニターに向かっていた佐藤さんがこちらを向いて言う。
「いや、たいしたことじゃないので、僕一人で大丈夫ですよ」
「そっかー、てっきり大きな依頼かと思っちゃった」
そう言いながら、佐藤さんはまたモニターに向かった。
「青年も成長してきたということか! 私は嬉しいよ」
鶴太郎さんはニコニコ笑っている。
「そういえば、ニケは来てますか?」
俺がそういうと、佐藤さんが俺を呼んだ。
「これ見てみ」
モニターを指さす佐藤さん。見ると、ニケが映っていた。ひたすら、部屋を走っている? いや、何かから逃げているのか?
「よく見ててね」
佐藤さんはそう言って、手元のボタンを押す。すると、ニケがいる部屋の壁の四方八方から何かが発射された。
「え!?」
それをニケは避け続けていた。いや、全てではない。少し当たっているのか。血が出ている。
「驚いた? ニケちゃんはこの『修行』をあの鴨川の日からずっと続けてる」
「ニケが、毎日? そんなこと何も言ってなかった」
俺は知らなかった。ニケがこんなにもボロボロになりながら、強くなるために努力していたことを。
「この修行がニケちゃんの能力を開放するキッカケになるわけじゃない。でも、『強くなりたい』って言ってきてね、『私はもう魔人じゃない、だからこそ、強くならなきゃいけないんだ』って」
「ニケ……」
「拓真くん、私たちを頼ってね。一人でなんとかしようとするのも大事なんだけど、私たちがしてあげられることを私たちは全力でするつもりだから」
「え!?」
一人で焦っていたことを見透かされたようで、俺は驚いた。人に頼る……。言葉の意味は分かる。だが、それを俺が実践することは苦手……なのかもしれない。いつだって俺は一人でなんとかしてきた。しなくてはいけなかった。だから、人に素直に頼るのはあまり経験がない。
「ね?」
佐藤さんは俺の肩に手を置いて、笑いかけた。
「そうだぞ、青年!! 私から見れば、まだまだひよっこなのだからな!」
「ありがとうございます」
人の優しさ。なんて温かいのだろうか。
『ブブッ』
その時、ポケットに入れていたスマホが震えた。この振動は『LINE』だ。
「ちょっとすいません……!?」
スマホの画面を見て、俺は驚いた。同時に、気持ちが高まる。
「どうした、青年?」
鶴太郎さんが聞いてくるが、俺の意識は完全にアッチだ。
「え、いや、なんでもありません! すいません、僕、急用で」
「お、おう、そうか」
「佐藤さん! ニケに先に帰っておいてくれって伝えといてください!」
「え、いいけど、拓真くんはどこか行くの?」
「友達に会いに! では、失礼します」
「青年!! 一応、これを持っていけ」
鶴太郎さんが、机に置いてあった『桃』を一つ取って、俺にさし出してきた。
「鶴太郎さん、僕、急いでいて……『特殊天界桃』ですか?」
俺の問いに頷く。
「そうだ、私の『創造-身体能力向上-』が入っている」
「必要ないと思いますが……ありがとうございます!」
俺がこれから会うのは『アイツ』だ。必要ないだろう。
「気をつけろよ」
「? とにかく、ありがとうございます、失礼します」
鶴太郎さんの謎の忠告を聞きつつ、俺は『アイツ』のところへ向かった。
「『田中』、心配したんだぞ!!! 話したいことがいっぱいあるんだ」
俺は『LINE』をくれた友達『田中』に会いに、鴨川に向かった。
「鶴太郎さん、さっきの『気をつけろ』って」
佐藤は拓真がお助け部を去ったあとに尋ねた。鶴太郎の表情は厳しい。
「『予知』で視みたんだ」
鶴太郎はそれ以上口を開くことはなかった。
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