ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選八日~

拓真と田中Ⅰ

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 俺と田中は大学の入学式で席が隣だった。田中はイケメンで、すぐに女子から人気者になった。そんな田中とは生きている次元が違うと思い、離れようとしたが、田中はそんなことを一切気にせず、俺と仲良くしてくれた。

 施設で育ち、友達と呼べる存在なんていなかった俺は、親しく接してくる田中に対して、『何か企みがあるのでは』と警戒していたが、一切そんな素振りを見せることはなかった。

 大学一回生の終盤。一回生だけが集まる食事会があった。大学の大教室を借りての立食パーティーだ。その時、全員の会費が入った封筒がなくなった。俺は、それが発覚した時に、ちょうどトイレに行っていて、戻ってきた頃に、皆の視線は俺に集まった。俺は田中以外の人間にはあまり心を開いていなかった。そのため……

『神、怪しくね?』

『アイツ、何考えてるか分からねーもんな』

『絶対、アイツよ』

 俺じゃない。俺のそんな必死な否定もアイツらの耳には届かなかった。そんな時、田中は、皆の前に出て、こう言ってくれたんだ。

『俺は神じんくんを信じるよ』

 結局、会費の袋は参加した教授の荷物の中に紛れ込んでいた。だが、俺の無実が判明した時に謝罪してきたのは誰もいなかった。



 俺は、田中に『なぜ仲良くしてくれるのか』と聞いたことがある。その時、田中は、自分が『施設育ち』だということを打ち明けてくれた。田中が言う施設の存在は知っていたし、そこと俺がいた施設の交流は盛んだった。

『でも、施設育ちだから仲良くっていう理由わけじゃないけどね。単純に、『拓真』と一緒に居ると落ち着くんだ』

 初めて『友』と呼べる存在に俺は嬉しくて嬉しくてたまらなかったのを覚えている。こんなに丁寧な口調だったのに、今は全然だ。平気でバカにしてくるしな。俺と田中は友達だ。



「田中ー!!!」

 すっかり日が落ち、鴨川沿いの道は等間隔に立てられている街灯の光に照らされている。道を走る車のヘッドライトが鴨川沿いを一気に照らした。その光の先、街灯の傍のベンチに田中は座っていた。

「よう、久しぶりだな!」

 近づき、俺は田中にそう言った。話したいことはたくさんあるのだが、何から話していいか分からない。俺は隣に座った。田中は、夏だというのに黒のローブを着ている。

「呼び出して悪かったな」

 腕組みをしながら、田中が口を開いた。その口調は、やはり、以前、ニケと一緒に居た際に会った時と同じだ。

「悪かったって、水くさいな。てか、大学、テスト来てなかっただろ? どうすんの? てか、そのなんだよ!」

 おどけたように俺は言った。『単位やばいよなー、どうしたらええかな』と田中もおどけて返してくれるはずだ。

「大学は……もういいんだ」

 田中の視線は鴨川の方を見ている。俺とは合わせようとしない。

「は!?」

 何言ってんだ、こいつは。あ、ボケか、そうか、俺を驚かせようとしているんだ。きっと、そうに違いない。

「それより、お前に頼みがあるんだ」

「頼み? なんだよ! 俺に出来ることなら、なんでもしてやるぜ! 言ってみろよ!」

「ありがとな」

 そう言いながら、田中は立ち上がった。俺もつられて立ち上がる。そして、田中はこちらを振り返って言った。

「死んでくれ」

 いつのまにか田中の右手にはナイフが握られている。

「は? えっと、田中、冗談はいいからさ。これもおもちゃなんだろ?」

 俺はいつものように茶化す。だが、田中の目は本気の目だ。

「いい子がいるって話をしただろ? その子がさ……うっ……」

 そう言いかけた時、田中は頭を左手で押さえた。

「お前がいい子だって言っていた子か? その子がどうしたんだよ!]

田中は何も答えない。頭を押さえながら、下を向いている。

「おい、大丈夫か? とりあえず、それは俺が預かるから」

 俺は田中が持っているナイフを掴もうと右手を出した。その時、田中がナイフを俺の手にめがけて突き刺した。

「は?」

 一瞬何のことか分からなかった。田中の持っているナイフの先端が俺の手のひらを貫通している。これは夢か? ……いや、違う!!

「うわあああああああああああ」

 それが現実だと認識した途端、右手に激痛が走った。

「拓真、お前は生きていたら『あの方』の邪魔になるんだ」

 田中の瞳は『赤』だった。そう言いながら、田中はナイフを引き抜いた。

「うぐああああああ」

 痛みで、痛みで何も考えられない。田中、嘘だと言ってくれ。お前はそんなことをする奴じゃ……

「だから、お前には死んでもらう」

 俺はお前を……。お前を信じようと……。

「死ね! 拓真ァァァ!」

 田中は懐から新たに出したナイフを左手に持ち、それを俺の心臓めがけて突き刺した。

「……」

 刺さる瞬間に、俺は鶴太郎さんから貰った『特殊天界桃』を口にしていた。体に力がみなぎる感じがする。

「な、なんだ……拓真、お前は一体」

 馬鹿野郎が。こいつは本当に大馬鹿野郎だ。ナイフは少し、俺の胸に刺さっていた。が、それを掴み、引き抜く。ナイフは鴨川に投げた。

「……田中」

 この力は、田中に、俺の友だちに向けたくはなかった。だが……

「お前は死ななくてはいけないんだ!」

 血走った赤い目で田中は俺に言った。お前にそんなことを言われる日が来るなんて。……大丈夫だ、田中。お前は今少しおかしくなっているだけだ。大丈夫、俺がお前を正気に戻してやるからな。

「はぁぁぁ」

 力を使う。体が熱い。全身に力がみなぎる。俺の体は青白く光り出した。

「……そうか。お前『も』不思議な力が使えるのか」

 一瞬驚いたような表情を見せたが、田中は冷静にそう言った。そして……

「オラァ!!」

『ボン』

 何かが破裂したような音がなる。思わず目を瞑ってしまったが、目を開けると、田中の体はうす黒く光っていた。オーラのようなものを纏っているように見える。

「拓真、ここからが本番だ!」

「田中、お前を絶対に正気に戻してやるからな」

 田中はこちらに向かって走り出した、

「拓真ァァァ!!」

 こいつを、こいつは友だちだ。俺は友だちを救う。コイツを正気に戻すために、俺はコイツと、田中と戦う。

「田中ァァァ!!」

 お互いの拳がお互いの頬に入った。
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