ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選八日~

拓真と田中Ⅲ

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「ふぐぁ」

 そう言いながら、田中はそのまま後ろに倒れた。

「はぁはぁはぁ」

 ニケ……お前……。ニケの体のオーラが消える。

「ニケくん! よくやった!!」

 隣の鶴太郎さんが右手を上げて手を振る。その呼びかけに、ニケは振り返った。

「……や、やりました……やりましたああああ!」

 両手を高く上げ、バンザイをするニケ。そんなニケを見て、俺は涙が込み上げてきた。

「ニケ!!」

「拓真くん!!」

 俺の呼びかけに、ニケは応じた。ニケがこっちに向かって走り出す。

 だが、その時、何者かがニケの背後に現れた。髪が長い、女のようだ。

「ニケ! 後ろ!!!」

「死ね!!」

「えっ!?」

 背後に突如現れた女がナイフのようなものを振り返ったニケの胸めがけて振り下ろした。俺は思わず、目をつぶった。

『グシュ』

 何かに突き刺さった音がした。

「ニケ!!」

 俺は目を開ける。 

「誰? おじさん、どっかで会ったっけ? 私見たことあるなぁ」

 鶴太郎さんが腕でその女のナイフを受け止めていた。俺はその女を知っている。ソイツの名前は……

「ビ、ビクトリア!!」

 アイツだった。

「ちょっと卑怯じゃないかな、おじょうさん」

「卑怯? 殺しに卑怯もくそもないよ、おじさん!!!」

 鶴太郎さんは冷静だが、だが、ビクトリアが持つナイフは突き刺さっている。ニケは鶴太郎さんの後ろで茫然としている。

「た、拓真くん!」

 隣に居た佐藤さんが、俺の後ろをにらみながら言った。

「え?」

 振り向くと、俺の背後に青い髪の女が立っていた。

「言われないと気づかないなんて、間抜けな人ね!」

 俺はその顔に見覚えがあった。コイツは確か……

「レア……か?」

「!?」

 その反応で確信した。そうだ、ニケの過去に出てきた魔人だ。神島と一緒にいた。

「なんで知っているのかは知らないけど、とにかく、邪魔なのよね、だから、死んで!」

 黒い光を纏った拳を俺にぶつけてくる。

「そうはさせない!」

 それに佐藤さんが応じる。……俺は守られてばかりだ。ニケが俺のところに走ってきた。

「拓真くんは『弱くない』! 自分を責めちゃダメ! 今は生き残ることを考えよう」

 そう言いながら、ニケが肩を貸してくれる。立ち上がる。だが、ニケもふらふらだ。

「青年! 私たちも頃合いを見て逃げる! だから、君たちは先に逃げたまえ……くっ……」

「よそ見してる場合はないわよっ!」

 ビクトリアはそう言いながら、鶴太郎さんの横腹に蹴りを入れた。

 俺とニケはゆっくりとその場から離れようと歩き出した。途中、田中が気になり、振り返る。田中はまだ倒れていた。

「拓真くん!」

 ニケにそう言われ、俺は再び、歩き出した。北大路橋手前まで来た。あとは、この階段を上がって……

「やぁ」

 その時、突如、頭の中に声が響き渡った。思わず、ニケの方を見る。ニケも聞こえたようだ。ニケも俺の方を向いた。

「こっちだよ」

 無意識に、声の方を向いた。今度は頭の中ではない。見ると、声の主は北大路橋の手摺の上に立っていた。深くフードを被っていてなおかつ暗い為、顔が見えない。と、瞬きをした瞬間、ソイツは目の前に現れた。

「久しぶりだね」

「!?」

 声からして男だ。その男はフードを脱いだ。その男は整ったキレイな顔をしていた。カリスマなんて言葉は使ったことも、人に対して感じたこともなかったが、この男には何か惹きつけられるようなものがある。

「え……あ……」

 ニケが声にならない声を発した。ニケの様子がおかしい。

「ニケ、知っているのか?」

「……」

 ニケは答えない。……この透き通るような声……。どこかで……。……そうだ。ビクトリアと戦った時、あの時に。

「そうだよ、よく思い出したね! よく出来ました!」

「!?」

 こ、コイツ、心を読んだ……のか!? まさか魔人?

「いや、僕は『魔人』じゃないよ、まぁ、『天界人』でもないんだけどね」

「?」

 どういうことなんだ。心を読むことが出来るのは、『魔人』だけのはず。……俺も使うことが出来るが、なぜ使えるのかは謎だ。

「君と、僕は『同じ』なんだ! あ、そうか、君はまだ知らないんだね」

「『同じ』!? 『同じ』ってどういうことだ!!」

 俺にはまだ知らないことがある……のか?

「というか、アンタは一体何者なんだ!」

「……」

 答えない。俺は瞬きをした。その一瞬の間に、男はニケの傍に立っていた。ニケの頬を撫でている。

「ニケ!」

 俺は危険を感じ、肩を組むニケの体を揺らした。だが、ニケはされるがままだ。小刻みに震えている。

「散々、かわいがったもんね。ニケちゃんとは色々なことをしたなぁ」

 そう言いながら、ニケの頬を触り続けている。

「教えてあげようか、拓真くん」

「やめてっ!!」

 ニケが叫ぶ。男はニコニコしている。

「さて、ところで……」

 その男は、瞬時に俺の前に現れた。

「君は弱いんだよねぇ。でも、しぶとく生き残ってる」

「……」

 俺は黙って男を見つめる。

「それは君の周りの人間が優秀だからだよね」

 目の前でクルクルと周り、階段を一段、一段上りながら言う男。

「だからね、ゲームをしようよ」

 数段階段を上り、男はこちらを振り向いて言った。

「ゲーム……だと」

 そんなの受けるわけがないだろ。だが、男は嬉しそうだ。

「そう! ゲーム!」

「僕たちが勝ったら、『君の命を貰う』。君たちが勝ったら、そうだなぁ」

「そんなの受けるわけな」

 俺がそう言いかけた時、男は右手の人差し指を立てた。

「『100万AP』をあげるよ」

「は!?」

「……」

 ニケは下を向いたままだ。ガタガタ震えている。『100万AP』は予選を勝ち残るために必要な数値だ。目安とはいえ、それだけ持っていれば予選は突破出来るはずだ。

「まぁ、考えといてよ。一週間後、再び、君の前に現れる。その時に、答えて」

「……」

「じゃ、行こうか」

『パチン』

 男が指を鳴らす。その瞬間に、戦っていたはずのビクトリアとレアが現れた。2人とも疲弊している。

「青年! ニケくん!」

「拓真くん! ニケちゃん!」

 後ろを振り向くと、鶴太郎さんと佐藤さんが走ってきていた。その様子を見て安堵するとともに、俺は佐藤さんに向かって叫んだ。

「佐藤さん! ニケの様子がおかしいんです」

「ニケちゃん!?」

 傍まで来た佐藤さんにニケを預けて、俺は鶴太郎さんと共に、男と魔人たちと向き合った。

「あ、そうだ」

『パチン』

 男が指を鳴らす。その瞬間、意識を失っている田中と、田中を担ぐ女性が現れた。女性は巫女の服を着ていた。え、巫女!? 後ろ姿が誰かに似ている。ジッと見ているとその子がこちらを振り返った。

「……え……」

 俺はその女性を見て驚いた。その女性を俺は知っていたからだ。

「……しーちゃん!?」

 ……いや、待て、違う! しーちゃんじゃない! しーちゃんに瓜二つだが、違う! ま、まさか……

「……君がてっちゃん……か?」

 その女性は、しーちゃんとは髪の分け方が逆だった。そう、その女性は依頼人しーちゃんが見せてくれた写真に載っていた女性、姉の『てっちゃん』だった。
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