ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選八日~

拓真と田中Ⅳ

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「青年、知っているのか?」

 俺の反応に鶴太郎さんは驚く。

「ええ、まだ確定はしていないですが……」

「顔見知りかい? 『テイレ』」

「いや、知らないわ、あんな芋野郎」

 男の問いに、『テイレ』と呼ばれるその女性が俺の方を見ながら言った。

「拓真くん、この子は今、僕の子たちの中でイチ押しの子でね。あと、もう一人見つけさえすれば、僕は……」

 男はニヤリと笑う。

「……私一人で大丈夫よ、あの子は必要ないわ」

 テイレは男をにらんでいる。

「ちょっとアンタ、『トオル』様に対してその態度は何?」

 そう言いながら、レアがテイレに詰め寄った。男の名前は『トオル』というらしい。思い出した、そういえば、あの日、ビクトリアもそう言っていた。その男、トオルは笑っている。

「そうね、ちょっと調子乗り過ぎね」

 ビクトリアもレアと同じように詰め寄った。

「いいんだ、2人とも」

トオルが口頭で伝えている。だが、2人は聞いていない。

「でも、一回、コイツしめとかないと」

「アンタねぇ」

 ビクトリアがテイレの胸倉を掴んだ。その時……

『いい加減にしろ』

 脳内にトオルの声が響く。その音は近くで雷が落ちたような衝撃だ。空気がビリビリと震えているような気がする。俺は気づくと膝をついていた。顔を上げようとするもトオルの方を見ることが出来ない。

「……せ、青年。だ、大丈夫か」

 横にいる鶴太郎さんはかろうじて立っている。ゆっくりと後ろを振り返る。佐藤さんに抱かれているニケは気を失っているようだ。佐藤さんはニケを抱いたまま固まっている。このトオルの能力は一体なんなのか。

「あ、あ、あ」

 前を見ることが出来ないが、この声はビクトリアの声だ。その声が聞こえた後、何かが倒れる音がした。

「やるねぇ、おじさん! 一体何者?」

 トオルが言う。その声を聞いた瞬間、体が軽くなった。すぐにトオルの方を向き直す。

「!?」

 見ると、さっきまで立っていたビクトリアとレアが倒れている。テイレは田中を担いだままだ。

「名乗るほどの者じゃないよ」

 鶴太郎さんはトオルをにらみながら言った。

「……そっか。まぁ、でも、『僕の敵』ではないかな!」

「それはどうかな? 君のような若い人間にまだまだ負けないけどな」

 鶴太郎さんはそう言いながら、トオルに手招きをした。明らかな挑発行為だ。

「……おじさん、アナタ死ぬよ、これは予言」

「!?」

 そう言うテイレの方に視線を移す。その瞬間、俺は驚いた。テイレは右手で右目が隠れていた髪を上げている。髪に隠れていた方の瞳は『赤く』輝いていた。

『パチン』

 トオルが指を鳴らす。その瞬間、黒服の人が3人現れた。

「先に帰っていてくれるかな……あと、その力をあまり使うな、テイレ」

 トオルがそう言うと、テイレは掴んでいた髪の毛を離した。再び、片目が隠れ、赤い光も無くなった。

『パチン』

 再び、トオルが指を鳴らす。その瞬間、トオル以外が消えた。

「な、た、田中!!!」

「拓真くん、君も往生際が悪いねぇ。田中くんはもう田中くんじゃないんだよ、君も分かっただろう?」

 思わず叫んだ俺に対して、トオルが冷静に言った。俺だって分かっている、だけど、認めたくない。

「ち、違う!」

「……まぁいいや。それより、今、僕は……」

 トオルは既に俺の方を向いていない。トオルの視線は、鶴太郎さんを捉えている。

「……相手をしてあげようか? 少年!」

「……おじさん、ムカつくから、殺すわ」

 その瞬間、トオルが消えた。

「ふぅ、危ない、危ない」

 トオルは鶴太郎さんの胸に右拳を打ち込もうとしていた。その手を鶴太郎さんは掴んでいる。トオルの力が強いのか、掴む鶴太郎さんの手が少し震えている。

「せ、青年! 逃げろ! 佐藤くん!! 2人を頼む!」

 そう言って鶴太郎さんは空いている左手を自身の懐に突っ込み、中から取り出した『天界桃』を佐藤さんに向かって投げた。

「つ、鶴太郎さん! 俺も残ります!!」

 俺は鶴太郎さんに訴える。嫌な予感がするからだ。この男、トオルは只者ではない。俺が居たところで状況は変わらないかもしれないが、居ないよりはマシだろう。

「ダメだ!!」

 俺に向かって鶴太郎さんは大声で言った。

「よそ見している暇はないんだけどね」

 トオルは左の拳で鶴太郎さんの腹部を殴った。

「ぐふっ」

 衝撃で、鶴太郎さんは吐血した。

「……は、早く! 佐藤!!」

 その瞬間、俺の体は宙に浮いていた。腰を掴まれている。佐藤さんだ。佐藤さんは俺とニケを担いで、ジャンプしていた。

「さ、佐藤さん、なんで!」

「つ、鶴太郎さんが『逃げろ』って言ったでしょ……大丈夫、信じよう」

 その声は震えていた。信じたい、信じたいけど……。

 佐藤さんに連れられ、俺たちは『お助け部』の部室に戻った。ベッドにニケを寝かせた後、佐藤さんは意識を失った。よく見ると、佐藤さんも全身怪我をしていた。刺し傷、そして、打撲のような痣もある。俺は佐藤さんを寝かせ、そして……

「やっぱり、俺はほっとけない」

 俺は鴨川に向かって走り出した。

 雨が降ってきた。その中を無我夢中で走った。

 鴨川にたどり着いた時、俺の体はずぶ濡れだったが、そんなことを気にもせず、階段の上から俺はトオルと鶴太郎さんがいた場所に目をやった。街灯の明かり以外、何もない。さっきまでの騒がしさが嘘のように、鴨川はいつもの鴨川に戻っていた。

「鶴太郎さあああああああああああああああん」

 俺は叫んだ。とにかく、近くまで行こう。

 近くに向かうにつれて、誰かが椅子に座っていることが分かった。シルエットで俺はそれが誰だか分かった。

「……」

 俺は椅子の目の前にたどり着いた。目の前の光景を俺は嘘だと思いたかった。

 そこに居たのは鶴太郎さんだった。胸に大きな風穴があけられている。血がポタポタと椅子の下に滴り落ちている。

「……鶴太郎さん」

 俺は小さな声で言った。返事は帰ってこない。

「……鶴太郎さん!」

「……鶴太郎さん!!」

「鶴太郎さああああああああああああああん」

 俺は泣きながら叫んだ。鶴太郎さんが死んだ
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