ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選九日目

魔人の故郷Ⅰ

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「……年!」

 遠くで誰かが俺を呼んでいる。目を開けようとするも開けることが出来ない。

「……年!!」

 その声は確か……。俺を呼ぶ声はだんだんと小さくなっている。遠ざかっていっているのか。

「……すまない」

 ……そうだ。俺は思い出した! 俺は胸に風穴が空いた鶴太郎さんを思い出した。

「……真くん!!!」

 見覚えのある天井だ。そこに向かって俺は手を伸ばしていた。夢? だったのか? その俺の手を支えるように誰かの手が俺の手を掴んでいる。

「拓真くん! もう大丈夫だよ!」

 俺の手を掴んでいたのはニケだった。ここは『お助け部の部室』だ。起き上がる俺をニケが支える。か、体が痛い……。田中に受けた傷はまだ治っていないようだ。

「あ、ありがとう」

 俺の声にニケが頷く。よかった。無事で。いや、それよりも……。

「つ、鶴太郎さんは!?」

 俺の問いにニケはうつむいた。その様子に俺は状況を察する。

「そうか……くそっ」

 俺は俺の力の無さに嘆いた。また俺は、俺に力があればこんなことには。

「『重傷』で……特殊な攻撃を受けたらしくて、佐藤さんの『再生リバース』でも治らなくて」

「……え?」

「今はあっちの部屋で寝てる」

「『重傷』? い、生きてる!?」

 俺は驚いた。勝手に死んでしまったと勘違いしてしまっていたのだ。

「そ、そうだったのか……よかった、本当によかった……」

 安心したせいで涙があふれてくる。そんな俺の涙をニケは拭いてくれた。

「私がもっと強ければ……拓真くんを悲しませなくてすむのに。なんでか、拓真くんの悲しむ姿を見ると、胸のあたりがきゅーっと痛くなるの」

 ニケの優しさに俺はいつも救われている。

「そういえば、俺と鶴太郎さんを誰がここまで運んだんだ?」

 俺はふと気になった。あの時、動ける人間はいなかったはずだ。

「それは……」

『ガチャ』

 ニケが説明しようとした時、誰かが部屋に入ってきた。

「私です」

 その声の主は……『しーちゃん』だった。



 昨夜、トオルと一緒にいた女性。あれは確かに、しーちゃんから見せられた写真の女性だった。

「しーちゃん、実は……」

 俺は、しーちゃんに『テイレ』のことを話そうとした。これは話しておくべきことだ。

「ごめんなさい!」

 それを遮るようにしーちゃんは頭を下げた。

「私、知っていて……お姉ちゃんがあの男の仲間になっていることを」

「知っていたのか」

 顔を上げ、俺の方を見た。その顔は申し訳なさそうだ。

「……私の……私の本当の名前は『シアス』と言います。人間ではありません。魔人です」

 魔人……。神決め大会が始まってから、多数の魔人に会い、俺も魔人と告白されることに慣れてきている。そのせいか、あまり驚かなかった。

「魔人……ってことは、ニケは知っているのか?」

 俺はニケの方を見て尋ねる。だが、ニケは首を傾げていた。

「いえ、ニケさんは知りません。むしろ『天界』の『神様宮殿』に居た魔人は誰も私たちのことは知りません」

 シアスは冷静に俺たちにそう言った。誰も知らないというのはどういうことなのだろうか。

「どういうことなんだ?」

「私は……」

 俺が尋ね、シアスが答えようとした瞬間、部屋の扉が勢いよく開いた。

「ニケちゃん、拓真くんの様子は……!?」

 佐藤さんが部屋に入ってきた。俺の様子を見るなり、佐藤さんは「よかった」と安堵した。俺は、それよりも佐藤さんに聞きたいことがあった。

「さ、佐藤さん! 鶴太郎さんは?」

「それが……傷が治らないの。体のいたるところに傷があって、一番ヒドイのは胸の傷。もう少し位置がずれていたらおそらく亡くなっていたと思う」

 佐藤さんはそう言いながら首を振る。

「佐藤さんの能力を込めた『特殊天界桃』は効かないんですか?」

 ニケが佐藤さんに尋ねた。

「うん、ダメみたい。このままだと……」

「ど、どうして治らないんでしょうか?」

 『再生リバース』で治らない傷とは一体。俺の傷の治りが遅いのも関係があるのだろうか。

「それは、にわかには信じがたいことなんだけど……」

「おそらく、それは『黒儀こくぎの魔術』だと思います」

 俺たちの会話を聞いていたシアスが口を開いた。『黒儀こくぎの魔術』?

「『黒儀の魔術』!? そんなことが……」

 佐藤さんはかなり驚いている。それほどの魔術なのだろう。

「『黒儀の魔術』って一体」

 俺はシアスに尋ねた。

「『黒儀の魔術』は古くから伝わる伝説の魔術のこと。だけど、それは『お伽話』に出てくるもので、誰もそれが本当に存在するなんて信じていないくらい」

 シアスの代わりに佐藤さんが俺に答えてくれた。だが、その言い方は自分にも言い聞かせているように感じた。

「もし、それが本当だとしたら、『再生リバース』で治らないのも理解できる。けど、そしたら、鶴太郎さんは……」

「傷を治す方法はあります」

 そう言うシアスに皆の視線が集まる。

「え、どういうこと?」

 佐藤さんが尋ねた。

「私たちの『村』に『黒儀の試練』というものがあって、それを突破すると貰えるモノが『白草』という薬草なんですが、それは黒儀で負った傷を治すことが出来ます」

「そ、そんな話、聞いたことがない。アナタは一体何者なの?」

 佐藤さんの語気が強くなる。シアス、君は一体何者なんだ。

「わ、私は……」

「大魔神パマンの『娘』です」
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