ランプの魔人ニケちゃん

くじぇ

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神決め大会 予選九日目

魔人の故郷Ⅱ

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「大魔神パマン!?」

 一瞬、誰のことなのか俺は分からなかった。ニケも首を傾げている。だが、佐藤さんは理解したようだ。

「そ、それが本当だとしたら……。アナタのお父さんは、多くの魔人の命を奪っているのよ! アナタはそれを分かっているの?」

 佐藤さんはシアスの胸ぐらをつかんだ。そうだ、思い出した。鶴太郎さんの話に出てきた魔神だ。『大魔神の交渉』は、大魔神パマンによって行われていると言っていた。ニケも思い出したように俺の方を見た。

「そ、それは……」

「ちょっと、佐藤ちゃん、やめて」

 佐藤さんに問いつめられたシアスはうつむいている。そんな二人の間にニケが割って入った。

「や、やめましょう、佐藤さん」

 俺も促す。佐藤さんはシアスを離すと部屋から出て行った。ニケが追いかけようとしたが、シアスが呼び止めた。

「ニケさん、拓真さん、こんなことになってしまってごめんなさい。私が未来を視たから」

「!? シアス……一体どういうことなんだ」

「アナタたちは……『あの男』からお姉ちゃんを取り戻してくれるはずだった。あの場に彼らが現れて、アナタたちが彼らと戦うことが分かっていましたから」

 何がなんだか分からなくなってきた。

「なんでわかっていたの?」

 そんな俺とは対照的にニケが冷静に尋ねた。

「私は……『未来が視えます』」

「未来が視える? 視えた未来では、俺たちはアイツに勝っていたのか?」

「はい。でも、私のこの能力は完璧ではなくて……半分なんです」

「半分? ……もしかして、テイレも同じ能力を持っているのか?」

「はい。……正確には私とお姉ちゃんの能力は『二人で一つ』なんです」

「『二人で一つ』……」

 昨夜のあのテイレの目、あれは未来を視ていた? あの時、『鶴太郎さんが死ぬ』という未来をテイレは視ていた。だけど、それは結果的には外れている。完璧ではないというのはそういうことなのだろう。

「二人が能力を使うと、どうなるの?」

「私たちが視た『未来』は絶対に変わることのない『未来』になります。その視える『未来』は思いのままに変えることも出来ます」

「『未来』を思いのままに変える!?」

「はい。なにがあろうと、そこで視たことは絶対に変わりません」

「それは、テイレも知っているのか?」

「私とお姉ちゃんと、私たちの村の住人は知っています」

「そうか。どちらにせよ、それはあまり他言するべきではないと思う」

 もしも、トオルという男がそれを知っているのであれば、シアスにも危険が及ぶ可能性がある。あの男には何か叶えたい『未来』があるということか。……いや、そんな能力があれば、誰だって手に入れたいと思う。それが自然だ。

 俺は隣でうんうんと頷くニケを見た。俺はニケに聞きたいことがあった。

「……ニケ、聞いていいのか分からないんだけど、『トオル』というあの男は一体何者なんだ?」

 俺の問いにニケは下を向く。そして、口を開いた。

「……アイツはね……神島の息子なの」

「そうか」

 そんな気がした。神島と出会った時も感じた、威圧感のようなものをトオルにも感じたからだ。アイツが本気を出せば俺などすぐに殺されてしまうだろう。でも……

「俺、アイツらと戦う約束を……」

「あの時のこと、私、あんまり覚えていなくて。でも、そんな約束、律儀に守る必要なんてないよ!」

 ニケは俺にそう言う。その時、俺はトオルとの約束の条件を思い出していた。

『「僕たちが勝ったら、『君の命を貰う』。君たちが勝ったら、そうだなぁ」』

『「『100万AP』をあげるよ」』

 『100万AP』が手に入れば、この予選を突破できるかもしれない。でも、本当にそれでいいのか。他人にお礼を言われて獲得出来るAPを他の神候補から貰って予選を突破する。そんなことをして俺は神になった時、胸を張っていられるのだろうか。

「拓真くん?」

「いや、大丈夫」

 今はそんなことよりも、鶴太郎さんのことを優先しなければ。こうしている間にも、鶴太郎さんは苦しんでいるはずだ。

「シアス……君らの『村』に俺を連れて行ってくれないか?」

「『黒儀の試練』を受けるのですか?」

 シアスは静かにそう言った。

「ああ」

「え、拓真くん、一人で行くつもり?」

 ニケは驚いたように俺に問いかける。

「そもそも俺が田中と会ったことで始まったことだからな。俺の責任だ」

 ニケは関係ない。俺がなんとかしなくては……。

「なんで拓真くんはそうやって一人で抱えようとするの!!」

「!?」

 ニケの大きな声に俺は驚いた。

「シアス、私も連れて行ってほしい」

「ニケ!」

「あの時、ああなったのは、拓真くんのせいだけじゃないよ! 私にももっと力があったらって思う」

「ニケ……」

 ニケの優しさに俺はいつも救われる。

「私は、何人でもいいですよ。ただ、一つ言えるのは、『黒儀の試練』は『3人』で受けなければいけません」

「それだったら、私と拓真くん、あとは……」

 そうだな、あと一人は『あの人』しかいない。



「私は行けない。ごめん」

 俺たちは鶴太郎さんの眠る部屋で佐藤さんに打診していた。鶴太郎さんは、体中に包帯を巻いていた。

「鶴太郎さんがこんなことになってしまっているし。私はまだ彼女の言うことを信じたわけじゃない」

「佐藤ちゃん……」

「もしかしたら、その子は、あのトオルとかいう奴の手下かもしれないのよ」

 佐藤さんはシアスの方をにらみつけながら強い口調で言った。

「そ、それは違います!」

 シアスは否定するが、佐藤さんはにらんだままだ。

「と、とにかく、私は鶴太郎さんの傍に居たいし、居る」

「……分かりました」

 俺たちは佐藤さんにそう言って、部屋を出た。お助け部の部室を出て、俺たちは部室棟一階にある自動販売機の前に居る。

「あと一人……どうするか」

 腕を組み、俺は考える。俺が頼めるとすれば……俺の頭の中に梅森さんが出てきた……が、すぐにかき消した。俺たちの戦いに一般人は巻き込めない。

「そもそも『黒儀の試練』ってどんな内容なの?」

 ニケがシアスに尋ねた。確かに、それは俺も気になることだ。だが、恐らく……

「それは分かりません。試練を受ける者だけが知りうることです」

 だと、思った。

「そうか……ん? 待てよ、シアス、君は参加出来ないのか?」

「私ですか? 私は……出来ません。ごめんなさい」

 ダメ元だったが、やはりあと一人探す必要がある。

「どうしようもないな、頼める人に宛もない」

「……あっちに行って探す手もありますが……」

 その『村』の住人が力になってくれるなら、それほど頼もしいことはない。だが、そう簡単にいくのだろうか。 

「誰かいるかなぁ」

 ニケはお手上げだなぁという感じで呟いた。

「だが、ここに居ても何も状況は変わらない。とにかく行くしかない」

 正直、無計画だ。だが、動くしかない。動きながら考える。

「分かりました。私たちの村に行くためには、転送魔法を使う必要があります。今日の夜21時に、またここに来てください。準備をしておきます」

 俺とニケは一旦俺のアパートに戻った。部屋に着いて、ベッドに倒れこむと俺たちはそのまま深い眠りに落ちていった。
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