灰色の冒険者

水室二人

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第2法 裏編

十色vs勇気 その2

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 異世界人の館から、一つの小さな影が駆け抜ける。

 気配を消しているので、ほとんどの人はそれに気づかない。

 だが、そういうことに特化した存在がいるわけで、常時そこを見張っていた。一匹の猫が、果て無き迷宮へと入っていくのを、その存在は認知した。ただ、それだけ。見張るべきは異世界人なので、報告の必要は無い。

 確認の為に、監視所から顔を出して目視する。気配の薄い、普通の猫がいただけだった。この時点で、怪しいと思わなければいけなかったのだが、それ以上のことを考える事は彼には出来なかった。

 後日、流行り病でこの人物は死亡してしまった。伊藤さんによる、特効薬の配布阻止の影響は、国の色々な所で出始めていました。特に、鼠使いの所属していた諜報部の被害は大きく、異世界人の館の監視は、外も中も疎かになっていくのでした。




「尻尾カッター、乱舞!!」

 みょんみょんと、尻尾を振りながら、相手を切り刻む。猫鎧壱型の、尻尾カッターは、なかなか優秀です。

「なんとーー!」

 壁を蹴り、飛び上がりながら、刃で刻む。スライムはバラバラになり、消えていきます。

「最大出力で!」

 魔力を集中して、尻尾を掲げる。

「にゃう!」

 くるりと華麗に回ると、刃が敵を真っ二つにする。

「我が道に、敵はなしにゃ」

 この果て無き迷宮の魔物は、魔力が生み出した幻想。魔石に刻まれたプログラムが、魔力によって動き出し、魔物となっています。刈谷さんの研究で、そう判明しました。

 この果て無き迷宮は、異世界人のための訓練施設だった物。今は暴走して、命を落とす場所になっていますが、上手く使えば能力向上に役立ちます。

 私は、実践と言う物をした事はありません。猫の身になってからは、動きが人と違うので、実は苦労していました。基本的な動きは、本能でわかりますが、色々と試さないとわからないことが多すぎます。

 肉球魔法も、基本的なことは理解できました。相手を猫にするのは、本当は禁呪です。成功率はかなり低い、危険な魔法ですが、異世界人特典で、私はノーリスクで使えます。

 正確には、私の特典ではなく、私と一体化したこの精霊猫の特性かも知れません。

 私は、一度死にました。死を選びました。

 元の世界で、変な人をひきつけ、人間と言う物に幻滅していました。異世界召喚と言う、夢のような環境に来ても、同じ結果になりました。

 だから、引きこもり、その後逃げようと考えていました。チート能力と思えるスキルは、自爆。テロリストみたいで、嫌な名前だと思いました。試してみる事もできなかったのですが、部屋に一匹の猫が来た事が、私の運命を変えました。

 その猫は、この場所の守護獣の生まれ変わりと言いました。異世界人召喚の生贄にされ、命と能力を失ったが、元の能力の一部を引き継いで転生したそうです。

 ただ、能力の低下が酷く、このままでは精霊猫の能力を失ってしまうと言いました。そこで、私に力を貸して欲しいと、彼女の能力の一つ、転生を使い、私と融合して欲しいと言ってきました。

 その身を代償にして欲しいと、異世界から呼ばれた犠牲者にお願いするのは心苦しい。もし、力を貸してくれるのなら、私はあなたの為に何でも協力します。

 精霊猫に頼まれた私は、考える事も無く、即決しました。逆に相手を驚かしてしまいましたが、お互い話し合って、融合する事になりました。

 現在、彼女の意識は眠っています。融合した後遺症で、情報の整理が出来ていないのです。異世界の知識を、彼女が吸収したとき、私は一つ上の存在になれるみたいですが、それがいつになるのかわかりません。

 それまでは、刈谷さんの所で、保護してもらいましょう。あの人、仲間と言っても私のことを子ども扱いして保護者気取りです。

 最初見たとき、あの人も色々と人に絶望している気配を感じました。異世界人のかなで、周りを意識して、警戒していたのは彼だけです。出会ったのは偶然ですが、良い出会いをしたと思います。

 後は、何とかもう少しこちらを意識してもらえるように、努力しなければいけません。

「壱型のテストは、これくらいでいいでしょう。弐型は、壱型と大差ないけど、念のために慣らしておきましょう・・・」

 迷宮は、下の階に行くほど敵が強くなります。ゲームの基本に忠実です。

 この辺りは、ゴーレムが多いです。石でできた、人型の魔物。防御力が強く、意外と動きが早い。ゴーレムは動きが遅いと思っていると、痛い思いをするそうです。迷宮内は、にぃたちのおかげで、詳細な地図が出来ています。魔物を戦う人もいるので、それをこっそり監視して、分析しくれています。

 あの子達も、偶然ですが良い出会いをしたと思っています。刈谷さんが、運を上げたいといっていましたが、幸運がが続いていると思いたいです。

「それでは、しろとらのテストを始めます」

 少し広い場所を選び、しろとらを呼び出します。この様子は、三姉妹がバギーを通じて見ています。

「しろとら、召喚!」

 言葉にする必要はありませんが、こういうのは気分です。実際、空間収納魔法を刻んである、壱型から出て来るだけですが、お約束名演出が盛り込んであります。地面に魔法陣が広がり、そこから、しろとらが走り出てきます。

「にゃう!」

 その背中めがけて、飛び込みます。背中の部分が開き、私はその中に収納されます。不思議な感覚に包まれると、猫鎧弐型しろとらの完成です。

 魔石の情報から、スライムの特性を変更して、虎の形に変えるという不思議な事を、刈谷さんはやってのけました。正直、あの研究室と言う能力は、破格です。世界を変える可能性を持ったチートです。

 あの人が、何をするつもりか不明ですが、見守る必要はあります。実は、精霊猫との約束の一つが、彼の監視でした。

「しろとらは、特に問題なしです」

 ただ、猫から虎に変わっただけで、特殊な能力はありません。体が大きくなった事で、単純な破壊力は増加しています。試しに、ゴーレムに殴りかかってみたら、簡単に破壊できました。

 そのまま、出てくる魔物を倒しながら、下に向かいます。この迷宮、ある階層を越えると、雰囲気が変わります。

 おそらく、この辺りから製作者が狂ってしまったのでしょう。魔物の強さが激増し、初見で命を落とす人がかなりいた場所です。通称、死の通路。

 そこのいる魔物も、しろとらで通用しました。ここからが、本番です。

 リザートマンという、蜥蜴人間が出てくると、相手の強さのランクが一気に上がります。

 硬いうろこに、強い再生能力。それなりの知能を持ち、仲間と連携をしてきます。この階層となると、現在いるのは勇気さんぐらいでしょう。

 彼女は、何か戦力を増強する能力を持っているみたいです。監視しているよんの話だと、数日でありえないほど強くなっていたそうです。ただ、最近様子がおかしいとの事なので、刈谷さんが何かを考えているみたいです。少し、心配です。

「参型を、起動します」

 ここからが、今日の本命。猫鎧参型の実践テストです。

「村雨っ!」

 名前を呼ぶと、地面にまた魔法陣が浮かび上がります。そこから現れたのは、鋼鉄の猫。恐ろしく、世界観が違う存在です。鉄のゴーレムも存在するので、それに近い感じですが、この鋼鉄の猫は、自然に産まれる物ではなく、兵器としてデザインされたイメージがあります。刈谷さんが参考にした玩具の特性が、表に出すぎです。しろとらのまま、村雨の背中に飛びつきます。

「にゃう」

 同じように、背中が開き、その中に収納されます。意識が一体となり、私は鋼の猫、村雨となります。

「まずは、これから行くにゃ!」

 下腹部に取り付けられている、機関銃が火を噴きます。

 通路に集まっていたリザードマンが、あっという間にボロボロになり消えていきます。破壊力が高すぎです。これ、地上の人たちに使ったら、あっという間に軍隊でも壊滅できるだけの、威力がありそうです。

「尻尾レーザー」

 こちらも、試してみると簡単に、リザートマンを消し去ります。

「さて、ここからが本番です・・・」

 恐ろしいほどの力を、この村雨は秘めています。ここまでの力が必要なのかと、考えた事があります。

 しかし、出た結論は必要。これでもまだ不足。この先にいる化け物に、通じるか不安です。

 死の通路を超え、広い空間に出ました。竜の墓場と呼ばれる場所。巨大な竜がいる場所に、1人の少女がたっていした。結構可愛い子だけど、友達にはなれないでしょう。私、この子嫌いですから。

 その子の足元には、多くの竜の死体。すぐに消えて、魔石になってしまうけど、その数はかなりの物です。

「いざ、参る!」

 こうして、勇気との戦いは、こちらの一方的な攻撃から始まったのです。



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 小説家になろうでも投稿中。
 なろうのほうが進んでいるので、こちらも順次投稿予定です。

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