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第3章 1週間
殺戮の3日間 その2
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「広範囲に、敵性生物を確認しました」
「数は?」
「およそ一万。魔獣と思われます」
「種類はわかりますか?」
「ゴブリンと思われます」
無音ヘリの画像を、研究室で三姉妹が常に監視しています。その結果、次の相手が判明しました。
「通常、ゴブリンがこれだけの数集まる事は、ありえますか?」
「ありえません。何者かの、仕業と思われます」
「ゴブリン以外の、存在は確認できますか?」
「ゴブリンの外側に、人と思われる集団が2つあります」
数で押してくると言うのは、ある意味理にかなっています。ただ、今回の場合、なぜこんなにも大掛かりな攻撃をしてくるのか、理解できません。
「ゴブリンの、配置はどうなっています?」
「こちらを囲むように、均等に配置されています」
「指揮官らしい存在は?」
「確認できません」
「これだけの数がいるのに、指揮官はいないのですか?」
「通常、ゴブリンキングなどの上位種が率いていますが、確認できていません」
「別の存在に、操られているのか・・・」
数も多いですし、そう考えるべきでしょう。冒険ギルドの人の中に、これだけのことができる人物がいたと言うことでしょうか?
「異世界人の、仕業だよ」
「そうですか・・・」
突然隣に人の気配が現れました。真っ赤な服に、真っ赤な髪。炎のような瞳をした、赤い男が、すぐ隣に立っていました。
「転移魔法ですか?」
「高速移動だ。驚かせたのは悪いが、それは下ろしてくれないか?」
「名前は?」
相手の、心臓部のすぐ側に、レミントンの銃口は押し付けられています。私が引鉄を引けば、どうなるのか、理解できているのでしょう。
「那由太」
「貴方が、那由太さんでしたか」
「そうだ。あいつの頼まれて、様子を見に来た」
「始穣香は、どうしています?」
「昼寝中」
少し、不機嫌そうに答えます。
「なるほど・・・」
あの存在が、昼寝をしていると言う事は、この出来事は大したことがないと気づいているのでしょう。
「なぜ、異世界人がこんな事を?」
「お前が、理の魔王になったとき、ランクから落ちた奴がいるんだよ」
「私を殺して、ランクに戻りたいと?」
「多分そうだぞ」
「このランク、意味あるのですか?」
「管理者いわく、理の魔王でいる間は、試練とともに多大な恩賞が約束されるらしい」
「試練があるのですか?」
「お前も見ただろ?先日、我が主の襲った連中の事」
「あれが、試練ですか?」
「一応、この辺の騎士や用兵、自称他称の勇者や英雄、かなりの数が参加していたんだぞ」
「一瞬で、決着ついていませんでしたか?」
「我が主の力を、甘く見すぎだ。その輪が主よりも、お前のほうがランクが高いのが、気に入らないので、偵察に来た」
「正直なのですね」
「嘘を言えば、命を失うからな。解ったなら、早く銃口を下ろせ」
「仕方ありませんね・・・」
取り合えず、敵対しない様なので、銃口を下ろします。
「最初にいた、軍隊は何処の軍隊かわかりますか?」
「あれは、我が主を狙っていたが、作戦に間に合わなかった聖王国の貴族の部隊だ」
「貴族ですか」
「それなりに、身分の高い貴族の子供がいる」
「生き残っています?」
「捕虜の中にいたのを確認している」
「人の砦を、勝手に調べるのは、感心しませんよ」
「調べられたくないのなら、それなりの対策をしておけ」
「時間が出来れば、そうしますよ」
「手助けは?」
「無用です」
那由太と、話をしている間に、相手の準備が出来たみたいです。
「魔物を作る能力ですか?」
「あいつは、魔石を魔物に変える能力を持っていたはずだ」
「これだけの数の、魔石を集めたのですか?」
「これには、俺も驚いている。誰かに協力してもらったのかもしれない」
「そうですか」
数で攻めてくる、と言うのはある意味正しいのですが、雑魚がいくら集まっても所詮雑魚なのです。
「そちら望みは?」
「ん?」
「これだけの情報、ただでもらっていいのですか?」
「何かくれるなら、あのバイク、今お前が身に付けているのが変形するのだろ?」
「そうですよ」
「俺にも一台くれ」
「解りました、事が終ったら、差し上げましょう」
「死ぬなよ?」
「そう思いますか?」
「今は、思わないけど、今後何が来るかわからないからな・・・」
「あまり、不吉な事を言わないでください。フラグがたったら、貴方のせいにしますよ」
「それは、勘弁してくれ」
そう言うと、現れたときと同じように、一瞬で姿が消えました。
「数が多いと、面倒ですね・・・」
四方から、等間隔で迫り来るゴブリンの群れ。数だけを頼りに、戦うなんて、相手は頭が悪すぎです。
せっかくの能力を、生かしいれていないでしょう。
「こちらを、甘く見すぎですよ」
この砦の周辺には、ある装置が埋め込まれています。最初に作った札の改良型です。指向性爆薬、ゼッフル君を、散布します。
「魔物相手だと、こんなに簡単に出来るのですね・・・」
そして、爆破。
あたり一面、火の海になりました。
ゴブリンは、叫ぶ事も出来ず、一瞬で消し飛びました。
「辺りの様子は?」
「一つの集団に、動きがあります」
「映像はは拾えますか?」
「こちらです」
無音ヘリが、5人の集団を映し出します。1人は、学生服を着ているので、異世界人だと思われます。
他の人物は、軽装の鎧を身に着けていて、何処かの組織に所属している感じがします。全員、同じ紋章を胸に付けています。
「な、何が起きたんだ?」
「解りません。ただ、用意した魔物は、全滅です」
「全滅だと、1万のゴブリンが、たった3分で全滅したと言うのか?やはり、化け物と言うことか・・・」
「何ですかそれは?」
「何でもない。とにかく、作戦は失敗した。当分、ここには手を出すな!」
「了解しました」
「協力者には悪いが、俺も死にたくは無いからな。撤収!」
それだけ言うと、転送の魔法陣でこの場所から去っていきます。あの魔法陣、私が使っているものとは、かなり違う術式で出来ているようです。移動に使う魔力が低そうですし、大量の人員を移動するのにも使えそうです。1万のゴブリンを移動させたのも、その魔法陣のおかげでしょう。残念ながら、使い捨てタイプみたいなので、後には何も残っていませんでした。
「もう一つの集団はどうなっていますか?」
「申し訳ありません。存在は確認できるのですが、映像に映りません」
「どういうことです?」
「こちらを・・・」
無音ヘリの映像は、何もない場所を捉えています。良く見ると、地面が少し沈んでいます。
「熱源探査を、試してください」
「了解しました」
三姉妹は、この辺の知識はまだ勉強中です。
「人と思われる、熱源を確認しました」
「思われる?」
「全部で3つ熱源がありますが、一つは人間の体温らしい温度です。残りの二つは、低すぎます」
「低すぎる?」
「生き物の、温度ではないです。体温の低い、蜥蜴族かもしれませんが・・・」
しばらく、監視していましたが、動く気配はありません。声も聞こえないので、取り合えず、放置します。敵か、そうでないか、一応確認しておきたいですが、後でいいでしょう。
「周辺の動きは?」
「特にありません」
「解りましたた。少し、休憩にしましょう」
「はい」
嬉しそうに、三姉妹のこれが重なります。ちなみに、十色は自分用の武装を、色々と考えているみたいです。こちらの戦闘は、完全に私に任せるとの事です。
「無音ヘリを、自動モードで、ゴブリンの戦利品を回収させてください」
「了解しました」
研究室が進化したことで、色々と作るものが便利になっています。
無音ヘリも、現在色々とバージョンアップしています。
偵察だけでなく、異空間収納機能を搭載して、戦利品の回収もできるようになっています。ある程度、行動をしていて、自動で作業をする事もできます。現在、砦周辺に20機の無音ヘリが飛んでいます。
「罠の可能性もあります。回収したものは、一度専用の回収倉庫に入れてください」
「解りました」
無音ヘリが集めたものは、砦の隅にある、いかにも宝箱と言う形の回収ボックスに集められます。
それは、専用の異空間収納箱で、解析機とつながっています。解析する事で、何かトラップが仕掛けられていないのか、見極める事ができます。
「問題は、無いみたいです」
「では、少し休憩しましょう」
残りの作業は、自動でやってくれます。休めるときに休んでおきましょう。まだ、先は長そうです。
『あれだけの戦力を、一瞬で撃滅するとは・・・』
『新たな魔王と言うのは、間違いないみたいです』
『我等の願いの為に。ぜひともあの破壊の力を、手に入れねば・・・』
『そうですね。相手は、中々手ごわそうです。味方にする為に、何か用意したほうが良いでしょう』
『もう少し、この場所で監視するのですか?』
『そうしましょう』
姿を隠し、気配を消し、会話は念話なので外に漏れることはない。
この存在の目的は、この世界の破壊。
その為には、悪魔とも契約してみせる。
あの砦にいる魔王が、自分の知っている人物とは、彼等は気づいていなかった。
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小説家になろうでも投稿中。
3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。
「数は?」
「およそ一万。魔獣と思われます」
「種類はわかりますか?」
「ゴブリンと思われます」
無音ヘリの画像を、研究室で三姉妹が常に監視しています。その結果、次の相手が判明しました。
「通常、ゴブリンがこれだけの数集まる事は、ありえますか?」
「ありえません。何者かの、仕業と思われます」
「ゴブリン以外の、存在は確認できますか?」
「ゴブリンの外側に、人と思われる集団が2つあります」
数で押してくると言うのは、ある意味理にかなっています。ただ、今回の場合、なぜこんなにも大掛かりな攻撃をしてくるのか、理解できません。
「ゴブリンの、配置はどうなっています?」
「こちらを囲むように、均等に配置されています」
「指揮官らしい存在は?」
「確認できません」
「これだけの数がいるのに、指揮官はいないのですか?」
「通常、ゴブリンキングなどの上位種が率いていますが、確認できていません」
「別の存在に、操られているのか・・・」
数も多いですし、そう考えるべきでしょう。冒険ギルドの人の中に、これだけのことができる人物がいたと言うことでしょうか?
「異世界人の、仕業だよ」
「そうですか・・・」
突然隣に人の気配が現れました。真っ赤な服に、真っ赤な髪。炎のような瞳をした、赤い男が、すぐ隣に立っていました。
「転移魔法ですか?」
「高速移動だ。驚かせたのは悪いが、それは下ろしてくれないか?」
「名前は?」
相手の、心臓部のすぐ側に、レミントンの銃口は押し付けられています。私が引鉄を引けば、どうなるのか、理解できているのでしょう。
「那由太」
「貴方が、那由太さんでしたか」
「そうだ。あいつの頼まれて、様子を見に来た」
「始穣香は、どうしています?」
「昼寝中」
少し、不機嫌そうに答えます。
「なるほど・・・」
あの存在が、昼寝をしていると言う事は、この出来事は大したことがないと気づいているのでしょう。
「なぜ、異世界人がこんな事を?」
「お前が、理の魔王になったとき、ランクから落ちた奴がいるんだよ」
「私を殺して、ランクに戻りたいと?」
「多分そうだぞ」
「このランク、意味あるのですか?」
「管理者いわく、理の魔王でいる間は、試練とともに多大な恩賞が約束されるらしい」
「試練があるのですか?」
「お前も見ただろ?先日、我が主の襲った連中の事」
「あれが、試練ですか?」
「一応、この辺の騎士や用兵、自称他称の勇者や英雄、かなりの数が参加していたんだぞ」
「一瞬で、決着ついていませんでしたか?」
「我が主の力を、甘く見すぎだ。その輪が主よりも、お前のほうがランクが高いのが、気に入らないので、偵察に来た」
「正直なのですね」
「嘘を言えば、命を失うからな。解ったなら、早く銃口を下ろせ」
「仕方ありませんね・・・」
取り合えず、敵対しない様なので、銃口を下ろします。
「最初にいた、軍隊は何処の軍隊かわかりますか?」
「あれは、我が主を狙っていたが、作戦に間に合わなかった聖王国の貴族の部隊だ」
「貴族ですか」
「それなりに、身分の高い貴族の子供がいる」
「生き残っています?」
「捕虜の中にいたのを確認している」
「人の砦を、勝手に調べるのは、感心しませんよ」
「調べられたくないのなら、それなりの対策をしておけ」
「時間が出来れば、そうしますよ」
「手助けは?」
「無用です」
那由太と、話をしている間に、相手の準備が出来たみたいです。
「魔物を作る能力ですか?」
「あいつは、魔石を魔物に変える能力を持っていたはずだ」
「これだけの数の、魔石を集めたのですか?」
「これには、俺も驚いている。誰かに協力してもらったのかもしれない」
「そうですか」
数で攻めてくる、と言うのはある意味正しいのですが、雑魚がいくら集まっても所詮雑魚なのです。
「そちら望みは?」
「ん?」
「これだけの情報、ただでもらっていいのですか?」
「何かくれるなら、あのバイク、今お前が身に付けているのが変形するのだろ?」
「そうですよ」
「俺にも一台くれ」
「解りました、事が終ったら、差し上げましょう」
「死ぬなよ?」
「そう思いますか?」
「今は、思わないけど、今後何が来るかわからないからな・・・」
「あまり、不吉な事を言わないでください。フラグがたったら、貴方のせいにしますよ」
「それは、勘弁してくれ」
そう言うと、現れたときと同じように、一瞬で姿が消えました。
「数が多いと、面倒ですね・・・」
四方から、等間隔で迫り来るゴブリンの群れ。数だけを頼りに、戦うなんて、相手は頭が悪すぎです。
せっかくの能力を、生かしいれていないでしょう。
「こちらを、甘く見すぎですよ」
この砦の周辺には、ある装置が埋め込まれています。最初に作った札の改良型です。指向性爆薬、ゼッフル君を、散布します。
「魔物相手だと、こんなに簡単に出来るのですね・・・」
そして、爆破。
あたり一面、火の海になりました。
ゴブリンは、叫ぶ事も出来ず、一瞬で消し飛びました。
「辺りの様子は?」
「一つの集団に、動きがあります」
「映像はは拾えますか?」
「こちらです」
無音ヘリが、5人の集団を映し出します。1人は、学生服を着ているので、異世界人だと思われます。
他の人物は、軽装の鎧を身に着けていて、何処かの組織に所属している感じがします。全員、同じ紋章を胸に付けています。
「な、何が起きたんだ?」
「解りません。ただ、用意した魔物は、全滅です」
「全滅だと、1万のゴブリンが、たった3分で全滅したと言うのか?やはり、化け物と言うことか・・・」
「何ですかそれは?」
「何でもない。とにかく、作戦は失敗した。当分、ここには手を出すな!」
「了解しました」
「協力者には悪いが、俺も死にたくは無いからな。撤収!」
それだけ言うと、転送の魔法陣でこの場所から去っていきます。あの魔法陣、私が使っているものとは、かなり違う術式で出来ているようです。移動に使う魔力が低そうですし、大量の人員を移動するのにも使えそうです。1万のゴブリンを移動させたのも、その魔法陣のおかげでしょう。残念ながら、使い捨てタイプみたいなので、後には何も残っていませんでした。
「もう一つの集団はどうなっていますか?」
「申し訳ありません。存在は確認できるのですが、映像に映りません」
「どういうことです?」
「こちらを・・・」
無音ヘリの映像は、何もない場所を捉えています。良く見ると、地面が少し沈んでいます。
「熱源探査を、試してください」
「了解しました」
三姉妹は、この辺の知識はまだ勉強中です。
「人と思われる、熱源を確認しました」
「思われる?」
「全部で3つ熱源がありますが、一つは人間の体温らしい温度です。残りの二つは、低すぎます」
「低すぎる?」
「生き物の、温度ではないです。体温の低い、蜥蜴族かもしれませんが・・・」
しばらく、監視していましたが、動く気配はありません。声も聞こえないので、取り合えず、放置します。敵か、そうでないか、一応確認しておきたいですが、後でいいでしょう。
「周辺の動きは?」
「特にありません」
「解りましたた。少し、休憩にしましょう」
「はい」
嬉しそうに、三姉妹のこれが重なります。ちなみに、十色は自分用の武装を、色々と考えているみたいです。こちらの戦闘は、完全に私に任せるとの事です。
「無音ヘリを、自動モードで、ゴブリンの戦利品を回収させてください」
「了解しました」
研究室が進化したことで、色々と作るものが便利になっています。
無音ヘリも、現在色々とバージョンアップしています。
偵察だけでなく、異空間収納機能を搭載して、戦利品の回収もできるようになっています。ある程度、行動をしていて、自動で作業をする事もできます。現在、砦周辺に20機の無音ヘリが飛んでいます。
「罠の可能性もあります。回収したものは、一度専用の回収倉庫に入れてください」
「解りました」
無音ヘリが集めたものは、砦の隅にある、いかにも宝箱と言う形の回収ボックスに集められます。
それは、専用の異空間収納箱で、解析機とつながっています。解析する事で、何かトラップが仕掛けられていないのか、見極める事ができます。
「問題は、無いみたいです」
「では、少し休憩しましょう」
残りの作業は、自動でやってくれます。休めるときに休んでおきましょう。まだ、先は長そうです。
『あれだけの戦力を、一瞬で撃滅するとは・・・』
『新たな魔王と言うのは、間違いないみたいです』
『我等の願いの為に。ぜひともあの破壊の力を、手に入れねば・・・』
『そうですね。相手は、中々手ごわそうです。味方にする為に、何か用意したほうが良いでしょう』
『もう少し、この場所で監視するのですか?』
『そうしましょう』
姿を隠し、気配を消し、会話は念話なので外に漏れることはない。
この存在の目的は、この世界の破壊。
その為には、悪魔とも契約してみせる。
あの砦にいる魔王が、自分の知っている人物とは、彼等は気づいていなかった。
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小説家になろうでも投稿中。
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