灰色の冒険者

水室二人

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第3章 1週間

VS勇気 その2

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 戦闘強化武装、剛炎。火属性に特化した、赤い鎧です。

 赤いだけで、3倍速く動けるという機能はありません。装備者の、能力を引き出す機能はありません、元々、私の能力なんて、高くはありません。

 戦闘強化服の場合は、30倍に引き上げる機能があったとしても、普通の人が1として、私は15になる計算です。今の勇気は、100に迫る能力だと思われます。

 戦闘強化武装は、鎧自体に能力があるので、無理矢理100を超える力が出せます。後が怖いですが、今は仕方ありません。

「ってぃ!」

 炎をまとった刀を、振り下ろします。

「甘い!」

 それを、勇気は軽々と避けながら、蹴りを放ちます。

「なんとぉぉ」

 それを交しながら、いったん距離をとります。

「解析は、出来そうですか?」

「精神汚染度は、70%と出ています」

「なるほど・・・」

 現在の勇気の状況は、半分以上何かに操られているという事でしょう。その状態で閉じ込めていたのですから、少し申し訳ない気がします。

「いでよ、我が同胞よ!」

 勇気がそう叫ぶと、足元から、骸骨がたくさん溢れてきました。

「ここで死んでいった同胞よ、我と共に、もう一度地上へ向かうのだ!」

「ぐぎゃぁぁあ」

 骸骨なのに、叫び声が出せるようです。

「あの骨は、実態なのですか?」

「霊的な物質で出来ているみたいです。剣できれば破壊できるみたいです」

 メトロ・ギアの司令室には、十色と三姉妹がこちらを監視しています。状況を解析し、こちらに色々な情報を送ってくれます。魔法を解析できた事で、色々と解る事が増えました。

「一度、試してみますか・・・」

 異世界にきて、今まで不思議だった事を試す事にします。

「探査球、スピーカーモード、ファイル01再生」

「了解しました」

 探査球の一つから、お経が流れ始めます。実家が浄土真宗だったので、そのお経です。幽霊退治に、お経は有効化?

 元の世界でも色々と謎の題材です。もっとも、私は霊感と言うものに無縁でしたから、実際に幽霊を見た事がないと思います。

 金縛りは経験していますが、寝ぼけている間の出来事の可能性もあるので、霊現象化断言できません。

 常識では実現不可能な、不可解な現象が、霊現象だと思うので、それに出会った事はありません。

 今回、目の前には謎の骸骨がいます。勇気も、何者かに取り疲れています。異世界の、お経が通用するか、試してみます。

「そんなものが、通用するか!」

「ふむ、これが何か、知っているのですね」

 流れているお経を聞いて、勇気が叫びます。それは、本人ではなく、取り付いている存在の声だと理解できました。

 ちなみに、骸骨は動きを止めています。少しは、効果があるみたいです。

「ファイル2再生」

「はい」

 今度は、メジャーな般若心経です。

「無駄無駄ぁあぁ・・・」

 結構な、ダメージを与えているみたいです。異世界なのに、霊に対しての威力は、共通なのでしょうか?

「これは、お経の効果ではなく、元帥の力で見たいです」

「どういうことですか?」

「お経や、般若心経には、それなりに退魔の力があるみたいですが、元帥の道具を通して再生されると、その裏の力が増幅されたみたいなのです」

「裏の力?」

「悪霊を消滅させるのには、時間が一番効果あるみたいなのです。誰にも触れさせず、誰にも、関与させない。時の流れに委託して、存在を消滅させる。誰にも相手をされないと、そのまま自然に消える存在、それが霊と言うものみたいです」

 三姉妹の意見ですと、その霊と言うのは、強い磁場のようなものらしいです。この考えは、私も小説で呼んだ事があります。心霊現象を、科学で捉えようとする組織が出てくる作品でした。

 強い磁場が、場に残り、それを人の意識が読み込んで、影響を受けてします。その考えだと、実際の霊現象の場所で起きる不可解な現象が説明できない。それを証明するために、データが必要と言う考えは面白かったです。

 ただ、その磁場が、世界を動かすプログラムに干渉できるなら、色々と霊現象が説明できます。世界を動かすプログラムに干渉する現象とは、魔法もそうです。魔法に、人の意識が宿り、怪現象となる。

 極端な話、霊現象は、そう言う魔法だと思えばいいのです。お経は、それに対抗する魔法の呪文と言う所でしょう。

 恐らく、昔はもっと別の言葉だったのでしょう。文字ではなく、口伝で伝わる秘伝の呪文。

 それを文字にするときに、当て字や語感で当てた文字になり、物語になった可能性があります。

 この世界の魔法も、炎の矢を撃つだけで、かなり高度な魔法陣を展開する必要があります。無詠唱で使う場合でも、脳内で高度な魔法陣を展開しています。

 それを、効率よく呪文にした形が、お経かもしれません。もっとも、劣化して威力が落ちているのでしょう。それを補う修行や、適正のある人が唱えると、効果が高まるのかもしれません。

「つまり、こうすれば、もっと威力が出るのですね!」

 ファイル2を、高速で再生します。ピーーーーーーと言う雑音にしかなりません。プログラムを再生したときの音になっています。

「小さな効果でも、数が多くなれば、威力は上がります!」

 骸骨の群れは、消滅しました。

「ば、ばきゃな・・・」

「解析でしました。この音には、時間を加速させる効果があります」

「勇気にも影響は出ていますか?」

「不思議ですが、霊的な存在にだけ、影響しているみたいです」

「・・・思わぬ収穫です。この音源を、詳しく解析して置いてください」

 昔、読んだ漫画で、霊的なものを滅ぼす道具がありました。それが、再現できるかもしれません。

 それが再現できるなら、是非とも作りたいのです。

「私の、夢の一つがかなうかもしれません。貴方には、礼を言います」

「な、何の事だ?」

「恩人になるかもしれない存在ですが、勇気を苦しめるわけには行かないので、早々に勝負をつけましょう」

 この世界にも、霊を退治する魔法はあります。お経を使ったのは、実験です。

 この世界の魔法は、霊と言う情報を強引に消滅させる物です。魔法がある世界なので、霊関係の魔法も存在しています。

「炎よ、燃え上がれ!」

 盛っている剣に、魔力を込めます。剛炎には、最新型の魔力バッテリーを搭載しています。プラズマエンジンで、大量の魔力が作れたので、現状での限界ギリギリの大魔力です。

 剣に刻まれている魔法陣に、魔力が伝わります。刀身が燃え上がり、巨大な火柱となります。

「そんな物で、攻撃すれば、この娘も死んでしまうぞ」

「あえて、言わせてもらいましょう」

 中段の構えで、勇気と向き合います。

「私は、人を殺さない、その怨念を斬る!!」

 振りかぶって、面を打ち込みます。あれだけ人とを殺しておいて、言えた台詞ではありませんが、一度は言いたい言葉の一つです。今言わなければ、いつ言えばいいというのでしょう。

「私は、消えるのか・・・」

「はい」

「そうか、なら、仕方ないのかな・・・」

 炎に包まれ、勇気の中にいた存在は、ゆっくりと消えていきます。

 本来なら、一瞬で消え去るはずなのに、それだけこの存在は巨大だったのでしょう。

「小父様、何のためらいも無く、斬りましたよね?」

「躊躇う必要は、ありませんからね」

「可愛い私に、傷がついたらどうするつもりでしたか?責任とって、結婚してくれますか?」

「それは、無理ですよ」

「私が子供だからですか?」

「違います」

「なら何故?」

「ここで、勇気の冒険が終るからですよ」

「えっ!?」

 次の瞬間、勇気の体に無数の矢が突き刺さりました。

「な、何で・・・」

「さようなら」

 そして、次の瞬間、勇気の体は光を放ちゆっくりと崩壊を始めました。

 崩れた体は、風に乗り迷宮の奥へと消えていきます。

「これで、異世界の記憶は消えますか?」

「この世界で得た徳は、浄化できたと思います。記憶に関しては、あいまいな夢になると思います」

「これは、私の我がままですからね」

 勇気の中に残っていた毒針は、先程の矢で消滅しています。毒針が消滅する際に、被害が及ばないように、矢を打ち込みました。魔力回路を狙い、それを消滅させるのが目的です。その結果、この世界で得た徳を全て外に放出して、この世界に来た時まで、体が戻ったはずです。

 後は、治療器に入れて、時が来るのを待ちます。元の世界戻すには、星の並びが重要で、召喚された人同じ時でないと、こちらの目的が果たせません。

 その為には、勇気が必要なのです。我ながら、ひどいことをしていると思いますが、既に決めたことです。後戻りはしません。

「さて、最後の大仕事が残っています」

 勇気から流れ出た徳は、迷宮の中心へと向かいました。その量は、かなりの物です。

 それは、眠っている存在を刺激して、呼び起こす事になるでしょう。

 広がるだけの存在となってしまった1人の青年。

 魔王との対話の為に、私は最下層へと向かうのでした。







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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。

 第11回ファンタジー小説大賞に参加しています。
 





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