勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi

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プロローグ

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 ■ プロローグ
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 中学校の卒業を目前に控えた2月末の放課後、紫藤直人はプールの裏手にあるひと目のつかないところで服についたドロなどを払っていた。
 所謂いじめだった。
 
 直人は中学入学当時から須藤を始めとする不良グループに目をつけられて事あるごとにいじめを受けていた。
 直人に特に問題があったわけではなかった。あるとすれば人付き合いが苦手でクラスの中にとけ込めずに浮いていたぐらいだったのだがそれに目を付けられていた。
 
 「あぁ~ぁ、また、派手にやられたなぁ~、なぁ、直人いい加減にやり返したらどうなんだ、本当は彼奴等なんか瞬殺できるくせに黙って殴られるなんて馬鹿みたいだろう。」
 直人に話しかけてきたのは山内真司。直人の唯一の友達と言える存在だった。
 
 「あぁ~、ま、今更ってのもあるしな、後一月もしないうちに卒業だし、卒業すれば彼奴等とは進学先も違うから気にしないさ……じじいの教えもあるしな。」
 
 直人は母親が4歳の頃、離婚しそれ以降、母方の実家で母親、母親の父親、妹の3人で暮らしていた。
 母方の実家は母親の父親、つまり直人にとっては祖父なのだが、祖父は古武道の道場を経営していた、道場は室町時代から続く旧家ではあったが剣、暗器、合気、薬方を用いた総合戦闘術のため近代になると衰退しており、まあ、早い話が経営自体は思わしくなかった。
 それでもじじい、一人食べるには十分すぎるほどの収入はあったがそこに3人が転がり込んできたため直人の母親はローカル紙の編集員として働きに出ていた。
 
 そういった環境のため直人は必然的に幼少時代から古武道の修練を受けており、元々の素質があったのが最近ではじじい相手に3本に1本は勝ちを取れるまでに成長していたが、じじいとの約定により命に関わる事態以外では身につけている武術を使うことは厳しく禁じられていた。
 
 真司と一緒に教室に戻ってみると入り口の方を向いて机に座っている委員長の長谷菜摘がいた。
 
 「はぁ、また、須藤くん達になにかされたんでしょう?
 いいわ、私から先生にちゃんと話してくるから。」
 そういうとは菜摘は机を降り教室後ろ側にある出口へと向かった。
 
 「委員長!!、良いって……ほんとに良いんだ。
 それに先生に言っても先生はどうせ何もしてくれないさ!、あいつの親は代議士だし先生も厄介なことに巻き込まれたくないからね。」
 
 「でも……ふぅ、そんな事、言ってるからいじめが続くんじゃないの?」
 はぁ、そうは言っても直人の言ってる通りなのよねぇ、多分、いいえ絶対、私が先生に言っても『わかった。わかった。注意しておくよ』。っていうだけで注意もしない。
 教員がこれじゃイジメなんてなくならないわよねぇ……
 
 直人に限らず他の生徒もいじめというか暴力事件さえあったが不思議なことに加害者の須藤は何の処分も行われなかった。
 噂によると須藤の父親が間に入って事件自体を揉み消したらしい。
 
  「ま、委員長が気にする事はないさ!、どうせ卒業は目の前だし、彼奴等とは進学先も違うから問題はないさ」
 
 「ううん、でも、それって根本的な解決法じゃない気がするけど……」
 
 その時だった。
 委員長が話している直前で直人の回りにオレンジの光を伴った2重の円が現れて内の円と外の円の間には何らかの文字が現れてはぐるぐると回転しているようだった。
 回転が早まると光は一層、強くなり中心にいる直人は見えなくなり、しばらくして光が消えると直人は姿を消していた。
 
 「へっ……」
 突然の出来事に二人は口を開けたまま呆然と立ち尽くしていた。
 
 「えっ、もしかして異世界転移じゃねぇ?」
 しばらくして落ち着きを取りもどしたラノベオタクの真司は思わず叫んだ……
 
 「なに、馬鹿なことを言ってるのよ、異世界?そんなわけ無いでしょ。」
 「だって、直人が目の前で消えたんだよ。それ以外に説明なんてあるかぁ?」
 
 「……はぁ、それは置いておいてもご両親……紫藤くんところはお母さんだけだったわよね。」
 「あぁ……まあ、おじいさんも一緒に住んでるけど……」
 
 「とにかく信じてもらえるとは思えないけど、紫藤くんのお母さんには見たままを話すしかないわね、山内くんも付いてきてよね」
 
 「はぁ……気が重いけど...まあ、ここで知らない振りは出来ないな。」
 あぁ、どうせこの場はやり過ごしても人ひとりいなくなったんだ、その場にいたのは間違いないから結果的に色々と聞かれることになるんだろうな、それなら先に行ったほうがマシだよなぁ。
 
 あぁ、でも、直人のやつ異世界に行ったんだろうなぁ。剣と魔法の世界……んんっ、羨まし~
 ケモ耳もモフり放題...テンプレでお姫様助けたりしてうまいことやるんだろうなぁ...
 
 くそーーっ、ハーレムなんか作ったりして...クソッ、クソッ羨ましすぎる。あぁ、なんで俺はあの魔法陣の中に飛び込まなかったんだろう。
 後悔しすぎる...あの時は驚いて頭の中が真っ白になって何も思いつかなかったもんなぁ、いきなりだったし、せめて事前に分かってれば俺も一緒に行ったんだけどなぁ……
 
 こういう自体は大抵、突然である。事前に通達なんでそもそもないのである。
 
 二人は頭を抱えつつも紫藤直人の自宅へと向かうのだった。
 
 その頃、直人は
 ▼ 神界 ▼
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
 
 突然、怪しい光が光ったと思ったら今度は回りを霧に覆われた部屋にきていた。
 部屋の広さは8畳ほどあろうかといったところだ。
 
 辺りを見回してみるが何もな部屋というよりは空間といった所が正しいだろう。
 はぁ、こんな所に来るってことは俺は死んだのかなぁ~はぁ、ちょっと早過ぎはしないかなぁ~っとそんな事を考えると一人の女性が現れた。
 
 「紫藤直人さん、あなたは死んではいませんよ。あなたはアルスタン王国から召喚されたのですが、私の話も聞いてほしかったのでこちらにお呼びしました。」
 
 頭の中に響いてくるような声なのだが、不快ではなくむしろ心地よい音色の声で語りかけてくる女性はシーツをまとったような格好でボディラインこそ分らないが美形の20代の容姿をしていた。
 
 これって所謂女神ってことなのかな……ということはここは天国?
 とりあえず、地獄へ行く様な事はしていないつもりだし...うん、大丈夫だよな。
 そんな事を考えていると
 
 「私はある世界を管理するエリステレサという女神です、さて、ここは天国ではありません、神界の入り口と言ったほうが近いと思います、正式なところを言っても理解してはいただけないと思いますので神界の入り口とでも思ってください。」
 
 「はぁ、わかりました。で、俺は死んでないとするとなんでここに来ているのですか?、さっき召喚がなんちゃらって言われてましたけどそれに関係するのでしょうか?
 あぁ、そういえばこれって異世界召喚って奴ですか?」
 
 「はい、よく出来ました。その認識で良いと思います。では、説明しますね。
 あなたがこれから行く世界は剣と魔法が主な武器であなたの世界で言う中世と思えばいいでしょう。」
 
 「現在、アルスタン王国では元々3年に一度、13歳から15歳までの生娘を一人生贄として魔神に捧げる風習が続いています。それがだんだんと間隔が短くなりついには3ヶ月にすると調子にのるしまつです、それに今回は第一王女が指定されました。
 第一王女はこれからのアルスタン王国だけでなく世界の存続には欠かせない存在なのです、生贄にする訳には行きません。
 
 現王家はこれを止めようと異世界から勇者を呼び寄せ討伐してもらおうと今回、召喚の義を行っております。ただこれには私的に含むことがありましたのでこちらによって頂いたのです。」
 
 「どうかアルスタン王国に赴き魔神を討伐して頂けませんか?
 魔神とは言ってまずが実は神ではなく魔物が進化したものに過ぎません。」
 
 「……ふう、少しお尋ねしたいのですが……」
 
 「はい、構いませんよ。仰ってみてください。」
 女神はニコニコと営業スマイルを浮かべたまま言われることがわかってたかのようにしている。
 
 「では、最初に拒否は可能なのか?、それとも強制?、なぜ、俺なのか?、そして行った場合は俺は元の世界に帰ることが可能なのか?」
 
 「拒否は可能ですよ、その場合は私は手を下しませんのでこのままアルスタン王国に召喚されますのでそこで返答をすればいいと思います。
 但し、アルスタンン王国側は帰還させるすべを持ちませんので向こうの世界で一市民として送って頂くことになります。
 
 私の要望に答えて行って頂いた場合は討伐完了後に自動的に元の世界の元の時間軸に帰してあげます、これでも私は神なので問題はありません。無論、ただでとは言いませんあなたの望むものを上げましょう。何が良いですか?」
 
 「……うーん、そうだな。」
 「まあ、ゆっくりと考えていても良いんですよ、討伐後に話を聞くとしましょうか?」
 
 「いや、決まった。健康だな。うんそれで頼む。」
 「あなたは変わった方ですね。普通は名声や権力、富を好むと思いますが、何千年とやってきて健康って答えたのはあなたが初めてです。いいでしょう。生涯健康を授けましょう。
 
 さて、なぜあなたなのかという点ですが、あなたを特定して召喚したのではなく有る一定のフィルターを掛けて召喚したらあなたが引っかかったということです。」
 
 「わかりました。
 つまり、要望に答えてその魔神とやらを討伐しない限り元の世界には戻れないってことですね。」
 
 「はい、そうです。なかなか理解が早くて助かります。」
 してやったりと言わんばかりに満面の微笑みを浮かべて女神は返答する。
 
 (ま、どうあがいても人なる身で神に勝てるはずもないか……仕方ないよな。なんとかやるしかないか……どっちにしろ送られるのは決定みたいだし。)
 
 「わかった!!
 やるしかないみたいなので討伐に向かいます。
 それで手ぶらですが装備はどうなります。流石に徒手空拳だけでは心もとないんですが……」
 
 「はい、はーーぃ、わかってますよ~!!
 ゴネることなくすんなりと受け入れてくれたので私としても随分手間が省けましたのでその褒美に色々と授けて上げましょう。なにか希望はありますか?」
 
 「悪い、俺はこの手の話はよくわからないので戦闘に便利なものがあれば欲しい、後はお任せかな???、そうそう、日本の食料なんかを取り寄せる術が欲しいな、戦うには食事は大事だから、それに取り寄せた食料を保管するものも欲しい、出来るだけ手荷物にならないやつで頼む。」
 
 直人は武器よりもまず、食生活の環境を心配していた。なにせ、長期滞在するつもりはなかったからこの国の食事に慣れるつもりもなく、どんなものが出てくるかわからないし、中世の時代背景なら味は期待出来ないはずだ、激マズの環境では戦う以前の問題だった。
 
 もし、帰るのが前提でなければゆっくりと異世界に溶け込んでから討伐に向かうって手段も取れるだろうが直人には当然ながらその気はなかった。
 
 「では、戦闘に役に立つの意外は私のオススメで選んでおきます、向こうに着いたら自然とスキルなどの使い方は理解しているはずですから心配は要りません。
 向こうに着いたら『ステータスパネル』と唱えるか意識してもらえると表示されます。
 
 それと、魔神ですが、神と名がついていますが先程も言ったように神ではありません、その辺は色々と神界での事情があるので話せませんが、何にも躊躇うことなく安心して討伐してください。
 討伐しても祟りなどありません。」
 
 えっとぉ、彼の能力はと……
 火系統に水、雷、あぁ、回復系もいるわね、あぁ、もう面倒くさいわ、適当なのをめいいっぱい詰めとけばいいでしょう。
 
 どうせ討伐が済み次第、成長した自力以外は回収するんだし……
 「じゃ、がんばってねぇ~~~!!」
 
 女神エリステレサはナオトを見送ると誰にも聞こえないような声でつぶやいた。
 私の可愛い御子よ、無理しないでね。
 
♪゜*☆*゜♪*☆*゜♪゜*☆*♪゜*☆*゜♪*☆*゜♪゜*☆*゜♪
 ▼ アルスタン王国
♪゜*☆*゜♪*☆*゜♪゜*☆*♪゜*☆*゜♪*☆*゜♪゜*☆*゜♪

 ボワッと立ち上った煙が消えた頃には周囲は一転していた。
 
 
 
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