裸足の願い

蒼山 サキ

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君の正体

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 今何時だ。車の時計を確認する。本部の駐車場に到着してから約30分が過ぎていた。シートを元に戻し、車から降りる。外は暗くなっていた。
 入り口近くのエレベーターに乗り4階へ。刑事課にある自分の机に座る。パソコンの電源を入れ、今日の捜査結果をまとめた。
 コンビニでの出来事。祈願荘の住民から得た情報。細かく時系列順に打ち込んでいく。
 子供の行方さえ分かれば一気に事件の真相に近付けるかもしれない。楠木は見落としが無いか何度も確認した。作業を始めてから1時間が経過。時刻はPM8時を過ぎようとしている。霞む目を擦る。
 スマートフォンの着信音が鳴る。画面には非表示の文字。忙しいのに誰だよ。1人きりの空間で悪態をつきながら電話に出る。

 ジャリ、ジャリ、ジャリ。

 砂の上を歩くような音。スマートフォンのスピーカーからは聞こえるのは音声では無かった。楠木の耳に無機質な音が響く。

 パリン、パリン。

 まただ。あの割れる音。全身の肌が粟立ち、汗が噴き出す。慌ててボリュームを上げようとする。しかし汗で手が滑り、スマートフォンを机の下に落としてしまった。割れる音が流れ続けている。拾い上げようと屈んで手を伸ばした。

「痛っ!くそっ!」

 楠木の手の平が切れて血が流れる。机の下を覗くとスマートフォンの横に硝子の破片と石が散らばっていた。先日寝室で見た景色と同じだった。
 流れる血を抑えながら急いで辺りを見回す。あの化け物が近くに居るのではないか。恐怖心という感情は無かった。俺はあいつに、聞きたい事が山程ある。
 蛍光灯がチカチカと点滅して消えた。真っ暗な部屋の中、楠木は身構えた。目を凝らして化け物を探す。
 化け物は中々現れなかった。痺れを切らした楠木は声を上げる。

「誰なんだ!?俺に何を伝えたいんだ!?お前が探している子供は、やまぎしひかるなのか!?」

 蛍光灯が点滅した。その刹那、楠木の目の前に化け物が現れた。その顔はほんの一瞬しか見えなかった。口が裂け、顔中切り傷だらけのその顔は真っ白な目から涙を流していた。化け物が裂けた口を動かす。

「お願い。あの子を、私の元に返して。」

 以前の、地獄の底から聞こえるような低い声ではない。雑音が無くハッキリ聞こえた。透き通るような綺麗な声。その声は震えていた。
 不定期に点滅を繰り返す蛍光灯の下。楠木が化け物に話しかけようとした時、後ろからスイッチを押す音が聞こえた。

「大声で何叫んでたんだ?遂に頭おかしくなったか?電気も点けずに遅くまで仕事してたら本当に病むぞ。」

 加川が背後から声を掛けた。一瞬目を離すと化け物は完全に姿を消していた。楠木は椅子に座り、目頭を摘む。加川に全てを話せたら気が楽になるんだろうが、気が触れたと思われる可能性が高い。そうなると捜査から外される。適当な言い訳で誤魔化す。

「すまない。嫌な夢を見ていた。」

「目の下、隈がいつもより酷いな。」

「3日前ぐらいからまともな睡眠を取れていないからな。ところで、お前がわざわざ捜査課に来たってことは何かわかったのか?」

「ああ。やまぎしひかるって名前の子供の行方不明届が出されていた。受理した日付は8月13日の夜。話を聞いた交番は兵庫県の神河町にある。それと交番に来た人物は母親ではない。児童養護施設の施設長だ。」

 加川は行方不明届のコピーを楠木に渡す。届出人の欄には「宮本智子みやもとともこ」と記載されていた。本人との関係性は保護者となっている。
 楠木は翌日、児童養護施設に向かう事にした。

 8月19日。日曜日の高速道路は渋滞していた。豊中市から車で約2時間。神河町は人口の少ない田舎の町だった。
 楠木はカーナビに設定した住所を確認する。目的地まであと10分。そろそろ到着するはずだ。道なりに進むと建物がどんどん少なくなる。人の気配も無い。車の周りは畑ばかりになった。
 目の前にコンクリート造りの建物が現れた。カーナビが「目的地に到着しました。」と告げる。門の前に車を停めて行方不明届に記載されていた番号に電話を掛ける。
 少し待つと建物のドアが開き、中から女性が出てきた。白髪頭の背の低い女性だ。彼女が宮本智子。今年で72歳になる。この児童養護施設ひかりの家の施設長だ。宮本は此方に小走りで向かって門を開けた。楠木は車を施設の駐車場に停める。
 施設のドアを開け、スリッパに履き替える。奥の部屋からは子供達が興味津々で顔を覗かせていた。
 子供達からの視線を浴びながら廊下の突き当たりにある部屋に案内される。ドアには平仮名で「しせつちょうのへや」と書かれたプレートが掛けられていた。
 楠木はコピーしてある子供の写真を宮本に見せた。ジッと見つめる宮本は震える声で「光ちゃんです。」と答えた。
 行方不明届を出した経緯を聞いた。宮本は啜り泣きながら話す。
 子供の名前は山岸光やまぎしひかる。今年10歳になる女の子だ。光は未婚の母親から生まれた。
 シングルマザーとして1人で子育てしていた母親は癌で5年前に他界。光が5歳の時だった。
 母親が死んだ時、他の親族とは連絡が付かなかった。引き取り手のない光は母親が死んだ事をきっかけにこの施設に入所した。

「光ちゃんは8月10日の昼前からお父さんの所に一時帰宅をしていたんです。車で迎えに来て、その後お父さんのご自宅に向かうという流れでした。お名前は篠田悟さんと言います。」

 楠木は衝撃を受けた。どういう事だ。サトルの戸籍に子供はいなかったはずだ。宮本に質問をする。

「我々が戸籍を調べた時、篠田悟に子供はいないとなっていました。篠田と光ちゃんは本当に親子で間違いないのですか?」

 宮本は静かに頷く。今から8年前、癌で入院する事になった光の母親から連絡を受けた。駆け付けた先で宮本は初めて当時3歳の光と会った。人見知りをしていた光は、顔色の悪い母親にピッタリと密着して片時も離れようとしなかったらしい。
 母親には他の親族や頼れる人間はいなかった。だから宮本が施設で一時的に引き取る事になった。
 サトルと光の親子関係は今から5年前、初めて出会った時に行ったDNA鑑定で検証済みだった。2人の鑑定結果の用紙を宮本から渡される。結果は99.9%の確率で親子となっていた。間違いなく2人の血は繋がっていた。
 血の繋がった親子と判明した時から、サトルは正式に光と家族になろうと動いていたらしい。しかし母親を無くした直後の光の精神状態は良い状況であるはずが無かった。
 当時光は精神的に不安定だった為、児童精神科に通院していた。光を担当していた精神科医からは急がず、ゆっくり時間をかけた方がいいと言われた。サトルはアドバイス通りに月に1度だけ施設へ訪れて光と関係を築いていった。
 光は徐々に心を開いた。サトルが施設に訪れる頻度も段々と増えていった。その甲斐あって2人だけで外出する事も出来るようになったという。

「去年、初めて光ちゃんはお父さんの家で1週間の一時帰宅をしました。その期間、お父さんも仕事の休みを取ってくれていました。」

 サトルと光が初めて過ごす2人きりの1週間が終わった。帰ってきた光は上機嫌で宮本に思い出話をしていたらしい。今まで見た事がないくらいに目はキラキラと輝いて、とても饒舌だったという。お土産で買ってきたイルカのストラップを大事そうに眺めている。

「パパとお揃いなんだよ!また行こうねって約束してくれたんだ。」

 その姿を見た宮本は、早くこの2人を本当の家族にしてあげたいと思った。
 そして今回の一時帰宅が終わったらサトルと光が家族になれる手続きを進める予定だった。その話はサトルにも伝えていた。

「本当に嬉しそうに話していました。レストランに行った、一緒に絵を描いた、水族館に行った…。光ちゃんはたくさんお父さんとの思い出を教えてくれました。今年の一時帰宅も凄く楽しみにしていたんです。毎日机にある自分のカレンダーを見ながらニコニコしていて…。」

 宮本は「すみません。」と言って涙を拭いた。深呼吸をして続きを話す。
 今回の一時帰宅の間にサトルと連絡が取れなくなった。去年は毎晩報告の電話がサトルから掛かってきていたのに。心配して1度だけ電話を掛けたが繋がらなかった。宮本はあまり2人の時間を邪魔するのは良くないと思い、折り返し連絡が来るのを待った。
 サトルから連絡が来る事は無かった。しかし8月13日月曜日。宮本がスーパーから買い物をして施設に戻ると、留守番していた施設の子供から「さっき電話きてたよ。光だった。」と言われる。施設の固定電話に通話履歴が残っていた。ディスプレイには公衆電話と記載されている。時刻はAM11時58分。電話に出た子供に光と何を話したのかを聞いた。

「最初何も聞こえなかったんだ。僕が『誰ですか?』って聞いたら光の声で『施設長?』って言ってた。だから僕は『今施設長は買い物に行ってるよ。どうしたの?』って言ったんだ。そしたら光が何か言おうとしてたんだけど、急にツーツーって音がして電話が切れちゃってた。」

 スマートフォンを持っていなかった光は公衆電話を使ったのだろう。話を聞いた宮本はサトルにすぐ電話を掛けたが繋がらなかった。
 何かトラブルが起こったのかもしれない。もう少し待ってみて、何も連絡が無かったら警察に行こうと決めた。自らのスマートフォンを持ち、固定電話の前で着信音が鳴るのを待った。
 だが夜になっても音沙汰は無かった。居ても立っても居られなくなった宮本は交番に向かい、山岸光の行方不明届を提出した。

「私はやっと光ちゃんが幸せになれる。そして彼女、光ちゃんのお母さんの願いも叶うと思っていました。」

「光ちゃんの母親の願いってなんですか?」

「本当の家族と暮らす事です。児童養護施設ではなく血の繋がった本当の家族と…。光ちゃんには、私と同じ無縁塚に入ってしまうような人生は歩んでほしくないと話していました。」

「無縁塚、ですか。」

 遺骨を納める墓が無かったのか。光の母親も孤独だったのだろうか。

「光ちゃんの母親のお名前を教えてもらえませんか?」

 宮本はソファから立ち上がり棚からアルバムを取り出した。アルバムは少し日に焼けている。ページを開き、写真を指差す。そこには楠木が夢で見た少女にそっくりの顔が写っていた。

山岸佳音やまぎしかのん。この子が光ちゃんのお母さんです。」

 大きな丸い目をした少女が顔を隠すように両手でピースサインをして笑っている。髪は2つに結んでいた。頭には画用紙で作られたであろう手作りの王冠を被っている。
 今から約30年前。佳音は8歳の時にこの児童養護施設に入所した。続けて宮本は当時起こった事件を話す。
 佳音の母親が死んだ後、悲しみに暮れた父親は酒に溺れた。仕事にも行かなくなった。家の中からは怒鳴り声や物が壊れる音が頻繁に聞こえていたという。床はゴミや割れた硝子の破片で足の踏み場が無かったらしい。
 そんな日が続く中、ある日泥酔した父親は8歳の佳音に落ちていた硝子の破片で顔を切りつけた。大きな悲鳴と怒号が閑静な住宅街に響く。只事ではないと近所の住民が通報。現場に駆け付けた警察官により父親は逮捕された。
 警察によって保護された佳音を引き取る場所は無かった。緊急連絡を受けた宮本が警察署に迎えに行った。

「私が警察署で初めて会った時の佳音ちゃんは頬にガーゼを貼って、服は血で汚れていました。誰とも目を合わせず、ずっと俯いていました。」

 父親から受けた虐待の傷は顔や身体だけでは済まなかった。心の傷も相当なものだった。大人の男性を見る度に震え、涙目になり「ごめんなさい。」と繰り返す。毎日怯えて暮らしていたのだろう。
 今すぐこの子を助けないと。でもひかりの家に住んでもらうにはまだ難しそうだ。宮本は引き取ってすぐには施設に入所させずに、少しでも回復するまで自宅で面倒を見る事にした。
 自宅には宮本しか住んでいない。施設長としての仕事もある。でもこの子を1人にする訳にはいかない。悩んだ宮本は施設の職員と交代で佳音の面倒を見る事にした。幸いにも当時男性職員は雇っていなかった。
 3ヶ月掛かって佳音は少しずつ自ら話しかけてくるようになった。些細な事しか話さなかったが、大きな進歩だった。その後宮本は佳音を施設に連れて行き、自分がどんな仕事をしているのかを説明した。
 そしてある日、施設に住まないかと誘った。

「皆んなと一緒にひかりの家で暮らさない?色んな子供達がいるの。皆んなとても優しいわよ。」

 佳音は戸惑っていたが小さく頷いて了承した。
 翌日宮本は佳音を連れて児童養護施設ひかりの家へ向かう。
 既に入所していた子供達に紹介する。佳音は最初かなり緊張している様子だったが、すぐに馴染む事が出来た。

「佳音ちゃんはその後、退所するまでずっとこの家に住んでいました。」

 里親は中々決まらなかったらしい。佳音が9歳の時、里親を希望している夫婦の家に3日間の宿泊が決まった。施設での交流は順調に見えた。夫婦は佳音との養子縁組を組む事を希望していた。
 宿泊前日、施設長の部屋。一緒に明日からの準備を最終確認している時だった。佳音が大声で泣き喚いた。

「新しいお家になんて行きたくない!!ずっと此処に住むの!!」

 どれだけ宥めても無駄だった。佳音の訴えは止まらない。諦めて夜中に夫婦に連絡をして宿泊をキャンセルした。その後も佳音と夫婦の交流は少し続いたが、養子縁組を組まれる事は無かった。

「あのご夫婦が嫌いになったとか、きっとそんなんじゃないんです。佳音ちゃんは、ひかりの家から離れる事を嫌がっていただけでした。」

 やがて夫婦は来なくなった。それ以降、佳音と養子縁組を組みたいという人間は現れなかった。里親希望の人間が来る日は必ず部屋に閉じこもり、会わないようにしていたからだ。
 そして佳音は18歳になった。高校卒業後は児童養護施設の制度によって強制的に出て行かなければない。就職活動をして住居が決まり、施設を出て行った。
 成長した佳音は幼い頃のように駄々を捏ねる事なく笑顔で退所した。

「佳音ちゃんがひかりの家で過ごす最後の日に皆んなで送迎会を開きました。皆んなでたくさん笑って、本当に楽しかった。」

 宮本はアルバムの最後のページを開く。送別会の最後に撮影された集合写真が貼ってあった。壁が色鮮やかに飾り付けされている。食卓にはケーキが用意されていた。周りの子供達も皆んな笑顔だ。
 体操服を着た女子高生が真ん中に座っている。手には色紙を持っている。長く伸びた髪を肩から流し、恥ずかしそうに笑っていた。よく見ると左頬に切り傷がある。
 楠木の目が大きく開かれた。俺はこの女子高生の顔を知っている。
 楠木は胸ポケットから1枚の写真を取り出す。サトルの家の和室にあった仏壇の中に落ちてあった写真。黒く長い髪。丸い大きな目。そして左頬の切り傷。写真の裏には「kanon」と書かれていた。
 仏壇の中に落ちてあった写真の女性は山岸佳音。行方不明になっている山岸光の母親だ。
 そしてきっと、あの化け物の正体だ。

「佳音さんが施設を出てからは連絡を取っていましたか?」

「えぇ。時々メールでのやり取りをしたりしていましたね。夏になると昔亡くなった男の子の墓参りの為に日帰りでここに戻って来てました。」

「そうなんですね。佳音さんが当時住んでいた住所ってご存知ですか?」

 楠木は佳音が住んでいた家が、サトルの持っていた鍵のヒントになるかもしれないと考えた。
 宮本は少し考えた後に「お待ちください。」と言って窓側にある机の引出しを開けた。そして1枚の封筒を手に持った。花の柄がプリントされてある封筒。中からは可愛らしい兎が描かれているピンク色の便箋が出てきた。
 佳音からの手紙だった。宮本の机の上に置いてあったらしい。佳音は墓参りで神河町に来る際必ず施設に顔を出していた。その時にこっそり置いて帰ったのだろうと宮本は話す。
 手紙は小さな文字で便箋いっぱいに書かれている。仕事の話や、最近の出来事といったごく普通の内容だった。

「確かこの手紙に住んでいるアパートの話が書いてありました。アパートの名前は確か祈願荘です。」
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