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2人の出会い
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人生初めての1人暮らしで住む家は、ボロボロの木造アパートだった。階段は錆びてギシギシと音がする。名前だけはご利益がありそうだったが、散々な有様だった。
お金も無く、保証人を立てる事も出来なかった。施設長が保証人になると提案してくれたが断った。そんな私の為に社長は昔から交友関係のある祈願荘の大家に話を持ち掛けた。そして祈願荘2階の角部屋、203号室を用意してくれたのだ。
鍵を受け取った日、その見た目に正直私は唖然とした。だが贅沢は言っていられない。家を借りられただけでも奇跡だ。社長と大家に感謝しなければ。
小さな部屋に施設長から渡されたお金で家具と家電を揃える。家電量販店に向かった私は1番安い家電を選ぶ。勿論、家具屋でも同じだった。
大型商品の配送手配を頼む為に住所を記入する。担当してくれた店員は記入された住所と私を凝視した。
祈願荘はこの地域で有名なアパートなのか。それともただ単に名前がアパートの名前が珍しいからか。真相を聞く勇気は無かった。
後日203号室に購入した家電や家具が届く。大きな段ボールを開封して、慣れない手付きで組み立てる。何故かネジが余ったり、がたついたりしていたが、何とか設置が完了した。衣類や雑貨は光の家の職員にスーツケースを借りて持ち運んだ。
入社日までになんとか家の準備を間に合わせる事が出来た。3月31日まで残り1週間。最後の週を私はひかりの家で過ごした。
4月1日。不動産会社に初出勤の日。そして祈願荘に正式に入居する日。頬の傷が隠れるくらい濃い化粧をしている。
「今日からお世話になります。山岸佳音です。よろしくお願いします。」
職場で最初の挨拶を済ませた私は自分の机に案内される。初めての仕事。アルバイトもした事の無い私は仕事を覚えるのに必死だった。
未熟者な私に先輩社員の鈴谷明恵が手取り足取り教えてくれた。鈴谷は気の強い女性だった。仕事中は厳しかったが、世話焼きで頼りになる人だった。社長も仕事の出来る鈴谷に一目置いていた。
社員数は6人の小さな会社だ。私、社長、鈴谷の他に竹本、村西、影谷。女性は私と鈴谷の2人だけだった。
毎日が忙しかった。会社は賃貸物件だけでなく、土地や家の売買まで手広く扱っていた。来店した客や電話の対応。賃貸の検索。内見の案内。書類の作成。時間がどれだけあっても足りない。
必死に働いた。怒られる事もたくさんあった。それでも頑張れたのは、支えてくれる人達の存在があったからだ。
施設長とはメールでのやり取りをよくしていた。施設長は携帯電話にまだ慣れていないのか、メールの文章が無茶苦茶になっている事があった。それが可笑しくて狭い部屋で1人笑った。
鈴谷は落ち込む私を元気付ける為に食事に誘ってくれた。年齢が10歳程離れていたが、次第に私達は姉妹のように仲良くなった。
離婚していてシングルマザーだった鈴谷は、時々3歳の息子を連れてきた。実母と一緒に暮らしており、仕事中は息子の面倒を見てくれているらしい。
「佳音はホンマに子供の扱いが上手やな。うちの息子がこんな懐くなんて珍しいで。」
ファミレスで息子の秀太をあやす私を見ながら鈴谷は感心していた。ひかりの家で1度に何人もの子供を相手してきた。1人をあやす事など、朝飯前だ。
「そうでもないですよ。子供の相手に慣れてるだけです。まぁでも、子供は好きですね。」
「そっかぁ。佳音は将来良いお母さんになるかもね。」
私がお母さんになる。想像した事も無かった。いつか素敵な人が現れたら、血の繋がった家族が出来るかもしれない。
鈴谷に言われた「良いお母さん」という台詞を気に入った私はいつか本当に良いお母さんになれたらいいな、なんて思った。
「血の繋がった家族ねぇ。案外一緒に住んでたら一々血繋がってるなぁとか考えてないよ。」
家庭環境が悪くひかりの家で保護されていた綾華は、実の祖母の家で暮らしている。今は保育士を目指して専門学校に通っている。
綾華は14歳の時にひかりの家を退所した。しばらく会っていなかったが高校生の夏に雄太君のお墓参りに来た時に再会した。その時に連絡先を交換してから交流が続いている。
「綾華は実際血の繋がってる家族と住んでるじゃん。」
「繋がってるけど、おばあちゃんだよ?あんま実感湧かないって。年離れすぎて顔似てるとかよく分かんないからね?」
祈願荘に帰るまでの道中、私は綾華に電話を掛けた。冗談を言い合いながら今日の出来事をお互いに話す。腹が痛くなるまで笑い合い、悩んでいる時には親身になって話を聞き合った。2人は時間を忘れて朝まで通話していた事もある。
綾華との通話に気を取られ、前から歩いてきた通行人の男性に気が付かなかった。佳音と男性は肩と肩が接触してしまった。佳音のバッグが地面に落ちて中身が散らばる。
「あっ、ごめんなさい!」
「いやいや!私が余所見してたからですよ!こちらこそ、すみません。」
散らばった中身を慌てて拾う。男性も一緒に拾ってくれた。スーツ姿で眼鏡を掛けた、背の高い人だ。少し挙動不審だった。
「本当にすみません。ぼーっとしてて…。あの、もし、もし怪我をしてたらこ、ここに連絡してください。何も無ければ、捨ててもらって構いませんので。」
男性は鞄から名刺を取り出して佳音に渡す。焦って取り出したせいで少し破れていた。勤務先の情報と、男性の名前が書かれている。
佳音は大袈裟に感じつつも男性から名刺を受け取り、御礼を伝えて帰路についた。携帯電話のスピーカーから綾華の声がする。「大丈夫~?」と気の抜けた声だった。佳音は状況を軽く説明して、先程の話の続きに戻った。
いつの間にか祈願荘に到着していた。丁度一通り話し終えたので、今日はお開きにした。
刺激的な毎日が、いつの間にか変わり映えの無い毎日になっていた。佳音がこの街に住んで丸2年が経過する。仕事にもボロボロアパートにも充分に慣れた。
そんなある日、1人の男性が不動産会社に訪れた。転職して引っ越す事にしたから家を探しているとの事だった。
佳音は希望の条件を聞き、男性に物件を紹介した。何件か絞って内見に向かう。運転免許を持っていなかった佳音は影谷に運転を頼んだ。
「おい中岸。そろそろ免許取りに行けよ。」
影谷は文句を言いながらも運転を引き受けてくれた。軽く謝罪する佳音を見て男性は「忙しいと中々厳しいですよね。」と笑ってフォローした。佳音は恥ずかしかった。車内には若干気まずい空気が流れていた。
出鼻を少し挫かれたが内見は問題なく終了した。会社に戻り書類を渡す。男性が記入している間、佳音はパソコンに契約内容を打ち込む。
新しく住む家の住所。引き受けた不動産会社の情報。それから男性の名前…。
「ん?」
この名前を知っている。あの名刺の名前だ。佳音は2年前に受け取った名刺を覚えていた。
綾華に男性と接触した話をした際に「もしかしたら運命の人かもよ。」と揶揄われた事がある。そんな訳ないと言い返してたが心の中で少しだけ期待した。
一時期、運命の人が現れるまで神棚代わりに名刺をカラーボックスの上に置き「今日こそお願いします!」と毎日願掛けしていた。その習慣は3ヶ月も続かなかったが、名刺はまだ捨てていない。何故か捨てれずにいた。昔、施設長から誕生日プレゼントとして貰った小物入れに突っ込んである。
「どうかされましたか?」
急に指の動きが止まった佳音に男性が心配そうに声を掛けた。書類に不備があったのだろうか。何か書き間違えていたのだろうか。そんな表情をしている。
佳音は慌てて笑顔を作り、書類に問題は何も無いと伝える。そして恐る恐る質問した。
「あの、勘違いだったら申し訳ないのですが2年前に近くの道路でお会いしませんでしたか?あのコンビニの前で。肩がぶつかっちゃって、私の鞄が落ちて…。」
「ああ!!あの時の子!?いきなり名刺なんか渡して本当すみませんでした。あの後帰って考えてたんですけど、自分の行動が怪しすぎて…。いやぁ今思い返しても恥ずかしい。お、お怪我は大丈夫でしたか?ぶつかったのは2年前ですけど…。」
男性は頭を掻きながら早口で話す。恥ずかしさで顔が赤く染まっていた。その姿に佳音は笑いを堪えきれなかった。和やかな雰囲気が2人を包む。
「あの、もしよろしければ連絡先を交換しませんか。」
佳音から男性に連絡先交換を持ち掛けた。男性は驚いていた。「是非!」と言ってお互いのアドレスを登録した。メールのやり取りは数回だけだった。佳音は「サトルさん」と登録した。
サトルと連絡先を交換してから数日後。サトルが豊中市に引っ越したら映画に行こうと佳音は誘われた。異性と2人きりの映画は初めてだ。これはデートだ。佳音の心は浮ついていた。
着て行く服装を決めておこうと押入れを開く。押入れの中にある私服はTシャツやジーンズといったラフな格好ばかりだった。デートで着れるような服なんて持っていなかった。
佳音は急いでデパートに向かい、勝負服を探した。鈴谷に教えてもらったお勧めの店がある。店内には様々な洋服を着たマネキン人形がズラリと立ち並んでいた。どれも気取ったポーズを決めている。
佳音は悩んだ末に淡い紺色のシンプルなワンピースを購入した。それに合わせてパンプスとバッグも購入する。
「こんなにお金を使ったの久し振りだな。」
店員から受け取ったレシートを見ながら呟く。そして軽くなった財布に入れた。今日の購入品はデートの日まで押入れから出てくる事はなかった。
約束の日が訪れる。天気は快晴だ。押入れにあるワンピース、パンプス、バッグを取り出す。袋を開けると新品の匂いがした。顔に化粧を施し、鏡で何度も確認した。
待ち合わせ場所に向かう。最寄駅の中にある売店は土曜日という事もあって混雑していた。少し早く到着してしまった。
私の服装、変じゃないかな。どんな話をしたらいいのかな。可愛く見られるにはどうすればいいのか。綾華とたくさん作戦会議をしたはずなのに。緊張で頭から全部消えていた。
「す、すすすみません!お待たせしました!」
息切れをしているサトルが立っていた。額には汗が流れている。サトルも緊張しているのか、2年前に出会った時と同じく挙動不審だった。
2人は電車に乗り、梅田の映画館に向かった。移動中の会話は無かった。2人は心臓の音は相手に聞こえてしまっているのではないかと思うぐらい煩かった。
映画館に到着してサトルがチケットを2枚購入する。流行りのアクション映画だ。佳音はお金を渡そうとしたが断られた。
「僕は佳音さんより10歳も年上なんだから、デ、デート代くらい払わせてください。」
大人の男性を演じたいのだろう。舌足らずな滑舌で佳音にカッコつける。不器用ながらも積極的にリードしようとしてくれるサトルに、佳音は徐々に惹かれていった。
映画を観終わった2人は喫茶店に入り、感想を言い合う。行きの電車内が嘘みたいに大いに盛り上がった。
主人公の台詞。敵役に対する考察。気に入ったシーン。エンディングで流れていた有名バンドの曲…。話題が尽きず話し続けた。気が付くと飲み干したアウスコーヒーの氷が完全に溶けて水になっていた。
サトルが「そろそろ帰りましょうか。」と切り出した。もうそんな時間になったのかと腕時計を確認した。いつの間にか夕方になっていた。2人は喫茶店から出て電車に乗った。
「佳音さんの家まで送りますよ。暗くなってきましたし、女の子1人じゃ危ないです。」
最寄駅の改札を出てサトルが言った。佳音は慌てて断った。
「そんな夜遅くないですし、大丈夫ですよ!それに私の家、サトルさんのお家と正反対の方向ですし。」
あんなボロボロアパートに住んでいるなんて知られたくない。佳音は必死に言い訳をして断った。
サトルも初デートを終えた女性の家に無理矢理着いて行くのは気が引けるのかすんなり了承した。そして集合した時と同じ場所で2人は解散した。
2人は反対方向に歩き始める。佳音がなんとなく振り返ると同時にサトルも振り返った。目が合った2人は笑顔で大きく手を振り合った。
佳音は軽い足取りで祈願荘に帰宅する。古びた階段を登り203号室のドアの鍵を開ける。
「こんなとこに住んでるって知られたら、流石にドン引きされるよね。引っ越そうかな。」
パンプスを脱ぎサトルにメールで今日の御礼を伝えた。すぐに返信が返ってきた。携帯電話の画面を見て口元が緩む。サトルさんも私と同じ気持ちだろうか。初めてのデート。人生を薔薇色に変えた。
初デートから3ヶ月。サトルからの告白で2人は付き合った。
サトルは物流倉庫で正社員として勤務している。前は印刷会社に勤めていた。職場の業績が傾きリストラに遭った。転職活動をした結果、現在働いている職場に採用されたと話す。
サトルは人見知りで控えめな性格だった。おどおどとした舌足らずの喋り方。心配性の慌てん坊。男らしくはなかったが、とても優しかった。
2人は仕事終わりや休日に一緒に過ごした。出掛けたり、食事に行ったり。サトルの家に行った事もあったが佳音の家に呼んだ事は無かった。
「佳音ちゃんはどんなとこに住んでんの?」
「え?」
いつも一緒に行くファミレスで唐突にサトルが質問する。フォークでパスタを巻いていた佳音の手が止まった。
佳音はまだサトルに祈願荘に住んでいる事や児童養護施設に入所していた事を話していなかった。そして頬の傷も。全てを話せば嫌われるかもと思うと中々踏み出せなかったのだ。
サトルと付き合ってすぐに引っ越そうか考えたが薄給の佳音には難しい。それに最近自動車免許を取得したばかりだ。引越しに充てられる金は無かった。
児童養護施設の話を話さなかったのは、高校時代、密かに想いを寄せていた男の子に「あいつ親無しなんだろ。」とコソコソ噂されているのを聞いて世間では禁句なのだと察したからだ。それ以降話題にするのを避けていた。
この人に本当の私を偽りたくない。でも嫌われたくない。ファミレスのボックス席で佳音は静かに涙を流す。私はどうしたらいいんだろう。頭の中がぐちゃぐちゃだった。
目の前で涙を流す佳音に気付いたサトルは目を白黒させている。喉にハンバーグを詰まらせた。サトルは咽せながら慌てて謝罪した。
「ご、ごめんなさい!無理して教えようとしなくていいから!泣かせちゃうなんて…僕本当ダメだなぁ…。」
ダメなんかじゃない。佳音は強く否定した。そしてサトルに全てを話す事を決意する。冷めた料理を残して会計を済ました。
ファミレスを出て歩いて祈願荘に向かう。歩き慣れたコンクリートの道なのに、沼の底を歩いている気分だった。空気が重たく感じる。2人の間に会話は無かった。
祈願荘の前に到着する。街灯に照らされ不気味な雰囲気を醸し出していた。5戸の部屋の明かりが薄暗く光っている。
佳音は祈願荘を見上げるサトルを見つめた。サトルの目にこのアパートはどう映っているんだろう。
「どうする?寄ってく?」
わざと明るい声で問い掛ける。サトルは無言で頷いた。2人の足音が祈願荘に響く。階段を登り、203号室の前で立ち止まる。
ガチャ。古い鍵の音が聞こえる。1人でも狭い部屋。2人はベッドに並んで座る。サトルは何も言わない。佳音はお構いなく自分の過去を洗いざらい話した。また涙が流れていた。
長い時間を掛けて全てを話し終えた。床にはひかりの家で撮った写真や、施設長からのプレゼント、化粧落としのシートが散らかっている。
「どう?サトルさん。嫌いになった?」
素顔であっけらかんと質問する佳音に対し、サトルは何も言わない。そして床に落ちている物達を片付け始めた。この人は何を考えているんだろう。佳音の目にはサトルの頭頂部しか映っていない。
「佳音ちゃん、教えてくれてありがとう。そっか。色んなことがあったんだね。佳音ちゃんの過去を聞けて良かったよ。」
嗚呼、終わった。きっと呆れられた。佳音は「どういたしまして。」と震える声で答える。もう会えなくなるのかな、なんて考えていた。
「よし!」
サトルが膝を叩いて立ち上がる。そして佳音の方を振り向くと両手で強く抱き締めた。大声で泣く佳音の 背中をサトルは優しく摩る。その姿はまるで子供を泣き止ます親のようだった。
朝まで一緒に祈願荘203号室の狭い部屋で過ごした。ただ手を繋いで、お互いを見つめ合う。サトルは時々佳音の頬の傷を愛おしそうに撫でた。
この人が、私の運命の人。
2人はこの幸せな時間がいつまでも続きますようにと願った。その願いは叶えられなかった。
お金も無く、保証人を立てる事も出来なかった。施設長が保証人になると提案してくれたが断った。そんな私の為に社長は昔から交友関係のある祈願荘の大家に話を持ち掛けた。そして祈願荘2階の角部屋、203号室を用意してくれたのだ。
鍵を受け取った日、その見た目に正直私は唖然とした。だが贅沢は言っていられない。家を借りられただけでも奇跡だ。社長と大家に感謝しなければ。
小さな部屋に施設長から渡されたお金で家具と家電を揃える。家電量販店に向かった私は1番安い家電を選ぶ。勿論、家具屋でも同じだった。
大型商品の配送手配を頼む為に住所を記入する。担当してくれた店員は記入された住所と私を凝視した。
祈願荘はこの地域で有名なアパートなのか。それともただ単に名前がアパートの名前が珍しいからか。真相を聞く勇気は無かった。
後日203号室に購入した家電や家具が届く。大きな段ボールを開封して、慣れない手付きで組み立てる。何故かネジが余ったり、がたついたりしていたが、何とか設置が完了した。衣類や雑貨は光の家の職員にスーツケースを借りて持ち運んだ。
入社日までになんとか家の準備を間に合わせる事が出来た。3月31日まで残り1週間。最後の週を私はひかりの家で過ごした。
4月1日。不動産会社に初出勤の日。そして祈願荘に正式に入居する日。頬の傷が隠れるくらい濃い化粧をしている。
「今日からお世話になります。山岸佳音です。よろしくお願いします。」
職場で最初の挨拶を済ませた私は自分の机に案内される。初めての仕事。アルバイトもした事の無い私は仕事を覚えるのに必死だった。
未熟者な私に先輩社員の鈴谷明恵が手取り足取り教えてくれた。鈴谷は気の強い女性だった。仕事中は厳しかったが、世話焼きで頼りになる人だった。社長も仕事の出来る鈴谷に一目置いていた。
社員数は6人の小さな会社だ。私、社長、鈴谷の他に竹本、村西、影谷。女性は私と鈴谷の2人だけだった。
毎日が忙しかった。会社は賃貸物件だけでなく、土地や家の売買まで手広く扱っていた。来店した客や電話の対応。賃貸の検索。内見の案内。書類の作成。時間がどれだけあっても足りない。
必死に働いた。怒られる事もたくさんあった。それでも頑張れたのは、支えてくれる人達の存在があったからだ。
施設長とはメールでのやり取りをよくしていた。施設長は携帯電話にまだ慣れていないのか、メールの文章が無茶苦茶になっている事があった。それが可笑しくて狭い部屋で1人笑った。
鈴谷は落ち込む私を元気付ける為に食事に誘ってくれた。年齢が10歳程離れていたが、次第に私達は姉妹のように仲良くなった。
離婚していてシングルマザーだった鈴谷は、時々3歳の息子を連れてきた。実母と一緒に暮らしており、仕事中は息子の面倒を見てくれているらしい。
「佳音はホンマに子供の扱いが上手やな。うちの息子がこんな懐くなんて珍しいで。」
ファミレスで息子の秀太をあやす私を見ながら鈴谷は感心していた。ひかりの家で1度に何人もの子供を相手してきた。1人をあやす事など、朝飯前だ。
「そうでもないですよ。子供の相手に慣れてるだけです。まぁでも、子供は好きですね。」
「そっかぁ。佳音は将来良いお母さんになるかもね。」
私がお母さんになる。想像した事も無かった。いつか素敵な人が現れたら、血の繋がった家族が出来るかもしれない。
鈴谷に言われた「良いお母さん」という台詞を気に入った私はいつか本当に良いお母さんになれたらいいな、なんて思った。
「血の繋がった家族ねぇ。案外一緒に住んでたら一々血繋がってるなぁとか考えてないよ。」
家庭環境が悪くひかりの家で保護されていた綾華は、実の祖母の家で暮らしている。今は保育士を目指して専門学校に通っている。
綾華は14歳の時にひかりの家を退所した。しばらく会っていなかったが高校生の夏に雄太君のお墓参りに来た時に再会した。その時に連絡先を交換してから交流が続いている。
「綾華は実際血の繋がってる家族と住んでるじゃん。」
「繋がってるけど、おばあちゃんだよ?あんま実感湧かないって。年離れすぎて顔似てるとかよく分かんないからね?」
祈願荘に帰るまでの道中、私は綾華に電話を掛けた。冗談を言い合いながら今日の出来事をお互いに話す。腹が痛くなるまで笑い合い、悩んでいる時には親身になって話を聞き合った。2人は時間を忘れて朝まで通話していた事もある。
綾華との通話に気を取られ、前から歩いてきた通行人の男性に気が付かなかった。佳音と男性は肩と肩が接触してしまった。佳音のバッグが地面に落ちて中身が散らばる。
「あっ、ごめんなさい!」
「いやいや!私が余所見してたからですよ!こちらこそ、すみません。」
散らばった中身を慌てて拾う。男性も一緒に拾ってくれた。スーツ姿で眼鏡を掛けた、背の高い人だ。少し挙動不審だった。
「本当にすみません。ぼーっとしてて…。あの、もし、もし怪我をしてたらこ、ここに連絡してください。何も無ければ、捨ててもらって構いませんので。」
男性は鞄から名刺を取り出して佳音に渡す。焦って取り出したせいで少し破れていた。勤務先の情報と、男性の名前が書かれている。
佳音は大袈裟に感じつつも男性から名刺を受け取り、御礼を伝えて帰路についた。携帯電話のスピーカーから綾華の声がする。「大丈夫~?」と気の抜けた声だった。佳音は状況を軽く説明して、先程の話の続きに戻った。
いつの間にか祈願荘に到着していた。丁度一通り話し終えたので、今日はお開きにした。
刺激的な毎日が、いつの間にか変わり映えの無い毎日になっていた。佳音がこの街に住んで丸2年が経過する。仕事にもボロボロアパートにも充分に慣れた。
そんなある日、1人の男性が不動産会社に訪れた。転職して引っ越す事にしたから家を探しているとの事だった。
佳音は希望の条件を聞き、男性に物件を紹介した。何件か絞って内見に向かう。運転免許を持っていなかった佳音は影谷に運転を頼んだ。
「おい中岸。そろそろ免許取りに行けよ。」
影谷は文句を言いながらも運転を引き受けてくれた。軽く謝罪する佳音を見て男性は「忙しいと中々厳しいですよね。」と笑ってフォローした。佳音は恥ずかしかった。車内には若干気まずい空気が流れていた。
出鼻を少し挫かれたが内見は問題なく終了した。会社に戻り書類を渡す。男性が記入している間、佳音はパソコンに契約内容を打ち込む。
新しく住む家の住所。引き受けた不動産会社の情報。それから男性の名前…。
「ん?」
この名前を知っている。あの名刺の名前だ。佳音は2年前に受け取った名刺を覚えていた。
綾華に男性と接触した話をした際に「もしかしたら運命の人かもよ。」と揶揄われた事がある。そんな訳ないと言い返してたが心の中で少しだけ期待した。
一時期、運命の人が現れるまで神棚代わりに名刺をカラーボックスの上に置き「今日こそお願いします!」と毎日願掛けしていた。その習慣は3ヶ月も続かなかったが、名刺はまだ捨てていない。何故か捨てれずにいた。昔、施設長から誕生日プレゼントとして貰った小物入れに突っ込んである。
「どうかされましたか?」
急に指の動きが止まった佳音に男性が心配そうに声を掛けた。書類に不備があったのだろうか。何か書き間違えていたのだろうか。そんな表情をしている。
佳音は慌てて笑顔を作り、書類に問題は何も無いと伝える。そして恐る恐る質問した。
「あの、勘違いだったら申し訳ないのですが2年前に近くの道路でお会いしませんでしたか?あのコンビニの前で。肩がぶつかっちゃって、私の鞄が落ちて…。」
「ああ!!あの時の子!?いきなり名刺なんか渡して本当すみませんでした。あの後帰って考えてたんですけど、自分の行動が怪しすぎて…。いやぁ今思い返しても恥ずかしい。お、お怪我は大丈夫でしたか?ぶつかったのは2年前ですけど…。」
男性は頭を掻きながら早口で話す。恥ずかしさで顔が赤く染まっていた。その姿に佳音は笑いを堪えきれなかった。和やかな雰囲気が2人を包む。
「あの、もしよろしければ連絡先を交換しませんか。」
佳音から男性に連絡先交換を持ち掛けた。男性は驚いていた。「是非!」と言ってお互いのアドレスを登録した。メールのやり取りは数回だけだった。佳音は「サトルさん」と登録した。
サトルと連絡先を交換してから数日後。サトルが豊中市に引っ越したら映画に行こうと佳音は誘われた。異性と2人きりの映画は初めてだ。これはデートだ。佳音の心は浮ついていた。
着て行く服装を決めておこうと押入れを開く。押入れの中にある私服はTシャツやジーンズといったラフな格好ばかりだった。デートで着れるような服なんて持っていなかった。
佳音は急いでデパートに向かい、勝負服を探した。鈴谷に教えてもらったお勧めの店がある。店内には様々な洋服を着たマネキン人形がズラリと立ち並んでいた。どれも気取ったポーズを決めている。
佳音は悩んだ末に淡い紺色のシンプルなワンピースを購入した。それに合わせてパンプスとバッグも購入する。
「こんなにお金を使ったの久し振りだな。」
店員から受け取ったレシートを見ながら呟く。そして軽くなった財布に入れた。今日の購入品はデートの日まで押入れから出てくる事はなかった。
約束の日が訪れる。天気は快晴だ。押入れにあるワンピース、パンプス、バッグを取り出す。袋を開けると新品の匂いがした。顔に化粧を施し、鏡で何度も確認した。
待ち合わせ場所に向かう。最寄駅の中にある売店は土曜日という事もあって混雑していた。少し早く到着してしまった。
私の服装、変じゃないかな。どんな話をしたらいいのかな。可愛く見られるにはどうすればいいのか。綾華とたくさん作戦会議をしたはずなのに。緊張で頭から全部消えていた。
「す、すすすみません!お待たせしました!」
息切れをしているサトルが立っていた。額には汗が流れている。サトルも緊張しているのか、2年前に出会った時と同じく挙動不審だった。
2人は電車に乗り、梅田の映画館に向かった。移動中の会話は無かった。2人は心臓の音は相手に聞こえてしまっているのではないかと思うぐらい煩かった。
映画館に到着してサトルがチケットを2枚購入する。流行りのアクション映画だ。佳音はお金を渡そうとしたが断られた。
「僕は佳音さんより10歳も年上なんだから、デ、デート代くらい払わせてください。」
大人の男性を演じたいのだろう。舌足らずな滑舌で佳音にカッコつける。不器用ながらも積極的にリードしようとしてくれるサトルに、佳音は徐々に惹かれていった。
映画を観終わった2人は喫茶店に入り、感想を言い合う。行きの電車内が嘘みたいに大いに盛り上がった。
主人公の台詞。敵役に対する考察。気に入ったシーン。エンディングで流れていた有名バンドの曲…。話題が尽きず話し続けた。気が付くと飲み干したアウスコーヒーの氷が完全に溶けて水になっていた。
サトルが「そろそろ帰りましょうか。」と切り出した。もうそんな時間になったのかと腕時計を確認した。いつの間にか夕方になっていた。2人は喫茶店から出て電車に乗った。
「佳音さんの家まで送りますよ。暗くなってきましたし、女の子1人じゃ危ないです。」
最寄駅の改札を出てサトルが言った。佳音は慌てて断った。
「そんな夜遅くないですし、大丈夫ですよ!それに私の家、サトルさんのお家と正反対の方向ですし。」
あんなボロボロアパートに住んでいるなんて知られたくない。佳音は必死に言い訳をして断った。
サトルも初デートを終えた女性の家に無理矢理着いて行くのは気が引けるのかすんなり了承した。そして集合した時と同じ場所で2人は解散した。
2人は反対方向に歩き始める。佳音がなんとなく振り返ると同時にサトルも振り返った。目が合った2人は笑顔で大きく手を振り合った。
佳音は軽い足取りで祈願荘に帰宅する。古びた階段を登り203号室のドアの鍵を開ける。
「こんなとこに住んでるって知られたら、流石にドン引きされるよね。引っ越そうかな。」
パンプスを脱ぎサトルにメールで今日の御礼を伝えた。すぐに返信が返ってきた。携帯電話の画面を見て口元が緩む。サトルさんも私と同じ気持ちだろうか。初めてのデート。人生を薔薇色に変えた。
初デートから3ヶ月。サトルからの告白で2人は付き合った。
サトルは物流倉庫で正社員として勤務している。前は印刷会社に勤めていた。職場の業績が傾きリストラに遭った。転職活動をした結果、現在働いている職場に採用されたと話す。
サトルは人見知りで控えめな性格だった。おどおどとした舌足らずの喋り方。心配性の慌てん坊。男らしくはなかったが、とても優しかった。
2人は仕事終わりや休日に一緒に過ごした。出掛けたり、食事に行ったり。サトルの家に行った事もあったが佳音の家に呼んだ事は無かった。
「佳音ちゃんはどんなとこに住んでんの?」
「え?」
いつも一緒に行くファミレスで唐突にサトルが質問する。フォークでパスタを巻いていた佳音の手が止まった。
佳音はまだサトルに祈願荘に住んでいる事や児童養護施設に入所していた事を話していなかった。そして頬の傷も。全てを話せば嫌われるかもと思うと中々踏み出せなかったのだ。
サトルと付き合ってすぐに引っ越そうか考えたが薄給の佳音には難しい。それに最近自動車免許を取得したばかりだ。引越しに充てられる金は無かった。
児童養護施設の話を話さなかったのは、高校時代、密かに想いを寄せていた男の子に「あいつ親無しなんだろ。」とコソコソ噂されているのを聞いて世間では禁句なのだと察したからだ。それ以降話題にするのを避けていた。
この人に本当の私を偽りたくない。でも嫌われたくない。ファミレスのボックス席で佳音は静かに涙を流す。私はどうしたらいいんだろう。頭の中がぐちゃぐちゃだった。
目の前で涙を流す佳音に気付いたサトルは目を白黒させている。喉にハンバーグを詰まらせた。サトルは咽せながら慌てて謝罪した。
「ご、ごめんなさい!無理して教えようとしなくていいから!泣かせちゃうなんて…僕本当ダメだなぁ…。」
ダメなんかじゃない。佳音は強く否定した。そしてサトルに全てを話す事を決意する。冷めた料理を残して会計を済ました。
ファミレスを出て歩いて祈願荘に向かう。歩き慣れたコンクリートの道なのに、沼の底を歩いている気分だった。空気が重たく感じる。2人の間に会話は無かった。
祈願荘の前に到着する。街灯に照らされ不気味な雰囲気を醸し出していた。5戸の部屋の明かりが薄暗く光っている。
佳音は祈願荘を見上げるサトルを見つめた。サトルの目にこのアパートはどう映っているんだろう。
「どうする?寄ってく?」
わざと明るい声で問い掛ける。サトルは無言で頷いた。2人の足音が祈願荘に響く。階段を登り、203号室の前で立ち止まる。
ガチャ。古い鍵の音が聞こえる。1人でも狭い部屋。2人はベッドに並んで座る。サトルは何も言わない。佳音はお構いなく自分の過去を洗いざらい話した。また涙が流れていた。
長い時間を掛けて全てを話し終えた。床にはひかりの家で撮った写真や、施設長からのプレゼント、化粧落としのシートが散らかっている。
「どう?サトルさん。嫌いになった?」
素顔であっけらかんと質問する佳音に対し、サトルは何も言わない。そして床に落ちている物達を片付け始めた。この人は何を考えているんだろう。佳音の目にはサトルの頭頂部しか映っていない。
「佳音ちゃん、教えてくれてありがとう。そっか。色んなことがあったんだね。佳音ちゃんの過去を聞けて良かったよ。」
嗚呼、終わった。きっと呆れられた。佳音は「どういたしまして。」と震える声で答える。もう会えなくなるのかな、なんて考えていた。
「よし!」
サトルが膝を叩いて立ち上がる。そして佳音の方を振り向くと両手で強く抱き締めた。大声で泣く佳音の 背中をサトルは優しく摩る。その姿はまるで子供を泣き止ます親のようだった。
朝まで一緒に祈願荘203号室の狭い部屋で過ごした。ただ手を繋いで、お互いを見つめ合う。サトルは時々佳音の頬の傷を愛おしそうに撫でた。
この人が、私の運命の人。
2人はこの幸せな時間がいつまでも続きますようにと願った。その願いは叶えられなかった。
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