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顧客リスト№60 『動く絵画の美術館ダンジョン』

人間側 とある怪盗の盗心

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嗚呼……実に悲しい……。幾度訪れようとも、相変わらずの衆人の姦しさよ……。


『美』を味わうには実に不適切。私語を抑えろと、入口の注意書きにも記載されていただろうに…。



…とはいえこれだけの群衆となれば、それぞれがただの一言だけを発せようとも、このように大きな波となるのは必然か。


それに私以外の周囲の看客かんかくは、その騒音を気にする素振りもない。この程度は普通気にならぬさざめきであり、私が繊細に過ぎると言われてしまえばそれまでであろうが―…。


無論、それが街中なり別のどこかなりであれば、私とて気にすることはない。だが、場所が場所なのだよ。



ここは『美術館ダンジョン』。優美を、壮美を、ぜい美を、耽美を、妖美を、機能美を、造形美を、退廃美を、自然美を、絶美を―!


数多の『美』の結晶たる美術品が集う、荘厳にして瀟洒しょうしゃな殿堂。 私は今、その只中にいるのだから――!




……おっと、つい逸ってしまった。私の悪い癖だ。 顔や姿に出てはいないだろうが、気をつけなければなるまい。


この羽虫の如き騒音も、今は耐え抜こう。 ……今夜、なのだからな。



――そう、今夜だ。 今夜こそが決行の日取り。 



美しき絵画よ彫像よ、この私の迸る愛にほだされかどわかされ、私だけに微笑むが良い――!










…む? ほう…私に気づくとは…。中々に敏いな。 私が、何者か、だと?


フ……フフフ…! 聞いて驚くなかれ、我が正体を!




―――正体不明、神出鬼没。鮮やかな手口でどこへでも侵入し、狙いを定めたオタカラをいとも容易く盗み出す。


標的になるのは人間魔物の区別なし。素晴らしき秘宝を持つ者ならば、それを頂戴……――





――…何? 聞いたことあるから省略しろ、だと? …私達の触れ込みをか? 


……フフ…フフフ……フハハハ!  そうか、そうか!



良い事だ! いやはや、実に喜ばしい事だ! 私達も随分と有名になったものだな!









さて、改めて―。私は『怪盗』だ。 あぁその通り、世間一般では盗賊の一種と認識されている。


だが、凡俗の徒と並べて貰いたくはない。意地汚く不細工に盗みを働く輩なぞ、下の下な部類。


私達はそれらとは比べ物にならぬほどに高尚だ。優雅に、軽妙に、賢しく―。どんな警備や警戒であれ、鮮やかに沈黙させてみせる。


とある豪商の豪邸、とある貴族の宮殿、とある王の居城。 とある魔物達の棲み処、パレス、ダンジョン―。狙いを定め、華麗に目的の品を盗み出したことは数知れず。


君も幾度か、私達の見聞きしたことがあるのではないか? 紙面や画面を席巻したことは一度や二度ではないのだから。


…名を知らぬから、思い出しようもない? これは失礼を。私としたことが。



――我が名は『ル・ヴァン・ザ・サード』。 覚えておいてくれたまえ。



どこかで聞いたことがある? フッ、であろうよ。 ……名前の由来は何か、だと?


実は隠れ蓑として、表向きはパン屋を営んでいるのでな。そこからだ。



おっと。このことは他言無用だ。もし誰かに口にでもしようものなら…どこぞの怪盗のタイトルロゴのような弾痕がその身に残るぞ。



――既に顔を見ている? ほう、脅しか。 だが……―。


私は変装の名手でもある。よもやこの顔が、この口が、真実だと思ってはいないだろうな。 君の手を噛み切ってやっても構わんよ?










――なるほど、私達怪盗一味がこの美術館ダンジョンに予告状を送ったことを知っているか。 ならば話は早い。


ここに展示されている美術品の数々は、どれもこれも素晴らしい。一目見るたびに一度、感嘆の息が漏れ出てしまうほどに。


だがしかし…訪客が多すぎる。騒がしいし、堪能する前に円滑なる場所移動を求められてしまう。


これでは心安らかに楽しむことができない。故に、私が楽しむためにのだ。



フフフ…攫う、というのがここまで適切な場面はないだろう。なにせ、ここの美術品は動く。『動く絵画』を始めとした、魔物と化した存在なのだから。





しかし…決行は閉館後の予定。即ち深夜。 だと言うのになぜ、こんな白昼に訪れているのか?


フッ。なに、初歩的なことだよ。 ……これは怪盗の台詞ではなく、どちらかというとそのライバル探偵役の台詞か。



そもそもだ。元よりこのダンジョンは、盗賊業に身を置く者の究極の目標。 金銭的価値としても美術的価値としても最上級なのは知っての通りだろう。


かくいう私達も、怪盗結成当初から目をつけていた。そして各所で研鑽を積み、いよいよの挑戦と相成ったのだよ。



そして今この場に居る理由は、その最終確認のため。警備の具合、展示品の位置、ルートの確認、その他諸々のな。 


無論、我がメンバーも変装してこのダンジョン各所に散っている。全ては、万全を期すために――。





――…というのは、間違いなく事実だ。だが私にとっては…少々建前でもある。


本音を言うと、居ても立っても居られなくてな。あと数時間が、非常に長いのだ。だからこそ、客に成りすまして美術鑑賞しにきているのだよ。



さあ見給え! 幾多の衆目に曝されようとも、一切の輝きを損なわぬ美品の数々を! 不朽の美貌称える彼らの御姿みすがたを!


そして…おぉ…!! その目を焼かれるが良い! かの珠玉の、至上なる名画『モナ・リーサ』に!


美しい…! 実に美しい…! つい凡庸な誉め言葉に終始してしまう自身が恨めしくなるほどに、彼女は素敵だ…!



…しかし、やはり場所が悪い…。幾千幾万の視線を受けるために、彼女の前で足を止めることは数秒程度しか許されていない。それが私には、酷く歯がゆい。


あぁ…やはりあの神秘で蠱惑の微笑を、私だけのものとしたい…! 今回の最大目標は、やはり彼女……―






――……む? はて…モナ・リーサが飾られているホールの一角に、妙な人だかりができている…?


確かあの場所には、何も飾られていないはずだが…。 幸い、進行方向だ。確認してみるとしよう。







―……なんだ、これは…? 宝箱…? 説明書きもなく、何故床にポツンと…?


誰かの落とし物…というにはあまりに大きすぎるな。抱える必要のあるサイズだ。それに、掃除用の箒や塵取り、ハタキがそれに立てかけられている。


ふむ……この状況から察するに、掃除担当の片付け忘れと見るのが一般的であろう。 ……だが…。



この宝箱、造りが見事だ…。美術品としても通じる…いや、完全に美術品の域だ。 モナ・リーサと比べる気すらないが、少なくとも他の上作に比肩しうる程なのは確か。


私の審美眼に狂いはない。そして、それが示すことは…これが芸術作品であると言う事に相違ない。周囲の看客も、平俗ながらそれを理解しているのだろう。だからこそ、こうも集っているわけか。



そうだな…。仮にこの宝箱にタイトルをつけるならば…『箕帚きそう宝物ほうもつ』とでもしておくか。


清掃により、宝箱の輝きは維持される―。または、箒や塵取りこそが、美を守る化身にして宝物―。そんな想いが籠められた作品やもしれぬ。


――だが…これもまた、場所が悪い。 ここはモナ・リーサのための画廊。彼女の作者であるダ・ビィンチの胸像や、他の絵、用いられたとされる筆なども飾られているが……これは正直、ミスマッチだ。


敢えて目玉であるモナ・リーサの近くに設置し、美を維持する難しさを表現したのかもしれないが……このような作品は、どちらかというと向こうのオブジェ館のほうにあるべき……―。



「…あれ? ここにあった宝箱は?」
「え? …あっ!? 少し目を離した瞬間に消えてるぞ!?」



――何!? 周囲の声に気づき、私はつい動かしていた目を急ぎ戻す…! ……っっ…!? 宝箱が…消失している…!?


馬鹿な…! 私はほんの一秒足らず、オブジェ館がある方向に目を移していただけだ…! だというのに…宝箱はおろか、立てかけられていた箒や塵取り、ハタキまで消えている…だと!?


しかもだ…! 私を含め、周りの者達の中にその消失の瞬間を目にしたものはいない様子…! 一体、どういうことだ…!?


……もしや、同業者盗賊の仕業か…! ―いや、ありえない。私の目だけではなく、この場全員の意識が逸れた刹那を突くなぞ…不可能だ。


なれば、演出の一つ…。それもまた、不可解…。 一体、何であったのか……。



……フ…フフフ…! そうか。これは、新しい『標的ターゲット』が出来たと考えるべきか。面白い…!


この謎、私が突き留めよう。我が名にかけて――!


……これもまた、少しばかり探偵側の気がしなくもない台詞だな……。













―――――時は流れ、深夜。 とうに闇の帳は落ちきり、私達を見つめるは月明かりのみ。好ましき静寂だ。


さあ、開幕といこう。 我らの饗宴は、これより始まる――。



ここに集いしは、私を含め4人の面子。これが、我が一味。それぞれが端然にして清雅の装い。


かくいう私も、タキシード姿にシルクハット、ステッキにモノクルという出で立ち。…盗みに入る恰好ではない? 


フッ、怪盗を名乗っているのだ。常に綺羅を飾らなければな。 それこそが盗み出す美術品たちへの敬意であり、彼らに見合う姿をしなければいけないという不文律だよ。


さて、では…まずは軽やかに侵入を――。



「しかしよ、ル・ヴァン。やはり警備員が増員されている様子はないぜ」


――ふと、メンバーの1人がそう声をかけてくる。 それは私も感じていた。


知っての通り、私達は予告状を早めに送り付けた。それはダンジョンの者達に準備を促す、余裕の証明であった。


しかし、理由はそれだけではない。慌てて警備員を増員することを狙いとしていたのだよ。その増員に紛れ込むことを目的としてな。


そのために、各所の警備会社や傭兵団に網を張っていた。もし何処かに依頼があれば、警備の見取り図や裏事情が手に入るのだから。


ただ結局のところ、私達が目星をつけていた場所からは警備員を雇わなかった。まあ、そうなれば少し楽だ程度の考えであったため、特に支障はないのだが。



……だが、別に気になることがある。それは――。


「確かなのだな? 職員が『警備役を大量に増やした』と口にしていたのは」



私の問いに、その情報をもたらしたメンバーはしかと頷く。絶対に間違いはないという面持ちだ。


どうやらダンジョン側は、警備員を増やしたには増やしたらしい。 だがしかし、今こうして外回りの警備の数を見る限り、そうは増えている様には思えない。


故に、少々拍子抜けである。これでは侵入も容易い。まるで入ってくれと言わんばかりだ。…一体どんな連中をどれだけ雇ったのだろうか。


それを調べるためにも昼間ここを訪れたのだが、何も手がかりを掴めなかった。 こうなれば致し方なし。こちらも警戒を厳として動くとしよう――。



ではいざ…侵入開始と洒落こもう――!










「――停まれ。また巡回だ」

「数は…3。こちらに気づいてはいないわ」


メンバーの合図に合わせ、私達は身を潜める。少しして、先の道を警備員が厳戒態勢で進んでゆく―。


ほう…大した警戒だ。容易く忍び込んだは良いが、こうも警邏が多いとはな。既に幾度も足止めをさせられている。


そして……間隔が妙だ。一定の時間ごとに警備員が回ってきているのではない。これは勘だが…私達の位置がある程度把握されている、ような気がする。


恐らく、ダンジョン全体に張られている複数の魔法が原因だろう。詳細は不明だが、よほどの手練れな魔法使いがいるのは確かだ。


こちらも潜伏魔法や隠蔽魔法、反応阻害魔法やジャミング魔法等諸々を駆使してこれなのだ。並大抵の盗賊なら、即座に御用と相成るのは必定。


流石、美術館ダンジョンと言うべきだな。フフフ…相手にとって不足なしだよ。









そして……この勝負、辛うじてながら私達の勝利だ。 ――辿り着いた、展示室の一画にな。


ここは『壺』の展示エリアだ。 目当ての品があるのもそうだが、ここで先にひと暴れすることにより、警備を掻き乱すのが目的でもある。


フフ…しかし、どれもこれも素晴らしき一品だよ。 叶う事なら全部盗み出したいものだ。…無論、ダンジョン中の美術品全てに言えることだが。


嗚呼、しかしたまらない…! 精巧な竜が彫られた壺に、極彩色の華が描かれた水瓶、焼き色だけで美しき紋様を浮かび上がらせた古陶磁…!魔力を帯びているアンフォラ…!


まだあるぞ…! ルビンという者が生み出した壺に、亀のような形の壺つぼ、あちらにあるのは実に強欲そうな表情を浮かべた壺と、貪欲そうな表情を湛えた壺…!その合わせ技もある…!


おぉ…! あれはホクソーの壺! 素晴らしい白磁の名品だ…! あれは…いい物だ…!!




―――おっと…。私としたことが…。つい見惚れてしまった。 いつ巡回が来るかわからぬ以上、急ぎ目的の品を…―。


――…何…!? こ…これは…どういうことだ…!?



目的の壺が…!! …だと…!?







「どういうことだこりゃ…? 全く同じじゃねえか…!」

「まず間違いなく、どちらかが偽物なのだろうが……」

「あ、見てこれ。『挑戦状!』ですって。 なになに…本物を見破ってみろ、って」


メンバーの1人が手に取ったカードを、全員で訝しみながら覗き込む。む…確かにそう書かれているな…。


これは意趣返しであろう。私達が送り付けた予告状のな。 フン、中々に粋な事をするではないか。


良いだろう。この勝負、乗らせてもらう! 我らの目を、侮るな――!








「…これ…とんでもなく難易度高いな…」

「わからぬ……」

「ここまでそっくりなんて…よっぽど腕のいい職人製ね…」


――クッ…。甘く見ていた、と言わざるを得ないな…。 こうも惑わされるとは…。


私達は最上級の鑑定力を持っていると自負している。だがそれを以てしても、装飾も紋様も傷すらも、寸分の狂いもないように見える。


よもや、ここまでとは……。一流の魔法使いに加え、一流の匠とは…。 流石、一流の美術館と言えよう。



……――しかし…。これはまたも私の勘だが…。どうも、ようにも見える。


記憶に残りし彼の壺と、目の前の二つの壺は確かに酷似している。…だというのに、どこか違和感が…。


そう、例えば…。作り手が籠めた想い。どうもこの二つからは、『騙してやろう』という感情が放たれているように思えるのだ。



…とはいえ、確証はないに等しい。今一度精査せんと、今度は少し離れた位置から確認しようとした…その時であった。


「よし!決めたぞ! 俺はこっちだと思う! なんか、照りが本物のような気がしてな!」


メンバーの1人が、半ば思考を放棄したかのように決断を下す。そして、壺の片方に近づき…。


「とりあえず持ち上げて見るとするか。 そうすれば何かわかるかもしれんしよ」


そう口にしながら、壺に手をかけ……――。


「ざんねーん! 選んだ時点で『一流怪盗』じゃなく、『普通怪盗』に降格でーす!」


 ギュルッッッ!





「なっ…!? ぐぁぁっ…」


――!! 何が起きた…!? 壺から触手が伸び、メンバーの1人を縊った…だと!?


それに、その直前に聞こえた声は…!? ハッ…! 壺の中から、何者かが顔を…!


「選んだのが運の尽きならぬ丑三つ時! 壺おじ…じゃない、壺ミミックがあなた方を逮捕しちゃうぞ!」



――なに!? ミミック、だと!? しかも上位種…!!


む…! もう一方の壺からも、触手が出てきた…! 成程…両方とも罠、偽物であったか…!


――してやられた。だが、捲土重来を期す! 食らうがいい、煙幕弾!


「わぷっ!?」


効いたようだな…! なれば、離脱する――!










―――ふぅ。 なんとか撒けたようだな。 怪盗たるもの、引き際を見極めるのが肝心だ。


心配しなくて良い。やられたメンバーは私の息がかかった教会で復活する。そこを使うのは久しいがな。



……しかし、ミミックとは…。ダンジョンではたまに見かける魔物だ。ここも確かにダンジョンだが…今まで一度たりとも見たことはない。


もしや、あれが雇われた警備員だというのか…? なれば、殊更に気をつけなければなるまい…。





一度姿を晒してしまった以上、その情報はすぐさま知れ渡る。つまりここからは、スピード勝負だと言っても過言ではない。


警備も動いたことだろう。ならば目指すは、最大の標的。私の愛する絵画…、モナ・リーサ…!!


嗚呼、麗しの姫君よ! 只今そちらへ――!













「――貴方がたが、予告状の主。『ル・ヴァン・ザ・サード』が率いる怪盗一味、ね。 …流石の手際…と言うべきかしら」


「おぉ、貴女の口からそのようなお褒めの言葉を頂けるとは―! 少しばかり腕を揮った甲斐があったというもの!」



場所は、モナ・リーサが飾られたホール。彼女の前に立ち、私はポケットチーフで服の埃を払う。


その際、ふとチラリと目に入ったのは……今しがた、床に転がる警備員達である。




やはり、美姫に拝謁するためには邪魔者は少ない方が良い。ここに来る前に各所を周り、あえて軽く暴れることによって警備員を混乱させた。


あとは悠々とこの場へ訪れ、残っていた見張りを颯爽と片付けたのだよ。 実に容易い仕事であった。


――フッ…。ようやく私達らしく、スタイリッシュに決められた。 先程の壺の一件の汚名、雪ぐことができたであろうよ。



「さて、モナ・リーサよ。こちらもルーク仲間の1人はとられたが…これにてチェックメイトcheckmateだ。どうか、私の手を取って欲しい―」


彼女の前に跪き、姫を相手にする王子の如く手を差し出す。 嗚呼嗚呼…!どれほどこうしたかったか…! あの大衆の真中では成し得なかった、彼女への敬服姿勢を―!


無論動く絵画とはいえ、モナ・リーサが物理的に私の手を取ることはない。だが…私の心は満ち足りたようなものだ――!


「何、心配はいらない、モナ・リーサ。私達は貴女がたを愛する者。必ずや丁重に――」


「えぇ。貴方がたが私たち美術品を傷つけないのはわかっているわ。 盗賊だとはいえ、そこはちょっと信頼してるわよ、ル・ヴァン」


おぉ…おお…――! なんという僥倖…! いいや、日頃の行いと言うべきか―! なれば―…



「――けど、ひとつ間違いを犯したわね」



……何…? 私が顔を上げ、メンバー二人が臨戦態勢へと移ったのと同時に…モナ・リーサはその微笑を、一層妖艶なものへと――…!


「チェックメイトなのは貴方がたのほうよ、怪盗一味さん?」



「「「かっかれーー!」」」








「なっ!?」
「嘘でしょ…!?」


――な…なんという…ことだ…!? モナ・リーサの号令に合わせ…ホールに置かれた美術品が全て…動き出しただと!?


違う…! 『動く絵画』に始まる美術品ではない…! そもそもこのホールにいる動く絵画系の魔物は、モナ・リーサただ一人のみ…!!


ならば…あれは…!! 動き出したショーケース、胸像、絵画…!! あれらの正体は…!!!


もしかしなくとも……!!! 



「ショーケースの中に収まる大きさにしてやりましょうかぁ!?」

「蝋人形…じゃねえ、胸像にしてやろうかあ!?」

「シュレッダーにかけて、バラバラに裁断してあげちゃうよお!」



―――ミミックっっ!!!








「「「待てーっ! チェックメイトじゃなく、チェックアウト退館させてやるー!」」」



一体…何が…! あれは…なんなのだ…! ひたすらに逃げながら思考を巡らすが、理解が及ばない…!!




まず…ショーケース…! 昼間まではダビィンチの筆などが飾られていた箱だ…!


だが今は…! そのショーケースの中に上位ミミックが顔を出すようにして…即ち、透明なショーケースをヘルメットのようにしている……!!!




向こうは…胸像! ダビィンチの姿を模した、石膏の像…!


それが…ダビィンチの首が外されている…! いいや、正しくは新造品ではあるのだろうが…。ダビィンチの胸だけの像になっている…!


そしてそこに穴が開けられ、上位ミミックが入っているのだ…! 首部分から顔を覗かせ、腕部分から触手を出し…! 肉襦袢ならぬ石膏襦袢だ…!!




更に、地を駆けるように迫ってきているは動く絵画…ならぬ、ミミック入り絵画!


あれに至っては、もはや美術の冒涜とも言えようよ…! これも、対私達用に誂えた代物であろうが…なんと言うべきか……。


……そう! 観光地にある『顔だしパネル』! 模造絵画の顔部分に穴を開け、そこに顔を嵌めているのだ! おのれ…やりたい放題か!!




…―――そういえば…。昼間見かけた、謎の宝箱はやはりいない…。結局、あれはいったい…。


――もしや…!!



「ぐはぁあっ……!」

「1人確保ぉ! 残りは二人ぃ!」


―――しまった…!また1人やられてしまったか…! 今は思考に耽っている場合ではない…!なんとかして身を潜めなければ…!!









 
「探せ探せ~! この辺りに潜んでるはず!」

「さっき向こうで人影を見た? ばっかも~ん! そいつがル・ヴァンだ!」


……ミミック達に続き、他の警備員達も集合してきたか…。なんとか身を隠せたとはいえ…時間の問題だな…。


ルークに続き、ビショップまでとられた今、残るはキングとクイーン…。私と、もう一人のみ。しかも、向こうのキング、もといクイーンモナ・リーサにはもう近づけないだろう。


最大のターゲットを逃した今、撤退すべきか…。私達の経歴に傷こそついてしまうが、新たなる策を練りリベンジを挑むことはできる…。


口惜しさから血の涙が出そうではあるが…それが上策であろう。 そう決めたならば、警備員にでも扮して逃走を……。


……む…? あれは……――?







「怪盗さ~ん!出ておいで~! 出ないと、そうね…現代アートみたいなヘンテコ姿に曲げまくるわよ~!」


「その歌、恐いんですけど…社長…」


――箱の影…? と、その後に続くは…悪魔族の羽や尾や角がついた人の影。  つまり、ミミックと悪魔族、か…。 しかし、やけに呑気そうな雰囲気の女性二人組だな…。


ふむ…この状況下であの口ぶり…。よほどの実力者か、単に天然か…。図りかねる…。




そう様子を窺っている間に、二つの影は更にこちら側へと―。私達に気づいているのか…? ……おや?


「この間のリベンジクイズよ、アスト! あの絵は?」


「えぇ…今ですか? まだ一応、怪盗一味が二人どこかにいるのに…」


どうやら杞憂であったらしい。近くの絵で、クイズを始めた。なれば後者…。天然なのかもしれぬ。


しかしクイズとは―。 ふむ…あの絵は確か、『地獄ノ――


「『地獄ノ辞典における大悪魔之図』ですね。『コラン・ド・プランシィ』、『ルイ・ル・ブルトーン』によって手掛けられた作品群のひとつです」


ほう…! いとも容易く答えを出した。その通りだ。 だが、わかるかな?そこに飾られているのは―…。


「けどあれ、レプリカですね。非常に精巧にできていますけど」


…――見事! そこまで知っているとは。 すると『社長』と呼ばれていた声も、アストとやらを褒め称えた。


「さっすが~! そんなのもわかるのね!」


「まあ、あれぐらいなら。 …というかあれの本物、うちにありますから……」






――――!? 今…なんと…!?  なんと口にした…!?!?


あの絵の真作が、家にある!? 馬鹿な…! あれを所有しているのは…!最上位悪魔族の一柱『アスタロト家』だぞ!?


私も残っているメンバーも、目と口がこれ以上ないほどに開き切ってしまったではないか…! つまり…あの悪魔族…アスタロト家の一員だというのか!?!?



何故、このようなところにそんな身分の者が…! いや、寧ろよく訪れてもおかしくないであろうが…。


今は閉館時間、しかも私達が侵入の予告をしたその日だ…! まさか、警備員として雇われているのか…!?


……ッハ! 裏事情はよくわからぬが、なればこのダンジョンにかけられている魔法の正体は頷ける…! アスタロト一族となれば、相当な魔法の使い手に違いないのだから…!


天然…どころではない…! 私達を凌ぐほどの実力者だ…!!





「―ねぇ…これ、チャンスじゃない? 彼女達に変装できればきっと…!」


私が未だ愕然としていると、最後のメンバーがそう提案してくる。なるほど…一理ある…。


それほどまでの立場であれば、警備を動かすことも容易い。そう長く化ける必要はない、逃げるまでの時間稼ぎが出来れば良いのだから。



ただひとつ気になるのが…アスタロト一族と共にいるミミックだ。アスタロトが『社長』と呼び、敬意を払っているとなれば相当な存在。


ミミックにそのような権力者がいると聞いたことはないが…。警戒せねばならない。 ―ともあれまずは、その二人の顔と姿を確認し……。



…―――なぁっ!? あれは…あの宝箱は…!! ではないか!!


ということは…つまり……。あの時から、ミミック達は警備員として配備されていたということか…!


私達怪盗よりも上手く化け、私に気づかれぬほど俊敏に動くとは…! 惚れ惚れしてしまうな…ミミック…!





「――へ? は、はい。 じゃあ私は、こちらの方へ」

「お願いね~! 私はあっち!」



――む? 何事だ? あの二人が…手分けして別の方向へ巡回に? 単独行動とは無警戒な…。


…いや、やはりそれほどまでの実力者と見るべきか。 変装をする際には、その相手を沈黙させておくのがセオリーだが…下手すれば、こちらがしてやられるだろう。


なれば、これは最大の好機と捉えるべき。それぞれの元へ、擦り寄り…うまく誘導し活路を開く―!


この策で行くしかない―。となると、どちらがどちらに扮するかだが……。


「アタシ、ミミックに化けるなんて自信ないわよ…? あのミミック、見た目少女だし…。 ほらアタシ美女だから、美女に化けるのが楽じゃない?」


……色々と言いたいことはあるが…。その猶予はない。 仕方ない…その配役で変装といこう――!









「アストー! 待ってー!」


「…え!  あれ!?社長!? どうしたんですか?」


……――よし…。まずは第一段階は成功だ…。 このアストという悪魔族、不振がっている様子はない…!


私の変装魔法は、あらゆる人物魔物への模倣が可能だ。服も、装備も。 ミミックの場合は、その箱すらもしっかりとな…。


ただし弱点がある…。それは、この変装は見た目だけで、能力は真似られないということだ。 だが、普通ならば特に問題はない。


例えばだ。エルフやドワーフに化けたところで、平時ならば能力を求められないであろう? 仮に求められたとしても、私は弓術等もある程度修めているし、怪力等は魔法で欺ける。


……だが、ミミックは…。正直…不明だ…。 その能力がよくわからないのだよ……。


そもそもが遭遇しにくい魔物であり、出会ったら即死ともされる存在。故に『箱の中に潜める』という能力しか知れ渡っていない。


だからなるべく、派手な動きをしないようにしなければ…。不審がられぬようにな…。



「いえね、やっぱりアストが心配になっちゃった! 一応アスタロトの娘なんだから、守ってあげなきゃ、ってね!」


「それは―。ふふっ…! ありがとうございます、社長!」


……この会話も、上手く切り抜けられたな…。 しかし…どういう関係なのだろうか、この二人は…。


私…もといこのミミックを『社長』と呼ぶのだから、彼女は従業員だというのが本命だが…。アスタロト一族が、ミミックに仕える…? 俄かに信じられぬな…。





「じゃあ、行きましょうか! ……あれ、社長、どうしたんです?」


「―っえ! あ、そーね! しっかり探しましょー! ……っと…」


アストという娘に促され、私も動き出す……が…………くぅっ…!!

 
やはり…動きにくい…!箱に入ったままの移動は…! ミミックは……どうやって移動しているのだ…!?


「? どうしたんですか社長? 体調悪いんですか?」


…っ…! このままでは疑われる…! なんとか…しなければ…!


「んー…ちょっとね…! ちょっと足が痛いかもって…」


「…――なら、いつもみたいに床を滑って移動すればいいじゃないですか。 えいっ!って」



……なに…? そんな方法があるというのか…? え、えいっ…!?


「おぉっ…! おっとっと……!」


…案外、進むものなのだな……。 …ハッ…! しまった…変な声を発してしまった…―。訝しまれては……


「それじゃ、怪盗探し続けましょう! この辺に潜んでるみたいですし!」


……いない、な…。 助かったが…。 もしやこの娘、やはり天然でもあるのか……?









――その後、先の『社長』の行動に倣い、私も彼女アストへ時たまに絵や彫刻の詳細を聞いてみもした…。


その結果……全問正解だ…。マイナーとされる絵も聞いたのだが、全く迷うことなく答え、しかも補足解説まで行った…のだ。


惜しい…な…。もし敵でなければ…我が一味に…勧誘したい…ぐらいだ…。……ふぅ…ふぅ…―。



この移動法…床を箱で這う移動法…! かなり…体力を消費する…! これでは…逃げる体力すら減ってしまう…!


だが、アストという娘は一切足を緩めない…! 私の後ろを三歩下がってついてきているというべきか…付かず離れずを維持しているのだ…!


これでは、隙も無い…! ……かくなる上は…。この見た目なら…一縷の望みにかけて……!



「ねえアスト…」


「? なんですか社長?」


私が声をかけると、首を傾げる彼女。精一杯の、困った様子とおねだり顔で…!


「抱っこしてくれない…? なんか足の痛みが増して…」


「えっ……!」


――どうだ…! 箱に入っているミミックなら、抱えやすいはず…! 少女姿でこの性格の『社長』なら、こういう頼みも通じるはず……!


「……いやいや社長、じゃないですか~。 頑張ってください! ほら、回復魔法かけてあげますから」


……くっ…ダメか…。 仕方ない…。このまま進むしかないか…。







「あ、ここまで来ましたね。じゃあ、社長が行ってないあっちの方へ行ってみましょうか」


「そ、そうね…。 でもアスト…一旦戻って……」


……げ、限界が近い…。なるべく早く離脱しなければ…。 


少なくとも、向こうに行くのは危険だ…。あいつ私の仲間が上手くやっていたとしても、鉢合わせる危険が……―。


―………? …‥……――――っ!!!


「「あ…!」」


私と、アストという娘は同時に声をあげてしまう…! 何故ならば…!!




「いえーいアスト! 首尾はどう?」



……『社長』が…! あのミミックが姿を現してしまった!!!









これは…窮地だ…! すぐさま逃げなけれ…――


「えいっ!」


――うぐっ!? な、なんだ…!? 箱の蓋が踏まれて、閉じ込められた…!? まさか…アストが…!?


「社長の提案通りでしたよ! 移動法を適当に誤魔化したら、大分疲れてくれたみたいです!」


「良い感じね! こっちもだいぶ遊んじゃった~!」


「……それは良いんですけど……。なんで私の姿をしたその人を、そんな変態的な縛り方してるんですか……?」


……!? ど、どういうことだというのだ…! …蓋との間に隙間が僅かにある…! ここから様子を…!



―――なっ…!! 最後のメンバーが…このアストという娘に変装した彼女が、ミミックの触手に縛られている…!!


「いえね! ちょっとそそのかしたら、あーんなことやこーんなことやってくれたの! あー楽しかった!」


「私の顔で変な事させないでくださいよ……。 私、傍から見たらそんな印象なのかな…」


……やはり、この二人の口ぶり…! 最悪の展開だ……。私達の変装は、初めから見抜かれていたのか…!


くぅっ…! やはり、相当な実力者であったか…!!









「えーと…この術式なら…多分…。 ――――――。―――。――!」


「ぐっ…! 変装魔法の強制解除までできるとは……!」


アストという娘の力に舌を巻きつつも、私は追い詰められる。 …既に、一味は私一人となってしまった…。


こうなればもう、遮二無二逃げるが吉。なんとか隙を見出さなければ―。


「…いつから気づいていた…? 私達の変装は完璧だったはずだ…!」


差し当たり、そう話を持ち出す。すると彼女達は乗じてくれた。


「ほんとそっくりだったわ! 一瞬本物かと思ったもの!」

「ですね! 中々に社長の言いそうな言葉運びでしたし!」


…褒められて悪い気はしないが…。それはつまり――。


「やはり、初めから気づいていたか…」


「えぇ」
「そうですね」


「…後学のために、聞かせて貰えないだろうか…? 私達の変装のどこに、違和感を感じたかを」


「「えーと……。 …なんとなく?」」


「……何? なんとなく、だと? 仮に事前の打ち合わせが無くとも、わかったというのか?」


「「なんか、間違いなく違うな―って。 感覚的に…」」



…………声を揃えてそう言われてしまえば…私達の技術不足を認めるしかない、な…。


…―いや、違うか…。 今回に限っては、相手が悪かった…。この二人の間に割って入ったのが失策であったか…。


――嗚呼、なれば…―――。



「その貴重な意見、次回への訓戒として有難く頂戴するとしよう。――さらばだ!」


 ボムンッッッ!


「「わぷっ!?」」




――持ちうる全ての煙幕を撒き、全身全霊を以て離脱―! また会おう、強きふた…り…!?


「待てぇル・ヴァーン! そっちが猫の目キャッツアイの如き目まぐるしい活躍をするなら、こっちはアスファルトタイヤ切りつけながら暗闇走り抜けるわよ!」


「何言ってるんですか社長…!? 確かに今は夜ですけど…!」



――追ってくるか…! だが、このまま進めば……ぬぁっ!?


「ふむ。考える暇すらなく、足止めをさせてもらうぞ」

「美術館ではお静カニ!」


ぐぅっ…!? 考えるオブジェと、蟹のオブジェ…! 展示位置はここではないはず…! 移動して来たか…!


――しまっ…! この一瞬が…命取りに……!




「やりましょアスト! 『総攻撃』よ! 背景赤くしちゃって!」


「え!? なんですかそれ!? は、背景…!?」


「いいからいいから! 仮面ペルソナは無いけどお洒落に決めましょ~!」




―――何!? 周囲が真っ赤に…! 私を足止めしたオブジェや他の美術品すらも消え去った…専用空間とも言うべき様相に…!


――!? 社長とアストの決め込んだ顔が、キラリとカットインし―!



「総攻撃ターイムっ!!」



ぐあっ…ぐあああああっっ!!  黒弾と化した二人が…私に連続突撃を…ぐはああああアッッ!




「――よっと! 『Bestミミ regardsック派, Mimic's会社を tempよろ agency!しく!』」


「だからなんなんですかこれぇ!?」




―…が…がはっ…。私に集中砲火を食らわせた二人が華麗に着地し踊り…実に洒落たポーズを……。


…――! アストという娘…社長を抱きかかえている…! やはり…私の見立ては間違ってはいなかったか……。



虫の息ながら、そう独り言ちる…。と、そこへ社長と呼ばれしミミックが…。


「というか…やっぱりあなただったのねぇ、怪盗の正体。 昼間、モナ・リーサさんだけじゃなく、私のことも凄い目で見てきたでしょ!」


「…な……。変装…していた私に…気づいていたと…いうのか…?」


「まーね!明らかに視線が変だったし! 暇だったから掃除してたのだけど、変な感じしたから変装?してみたのよ!」


「変…装……?」


「良いわよね、美術館って! ちょっとおかしな物が置かれてたら、皆それがアートだと勘違いしちゃうんだから!」


……なんと……なんと…。あれは計算づくの行動であったか…。 加えて、視線を感知し誰にも気づかれぬように去ることができる……―。



――嗚呼、意識が遠のいてきた…。 フ…フフフ……私達をここまで手玉にとるとは…惚れてしまうな…ミミッ…―


……ガフッ……。










「……――ハッ!!」


「あ、起きた。 いつ振りの復活魔法陣送りかしらね、ル・ヴァン」


目を覚ますと、そこは私達の息のかかった教会。先に仕留められた他三人も、その場で待機していた。


「まさか俺達が全滅しちまうなんてな…」


「不覚…驕りがあったか……」


「ほんと! で、どうするのル・ヴァン? ……ル・ヴァン?」


…メンバーの呼びかけに、私はすぐに答えることができなかった。 全滅という事実に打ちひしがれていたから、ではない。


「…暫く修練を積み、頃合いを見て再度挑戦するとしよう。 ――だが…」


「「「だが?」」」


故に私は、指針の表明と共にそう付け加える。メンバー全員がこちらを見つめる中、その内容を口にした。


「次に予告状を送る際は、『ミミックとの対決を希望する』旨を記載するとしよう―」




「は…!? おいおいル・ヴァン! なに考えてやがる!?」


「今回我らを退けた以上、向こうもほぼ確実に配備するであろうが…」


「だとしてもなんでわざわざ…!? その口ぶりだと、ミミック達に紛れるという訳じゃないのよね…?」



口々にまくし立てる我が一味。当然の疑問ではあろうよ。だがな……私は、とんでもないものを盗まれてしまった。



それは…私の心―! 芸術品のみに捧げたはずの我が心の一部を、見事に盗まれてしまった!



何に? 無論、ミミック達にだ! 『Take Your Heart』と囁かれたと勘違いするほどに、惚れてしまったのだよ…! 



嗚呼…!彼女達は実に…実に素晴らしい…! どれもこれもが、私達の『理想』―! 


私達を容易く欺く手腕…! 隙を見せていたとはいえ、一撃でこちらを屠り去る技の冴え…! 奇抜ながらもその時まで正体を気づかせぬ隠密能力…!


出来うることなら、教示を受けたいほどだ…! ――しかし、それは不可能であろう。



私達は、オタカラを『盗む』側。彼女達は、オタカラを『守る』側―。 悲しきかな、立場は真逆に位置しているのだから。


フフ…なればこそ、対決によってその技を盗み、模倣mimicすべきであろう。フ…フフフフ…!



いずれまた会うとしよう―。 愛しきミミックの諸君よ…――!



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