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顧客リスト№68 『忍者の忍びの里ダンジョン』
人間側 ある自惚れ生徒忍者と忍箱②
しおりを挟む「はぁ……はぁ……はぁ……。もう手裏剣は飛んでこないでゴザルか……?」
身をふらつかせながらもなんとかミミックより逃げおおせたでゴザル……。ようやく腰を下ろして一息つけるでゴザルな……。ふぅ……。
しかし気づけば、学校周りを深く囲む鬱蒼とした森の中でゴザル。手裏剣の刺さる音の代わりに、鳥や小動物の声や音が微かに聞こえてくるでゴザル。……認めたくないでゴザルが恐らく、追い込まれたでゴザルな。
いやそれは今どうでもいいでゴザル。まずはこの身体の眩みをなんとかしなければ。先程放った『極悪殲滅大大大大竜巻』は拙者が使える忍術の中でも最大級の大技、加えてそれで決着をつけるため、持ちうる力を根こそぎ注ぎ込んだでゴザル。
故に、今や拙者の身にある忍術の源はゼロと言っていいほど。それに忍術の反動も相まり、こうも倒れそうになってしまっているのでゴザル。この状態は拙者にとって死活問題でゴザル。
なにせ動けないだけではなく、忍術がほとんど何も使えないでゴザルからな。源を回復する『忍力丸薬』でも持ってくれば良かったでゴザルが…今回も多くて数発の忍術で終わると思っていたからほぼ手ぶら、当然持ってきていないでゴザル。
フッ、でも心配ないでゴザル。拙者は凄いでゴザルからなぁ、こうして身を潜めて数十分ほど休めば完全復活でゴザル。周囲には手裏剣はおろかミミックの気配もないし、ここで少しゆっくり――
「呆れた。キミ、座学も舐めプ? それとも里の外に出たこと無い? キミが凄いんじゃなくてダンジョンの効果よ、魔力回復量増大は」
「――っ!?」
ミミックの声…っ! ここがバレたでゴザルか! ならば急いで場所を変え――。
―――カカカッ!
「っう…!?」
手裏剣が…何処かの木の上より飛んできたでゴザル…! この場を動くなというように…! ぐっ……見下ろしているでゴザルな…!? 何処に…何処にいるでゴザル……!
「までも、確かに人より回復量は多いっぽいわね! もう魔力切れの症状は治まったみたいだし! んじゃ、早速始めましょ~!」
目を凝らしても居場所がわからないまま、ミミックは勝手に話を進めるでゴザル…! と、そこで急に声を明るくし――。
「チャンスタ~イム!! 今から少しの間、お姉さんは動かないわ。その間にどんな攻撃でも掠り当たりでもヒットさせたら、合格にしたげる!」
そんなことを。ハッ、確かに惹かれはするし、身体の気持ち悪さもだいぶ収まったでゴザルが……今はもっと回復に集中するでゴザ――
―――カカカッ!
「ひっ…!?」
「因みに何もしなかったら試験自体強制終了だけど?」
が、顔面数センチ横に手裏剣が……! くっ、選択の余地なぞ無いじゃないでゴザルか! しかし居場所はわからず、源の回復はまだ微々たるもの。これでは忍術を打とうにも……――
「――どんな威力でも良いでゴザルな?」
「えぇ! お姉さんに二言は無いし、嘘申告もしないわ! あでも、流石に当たったのがわかるぐらいにしてね?」
言質は取ったでゴザル! ならば――!
「『追尾光手裏剣の術』ッ!」
印を結び空中に出現させたのは、大量の光の手裏剣でゴザル! さっきの意趣返しでゴザル! ……最も今の威力は忍術の源の倹約のため、よくお仕置きに使われている柔らか手裏剣どころか、豆鉄砲レベルでゴザルが。
でもそれでいいでゴザル! なにせこの忍術の肝は――いくでゴザル!
「お~! 手裏剣が勝手に飛んでって…わっ、すっごい急カーブ!」
どうでゴザルか! 拙者の元を飛び出した光手裏剣達は、一斉に散って至る所へと飛んでいくでゴザル! この光景、荒れ狂う蛍の如し!
フフッ、そうでゴザル。この術は名前の通り、追尾能力がついているのでゴザル! しかも僅かな気配をも察知し向かうようにしたでゴザルから、ミミックがどこに隠れようとも――!
「フギャッ!?」
「チュンッ!?」
「ギャンッ!?」
「あ~らら~。全部どっか行っちゃった~♪」
――……っ!? 聞こえてきたのは動物達の悲鳴と、ミミックのほほんとした声。もしや…!
「嘘ついて……!」
「ないわよ、しっつれ~い! ま、これで分かったでしょ? そんな忍術頼りじゃ忍び技は見切れないのよ」
拙者の勘ぐりに被せてくるミミック。そしてまるで指南役かの如く声の調子を冷静なものとし――。
「忍ぶ技の第一歩、それは気配を消しきること。この点は私達ミミックも忍者も変わらないわ。生き物、動くものとして相手に認識させてはいけない。景色の一部に溶け込むように、まるで初めからそこにあったかのように振舞うのが鉄則よ」
そんな講釈を。つまりなんでゴザルか? 拙者の技が当たらなかったのは、気配を完全に消していたからと言いたいでゴザルか?? だから他の生き物の気配に反応して手裏剣が何処かに飛んでいったってことでゴザルか???
ハッ、そんなの信じないでゴザル! 拙者の追尾忍術は無敵、どんな相手だって逃さないでゴザル! だから絶対、当たったのに嘘をついているで――
「こちょりっ♡」
「ごひゃふんっ?!」
な、な、何でゴザルか!? 今拙者の身体に…装束のメッシュ生地の隙間から何かが入って来て、拙者の身体をくすぐったでゴザル!? 慌てて立ち上がって周囲を確認してみても、誰も……
―――パカッ
「あら~♡ 可愛い悲鳴♡ くすぐりには弱いのねぇ♡」
……なっ…………。拙者が今まで座っていた木陰が……開いて……!? そこからミミックが!? よ、よく見ると木陰じゃなく、さっきミミックの入っていた唐草模様千両箱で……な……い、いつから……。
「さ・い・しょ・っから! ずぅっと私の上に座ってたのよキミ?」
「そ、そんな訳ないでゴザル! だってさっき、木の上から手裏剣が……!」
「うふふっ! ほら、そこの木の上を見てみて。暗くて分かり辛いけど、糸で止められてる余りの手裏剣が見えるんじゃない?」
示された方向を睨んでみると……あ、あるでゴザル…! 木の上からぶら下がる手裏剣や、枝を曲げて止められ、こちらを狙っている手裏剣が……!
「あとはこの糸の先を引っ張るだけで、手裏剣が落ちてくるし放たれるという簡単な仕掛けよ。まあ私はこんなの使わなくても触手で出来るんだけど、それだと指南にならないし~。ほいっ☆」
「危なぁッ!?」
ま、まるで拙者を追尾するかの如く全部飛んできたでゴザルっ! 何で今発動させたでゴザルか!? い、いやそれよりも――!
「い、いつの間にこんなものを…!?」
「勿論それの答えも同じ。最初からよ。キミと顔を合わせる前から、そしてキミをここへ誘導している最中から、こうして罠を張っていたの」
手裏剣罠の糸を指先でくるくると回収しながら答えるミミック…! そしてまた、講師じみた声色になって…!
「自分の有利な領域に相手を誘導する。ミスリードで油断させる。これらも忍び技の基本よ。身をもって学んでくれてお姉さん嬉しいわ☆」
「そ、そんな裏工作、卑怯でゴザルぞ!!」
にひっと笑ってきたミミックに、拙者は憤慨をぶつけるでゴザル! しかし、それはどこ吹く風どころか……。
「なんで卑怯だと思ったのかしら? キミがそれを出来ないからでしょう? じゃあなんで出来ないのかしら~?」
こ、このっ…! わざとらしく耳に手を当てこちらに向けて…! それは……――好機ッ!
「イヤーッ!」
回答ではなく、光手裏剣をミミックへ投げつけたでゴザル! なにせまだ、先程の『どんな攻撃を当てても合格』は終了だと言われてないでゴザルからなぁ!
ハハッ! 追尾式でもない、威力も豆鉄砲程度の光手裏剣一つ程度であれば、目にも止まらぬ速さで生成して投げることが出来るのでゴ――
「ピンッと」
あっ……!? ミミック、回収途中の罠糸を腕をクロスさせて張り、光手裏剣を弾いたでゴザル……! そんな…どう見ても隙だらけだったはず…!
「それは当然、キミが忍び技を持たないからよ。そしてアンブッシュが決まらないのも、ね」
唖然とする拙者に、ミミックはウインク交じりに先の問いかけの解を…! 更には――。
「お姉さんは有利な領域で『反撃する』気配を消し、偽の隙でミスリードを。キミは不利な領域および状態で『攻撃する』気配を隠さず、そのまま放った――。忍び技の有用性、ちょっとはわかった?」
わざわざ詳細な解説まで! 嫌味ったらしいでゴザル! 大体そんなの、拙者が高火力忍術を使えるぐらい回復していたら無意味でゴザ――ん?
「……今、拙者のとこ、なんか一言多くなかったでゴザルか?」
危うく聞き流すところだったでゴザル。不利な…状態? 確かに忍術の源不足であったり手裏剣罠がまだ残っている可能性とかはあるでゴザルが……それでも一撃与えれば勝てる今の状況、拙者のほうが有利でゴザルのでは?
「うふふっ! ちょっとは気が回るようになったじゃない! でも惜しい事に……肝心の警戒力がまだまだ成長途中ね~」
拙者を褒めてるのか貶してるのかわからぬことをのたまいつつ、ミミックは周りを見ろ的なジェスチャーを。何が――……。
「グルルルル…!」
「カァッ!カァアッ!」
「フシャアァアッ!」
「っっなぁ…!?」
「いくら弱い手裏剣でも動物達を怒らせるには充分。そんな中で色々叫んじゃってたら、犯人はここにいますと自供しているようなものでしょ!」
先程の追尾式光手裏剣のせいでゴザルか…!? か、囲まれてるでゴザル……! ど、どうすれば……!?
「まさに自らが蒔いた種、もとい、自らが蒔いた手裏剣! 本当惜しいわ~。忍び技を習得していれば、こうやって簡単に隠れられるのに~」
拙者が苦しんでいるのを嘲笑い、ミミックは姿を消したでゴザル!! そしてまた、何処から聞こえてくるかわからない声で――。
「とりあえず、逃げたほうがいいんじゃなぁ~い?」
「「「「「ガァアアアアッ!」」」」」」
「ひぃいっ!!!?」
怒った動物達が、藪の中から一斉に飛び掛かってきたでゴザルぅ!? ふ、普段なら忍術で容易く蹴散らせるのに、今は……に、逃げるでゴザルぅううッ!!!
「ひぃ……ひぃ……ひぃ……! も、もう追ってこないでゴザルか……!?」
脚がガクガク言うほどがむしゃらに逃げ、気づけば開けたところに来ていたでゴザル……。拙者の目の前には唸りを上げ流れ落ちる大滝と、それに連なる川や池が。要は水場でゴザル。
「あらら、関節がパニック起こしているわよ? 忍術ばかり使ってるから運動不足なんじゃな~い?」
そして拙者の背後には……またミミック! どこまでも追ってきて……いや試験中だから当然でゴザルが……。
「じゃ~次のインストラクションに移っとこ~う! あ、一撃加えられたら合格なのは絶賛継続ちゅ~う☆」
んでまた消えたでゴザル…! どうせまた無視したら手裏剣が飛んでくるでゴザルし、付き合うしかなさそうでゴザル……。
しかし、範囲攻撃も自動追尾も大して効果が無かったでゴザル。ならば他の忍術でミミックを探し出すしかないでゴザルが……あぁ、この手があったでゴザル! 今しがた追われたのがヒントになったでゴザル!
「『口寄せの術』ッ!」
しかも多重発動でゴザル!! 印結びに呼応し、ボゥンと煙と共に次々と忍犬達が揃ってゆくてゴザル! フッ、さっきから忍術の源の消費を抑えていた甲斐があったでゴザルな!
「人海戦術って訳ね! それされちゃうとお姉さんちょっと厳しいかも~…」
お…!? あの余裕綽々だったミミックが…!? 功を奏し――。
「ほら、今口寄せした子達って、誰でも口寄せ契約できるように学校で世話してる子達でしょ?」
「…? そうでゴザルが……」
「そよね~。知ってるかもだけど、その子達って下位ミミックから忍び技指南を受けてるの。だからその分……」
「……拙者よりも忍び技を見切れると言いたいでゴザルか!?」
「まあ~…そゆこと☆」
結局拙者を馬鹿にしてきただけでゴザルッ! は…ハッ! 別にそれで構わないでゴザルとも! うん! ダサ技に関することは手下にやらせ、拙者は手を煩わせない――そういうことでゴザルから!
と、ともあれこの数であれば探し出せるはずでゴザル! 総掛かりでゴザルッ!
「――見つかったでゴザルか?」
「「ワゥン……」」
「使えないでゴザルな…!」
手分けして探せども、痕跡すら見つからないでゴザル。それでいて、拙者や忍犬達がうっかり遠くへ行きかけると警告の声が聞こえてくるでゴザルし……。
そもそもその警告自体が嘘ということは……いや、あの彼女のこと、それは無いでゴザルな。うぅむ…なら何処に……。あと探していないのは――。
「「「ヴヴルル……」」」
む? 忍犬の何匹かが、滝から少し離れた池の周りをうろうろしているでゴザル。しかしそこは先程拙者も念入りに確認した場所。あと隠れられるのは精々、水の中ぐらいで……ハッ!?
「そうでゴザル!!!」
地を蹴り、すぐさま池へと向かうでゴザル! フッ、拙者としたことが。水の中に潜むは忍者の常套手段でゴザルな。なにせ拙者には必要のない技でゴザルから、すっかり忘れていたでゴザル。
そして……フッフフ…あるでゴザル! よく見たら明らかにおかしい、空気を吸うために立っている節抜きの竹が! これはもう間違いないでゴザル!
さぁて、どうしてやるでゴザルか。拙者を散々からかった罪は重いでゴザルよ? まずは王道に、この竹の中へと何かを注いで……!
……いや、悪戯なんてしている場合ではないでゴザルな。ミミックが出てくる前に速戦即決で――
「う~ん。冷静になれたのは評価できるけど、さっきの教訓はまるで活きないのね。お姉さんちょっと悲しい…」
――っ! な、何を!? 今のミミックの声……先程までとは違い、すぐそばから聞こえたような…? いや、節抜き竹の下からではなく…同じく池の中に聳える岩から……?
そこへ目を移してみると、その岩には亀が五匹乗ったり泳いだりしているでゴザル……ん? あの亀達、なんか目元に鉢巻きつけてないでゴザルか? 青いの、赤いの、紫の、橙の……それで残りの一匹はそもそも甲羅しか見え――
「カワバンガっ!」
「なぁあああっ!?!?!!?」
こ、甲羅状態だった亀からミミックが飛び出してきたでゴザルぅ!? あぅっ!!
「も~。さっき教えたでしょ? 『ミスリードを誘う』のも忍び技の基本だって! いくらティーンエイジとはいえ、学ばなさすぎ~」
拙者を突き飛ばし、池の縁へと着地するミミック…! その手には、上がパカリと開いた作り物の亀の甲羅が…! そんな隠れ場所わかるかでゴザル……! ……けど!
「好機でゴザル! かかれッ!」
「「「「「ワォフッ!!」」」」」
出てきたのが運の尽き、忍犬達の一斉攻撃でゴザル! 一撃も食らわないなぞ、不可能で――!
「皆ごめんね~。えいっ! やーっ! とっ! どーんっ!」
「「「「「キャンッ…!」」」」」
不可能で……えぇ……。ミミック、箱から次々と武器を取り出して…二刀流したり、釵を投げたり、棒術で薙ぎ払ったり、ヌンチャクで弾き飛ばしたりと、忍犬達を全て打ちのめし、口寄せを解除させたでゴザル…。
「さ、お次は何処でしょ~!」
そしてまたまた消えたでゴザル……っ! くっ…! しかし、糸口は見えたでゴザル! 回復してきた忍術の源を大きく消費して!
「『超大量・口寄せの術』ッ!」
「「「「「「「「「「ワォゥッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「グルゥッ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「キャフン!」」」」」」」」」」
先程よりも多く多く多く、忍犬達を召喚するでゴザル! フフフッ…! 拙者は忘れていないでゴザル。さっき、池の周りに忍犬が集ったことを!
やはりミミックの言った通り、こいつらは拙者よりも捜索に長けているでゴザル! それを認めるのは癪でゴザルが……出来る忍者は手下を上手く扱うものでゴザルからな!
「あら~学んだじゃない! かなり追い詰められちゃった~!」
フッ、何処かで余裕ぶれるのも今の内でゴザル! この領域全てを埋め尽くすほどの忍犬達を使って、すぐに見つけ出してや――
「――だからお姉さんも、『仲間を呼んだ▼』しちゃおっかな~?」
「……は?」
な、なんて言ったでゴザル…? な、仲間って……。
「そ~ね~ここだし~。やっぱり水のように優しく、花のように劇しくいっちゃいましょ! 『口寄せの術』っ!」
なっ!? み、ミミックも忍術を使えるでゴザルか!!? そして忍犬達の前にボゥンと現れたのは……王冠のような角を持ち、人を容易く丸呑みできる口を持つ巨蛇!? こ、これは…バ……!
「さあアツく踊っちゃえ! バジリスクタイム~ぅ!」
やっぱりバジリスクでゴザルぅ!? に、忍犬達! なんとかするでゴザル!!
「「「「「ガルルァッ!」」」」」」
「シャアアアアアアアアアアアッ!」
拙者達の忍犬とミミックのバジリスクで大乱闘が始まったでゴザル…! 数は拙者の方が有利でゴザルが、相手は石化の毒を振りまく蛇の王。簡単には決着はつかないでゴザルな…!
ならば拙者が加わるべきでゴザルが――バジリスクを狙おうにも忍犬達が邪魔でゴザルし、そもそも今の大量口寄せで忍術の源がまた尽きかけているでゴザル…!
大体、ミミックが口寄せの術を…忍術を使えるなんて考えていなかったでゴザルって危なぁっ!?
「シャアアッ!」
「キャウンッ!?」
に、忍犬が跳ね飛ばされてきたでゴザル…!! ここでこのまま成り行きを見ていたら間違いなく巻き込まれてしまうでゴザル! 距離を取らなければ……!
しかし周囲は拙者の忍犬で足の踏み場もないほど。唯一空いているのは水の張っている場所だけ。濡れるのは嫌でゴザルがやむを得ぬでゴザル。水渡りの忍術ぐらいならばまだ――――…ハっ!!
待つでゴザル……! そう……今唯一空いているのは、水の張っている場所だけ。それはあのミミックにとっても同じことでゴザル!
いや寧ろ、一撃も食らわないようにしているミミックがあの大暴れの中や傍にいる訳が無いのでゴザル! ならば…間違いなく、彼女は水の中に隠れているでゴザル!!
そうと決まればじっくり探し出してやるでゴザル。さぁ何処でゴザルか? 池の中は…いないでゴザルな。節抜き竹を引っこ抜いても、手裏剣を投げ込んでも何も無いでゴザル。
ならば次は川、範囲の端から徹底的に探っていくでゴザル! 回復しだした忍術の源をやりくりし、感知の術も発動するでゴザル。まああのミミック相手では大した効果は見込めないでゴザルが、魚の動きが見えるだけでも良しとするでゴザル。
――うむ……うむ……むっ!? あれは!?…なんだ、ただの蟹でゴザル。動いているから違うでゴザルな。 むっ、あっちのは!?…誰かが修行中に壊した水蜘蛛でゴザルか。 むむっ!あれは千両箱!……ではゴザルが、長年沈み朽ちかけの空箱でゴザル。いや何故こんなところに?
うぅむむむ……。念入りに探しているでゴザルが、やはり痕跡すら見つからないでゴザル。そうこうしているうちに滝の前まで来たでゴザル。探し直しでゴザルな。というかここまで来るとそもそも水の中かも怪しいでゴザル。
なら次は忍犬達を使いたいところでゴザルが……まだ戦っているでゴザル。まあ丁度いいでゴザル。滝を背にしていればミミックの攻撃が来るのは前方からのみ。このまま忍術の源回復がてら忍犬達の働きっぷりを観戦するでゴザ――
「震える~刃で~貫いて~♪」
「ルッ…!?」
や…刃が……拙者の身体を貫いて……はいないでゴザルが、明らかに刃物の類が、背中にチクリと…! そ、そんなまさか……後ろは滝だったはずでぐえっ?! う、後ろへ引き寄せられて!?
「ここでインストラクション。意外さを 『そんなまさか』を 利用すべし――。あ、ちょっと字余りしちゃった♪ ふーっ♪」
ふぃあっ!? 耳元でミミックの声!? なっ……えっ?! 耳横にミミックの顔が!? というよりここ、滝の中では!?
「こんな風に隠れてました~☆」
はぁっ?! ミミック、滝裏の岩壁中途へ箱底を器用に引っかけ身を斜めにして、拙者の肩に腕を置く形になっているでゴザル! しかもそれで箱の蓋が傘代わりとなって…! ……いやどういう隠れ方でゴザルか!?
「まさか滝の中なんかにはいないだろう―。まさか亀になんか扮してはいないだろう―。まさか自分の座っている木陰のお尻の下なんかにいる訳ないだろう――。相手の『そんなまさか』は油断そのもの。だから利用し潜めば、この通りよ?」
せめて滝裏は確認しなくちゃ、お宝があるかもしれないんだから~! と付け加えるミミック…! ぐっ…また利いた風に……! そんな態度ばかりで、いい加減拙者の堪忍袋の緒も――!
「でも、惜しいとこまでいってて凄いわ! だって水の中って気づいたでしょ? 普通なら『そんなまさか』な場所なんだから! 良い子良い子♪」
「ちょっ!? なっ!? あ、頭を撫でるなでゴザル!! だいたいそれは忍者なら…!」
「うんうん、『忍者なら』ね。うふふっ! そんな感じそんな感じ! この調子でそんな考え方をちょっとずつ広げていきましょ~ね!」
「な、撫でまくるのを止めるでゴザル!! 拙者をなんだと…! こ、このっ!」
くっ! 払おうとしても全部躱されるでゴザル! これも一撃当たったらの判定にしなくていいでゴザル! あぁもうしつこいでゴザ――
「「「「「ワォーンッ!!」」」」」
「あら! えいっ♪」
「うわっ!?」
きゅ、急に押し出すなでゴザル!! って、今聞こえたのは忍犬達の……おぉ!
「「「「「ワフゥッ!」」」」」
「シャウウゥゥン……」
滝の中から出ると、そこにいたのは勝鬨を上げる忍犬達と目を回し倒れているバジリスク! 大分数を減らしたみたいでゴザルが…勝ったでゴザル! ハッ! どうでゴザルか!
「よく頑張ってくれたわね~。お姉さん助かっちゃった、ありがとう!」
――む、いつの間にかミミックがバジリスクの元へ行き労っているでゴザル。そして口寄せを解除し、臨戦態勢の忍犬達を見渡し……。
「確変終了ね! 戦術的撤退! 逃っげるでごっざる~♪」
「あっ!? 待つでゴザル! 忍犬達、追うでゴザルっ!!!」
「「「「「バフゥッ!」」」」」
「ふぅ…ふぅ……フッフフ……! もう逃げられないでゴザルぞ!」
「あちゃー、囲まれちゃったわねぇ」
急に遁走を始めたミミックを追いかけ、とうとう捕らえたでゴザル! 忍犬の何匹かが気を利かせ回り込み、今やミミックは包囲されたでゴザル!
しかもこの場所! 木も植物も岩もほとんどない荒れ地でゴザル! ここであれば先程までの罠や潜伏は使えないでゴザル。拙者の有利な領域でゴザル!
「大人しく一撃加えさせるでゴザル! 散々弄んだツケ、ここで払うでゴザル!」
「あらツケなんて! いっつもしっかり払ってくれるし、お財布忘れた時ですら全速力で戻ってきてお支払いしてくれるのに?」
「…普段の話は今どうでもいいでゴザルッ!! なんでそこで定食屋に戻るでゴザルか!!」
くっ…! ペースを乱されるでゴザル…! しかし折角有利になったでゴザル、なんとしてもここで決めなければ! また倒れるかもしれないでゴザルが、全力の忍術も合わせて……!
「そうね~。この数相手だとお姉さん厳しいし、やっぱりもう一回忍術使っちゃおうかしら!」
――む! それは……願ってもないことでゴザル! 忍術は拙者の得意分野、誰にも負けない自信があるでゴザル! ここで忍術勝負に持ち込めば、更にこちらが有利になるかもしれないでゴザル!
それに先程ミミックが使った口寄せの術、結局一体だけで終わったでゴザル。その程度であれば、未だ忍術の源が回復しきっていない身でも問題ないでゴザルな!
「じゃあいくわよ~! あーしてこーして…!」
早速印を結び出すミミック。フッ、なんでゴザルかあの手の動きは。拙者とは比べ物にならないぐらいに不慣れでゴザル! それでどんな忍術を放つか、見物してやるでゴザル!
「『くも隠れの術』っ!」
早速発動したでゴザルな! しかし結局隠れる系の忍術とは。やれやれ、お里が知れるというも…の……
「……は?」
な、なんでゴザルか…? これは一体……? えっ…はっ…? はあ……?
いや、ミミックの忍術に目を見張っている訳ではないでゴザル。むしろその逆、目を疑っているのでゴザルが…………なにこれ。
ドロンッという煙と共に拙者の前に現れたのは、三つの……え、綿…で良いでゴザルかこれ? 屈んだ人が入れそうなぐらいの大きさな綿が……ポツンと。
いやさっきのミミックの様子からこれはきっと雲。……雲? えっ、これが雲でゴザルか? 真面目に言ってるでゴザルかこれ?
「さ~! お姉さんは何処にいるか、見切れるかしら~!?」
……やはり場所はわからないでゴザルが、ミミックの自信満々な声が。いや…うん……うむ……えぇと。
「イヤーッ!」
とりあえず光手裏剣を大量生成し、それを全て目の前の雲もどきに投げ込むでゴザル。更に――。
「かかれでゴザル!」
「「「「「ヴォフッ!!」」」」」
忍犬達による一斉攻撃でゴザル! あぁ、哀れ雲もどきは一瞬でグチャグチャに……プッ! プフフッハハハハハッ!!
なんだ、この程度でゴザルか! あれだけ五月蠅かったミミックが、拙者有利になればこの通りとは! 全く無惨なものでゴザルなぁ!
それになんでゴザルかあの忍術! 赤ちゃんぐらいでゴザルぞ、あんな低クオリティの忍術で許されるのは! 大体、なにが雲隠れの術でゴザルか! こんな荒れ地でそんなもの使ってもーー……ッ!?
「うふふっ、自分の得意分野だから調子乗っちゃった? キミの警戒心は赤ちゃん未満でちゅね~」
く、首にクナイが……!? そ、そんな…!? 何処に……!
「足元足元~!」
っ! 確かにクナイに繋がった触手は、拙者の足元から…って!?
「蜘蛛!?」
で、デカい蜘蛛が地面にいるでゴザル!? ――って、まさか…!?
―――パカッ!
「わかりやすいようにこの荒れ地に誘導したのに…ちょっとは気づいてよ~」
さっきの亀みたいに、作り物らしき蜘蛛が開いてミミックが出てきたでゴザル! じゃ、じゃああの雲は!?
「ん~? 確かに『くも隠れ』とは言ったけど…『雲』とは言ってないわよ?」
「そんなのわかるかでゴザルッ!!」
「いや……でもあの雲、明らかにおかしいでしょうよ。せめてもう少し警戒してくれるかと思ってたんだけど……ねぇ」
ぐっ…! 冷ややかな目でこちらを見て来て…! しかし良いのでゴザルか? そこは拙者と雲の間。つまり…忍犬達に背中を曝しているのでゴザル! 絶好の機――あっ……!?
「「「「「フスゥ……フスゥ……」」」」」
「なんで忍犬達が寝てるでゴザルか!?」
「だってあの雲には睡眠香を染み込ませてあるもの。忍犬を飛び掛からせると予想してね!」
そして予想通りになっちゃった! と笑うミミック…! おのれ……しかしまだ忍犬は残っているでゴザル! 総員、かかるでゴザル!
「「「「「ガルゥ!!!」」」」」
「『変わり身の術』~!」
また逃げの忍術でゴザルか! ミミックは丸太に替わり、忍犬達はそこに食いつかされたでゴザル。だが今回は油断しないでゴザル!
「変わり身の術はそう遠くにはいけないでゴザル、全員で周囲を探すでゴザル!」
「「「「「ワウッ!!!!!」」」」」
忍犬達にそう命じ、自分もそれに加わるでゴザル! まずは自分の足元や周囲から、それに頭の上とかもしっかり確認しなけれ――
「どーんっ!」
「ばぐはぁっ!?」
な、ナンデェ!? ミミックの変わり身丸太が勢いよく飛んできたでゴザルゥッ!?!?
―――カパッ!
「一匹ぐらいは護衛につけとくべきだったわね~!」
ま、丸太が開いて中からミミックが!? そんなの無しでゴザル!!?
「って、丸太には忍犬が攻撃を加えたでゴザル! なら合格で――!!」
「へ~。壁や盾に攻撃して、中の人に当てたって言えるんだ~?」
「いやそれは……。でもミミックでゴザルから…!」
「ならせめてお姉さんの箱に当てないと! 攻撃を受けるための丸太に当ててもねぇ~」
「へ、屁理屈でゴザルぞ! 大体、忍犬の歯が貫通してたら……!」
「してたらオッケーだったわ! でも残念ながらね~。確認しとく? ほれっ!」
「うわっ!? な、なにも見えないでゴザル!?!?」
「とりゃりゃりゃーっ!」
「何して……あぁっ!? 忍犬達が!?」
被せられた丸太を外した時には、戻ってきた忍犬達が全滅させられていたでゴザル…! 見えてない内に卑怯なことをッ!
「さ、まだまだお姉さんの忍術見せてあげるわよ~! 色々頑張ってね!」
それでいてまだまだやる気でゴザル! あんな稚拙な忍術でよくも…よくもっ!
「拙者を舐めるなでゴザルッ!! 忍術の何たるか、見せてやるでゴザル!!!」
「――へぇ……へぇ……へぇぇえぇ…………」
「もしもーし? そろそろ起きてー? まだ魔力切れの症状収まらないのー?」
……拙者が地面で大の字になっているところを、ミミックはつんつん突いてくるでゴザル…。こ、ここで一撃を……無理でゴザル……。
「それにしても、忍犬とか沢山出したわね~。ちくわ大好きな子とかヘムへムって鳴く子もいたわね~」
……その全てを口寄せする端から倒してのけたのは誰でゴザルか…。
「あと周り、元々荒れ地だったのが更に荒れたわね! 至る所に火とか水とか雷とか土とか風とかが残っちゃってまあ!」
……その全てをひょいひょいと躱して無効化したのは誰でゴザルか…。
「だけど結局、お姉さんの忍術は一つも見切れなかったわね~。頑張ったけどね~」
……その全てを……そう、その、ミミックが使った忍術は――
「――なんでゴザルかあれはぁっ!?」
勢いよく起き上がり、抗議するでゴザル! ……微かな力を振り絞って光手裏剣を投げてみたでゴザルが…躱されたでゴザル……。
「良いアンブッシュじゃない! それで、あれって?」
「全部でゴザル! そっちが使って来た忍術全部! なんなんでゴザルかあれ!? あんなの忍術とは認めないでゴザルッ!!」
「え~? 『霧隠れの術』とか、『岩隠れの術』とか、『木の葉隠れの術』とかも?」
「そうでゴザル! 霧と言ってもただ拙者の身体を覆う程度の量だったでゴザルし、岩と言ってもただ大きい張りぼてを幾つも転がしてきただけでゴザルし…!」
「でもその霧へお姉さんが入ってチクこちょしたのには抵抗できてなかったし、岩張りぼてはそれに紛れて転がってきたお姉さんに足元掬われて綺麗にスッ転んでたじゃな~い! それに木の葉隠れのなんて、勝手に慌てて木の葉で足を滑らせ自滅……」
「い、言うなでゴザルッ! あれは何が来るか警戒し過ぎたが故でゴザルッ! そ、それ以外の忍術もでゴザル! 攻撃忍術とか特に、あれでは手裏剣を投げるのとほぼ変わらないでゴザル!」
「そうね~。火球も水刃も実際手裏剣サイズだったし、土や風は目つぶしぐらいにしかならなかったし、雷なんて静電気みたいな感じだったでしょ?」
「その通りでゴザル! 拙者の火球や水刃はその何十倍もあったでゴザルし、土や風は地形を容易く変え、雷は龍を象るほどだったゴザル! あれこそが忍術らしい忍術で――」
「で? そのキミが言う『忍術らしい忍術』はお姉さんに…たった一人の標的に当たった?」
「んぐっ……!」
急な指摘に、拙者は黙りこくるしかなくなるでゴザル……。それは……一撃当てられたら合格となるでゴザル故に……。
「逆に、お姉さんが放った『忍術らしくない忍術』はどれぐらいキミに当たった? ほぼ全部じゃない?」
「んぐぐうっ……」
た、畳みかけてくるでゴザル…! それは言葉のクナイでゴザルぞ…! と、ミミックは周囲を仰ぎ――。
「あれもこれも凄い忍術だったわ。けどどう? そのどれもが当たらなかった上に、大技だったせいで魔力切れになっちゃってさ」
そのままゆったりと拙者の周りを歩み始めたでゴザル…! くぅっ…! 仕掛けたいでゴザルが…力が碌に入らないでゴザル……!
「半面、お姉さんの忍術はキミ曰くクオリティが酷かった分、魔力消費も大したことなく済んでる。なのにお姉さんは何度キミを仕留められたことか」
そんな拙者に見せつけるように、ミミックは先程も放ってきた低クオリティの忍術を出しては消し出しては消しを繰り返すでゴザル…! そうして拙者の真正面でピタリと止まり――。
「もはや言う必要もないと思うけど、敢えて言いましょう。それは全て、忍術と忍び技を併用していたから。忍術だけで挑むのではなく忍び技を都度挟み、時には忍術の方を搦め手として使うことで、ただ大技を放つよりも高い戦果を得られるのよ?」
いい加減わかった? と言いたげな顔でまた説教をしてきたでゴザル! 更に、ピッと指をさしてきて……!
「そしてキミに今日最後の指南! 『相手のあらゆる行動を予測し警戒し続け、常に余力を残しておく』こと!」
「余力を……」
「これは戦う者にとっての絶対条件。相手にどれだけ煽られたり驚かされたり調子に乗せられたりしても、どれだけ弱い相手でも有利でも隙を見つけても、そんなになるまで躍起になっちゃいけないわ!」
フ、フンッ、そんなの拙者の勝手でゴザル! 余計なお世話でゴザ……ん? 最後の、指南? それはどういう――。
「さ、大分教えたところで……そろそろ実践に移りましょうか!」
本当にどういうことでゴザル!? 実践!? じゃあ今までのは……!?
「『口寄せの術』っ!」
「ゲコッ!」
急に大ガマを口寄せしたでゴザル!? しかしそれと同時にミミックの姿が消え――。
「ゲコゲコッ!」
「うわっ!? 何するでゴザルっ!?」
大ガマの舌が拙者を巻き捕まえたでゴザル!! こ、このっ……!
「はいは~い、暴れない暴れな~い」
なあっ!? お、大ガマの口から更に幾本もの舌が!? 拙者の手や足に絡みついて!? き、キモイでゴザルぅッ!?
「ま、休憩タイムとでも思っといて! んじゃお願いね!」
「ゲコォッ!」
って、あっ、ミミックが大ガマの口の中に…! 成程、これは大ガマの舌ではなく、ミミックの触手で……ちょっ、何処行くでゴザルッ!? 何処に向かってるでゴザルッ!?!?
拙者、何処に連れていかれるのでゴザルゥゥウウゥッッッッ!?!?!?
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