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第10話
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「あっ、いけない!ハンカチを忘れてきたわ」
暁美さんは、楽屋に戻ろうとしたその時だった。
ドン!
向こうから走ってきた人物にぶつかられ
「イタタ」
だけど、その人物は走り去ってしまった。
「ちょっと!どこの誰かわからないけど、ぶつかっておいて謝らない気?」
と、叫んだがその人物は既にいなかった。
そして楽屋では?
《どうしたの?美月ちゃん・・・》
何やらトラブルが起きたようで?
「《先生!バイオリンがないの》」
と、伝えている所へ暁美さんが戻ってきて、榊さんに気づき血相を変える。
「うそ!どうしてなの?」
彼は、暁美さんにまだ気づいておらず、美月ちゃんの言葉を聞いている。
「美月ちゃんのだけ無くなったってこと?》」
そこには優子もいて・・・
「どうしたの?もう始まる時間よ?」
暁美が思わず叫ぶ。
「暁美・・・」
「あのね、大変なの」
と、優子さんが言い終わる前に暁美さんは榊さんに近づき・・・
「なんであなたがここにいるの?」
《・・・・・?》
手話も使わず話されて何を言ってるかはわからないが明らかに彼女は怒っている。
「暁美?聞いて・・・・」
だが、暁美さんは聞く耳を持たず・・・
「二度と美月に近づかないでって言ったじゃない」
とまで言い放った。
それに榊さんは・・・・
《今はそれどころじゃありません》
と、手話で返した。
「えっ?Σ(゚д゚;)手話?」
それに少し気が動転している。
《実は今、美月ちゃんの大事なバイオリンが盗まれてしまったのです》
「いい加減なこと言わないで」
「《先生・・・・》」
美月ちゃんは、榊さんの袖を引っ張り泣き始めた。
「《大丈夫。先生のを使って?》」
と、優しく言った。
「ねぇ?人の話聞いてる?」
尚も榊さんに対して冷たい暁美さん。
《すみませんが、この演奏会の主催者はぼくです。僕が責任をとりますから。あなたは黙っていてください》
と、暁美さんに手話で強く返した。
その頃客席では・・・・
「遅いなぁ、一樹のやつ」
「大変!正也さん!!一樹さんが・・・・」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
一樹さんが倒れたという連絡が仲間に入っていた。
《犯人は僕が必ず追います》
「犯人って・・・心当たりあるの?」
《ありません。不審者が侵入したなんて・・・》
「ちょっと待って・・・まさかさっきの男・・・」
《不審者を見たんですか?》
「でも・・・違うかもしれないし・・・」
「《先生・・・》」
《時間だね。大丈夫だよ、美月ちゃん。そのバイオリンは美月ちゃんに合わせてあるから》
そう言って頭を優しく撫でると、楽屋を出ていこうとして・・・
「まさか追いかけるの?」
《・・・・・・》
一瞬止まったが、かれは楽屋を出ていった。
「暁美、始まるわ。席につこうよ。」
「ねぇ?なんで?なんで優子はあんなやつの・・・・」
「盗まれたバイオリンはね、優香の形見なの」
「えっ・・・・」
「美月ちゃんに使って欲しかったから・・・・」
「・・・・・」
「彼はその事を知ってるから。誰よりも生徒の一人一人を大切にしてくれているから・・・・」
「・・・・」
「習ってるバイオリンの先生の名前を出したら辞めさせられると思ったから言わなかったの」
ザァーザァー
外は雨がまだ降っていた。
榊さんは、少し呆然としていた。
「大丈夫かな?一樹さん・・・・」
東さんは心配そうに言った。
「ただの風邪らしいよ?熱あるのに、出勤したらしくてね」
正也さんも心配そうだ。
「こちらで看病するから心配ないですって、一樹の同僚の衛さんから連絡あったから゙゙・きっと大丈夫だと思う」
「それなら良かった。バイオリン演奏会、楽しみですね!」
「そうだな。榊さんの教室の子供たちが演奏するらしいよ」
「Σ(゚д゚;)えっ?そうなんですか?それならもしかして」
「そう、子供たちも耳が不自由な子で、音が全部感じられない子も中にはいるんだってさ。榊さん自身も全く聞こえないのに・・・時々あの人のことすげー強いひとだなって感じるんだ」
「・・・・・・」
パチパチパチ
拍手が鳴り響いている。
演奏が、始まろうとしていた。
そして・・・・
僕は熱でうなされていた。
「待てよ、莉佐・・・・」
莉佐に追いつきあいつの腕を掴もうとするが・・・彼女はどんどん遠くなっていった。
掴もうとしても掴めない。
「待てよ!行くなよ!」
僕がそう叫んだので、
「Σ(゚д゚;)えっ?」
そばにいた莉佐はびっくりしている
「寝言?」
莉佐は僕の汗をふこうとしていて・・・
「・・・くな・・・」
腕を掴まれ・・・
「行くなよ!!」
僕は莉佐を抱きしめていた。
もちろん起きてはいない。
「Σ(゚д゚;)えっ?」
パニくる莉佐。
と、そこへ来たのは・・・・
「あ゙っ・・」
「ま、衛くん・・・・」
「お邪魔かな?」
「お、お邪魔じゃないです!」
僕に抱きしめられているところを見たのは衛で・・・・
「・・・・・ケホケホ・・・・」
苦しそうにする僕をすぐさま寝させ・・・・
「しっかし心配したとおりになって(。´-д-)」
「えっ?」
「こいつさ、莉佐ちゃんは呼ぶなって言ったんだよ?心配しすぎて、仕事が手につかなくなるからって・・」
「・・・・・・」
「もしかしたら、こいつの気持ちの変化でもあったのかなって( ̄▽ ̄)ニヤリッ」
「・・・・!」
「さっき、抱きしめられただろ?」
「見られたのが衛くんでよかった・・・」
まだ、赤い顔の莉佐ちゃん。
「わたし、悟さんに助けを求めちゃって」
「Σ(゚д゚;)えっ?そうなの?」
「助けて悟さん!」
「君はそんなに彼が好き?」
「・・・・だって、一樹ってば急にあんなこと・・・」
「あんなことって?」
「悟さんと付き合うのかって・・・・付き合ってるのかって聞いてくるし・・・・」
「ふーん。こいつがねぇ・・(ってことは、少しは自覚でもしたか?)」
「私まだ仕事が残ってるの。あと、よろしくね」
「任せといて!」
と答える衛。
その後その場を去った莉佐。
僕は尚も、夢の中では誰かを追い続けていた。
追いかけても追いかけても追いつかないでいて・・・
追いかけているそれが誰なのか、わからないんだ。
だって、その人は1度も振り返ってはくれなかったからだ。
その頃・・・・
《・・・・・・》
「榊さん・・・大丈夫ですか?」
追いかけてきてくれたのは優子さんで、傘を挿してくれた。
《やはりダメですね僕は・・・》
「・・・・」
《音のない世界を時々憎く思うんです。
探し出すことも出来ないなんて》
「・・・・・」
優子さんは何も言えずにいて・・・
《戻りましょうか・・・。子供たちが心配しますよね》
と寂しそうに笑い、行こうとした榊さんを・・・・優子さんは後ろから抱きしめ・・・・
《優子さん?濡れますよ?》
その様子をあとから追いかけてきた暁美さんは見てしまったのである。
「《少しだけこのまま・・・・》」
暁美さんは、なぜかそこからいなくなっていた。
戻ったふたりは・・・・
「バイオリンは見つかりましたか?」
スタッフに心配された。
《いいえ》
首を振った榊さん。
「・・・・・」
「《先生!》」
発表会を終えた美月ちゃんが、榊さんのところへ駆けつけた。
《ごめんね、美月ちゃん。バイオリン見つけてあげられなくて》
榊さんは、美月ちゃんの手を握り謝った。
「《ううん!美月ね、頑張ったよ!すっごく楽しかったよ!》
《それは良かった》
「美月・・・」
いつの間にか楽屋にいる暁美さん。
《・・・・・ 》
「・・・・・」
「バイオリンのこと、ごめんなさい」
と、謝ったから
《いえ、見つけたら必ず戻しますから。今日はお疲れ様でした》
「《先生!またね!》」
美月ちゃんは笑顔に対して、暁美さんは1度も目を合わせてはくれなかった。
「《榊さん、動揺していたとはいえ、あんなことしてごめんなさい・・・》」
《いえ、優子さんこそ風邪ひかないでくださいね》
「《榊さん・・・それ、優しすぎます。榊さんの方が濡れていたのに・・・》」
《今日は、本当にありがとうございます》
「《こちらこそ、楽しかったわ。また、誘ってくださいね》」
そう言って別れた。
「《榊さん!!》」
春日部さんと、東さんが、榊さんに話しかけた。
《2人とも来てくれたんですね。ありがとうございます》
「《なぁ?今の人って・・・》」
「《優子さんですか?春日部さんは会ってますよね?》」
「《榊さんってモテるんですね》」
「《えー?僕がですか?まさか・・・・》」
「《だって、この前車椅子の女の子にナンパされてたじゃん。ずっと聞きたかったんだよねー》」
《ま、正也さんにまで見られていたんですね💦》
「(赤くなった・・・)」
「《で?どんな感じなの?》」
肩を組み真相を聞き出そうとしている。
《えーっと・・・・》
「正也さん、榊さん困ってるじゃん」
「《あれ?榊さんなんか冷たいよ?って言うか濡れてる・・・えっ?Σ(゚д゚;)なんで?》」
《実はさっきまで雨の中探し物をしていたんで・・・・》
「《えっ?雨の中をなんでまた》」
《ある人の大事な形見を・・・・・》
「・・・・・」
また、悲しそうに言う榊さんに何も言えずにいるふたりだった。
そしてその頃・・・
「雨、やまねぇな」
衛がそう呟いた時だった。
「衛!今何時?」
急に一樹が起きたので、
「うわっ!急に起きるなよ。びっくりするだろ?」
「えっ?Σ(゚д゚;)あれ?ここまだ、会社?」
「そう、まだ、会社(今の寝言なのか?)」
熱でまだ朦朧としている彼。
「ケホケホ・・・えっと、なんで衛が?たしか、早退して・・・えーっと・・・・・」
混乱している。
(どうしよっかなぁー)
「あっ!莉佐は?僕は莉佐に何かしたか?」
少しだけ記憶が甦ってきたのか?
(どうしようかなぁーこれ、言って方がいいのかな?
かなり面白いんだけど・・・(笑))
衛がそんなことを思ってるなんて思わず・・・・
「莉佐に何か言った気がするんだけど・・・・」
「そうだなぁー【行くなぁ!】って言ってたかな(笑)」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
「抱きしめて、【行くなぁ】って・・・」
(正しくはそういっって抱きしめるところを見ただけだけどな(笑))
「・・・・・・」
「なぁんてな(笑)お前さぁ、莉佐ちゃんの目の前で倒れたらしいんだよ」
「・・・・えっ・・・」
「で莉佐ちゃんは、通りがかった悟さんに助けを求めて・・・、こっちに連絡あってここに運ばれてきたって訳。まぁ、会社内にいたから良かったのは良かったな」
「・・・・そうだったんだ・・・・・」
「だいぶ顔色良くなったな。送ってやるよ。俺も帰るし・・・」
「・・・・・・・あのさ、本当に莉佐に何もしてないか?」
何故か赤くなる一樹。
大丈夫か?
面白くなった衛は
「そこは、莉佐ちゃん本人にお礼も兼ねて聞けば?」
「・・・・・・!」
尚も赤くなる一樹だった。
そして、
「そっか。それは良かった。あっ、衛さんから聞いたよ」
「えっ?Σ(゚д゚;)ちょっと待って・・・なんで衛が正也の携番知ってるんだよ!」
「さぁ、なんでだろうな」
「あ、あいつ俺の携帯・・・」
「違うよ」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
「聞いたのは、莉佐さんからだよ。」
「莉佐が?」
「お前が、発表会に行くこと知ってたんだな」
「・・・・・・」
「そんなわけで、俺、いまから運転するから。風邪お大事に」
「・・・・ありがとう。」
そして、電話を切って
「斎藤さん、具合いどうでした?」
「あんだけ喋れたら大丈夫みたいだな」
「くすっ、本当に」
《よかった》
こちらの3人は、春日部さんの車に乗り込もうとしていた。
「ねぇ?せっかくだから、夕飯でも食べに行きませんか?」
と、東さんは提案したが
「ごめん、俺は寄るところあるから」
「ううん、仕方ないよ。じゃあ、《榊さんは?夕飯行きませんか?》」
《・・・・・・》
「《大丈夫?疲れた?》」
」
《いいえ。ぼくもこのままかえります。すみません》
と、帰ろうとしたので
「《待って!送るよ、榊さん・・・・》」
《片付けがあるの思い出したので。みなさん、今日はわざわざありがとうございます》
「榊さん・・・」
《おやすみなさい》
そう言って送り出してくれた。
僕(東大地)は、心配だ。
榊さんのなかにある悲しみがいつか爆発するんじゃないかって・・・・・
そんな気がしてきてしまった。
「じゃあ、行くか」
と、送ってもらい・・・・
「東さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「あっ、東さん!」
「はい」
「またゆっくりみんなで食事しようよ。せっかく日本に帰ってきたんだしさ」
「だってら、あの小屋に行こうよ!あの小屋は壊されずに済んだし・・・・。1年に1度・・・じゃなくてこうやって毎日?いや、何回でもみんなと顔合わせられる場所にしようよ!!」
「そうだなぁ。考えとくよ。みんな、喜ぶと思う。じゃあな!」
「うん!おやすみなさい」
そう・・・僕らがこうやって寂しさや辛さや悲しみを乗り越えていけるのは、
仲間の声を聞いているから・・・・
仲間の顔を見ているから。
そう思うんだ。
暁美さんは、楽屋に戻ろうとしたその時だった。
ドン!
向こうから走ってきた人物にぶつかられ
「イタタ」
だけど、その人物は走り去ってしまった。
「ちょっと!どこの誰かわからないけど、ぶつかっておいて謝らない気?」
と、叫んだがその人物は既にいなかった。
そして楽屋では?
《どうしたの?美月ちゃん・・・》
何やらトラブルが起きたようで?
「《先生!バイオリンがないの》」
と、伝えている所へ暁美さんが戻ってきて、榊さんに気づき血相を変える。
「うそ!どうしてなの?」
彼は、暁美さんにまだ気づいておらず、美月ちゃんの言葉を聞いている。
「美月ちゃんのだけ無くなったってこと?》」
そこには優子もいて・・・
「どうしたの?もう始まる時間よ?」
暁美が思わず叫ぶ。
「暁美・・・」
「あのね、大変なの」
と、優子さんが言い終わる前に暁美さんは榊さんに近づき・・・
「なんであなたがここにいるの?」
《・・・・・?》
手話も使わず話されて何を言ってるかはわからないが明らかに彼女は怒っている。
「暁美?聞いて・・・・」
だが、暁美さんは聞く耳を持たず・・・
「二度と美月に近づかないでって言ったじゃない」
とまで言い放った。
それに榊さんは・・・・
《今はそれどころじゃありません》
と、手話で返した。
「えっ?Σ(゚д゚;)手話?」
それに少し気が動転している。
《実は今、美月ちゃんの大事なバイオリンが盗まれてしまったのです》
「いい加減なこと言わないで」
「《先生・・・・》」
美月ちゃんは、榊さんの袖を引っ張り泣き始めた。
「《大丈夫。先生のを使って?》」
と、優しく言った。
「ねぇ?人の話聞いてる?」
尚も榊さんに対して冷たい暁美さん。
《すみませんが、この演奏会の主催者はぼくです。僕が責任をとりますから。あなたは黙っていてください》
と、暁美さんに手話で強く返した。
その頃客席では・・・・
「遅いなぁ、一樹のやつ」
「大変!正也さん!!一樹さんが・・・・」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
一樹さんが倒れたという連絡が仲間に入っていた。
《犯人は僕が必ず追います》
「犯人って・・・心当たりあるの?」
《ありません。不審者が侵入したなんて・・・》
「ちょっと待って・・・まさかさっきの男・・・」
《不審者を見たんですか?》
「でも・・・違うかもしれないし・・・」
「《先生・・・》」
《時間だね。大丈夫だよ、美月ちゃん。そのバイオリンは美月ちゃんに合わせてあるから》
そう言って頭を優しく撫でると、楽屋を出ていこうとして・・・
「まさか追いかけるの?」
《・・・・・・》
一瞬止まったが、かれは楽屋を出ていった。
「暁美、始まるわ。席につこうよ。」
「ねぇ?なんで?なんで優子はあんなやつの・・・・」
「盗まれたバイオリンはね、優香の形見なの」
「えっ・・・・」
「美月ちゃんに使って欲しかったから・・・・」
「・・・・・」
「彼はその事を知ってるから。誰よりも生徒の一人一人を大切にしてくれているから・・・・」
「・・・・」
「習ってるバイオリンの先生の名前を出したら辞めさせられると思ったから言わなかったの」
ザァーザァー
外は雨がまだ降っていた。
榊さんは、少し呆然としていた。
「大丈夫かな?一樹さん・・・・」
東さんは心配そうに言った。
「ただの風邪らしいよ?熱あるのに、出勤したらしくてね」
正也さんも心配そうだ。
「こちらで看病するから心配ないですって、一樹の同僚の衛さんから連絡あったから゙゙・きっと大丈夫だと思う」
「それなら良かった。バイオリン演奏会、楽しみですね!」
「そうだな。榊さんの教室の子供たちが演奏するらしいよ」
「Σ(゚д゚;)えっ?そうなんですか?それならもしかして」
「そう、子供たちも耳が不自由な子で、音が全部感じられない子も中にはいるんだってさ。榊さん自身も全く聞こえないのに・・・時々あの人のことすげー強いひとだなって感じるんだ」
「・・・・・・」
パチパチパチ
拍手が鳴り響いている。
演奏が、始まろうとしていた。
そして・・・・
僕は熱でうなされていた。
「待てよ、莉佐・・・・」
莉佐に追いつきあいつの腕を掴もうとするが・・・彼女はどんどん遠くなっていった。
掴もうとしても掴めない。
「待てよ!行くなよ!」
僕がそう叫んだので、
「Σ(゚д゚;)えっ?」
そばにいた莉佐はびっくりしている
「寝言?」
莉佐は僕の汗をふこうとしていて・・・
「・・・くな・・・」
腕を掴まれ・・・
「行くなよ!!」
僕は莉佐を抱きしめていた。
もちろん起きてはいない。
「Σ(゚д゚;)えっ?」
パニくる莉佐。
と、そこへ来たのは・・・・
「あ゙っ・・」
「ま、衛くん・・・・」
「お邪魔かな?」
「お、お邪魔じゃないです!」
僕に抱きしめられているところを見たのは衛で・・・・
「・・・・・ケホケホ・・・・」
苦しそうにする僕をすぐさま寝させ・・・・
「しっかし心配したとおりになって(。´-д-)」
「えっ?」
「こいつさ、莉佐ちゃんは呼ぶなって言ったんだよ?心配しすぎて、仕事が手につかなくなるからって・・」
「・・・・・・」
「もしかしたら、こいつの気持ちの変化でもあったのかなって( ̄▽ ̄)ニヤリッ」
「・・・・!」
「さっき、抱きしめられただろ?」
「見られたのが衛くんでよかった・・・」
まだ、赤い顔の莉佐ちゃん。
「わたし、悟さんに助けを求めちゃって」
「Σ(゚д゚;)えっ?そうなの?」
「助けて悟さん!」
「君はそんなに彼が好き?」
「・・・・だって、一樹ってば急にあんなこと・・・」
「あんなことって?」
「悟さんと付き合うのかって・・・・付き合ってるのかって聞いてくるし・・・・」
「ふーん。こいつがねぇ・・(ってことは、少しは自覚でもしたか?)」
「私まだ仕事が残ってるの。あと、よろしくね」
「任せといて!」
と答える衛。
その後その場を去った莉佐。
僕は尚も、夢の中では誰かを追い続けていた。
追いかけても追いかけても追いつかないでいて・・・
追いかけているそれが誰なのか、わからないんだ。
だって、その人は1度も振り返ってはくれなかったからだ。
その頃・・・・
《・・・・・・》
「榊さん・・・大丈夫ですか?」
追いかけてきてくれたのは優子さんで、傘を挿してくれた。
《やはりダメですね僕は・・・》
「・・・・」
《音のない世界を時々憎く思うんです。
探し出すことも出来ないなんて》
「・・・・・」
優子さんは何も言えずにいて・・・
《戻りましょうか・・・。子供たちが心配しますよね》
と寂しそうに笑い、行こうとした榊さんを・・・・優子さんは後ろから抱きしめ・・・・
《優子さん?濡れますよ?》
その様子をあとから追いかけてきた暁美さんは見てしまったのである。
「《少しだけこのまま・・・・》」
暁美さんは、なぜかそこからいなくなっていた。
戻ったふたりは・・・・
「バイオリンは見つかりましたか?」
スタッフに心配された。
《いいえ》
首を振った榊さん。
「・・・・・」
「《先生!》」
発表会を終えた美月ちゃんが、榊さんのところへ駆けつけた。
《ごめんね、美月ちゃん。バイオリン見つけてあげられなくて》
榊さんは、美月ちゃんの手を握り謝った。
「《ううん!美月ね、頑張ったよ!すっごく楽しかったよ!》
《それは良かった》
「美月・・・」
いつの間にか楽屋にいる暁美さん。
《・・・・・ 》
「・・・・・」
「バイオリンのこと、ごめんなさい」
と、謝ったから
《いえ、見つけたら必ず戻しますから。今日はお疲れ様でした》
「《先生!またね!》」
美月ちゃんは笑顔に対して、暁美さんは1度も目を合わせてはくれなかった。
「《榊さん、動揺していたとはいえ、あんなことしてごめんなさい・・・》」
《いえ、優子さんこそ風邪ひかないでくださいね》
「《榊さん・・・それ、優しすぎます。榊さんの方が濡れていたのに・・・》」
《今日は、本当にありがとうございます》
「《こちらこそ、楽しかったわ。また、誘ってくださいね》」
そう言って別れた。
「《榊さん!!》」
春日部さんと、東さんが、榊さんに話しかけた。
《2人とも来てくれたんですね。ありがとうございます》
「《なぁ?今の人って・・・》」
「《優子さんですか?春日部さんは会ってますよね?》」
「《榊さんってモテるんですね》」
「《えー?僕がですか?まさか・・・・》」
「《だって、この前車椅子の女の子にナンパされてたじゃん。ずっと聞きたかったんだよねー》」
《ま、正也さんにまで見られていたんですね💦》
「(赤くなった・・・)」
「《で?どんな感じなの?》」
肩を組み真相を聞き出そうとしている。
《えーっと・・・・》
「正也さん、榊さん困ってるじゃん」
「《あれ?榊さんなんか冷たいよ?って言うか濡れてる・・・えっ?Σ(゚д゚;)なんで?》」
《実はさっきまで雨の中探し物をしていたんで・・・・》
「《えっ?雨の中をなんでまた》」
《ある人の大事な形見を・・・・・》
「・・・・・」
また、悲しそうに言う榊さんに何も言えずにいるふたりだった。
そしてその頃・・・
「雨、やまねぇな」
衛がそう呟いた時だった。
「衛!今何時?」
急に一樹が起きたので、
「うわっ!急に起きるなよ。びっくりするだろ?」
「えっ?Σ(゚д゚;)あれ?ここまだ、会社?」
「そう、まだ、会社(今の寝言なのか?)」
熱でまだ朦朧としている彼。
「ケホケホ・・・えっと、なんで衛が?たしか、早退して・・・えーっと・・・・・」
混乱している。
(どうしよっかなぁー)
「あっ!莉佐は?僕は莉佐に何かしたか?」
少しだけ記憶が甦ってきたのか?
(どうしようかなぁーこれ、言って方がいいのかな?
かなり面白いんだけど・・・(笑))
衛がそんなことを思ってるなんて思わず・・・・
「莉佐に何か言った気がするんだけど・・・・」
「そうだなぁー【行くなぁ!】って言ってたかな(笑)」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
「抱きしめて、【行くなぁ】って・・・」
(正しくはそういっって抱きしめるところを見ただけだけどな(笑))
「・・・・・・」
「なぁんてな(笑)お前さぁ、莉佐ちゃんの目の前で倒れたらしいんだよ」
「・・・・えっ・・・」
「で莉佐ちゃんは、通りがかった悟さんに助けを求めて・・・、こっちに連絡あってここに運ばれてきたって訳。まぁ、会社内にいたから良かったのは良かったな」
「・・・・そうだったんだ・・・・・」
「だいぶ顔色良くなったな。送ってやるよ。俺も帰るし・・・」
「・・・・・・・あのさ、本当に莉佐に何もしてないか?」
何故か赤くなる一樹。
大丈夫か?
面白くなった衛は
「そこは、莉佐ちゃん本人にお礼も兼ねて聞けば?」
「・・・・・・!」
尚も赤くなる一樹だった。
そして、
「そっか。それは良かった。あっ、衛さんから聞いたよ」
「えっ?Σ(゚д゚;)ちょっと待って・・・なんで衛が正也の携番知ってるんだよ!」
「さぁ、なんでだろうな」
「あ、あいつ俺の携帯・・・」
「違うよ」
「えっ?Σ(゚д゚;)」
「聞いたのは、莉佐さんからだよ。」
「莉佐が?」
「お前が、発表会に行くこと知ってたんだな」
「・・・・・・」
「そんなわけで、俺、いまから運転するから。風邪お大事に」
「・・・・ありがとう。」
そして、電話を切って
「斎藤さん、具合いどうでした?」
「あんだけ喋れたら大丈夫みたいだな」
「くすっ、本当に」
《よかった》
こちらの3人は、春日部さんの車に乗り込もうとしていた。
「ねぇ?せっかくだから、夕飯でも食べに行きませんか?」
と、東さんは提案したが
「ごめん、俺は寄るところあるから」
「ううん、仕方ないよ。じゃあ、《榊さんは?夕飯行きませんか?》」
《・・・・・・》
「《大丈夫?疲れた?》」
」
《いいえ。ぼくもこのままかえります。すみません》
と、帰ろうとしたので
「《待って!送るよ、榊さん・・・・》」
《片付けがあるの思い出したので。みなさん、今日はわざわざありがとうございます》
「榊さん・・・」
《おやすみなさい》
そう言って送り出してくれた。
僕(東大地)は、心配だ。
榊さんのなかにある悲しみがいつか爆発するんじゃないかって・・・・・
そんな気がしてきてしまった。
「じゃあ、行くか」
と、送ってもらい・・・・
「東さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「あっ、東さん!」
「はい」
「またゆっくりみんなで食事しようよ。せっかく日本に帰ってきたんだしさ」
「だってら、あの小屋に行こうよ!あの小屋は壊されずに済んだし・・・・。1年に1度・・・じゃなくてこうやって毎日?いや、何回でもみんなと顔合わせられる場所にしようよ!!」
「そうだなぁ。考えとくよ。みんな、喜ぶと思う。じゃあな!」
「うん!おやすみなさい」
そう・・・僕らがこうやって寂しさや辛さや悲しみを乗り越えていけるのは、
仲間の声を聞いているから・・・・
仲間の顔を見ているから。
そう思うんだ。
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夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
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