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第27話
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数日後・・・・
「いらっしゃいませ」
「正也兄ちゃん!こんにちは」
やってきたのは、宏人だ。
「宏人・・・。こんにちは、いらっしゃい」
「こんにちは」
「西田さん、なっちゃん。いらっしゃい。どうしたんですか?お揃いで」
「あの正也さん、今日はお願いがあって・・・。ほら、宏人・・・・」
「ん?なんだい?」
正也さんは、宏人の前にしゃがんだ。
そして
「えっ?宏人にバイトを?」
「無理・・・だよなぁー・・・」
「・・・・・」
「宏人?なんでバイトをしたいんだ?なにか理由があるんだろ?聞いてやるよ?」
「そ、それはね・・・えーっと」
宏人は、恥ずかしそうに答えた。
おっ?これはもしや恋でもしてるな?
「もしかして、好きな女の子でもいるの?」
と、聞いてみたりして・・・
「うん、そう!もうすぐその子のお誕生日で」
「へぇー(かわいいやつ。正直者は、嫌いじゃない)」
「誕生日会があるらしくて、招待されてるんだ。招待状も貰ってる」
「さすが、今どきの子供は違うねー。で?どうしたい?」
正也さんは、宏人の頭に手を置くと
「自分でお金、稼ぎたい」
「えっ?」
と、宏人の発言に驚く大人たち。
「これは驚いた。自分で稼いだお金でプレゼントを買うって言うのか?」
「うん、でもまだ早いかな・・・・?」
「あはは!うーん・・・大人顔負けの発想だな。まぁ、確かに早いけどー」
と、頭をポリポリ。
「だから、言ったじゃん」と、西田さんはちょっと呆れてる。
「でも、まぁいいよ?少しくらいならお手伝いさせてやるよ。俺たちは助かるからね」
「えっ?ホントに?」
「どう?稼いだお金で、手作りのプレゼントを作るのはどうかな?」
「うん!それいいかも!ねぇ?お兄ちゃんも手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「そうだな。手作りの方が、心こもっていて、いいよな?」
「よし、決まりだ」
「それとね、もうひとつのお願い聞いてくれる?」
「えっ?宏人・・・まだ、あるのか?」
「パパと、ママ!1日デート行ってらっしゃい」
と、にっこり。
「えっ?」
西田さんとなっちゃんは、何故か赤くなる(笑)
「なるほど。それは、いいね。」
「いや、でもそれは正也さんと和葉さんに悪いよ」
「構わないです。宏人くん、しっかりしてるし」
「ぼくは、大丈夫だよ!」
「宏人」
「😁」
「(笑)そうだな、たまには2人で出かけてきたら?」
「そう?ごめんね・・・」
「行ってらっしゃい!なっちゃん!西田さん」
「ふふっ、その呼び方、懐かしいわね。」
「なっちゃん・・・」
「そういえばまだ、教えてなかったっけ・・・」
「宏人にはあとで教えてやるよ。ママがなんで《なっちゃん》って呼ばれてるか」
「うん!」
「じゃあ、お願いします」
「気をつけて」
そして、二人は・・・桜並木を歩いていた。
「桜、綺麗ね」
「ほんとだな・・・」
「この桜を見ると、いつも思い出すの。」
「思い出す?」
「宏人が生きていた時に言ったことがあるの。
もし、僕はが死んだら僕の1部でいいから埋めてほしいって」
「・・・・・・」
「その時は、冗談かと思った。まだ、あなたと会う前の話で・・・ずっと言えなかった」
二人は、途中で止まり・・・
「その話なら、もう知ってるよ」
「えっ?うそ・・・・」
「あいつが死ぬ前に、僕にも言ったから・・・。ここは、なっちゃん・・・つまり、理子との始まりの場所だからって・・・。そう言ってた」
二人は見つめ合うと再び歩き出した。
「莉佐さんと、一樹さん・・・・」
「えっ?」
急に何を言い出すのかと思った。
「二人を元に戻す方法・・・」
「どうしたの?急に・・・・」
「難しいかもしれないけど協力してくれる?」
「もちろんよ。《ひまわり会》の仲間ですもの」
「そっか。そうだよな・・・・。」
「宏人もきっと心配で見に来ているかも。」
「あぁ、そうだな」
二人は、桜を見あげ、また再び歩き始めた。
そのころ、
「ごめんなさい。これじゃあ納得いかないです」
「どうして?わたしはこれでいいと思うわよ?」
「もう一度、撮り直してきます!」
と行ってしまった。
「斎藤くん!!」
その様子を見ていた衛は、怜香さんに近づき・・・
「あいつ・・・やけに張り切ってますね・・・・」
「なにかを吹っ切ろうとしているみたいに見えない?」
「吹っ切る?まさか、莉佐ちゃんを諦めようとしているとか?」
「・・・・最近、彼の写真がすごく完璧で・・・・。でも、完璧すぎて怖いの」
「・・・・・・」
「完璧すぎて、いつか壊れてしまうんじゃないかって心配で・・・・」
と、頭を悩ます怜香さん。
「・・・・・まさか、カメラマンを辞める気じゃ・・・・・」
「・・・・そんな」
・・・・まさか・・・・
「なんか、そんな気がする・・・・」
衛は、少し嫌な予感がしていた。
「・・・・・辞めるだなんて・・・・」
「あいつこないだ・・・。莉佐ちゃん帰ってくる前に、莉佐ちゃんから貰ったカメラを落としたから修理に出していてこう言ってたんですよ」
「えっ?」
「【直らなかったら辞めるかもしれない】って。そう呟いたんです。」
「・・・・・」
「なんか僕と莉佐の仲を表してるみたいだ」
「そんなことも言ってたりして・・・・」
「まさか、直らなかったとか?」
「いえ、まだ返ってきてないみたいなので何とも言えませんが・・・。
でも、俺は彼にこの世界に残ってほしい・・・・」
「・・・・・衛・・・・」
「親友として、ライバルとして、仲間として・・・。悔しいけど、あいつ、むちゃくちゃいい写真撮るってわかったからさ」
「えぇ、それは同感。私も彼の撮る写真すきよ?彼の写真は、人の生きていく姿をちゃんと捉えているから・・・・」
そういう2人のやり取りも知らず、一樹さんはがむしゃらにカメラを構えていた。
そして、そこしはは近づいたのは・・・
「やっと・・・」
「・・・・・・」
一樹さんは目を見開いた。
目の前に現れた人物に。
「やっと、見つけた・・・・。斉藤一樹さん!」
「莉佐・・・・。なんでここが・・・・」
「あなたが、出ていくのを見て、追いかけたんです!!」
「い、いつの間に・・・」
「いつの間にじゃないです!」
「あのさ、ぼくは仕事でここに来たんだ。決して遊びに来たわけじゃ・・・・」
「うそ!私に用があっても、他の女の子に頼んでた!」
「いや、それは君が忙しそうだったから」
「わたしがあなたに用があっても、わざといなくなった!」
「別にそういうわけでは・・・・」
「私たち、幼なじみですよね?一緒に働いていたんですよね?」
なぜか詰め寄ってくる莉佐。
「どうしたの?急に」
「なんでわたしは、あなたのことだけを忘れているの?」
「・・・・・・」
「・・・・本当は、幼なじみ以上の関係だったんじゃないですか?だから私を避けて・・・・」
「そんなわけないよ・・・・・」
「一樹さんは、私のことを嫌いになったんですか?」
「えっ・・・・・」
莉佐が泣き始めた。
「私の事を嫌いになったから避けるんですか?・・・・わたしのこと、嫌いですか?」
・・そんなわけ・・・・
「そんなわけないだろ?」
むしろ好きだ!
大好きだ!
「答えてください・・・・・」
真っ直ぐに僕を見る莉佐。
「嫌いなわけないよ」
ただ、目の前にいる莉佐は、今までの莉佐とちがう。
どうすればいい。
「あの!わたしと、デートしてください」
「えっ?デート?いや、君は悟さんと・・・・・」
「わたしは、あなたといま、デートしたいんです」
「えっ?いま?・・・」
「そう、今すぐです」
彼女は、僕の手を握り・・・・・
「あなたを思い出すために・・・・。わたし、思い出したいんです!」
「・・・・えっ?」
思い出す?
そんなの無理だ。
無理に決まってる。
莉佐を、こんな目に遭わせたのは、きっと僕のせいだから。
だから・・・・
「あっ!莉佐隠れて」
「えっ?」
莉佐を抱きしめるようにして隠れた。
「遊園地なんて、なんねんぶりだろ」
「ん?」
この声は・・・・
「福引で当たったんだし、せっかくだから行こうよ!」
「めぐみちゃん?あの子と・・・」
そう、彼女と一緒にいたのは・・・・
「ねぇ?隠れる必要あるんですか?」
「いや、てっきり悟さんといるのかと・・・。なんか意外な組み合わせ」
めぐみちゃんといるのは、住田くんだった。
「一樹さん?あの子、悟さんが好きなの?」
「いや、ごめん。余談だった。それじゃあ、僕はこれで・・・・」
ダメだ。これ以上一緒にいたら、理性が・・・・
「私たちも行きましょうよ」
「えっ?」
「行きましょうよ!だって、わたしさっき言ったでしょう?」
「・・・・・・」
「遊園地は、デートには定番の場所です」
「いや、そうかもしれないけど・・・・。まだ、仕事が・・・・」
手を繋がれ、ドキドキしている。
(でも、もしも・・・・・)
そう思っていたら
「・・・・一つだけあったんです」
「・・・えっ?」
「あなたと私を繋ぐ日記が・・・・。他は捨てられちゃいましたけど・・・・」
「いや、あの・・・・・」
「5月13日・・・福引で当たったN遊園地に、高所恐怖症の一樹と観覧車に乗りました」
「いや、あの・・・ぼくは・・・」
「だから、観覧車乗りたくなりました・・・・・」
見上げるといつの間にか観覧車の前。
いつの間にか、遊園地に入り込んでいる。
「えっ?いつの間に」
「あなたの事を、もっと知りたくなった。でも、本当はとてもよく知ってる人・・・・。わたしは、あなた自身のことをもっと知りたくなった」
「・・・・知らなくていいよ。」
「でも、わたしは本当はあなたのことが・・・・・」
「いいよ?乗ろうか」
「えっ?でも・・・・・」
「細かいことは気にしない。だって、知りたいんだれ?」
こうなったら、一か八かだ。
「一樹さん?」
「大人2枚下さい」
「・・・・・・」
「行こう」
ニコリと笑った。
これが最後の賭けだと思った。
莉佐と過ごせるなら・・・・・。
そして、
「あの・・・?やっぱり辞めませんか?」
「なんだよ、君から誘っておいて今さら辞めるって。おかしくないか?諦めるなんて君らしくないよ?」
と、立場が逆転している。
「だって!」
そう言う莉佐を無理やりひっぱり、
「どうぞ?」
僕達の乗る順番が回ってきたから乗り込み・・・
「こう言うのは乗ったもん勝ち」
と、舌を出した。
とは言ったものの・・・
「やっぱり、下見るのだけはダメだわ」
と、下を見ないふり。
「うわーすごーい」
なんだかんだ嬉しそうな莉佐。
「カメラ置いてきちゃった。何も考えずに来ちゃったし」
「・・・・・(笑)」
莉佐の呟きが聞こえてきた。
「ねぇ?一樹さん!カメラ貸して!」
「あー、ごめん。フィルム無くなっちゃった」
「なぁんだ、残念。予備のフィルムないんですか?」
「そうなんだよ。僕もこうかいしてる。」
「・・・・・」
しばらく沈黙が続いたあと・・・・
「1度覗いたら動くな」
「えっ?」
「・・そう、君の日記の中の僕を観覧車に、無理やり乗せたのは莉佐の方だった。下の景色を見れなかった僕に、君は教えてくれた。まだ、カメラマンになる前の素人の僕に・・・」
「・・・・・」
「カメラマンの心得ってやつを教えてくれた」
「私があなたに?」
「だって、莉佐の方が先輩だから。」
「・・・・・」
「莉佐の言う通り、カメラを向けて、夢中になっていたらいつの間にか地上についていた。莉佐、君の言う通りだったよ。いま、こうやって下の景色をやっと肉眼でみれるようになったのも君のおかげだよ」
「・・・・・」
「ここから見える鳥たちの姿、上から見る子供たちが走る姿、恋人たちの何気ない表情・・・・そんな姿を撮れって言ったんだ。素人の僕に」
「・・・・・そうだったんですね」
「・・・・だから、撮りたいテーマも、見つけることが出来たんだ」
ぼくは、莉佐の目をじっと見つめた。目を離さずにいた。
「良かったですね。撮りたいテーマが、見つかって・・・!これからもいい写真を」
「・・・・そんなの良くない・・・!ちっともよくないんだよ!」
と、叫んでしまった。
「えっ?」
「なんで良くないか教えてやろうか?」
ぼくは、思いが思わず溢れてしまっていた。
「一樹・・・・さん?」
そして、ぼくは莉佐に口づけをしていた。
つまり、キスをした。
「!」
「・・・・・・」
「えっ?・・・な、なんで?」
「なんで?そんなの僕が聞きたいよ。なんでわすれちゃったんだよ!!」
「・・・・・・」
「忘れやすいこの僕が、莉佐のキスを覚えていたのに、なんで君は、僕のことだけ忘れちゃったんだよ!!」
「・・・一樹さん・・・わたし・・・・」
そして
「あ、あの?降りますか?」
スタッフは、見ていたようだ。いつの間にか地上に来ていて・・・
「あっ、すいません。彼女だけ降りますので・・・・」
と、莉佐を無理矢理おろした。
「えっ?でも・・・・」
「次の人入りますので・・・・」
ガチャ
戸を閉めたスタッフ。
「一樹さん!」
「・・・・・・」
莉佐を置いて、また、登り始めた観覧車。
そして・・・・・
プルルル
衛から、電話が掛かってきた。
「もしもし?」
「一樹か?もしもしじゃないよ!お前、いまどこにいるんだよ!なんで会社にいないんだよ」
「いま?観覧車」
「はぁ?なんでそんなところに・・・・」
「・・・・ごめん、サボってた」
「・・・ったく。あのなぁ」
「まってて?すぐ帰るから」
と、電話を切った。
そして地上に戻ると、莉佐は待っていて・・・・
でもぼくは、無視をした。
「一樹さん!待って!」
「ねぇ?これで満足?悪いけど、仕事に戻らなきゃ行けなくなった。じゃ、これで」
「待ってよ・・・・」
「一緒の部署にはいるけど、僕達もう隠れて会わない方がいいと思うんだ。君は悟さんと結婚するんだし・・・・」
「・・・・・・・」
泣きそうな莉佐の顔。
「じゃあ・・・。気をつけて帰れよ」
それだけ言うと会社に向かった。
「・・・・・」
さっきの彼のキスは、少し震えてた。
でも、わたしは嫌じゃなかった。
だって、きっと・・・・あのときは私からしたのよね?
・・・・わたし、きっと彼のことが・・・・・
僕を見送りながら莉佐は泣き崩れた。
・・・・わたし、彼のことが好きです。
「一樹、どこでサボってたんだよ!」
「あー、ごめんごめん。色々立て込んでて、急に考え事したくなって」
「ってかお前、高所恐怖症だろ?大丈夫かよ」
「まぁ?少しは大丈夫になったし」
「ねぇ?斎藤くん。」
「・・・怜香さん、ごめんなさい。なんでも、罰を受けますから」
「そう?じゃあ、新しい指令ね」
「新しい指令・・・?」
「あなたの今月のテーマは、【笑顔】」
「えっ?」
「まぁ?簡単なようで難しいテーマよね。だから、一つだけけヒントと、これは、試練?って言うのかしら・・・・」
「・・・・試練ですか・・・・」
「莉佐ちゃんをモデルに撮ってほしいの」
「えっ?Σ(゚д゚;)莉佐を?そんな無茶な」
「あなたは、カメラマンを辞める覚悟でいる・・・・ねぇ?そうなんでしょう?」
「えっ?Σ(゚д゚;)な、なんでそれを」
まだ、誰にも話してないのに。
「斎藤くん、あなたは莉佐ちゃんを諦めるつもりでいて、そしてカメラマンも辞めるつもりでいる。・・・違うかしら?」
「・・・・・・」
「莉佐ちゃんが他の男と結婚するから?
もう、自分が目指すものがなくなったから?」
「・・・・そんなんじゃないんです」
「莉佐ちゃんを忘れられるの?」
「・・・・・・」
ぼくは、退職届けを差し出し・・・・
「忘れられないと思います。今のままじゃ・・・・」
「・・・・そう。ならあなたが納得いく写真を撮ってちょうだい。2人の思い出の場所で」
「えっ?」
「それなら、別れる決意できるわよね?」
「思い出の場所ですか?」
「怜香さん?」
「これがもしかしたらあなたの最後の仕事になるわね」
「・・・・はい」
「・・・・・」
「これは、あなたが仕事をやり遂げるまで預かっておくわね?」
と、退職届けを、引き出しに閉まった。
「はい、お願いします」
「おい!一樹!本気なのか?」
衛は、叫ぶ。
「・・・衛、今までありがとな」
「一樹・・・・」
「資料室、いってきます」
そう言って資料室にむかった。
そう、これが最後の仕事だと覚悟して・・・・。
「いらっしゃいませ」
「正也兄ちゃん!こんにちは」
やってきたのは、宏人だ。
「宏人・・・。こんにちは、いらっしゃい」
「こんにちは」
「西田さん、なっちゃん。いらっしゃい。どうしたんですか?お揃いで」
「あの正也さん、今日はお願いがあって・・・。ほら、宏人・・・・」
「ん?なんだい?」
正也さんは、宏人の前にしゃがんだ。
そして
「えっ?宏人にバイトを?」
「無理・・・だよなぁー・・・」
「・・・・・」
「宏人?なんでバイトをしたいんだ?なにか理由があるんだろ?聞いてやるよ?」
「そ、それはね・・・えーっと」
宏人は、恥ずかしそうに答えた。
おっ?これはもしや恋でもしてるな?
「もしかして、好きな女の子でもいるの?」
と、聞いてみたりして・・・
「うん、そう!もうすぐその子のお誕生日で」
「へぇー(かわいいやつ。正直者は、嫌いじゃない)」
「誕生日会があるらしくて、招待されてるんだ。招待状も貰ってる」
「さすが、今どきの子供は違うねー。で?どうしたい?」
正也さんは、宏人の頭に手を置くと
「自分でお金、稼ぎたい」
「えっ?」
と、宏人の発言に驚く大人たち。
「これは驚いた。自分で稼いだお金でプレゼントを買うって言うのか?」
「うん、でもまだ早いかな・・・・?」
「あはは!うーん・・・大人顔負けの発想だな。まぁ、確かに早いけどー」
と、頭をポリポリ。
「だから、言ったじゃん」と、西田さんはちょっと呆れてる。
「でも、まぁいいよ?少しくらいならお手伝いさせてやるよ。俺たちは助かるからね」
「えっ?ホントに?」
「どう?稼いだお金で、手作りのプレゼントを作るのはどうかな?」
「うん!それいいかも!ねぇ?お兄ちゃんも手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「そうだな。手作りの方が、心こもっていて、いいよな?」
「よし、決まりだ」
「それとね、もうひとつのお願い聞いてくれる?」
「えっ?宏人・・・まだ、あるのか?」
「パパと、ママ!1日デート行ってらっしゃい」
と、にっこり。
「えっ?」
西田さんとなっちゃんは、何故か赤くなる(笑)
「なるほど。それは、いいね。」
「いや、でもそれは正也さんと和葉さんに悪いよ」
「構わないです。宏人くん、しっかりしてるし」
「ぼくは、大丈夫だよ!」
「宏人」
「😁」
「(笑)そうだな、たまには2人で出かけてきたら?」
「そう?ごめんね・・・」
「行ってらっしゃい!なっちゃん!西田さん」
「ふふっ、その呼び方、懐かしいわね。」
「なっちゃん・・・」
「そういえばまだ、教えてなかったっけ・・・」
「宏人にはあとで教えてやるよ。ママがなんで《なっちゃん》って呼ばれてるか」
「うん!」
「じゃあ、お願いします」
「気をつけて」
そして、二人は・・・桜並木を歩いていた。
「桜、綺麗ね」
「ほんとだな・・・」
「この桜を見ると、いつも思い出すの。」
「思い出す?」
「宏人が生きていた時に言ったことがあるの。
もし、僕はが死んだら僕の1部でいいから埋めてほしいって」
「・・・・・・」
「その時は、冗談かと思った。まだ、あなたと会う前の話で・・・ずっと言えなかった」
二人は、途中で止まり・・・
「その話なら、もう知ってるよ」
「えっ?うそ・・・・」
「あいつが死ぬ前に、僕にも言ったから・・・。ここは、なっちゃん・・・つまり、理子との始まりの場所だからって・・・。そう言ってた」
二人は見つめ合うと再び歩き出した。
「莉佐さんと、一樹さん・・・・」
「えっ?」
急に何を言い出すのかと思った。
「二人を元に戻す方法・・・」
「どうしたの?急に・・・・」
「難しいかもしれないけど協力してくれる?」
「もちろんよ。《ひまわり会》の仲間ですもの」
「そっか。そうだよな・・・・。」
「宏人もきっと心配で見に来ているかも。」
「あぁ、そうだな」
二人は、桜を見あげ、また再び歩き始めた。
そのころ、
「ごめんなさい。これじゃあ納得いかないです」
「どうして?わたしはこれでいいと思うわよ?」
「もう一度、撮り直してきます!」
と行ってしまった。
「斎藤くん!!」
その様子を見ていた衛は、怜香さんに近づき・・・
「あいつ・・・やけに張り切ってますね・・・・」
「なにかを吹っ切ろうとしているみたいに見えない?」
「吹っ切る?まさか、莉佐ちゃんを諦めようとしているとか?」
「・・・・最近、彼の写真がすごく完璧で・・・・。でも、完璧すぎて怖いの」
「・・・・・・」
「完璧すぎて、いつか壊れてしまうんじゃないかって心配で・・・・」
と、頭を悩ます怜香さん。
「・・・・・まさか、カメラマンを辞める気じゃ・・・・・」
「・・・・そんな」
・・・・まさか・・・・
「なんか、そんな気がする・・・・」
衛は、少し嫌な予感がしていた。
「・・・・・辞めるだなんて・・・・」
「あいつこないだ・・・。莉佐ちゃん帰ってくる前に、莉佐ちゃんから貰ったカメラを落としたから修理に出していてこう言ってたんですよ」
「えっ?」
「【直らなかったら辞めるかもしれない】って。そう呟いたんです。」
「・・・・・」
「なんか僕と莉佐の仲を表してるみたいだ」
「そんなことも言ってたりして・・・・」
「まさか、直らなかったとか?」
「いえ、まだ返ってきてないみたいなので何とも言えませんが・・・。
でも、俺は彼にこの世界に残ってほしい・・・・」
「・・・・・衛・・・・」
「親友として、ライバルとして、仲間として・・・。悔しいけど、あいつ、むちゃくちゃいい写真撮るってわかったからさ」
「えぇ、それは同感。私も彼の撮る写真すきよ?彼の写真は、人の生きていく姿をちゃんと捉えているから・・・・」
そういう2人のやり取りも知らず、一樹さんはがむしゃらにカメラを構えていた。
そして、そこしはは近づいたのは・・・
「やっと・・・」
「・・・・・・」
一樹さんは目を見開いた。
目の前に現れた人物に。
「やっと、見つけた・・・・。斉藤一樹さん!」
「莉佐・・・・。なんでここが・・・・」
「あなたが、出ていくのを見て、追いかけたんです!!」
「い、いつの間に・・・」
「いつの間にじゃないです!」
「あのさ、ぼくは仕事でここに来たんだ。決して遊びに来たわけじゃ・・・・」
「うそ!私に用があっても、他の女の子に頼んでた!」
「いや、それは君が忙しそうだったから」
「わたしがあなたに用があっても、わざといなくなった!」
「別にそういうわけでは・・・・」
「私たち、幼なじみですよね?一緒に働いていたんですよね?」
なぜか詰め寄ってくる莉佐。
「どうしたの?急に」
「なんでわたしは、あなたのことだけを忘れているの?」
「・・・・・・」
「・・・・本当は、幼なじみ以上の関係だったんじゃないですか?だから私を避けて・・・・」
「そんなわけないよ・・・・・」
「一樹さんは、私のことを嫌いになったんですか?」
「えっ・・・・・」
莉佐が泣き始めた。
「私の事を嫌いになったから避けるんですか?・・・・わたしのこと、嫌いですか?」
・・そんなわけ・・・・
「そんなわけないだろ?」
むしろ好きだ!
大好きだ!
「答えてください・・・・・」
真っ直ぐに僕を見る莉佐。
「嫌いなわけないよ」
ただ、目の前にいる莉佐は、今までの莉佐とちがう。
どうすればいい。
「あの!わたしと、デートしてください」
「えっ?デート?いや、君は悟さんと・・・・・」
「わたしは、あなたといま、デートしたいんです」
「えっ?いま?・・・」
「そう、今すぐです」
彼女は、僕の手を握り・・・・・
「あなたを思い出すために・・・・。わたし、思い出したいんです!」
「・・・・えっ?」
思い出す?
そんなの無理だ。
無理に決まってる。
莉佐を、こんな目に遭わせたのは、きっと僕のせいだから。
だから・・・・
「あっ!莉佐隠れて」
「えっ?」
莉佐を抱きしめるようにして隠れた。
「遊園地なんて、なんねんぶりだろ」
「ん?」
この声は・・・・
「福引で当たったんだし、せっかくだから行こうよ!」
「めぐみちゃん?あの子と・・・」
そう、彼女と一緒にいたのは・・・・
「ねぇ?隠れる必要あるんですか?」
「いや、てっきり悟さんといるのかと・・・。なんか意外な組み合わせ」
めぐみちゃんといるのは、住田くんだった。
「一樹さん?あの子、悟さんが好きなの?」
「いや、ごめん。余談だった。それじゃあ、僕はこれで・・・・」
ダメだ。これ以上一緒にいたら、理性が・・・・
「私たちも行きましょうよ」
「えっ?」
「行きましょうよ!だって、わたしさっき言ったでしょう?」
「・・・・・・」
「遊園地は、デートには定番の場所です」
「いや、そうかもしれないけど・・・・。まだ、仕事が・・・・」
手を繋がれ、ドキドキしている。
(でも、もしも・・・・・)
そう思っていたら
「・・・・一つだけあったんです」
「・・・えっ?」
「あなたと私を繋ぐ日記が・・・・。他は捨てられちゃいましたけど・・・・」
「いや、あの・・・・・」
「5月13日・・・福引で当たったN遊園地に、高所恐怖症の一樹と観覧車に乗りました」
「いや、あの・・・ぼくは・・・」
「だから、観覧車乗りたくなりました・・・・・」
見上げるといつの間にか観覧車の前。
いつの間にか、遊園地に入り込んでいる。
「えっ?いつの間に」
「あなたの事を、もっと知りたくなった。でも、本当はとてもよく知ってる人・・・・。わたしは、あなた自身のことをもっと知りたくなった」
「・・・・知らなくていいよ。」
「でも、わたしは本当はあなたのことが・・・・・」
「いいよ?乗ろうか」
「えっ?でも・・・・・」
「細かいことは気にしない。だって、知りたいんだれ?」
こうなったら、一か八かだ。
「一樹さん?」
「大人2枚下さい」
「・・・・・・」
「行こう」
ニコリと笑った。
これが最後の賭けだと思った。
莉佐と過ごせるなら・・・・・。
そして、
「あの・・・?やっぱり辞めませんか?」
「なんだよ、君から誘っておいて今さら辞めるって。おかしくないか?諦めるなんて君らしくないよ?」
と、立場が逆転している。
「だって!」
そう言う莉佐を無理やりひっぱり、
「どうぞ?」
僕達の乗る順番が回ってきたから乗り込み・・・
「こう言うのは乗ったもん勝ち」
と、舌を出した。
とは言ったものの・・・
「やっぱり、下見るのだけはダメだわ」
と、下を見ないふり。
「うわーすごーい」
なんだかんだ嬉しそうな莉佐。
「カメラ置いてきちゃった。何も考えずに来ちゃったし」
「・・・・・(笑)」
莉佐の呟きが聞こえてきた。
「ねぇ?一樹さん!カメラ貸して!」
「あー、ごめん。フィルム無くなっちゃった」
「なぁんだ、残念。予備のフィルムないんですか?」
「そうなんだよ。僕もこうかいしてる。」
「・・・・・」
しばらく沈黙が続いたあと・・・・
「1度覗いたら動くな」
「えっ?」
「・・そう、君の日記の中の僕を観覧車に、無理やり乗せたのは莉佐の方だった。下の景色を見れなかった僕に、君は教えてくれた。まだ、カメラマンになる前の素人の僕に・・・」
「・・・・・」
「カメラマンの心得ってやつを教えてくれた」
「私があなたに?」
「だって、莉佐の方が先輩だから。」
「・・・・・」
「莉佐の言う通り、カメラを向けて、夢中になっていたらいつの間にか地上についていた。莉佐、君の言う通りだったよ。いま、こうやって下の景色をやっと肉眼でみれるようになったのも君のおかげだよ」
「・・・・・」
「ここから見える鳥たちの姿、上から見る子供たちが走る姿、恋人たちの何気ない表情・・・・そんな姿を撮れって言ったんだ。素人の僕に」
「・・・・・そうだったんですね」
「・・・・だから、撮りたいテーマも、見つけることが出来たんだ」
ぼくは、莉佐の目をじっと見つめた。目を離さずにいた。
「良かったですね。撮りたいテーマが、見つかって・・・!これからもいい写真を」
「・・・・そんなの良くない・・・!ちっともよくないんだよ!」
と、叫んでしまった。
「えっ?」
「なんで良くないか教えてやろうか?」
ぼくは、思いが思わず溢れてしまっていた。
「一樹・・・・さん?」
そして、ぼくは莉佐に口づけをしていた。
つまり、キスをした。
「!」
「・・・・・・」
「えっ?・・・な、なんで?」
「なんで?そんなの僕が聞きたいよ。なんでわすれちゃったんだよ!!」
「・・・・・・」
「忘れやすいこの僕が、莉佐のキスを覚えていたのに、なんで君は、僕のことだけ忘れちゃったんだよ!!」
「・・・一樹さん・・・わたし・・・・」
そして
「あ、あの?降りますか?」
スタッフは、見ていたようだ。いつの間にか地上に来ていて・・・
「あっ、すいません。彼女だけ降りますので・・・・」
と、莉佐を無理矢理おろした。
「えっ?でも・・・・」
「次の人入りますので・・・・」
ガチャ
戸を閉めたスタッフ。
「一樹さん!」
「・・・・・・」
莉佐を置いて、また、登り始めた観覧車。
そして・・・・・
プルルル
衛から、電話が掛かってきた。
「もしもし?」
「一樹か?もしもしじゃないよ!お前、いまどこにいるんだよ!なんで会社にいないんだよ」
「いま?観覧車」
「はぁ?なんでそんなところに・・・・」
「・・・・ごめん、サボってた」
「・・・ったく。あのなぁ」
「まってて?すぐ帰るから」
と、電話を切った。
そして地上に戻ると、莉佐は待っていて・・・・
でもぼくは、無視をした。
「一樹さん!待って!」
「ねぇ?これで満足?悪いけど、仕事に戻らなきゃ行けなくなった。じゃ、これで」
「待ってよ・・・・」
「一緒の部署にはいるけど、僕達もう隠れて会わない方がいいと思うんだ。君は悟さんと結婚するんだし・・・・」
「・・・・・・・」
泣きそうな莉佐の顔。
「じゃあ・・・。気をつけて帰れよ」
それだけ言うと会社に向かった。
「・・・・・」
さっきの彼のキスは、少し震えてた。
でも、わたしは嫌じゃなかった。
だって、きっと・・・・あのときは私からしたのよね?
・・・・わたし、きっと彼のことが・・・・・
僕を見送りながら莉佐は泣き崩れた。
・・・・わたし、彼のことが好きです。
「一樹、どこでサボってたんだよ!」
「あー、ごめんごめん。色々立て込んでて、急に考え事したくなって」
「ってかお前、高所恐怖症だろ?大丈夫かよ」
「まぁ?少しは大丈夫になったし」
「ねぇ?斎藤くん。」
「・・・怜香さん、ごめんなさい。なんでも、罰を受けますから」
「そう?じゃあ、新しい指令ね」
「新しい指令・・・?」
「あなたの今月のテーマは、【笑顔】」
「えっ?」
「まぁ?簡単なようで難しいテーマよね。だから、一つだけけヒントと、これは、試練?って言うのかしら・・・・」
「・・・・試練ですか・・・・」
「莉佐ちゃんをモデルに撮ってほしいの」
「えっ?Σ(゚д゚;)莉佐を?そんな無茶な」
「あなたは、カメラマンを辞める覚悟でいる・・・・ねぇ?そうなんでしょう?」
「えっ?Σ(゚д゚;)な、なんでそれを」
まだ、誰にも話してないのに。
「斎藤くん、あなたは莉佐ちゃんを諦めるつもりでいて、そしてカメラマンも辞めるつもりでいる。・・・違うかしら?」
「・・・・・・」
「莉佐ちゃんが他の男と結婚するから?
もう、自分が目指すものがなくなったから?」
「・・・・そんなんじゃないんです」
「莉佐ちゃんを忘れられるの?」
「・・・・・・」
ぼくは、退職届けを差し出し・・・・
「忘れられないと思います。今のままじゃ・・・・」
「・・・・そう。ならあなたが納得いく写真を撮ってちょうだい。2人の思い出の場所で」
「えっ?」
「それなら、別れる決意できるわよね?」
「思い出の場所ですか?」
「怜香さん?」
「これがもしかしたらあなたの最後の仕事になるわね」
「・・・・はい」
「・・・・・」
「これは、あなたが仕事をやり遂げるまで預かっておくわね?」
と、退職届けを、引き出しに閉まった。
「はい、お願いします」
「おい!一樹!本気なのか?」
衛は、叫ぶ。
「・・・衛、今までありがとな」
「一樹・・・・」
「資料室、いってきます」
そう言って資料室にむかった。
そう、これが最後の仕事だと覚悟して・・・・。
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