続Voyger~不思議な船旅~エピソード1

藤原葉月

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武司の恋

第7話

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二人きりにさせられた武司とルキアは、しばらくだまったまま、あるカフェにいた。

30分くらい黙ったまんまの時間が続いた。
「ねっ!あれってダンサーの武司じゃん!」
「一緒にいるの誰?もしかして、うわさの彼女?いやー」
なぜか、そんな声が聞こえてきた。
ひそひそ話しているはずなのに聞こえてるんですけど?

「あ、あのさ」
「・・・なに?」
「こ、ここにいたら、変な記事とか書かれるんじゃないの?」
「そんなのどこで覚えたんだよ」
「なんか、テレビでやってた。わたし、いますぐ帰った方が・・・」
「とにかくさ、ここを出よう!」
武司は、ルキアの手をつかむと、カフェを、でた。


武司は、いつになく緊張はしていた。
別の試練を、極秘で、受けていたからだ。
「緒方武司。おまえに最後の試練だ。」
「なんだよ!終わったんじゃないのかよ」
なぜか、最後の試練を言ってきたのはルキアの兄で・・・
これまたとつぜん現れて、武司の顔に近づいて言った。
(顔、近いんですけど?)
「彼女に・・・ルキアにキスして別れてほしい」
「はぁ?やだよ」
それはさすがにみんな見てるだろうからいやだった。
「なら、俺が奪ってやろうか?
カイトさんまで、後ろに張り付いていて
「なんで、そうなるんだよ!ってか、なんでいるんだよ!」
「君の本気を見せてもらおうじゃないか」
また、顔を近づけてくる
「だから!近いってば!」
「面白い!じつに、面白い!見ててやるよ」
「・・・・・」


はぁ~(  -。-) =3
「空、すごくきれい」
ルキアは、素直にその言葉を嬉しそうに呟いた。
今まで見てきたルキアとちがってとても、かわいく見えて・・・・
(やべぇ、すげーかわいいんだけど・・・)
いつも以上に、ドキドキしている武司。
「あれ?さっきまでいたのにいない・・・」
二人を観察していた和彦だったが、なぜか二人を見失っていた。
「もう!しっかりしてよ!カメラマンなんでしょ?大スクープじゃないの?」
「そんなこと言ってもさ~!大スクープは、ほかにもあるわけで・・・・」
と、なぜか、ほかにも、大スクープを、見つけてしまったらしい。
「そっちに、きをとられていたら、ふたりは、いつのまにかカフェを、出てたんだよね~」
と、健斗と、電話で話す和彦だった。
「もう、ふたりは、とっくに、家に帰ってきてるよ!いま、屋上にいるよ!昌也兄さんと、博巳兄さんが張り切って料理作ってるからじゃまできないし~、樹は、ドラマの台詞の練習とか一人でしてるしー!つまんないから、早く帰ってきてよー」
「はいはい、しょうがないなぁ~」

こんなやりとりが続くなかふたりは、屋上でやっと、会話ができたみたいで。
「ねぇ、武司」
「ん?」
「もしさ、この先お互い好きな人ができて、結婚して、子供が生まれたら、忘れられるのかな。」
「・・・忘れられるさ」

「えっ?ふたりは、両思いじゃないの?」
この会話からして、今生の別れを覚悟しているようにしか聞こえない。
そりゃあそうか。ルキアさんには、帰る場所が、あるもんね。
「・・・つらいことも、たのしいことも、うれしいことも、全部受け止めてくれる人、向こうに戻ったら、見つけられるように、俺は祈ってる」
「・・・・・」
二人の思いは通じたんじゃないの?
「なかなか、キスしやんなぁーあの二人」
「い、樹、いつのまに」
僕が、背後から見ている横にいつのまにか来ていた樹。
「だって、最後に言われたんやろ?キスして別れろって」
「うん、それ僕も知らなかったけど、カイトさんが言いふらしていったとか?」
(武司は、自分しか知らないと思ってるみたいだけど・・・)
「和兄さんに頼まれてさ。カメラで押さえてくれって」
「えっ?和彦兄さんが、撮らないの?」
「なんか、芸能人の熱愛スクープ見つけたみたいでさ。だから、任せたって」
和彦兄さんらしいけど・・・・
「みんながね、パーティー開いてくれるらしいよ。お別れパーティに、なっちゃうけど」
「うん。いく!」

ルキアは、ニコッとわらった。
「じゃあ、行こっか。みんな待ってるし」
この時、武司は、ルキアの笑顔にドキリとした。

「うわっ!こっちくる!隠れなきゃ!」
「・・・・・」
僕たちは、隠れた。
ばれてないみたいだけど・・・・
「なーんや、まだしやへんのか」
「・・・まぁ、まだ、時間あるしさ。というか、君ってそんなキャラだっけ?」
料理に、集中してた、昌也兄さんは、ふと気づいたことがある。
「そういえば、健斗と、樹はいないのか?」
昌也は、そばにいた博巳に尋ねた。
「なに?気づいてなかったの?二人とも、屋上の二人を尾行しに行ったよ?樹は、あとで、合流したみたいだけど・・・健斗は、ひとりで、ふたりを眺めていたし」
反応遅くない?

「なんで、手伝わさないんだよ」
「手伝ったら手伝ったで怒るじゃん!って、前置きしていったんだけど・・・・」
「えっ?」
「それにも気付かないくらい料理に集中してたよね(笑)」
「・・・・・・すまん。俺としたことが。」

「そのうち、かえってくるんじゃないかな?」
「ん?」
「ただいま~って言ってさ」
博巳は冗談のつもりで言ったそのときだった!
「ただいま」
「えっ?」
博巳は、びっくりして振り返る
「とか言ってみたりして。すっげぇ近い距離にいたのに(笑)って、博巳兄さん?」
「お、思ったより早かった。ちゃんと話はできたの?」
「べ、別にイーじゃん!」
武司は、ぶっきらぼうに答えた。
「ルキアさん、お帰り」
博巳は、ルキアにだけ、返してみた。
「・・・おかえり・・・か。
なんだかくすぐったい」 
「えっ?」
ルキアさんは、悲しそうに笑う。
「わたし、あんたたちを手にかけようとしていたのに・・・・あんたたちに、わたしの気持ちなんてわかるはずないって、思っていたのに」
「ルキアさん、それは忘れる約束だろ?」
昌也は、ルキアさんに、座るよう促しながら答えた。
「それに、今回は本当に巻き込んでしまった・・・そんなつもり、もうなかったのに」
ルキアさんの目は、もう嘘偽りを言っていなかった。
なにより、もう憎しみの目をしていない。
泣きそうな顔をしている。
「あのね、今回のことで、ルキアさんの素性がわかったよ!どんなひとなのか、少しだけわかった気がする」
突然、帰ってきて、そう話すのは健斗だった。
いつのまにか、席に座っているし。
「健斗・・・・」
上二人は、同時に驚いた。
「俺もいるよー」
「わかってる」
「なにそれ~・!それより、うまそう!」
和彦も、構わず座った。
「あたしは、自分の力がどんなものか知らないまま生きてきたから・・・」
「・・・・・」
武司は、ルキアさんの隣で、黙って彼女の話を聞いている。
「それってさ、イナンさんや、イオンさんの力にただ憧れてただけって言うのもあるよね。」
「ここの世界で言う、庶民ってやつなんだ。」
「僕たちはね、、ルキアさんの涙で信じようって思ったんだ。
最後泣いていたよね?」
「えっ?嘘!見られていたの?」
「僕たちは、みーんな見てたよ?」
「君は、僕たちと変わらない、この世界と同じで恋する女の子だったってことがわかったんだ。」
「・・・・・・」
「ルキアは、ここに来て、変われたか?」
武司が優しい声で聞いた。
「・・・・変われた気がする・・・みんなのお陰で・・・・」
ルキアさんは、改めて笑顔をくれた。
その笑顔すごくいい!
「ってことで、パーティ始めちゃう?」
「今回の、ゲーム?試練?無事クリアってことで、お祝いだよ!」
「・・・・うん」
「・・・・・」

「そうだ!ねぇ、聞きたかったんだけどー、ルキアさんと初めて顔を合わせたのって、博巳兄さん?」
健斗が、聞く。
「そうだね。僕が最初に彼女に会ったよ」
「えっ?も、もう良いだろ?」
「あっ、そっか思い出したくないか・・・・ごめんね、ルキアさん。」
博巳兄さん、優しい。
「いーじゃん!そこ、重要だよ」
何も考えずに言うのは和彦兄さん。
「・・・・・・俺は、そのあと会ったけど、案の定゛レンさんと間違えてたしね。」

なぜか、怒るように言う武司。
どうみても、怒ってる・・・・よね。
「いや、ぶっちゃけそれはそう思わせる作戦でもあったし。」
「本当に好きなら、間違えないだろ?」
「な、なによそれ!悪かったわね」
「どうせ、俺の名前を覚えたのは、゛レンさんに、顔が似ていたからだろ?」
なぜだか言い合いを始めた二人・・・これって喧嘩?
(・・・博巳兄さんどうしよう!ふたり、喧嘩しちゃってる)
(こうなったら、もう何も言えない・・・)
ふたりは、ひそひそ話してる、
「ストップ!なんで、ここでふたりが、喧嘩するの?」
「・・・・!?」
喧嘩を止めたのは、健斗だ。
(け、健斗が、俺のセリフとった・・・)
若干ショックを受けてる昌也兄さん。
「別に!思ったことを言っただけだ!」
「・・・でもね、実際のレンさんと、武司じゃ全然違うよ?顔いいし、頭いいし、運動もできそうだし、何よりモテるみたいだし」
ナイスフォローなつもりらしいが・・・・
「ちょっと待て!俺は劣るって言うのか?」
「だから、みんな好きになるんだね~」
こ、こいつ聞いてねぇし。
「そうかもな。レンは、そういう人だった。」
「なっ」
なんで、嬉しそうな顔をしてんだよ!
ルキアまで、ルキアまでそう思うのかよ!

「でもさー、ルキアさ
んの気持ちは、もう武司に向いてたりするよねー」
「えっ?」
「・・・・!?」
「二人とも否定しないってことは、ラブラブ?」

「・・・・」
武司は黙って席をたつと、
「武司?」
「外の空気、吸ってくる!」
そう言って出ていってしまった。
ルキアさんは、武司が出ていった方角を見ている。
「ごめんね、ルキアさん。変な話しちゃって。」
「ううん。いいの。」
「せっかくのお別れパーティなんだけどなー・・・俺たちにはこれくらいのことしかできないし」
「わたし、追いかけてきていいですか?」
「えっ?」
5人は、驚いた。

「うん。行ってきて!お願いします」
その頃武司は、屋上でまた、ひとり呟いていた。
「あーあ、だっせーな俺」
~好きじゃないくせに、抱き締めるなよ!~
ルキアと、過ごした日々が思い出される。
まいったなー、俺・・・あいつにマジなのかな・・・・
この気持ちが、本物なのかまだ、よくわからない。
けれど・・・・
「緒方武司!」
「なんだよ!」
思わず振り向く武司。 
「あっ!振り向いた!」
振り向くと、ルキアがいた。
(し、しまった)
「・・・今までありがとう!そして、ごめんな、巻き込んで」
「急に謝るなよ」
「あんたのそういうところ、レンとは全然ちがう。」
「わ、わるかったな」
どうせ、レンさんとは、比べ物にならねぇよ。
「口悪いし、すぐ怒るし、なにも話してくれないし。」
(なんだよそれ!絶対キスなんかするもんか)
武司は、心の中の声を出さないように必死に耐えていた。
「でもね、声は好き。」
「えっ?声?」
「わたし、あんたのその子供っぽい声が好きだ」
ルキアの素直な告白に、
「あのなー!」
俺がどれだけ・・・・
「な、なんでもねぇよ。」
恥ずかしくなったのか、それ以上は、なにも言えなかった。
「ねぇ、緒方武司。」
「・・ん?」
「あのとき、俺のそばにいろって言ってくれた。
それって本気だった?」
それは、武司が出演するドラマの練習をしていたときだ。
「゛俺のそばにいろ、お前を泣かせないから゛って、セリフ・・・本気だった?」
「それは・・・・」
「嬉しかったんだ。本気じゃなくても。」
ルキアは、悲しそうに笑う。
「ルキア、俺は・・・」
「バイバイ・・・・」
ルキアは、武司の唇?に、軽くキスをすると、すぅーっといなくなってしまった。
「ルキア・・・俺は・・・」
武司は、何を伝えたかったんだろう。

「消えた・・・」
「なーんだ、つまんない」
なんの進展もなく終わった。
「ルキア、きっとまた、会えるよな。」
武司は、密かに思ってた。
そういう僕も、思った。 
ねぇ?イナン、また、会える日があったら、二人の恋はきっとうまく行くよね?僕は、そう信じてるよ?
    
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