BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

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僕と、なっちゃんは無事に大学に合格した。
桜の花が散り始める頃、入学式だった。

満開になるのは、ほんとに短い。
「入学おめでとう!」
サークルの誘いをする先輩たちが、何人も勧誘してくる。
「宏人、どこか入りたいのある?」
「僕は、自分で作った劇団あるし・・・・。なっちゃんは、テニスを続けるんじゃないの?」
「・・・・劇団のマネージャーでもやろうかな」
「いいの?」
「だって、心配だもの。」
「心配って・・・・。」
「周りにいるのは、男ばかり。っていうか、男ばかりだから?」
「あはは。その心配かよ。」
「なによ、その笑いは。それ以外、心配することはないわ。」
無邪気に笑うなっちゃん。
僕は、このあと内緒でもう一度病院に行ったんだ。
いや・・・・ずっと病院に通い続けている。
そして再び、検査の結果を聞いた。

「先生!僕は、あとどれくらい生きられますか?
少しは、長く生きられるんですか?」
「まずは落ち着こうか。言ったでしょ?これ以上は、無理のできない体だと。
一刻も早く手術が、必要なんだ。」
「僕は今、やりたいことがあるんです。命の続く限りやりたいことが・・・・」
「しかし・・・・」
「ちゃんと、治療はしますから。でも、約束してほしいことが・・・・。」
「なんだね?約束とは。君には、家族がいないと聞いているから、告知する人は特にいないと思うが・・・・」
「家族以外で、とても大切な人がいます。でもまだ、誰にも言わないでほしいんです」
「そんな・・・だったら・・・・」
「だから、大切にしたいんです。どうか僕に、命の時間を・・・・。生きる時間をください!」

僕は、担当の先生がまさかあの《西田君》の父親だとは、まだそのときは気づいてなくて・・・
こんなお願いをしたんだ。

「わかったよ。君のような青年が、もしも私の息子と親友だったら、息子もきっと、心を閉ざすことはなかっただろう。君の話が、いつも楽しみでね・・・・。」
ふと漏らした先生の言葉が気になった。
なぜだろう。

他人事には、思えずにいた。

「君が、息子と同じ大学生だと言うことを知って・・・ついね。しかも、学科も同じだ。」
そう言って、先生は微笑んだ。
「きっと、会いますよ。僕は、会いたいです。先生の息子さんにも。・・・・二股かけちゃいますけど(笑)」
「君の命を無駄にしないお手伝いをしよう。
無論、なるべく無理はしないように。頼むよ?」
「はい・・・気を付けます。」

そして、桜の花が舞い落ちる小屋の前に、僕の仲間がいてくれたんだ。
「宏人さん、なっちゃん、入学おめでとうございます🎵」
無邪気に笑ってお祝いしてくれる仲間たち。
僕は、この命の時間を無駄にしたくないと改めて感じた。

練習が、終わったあと、先生との会話を振り返った。
「君の命の時間は、長くて1年半。この前よりは、延びたかもしれないが・・・・。これはいま、君の体が小康状態だからだ。その時間を、本当に大切にしてほしい。」
「・・・・1年半か・・・・」
よかった。
思ったよりは、長いかも・・・・・
だって、1年も延びたんだもん。

僕は、ひとり言をいいながら歩いていた。

そのときにまた、すれ違った青年がいた。
ひまわりの花をもって歩いていく青年。
でも、その彼の顔は、暗く沈んでいて・・・・

そしてその彼は、《西田君》と呼ばれていた彼だった。
「何かあったのかな」
僕は、気になってあとを追いかけてしまった。

彼が向かった先は・・・・
お墓だった。

(えっ?お墓?誰か死んだってこと?)

彼が、帰ったあと、僕はそっとその人の名前を見る・・・・。
「佐伯理子さん・・・?」

彼女は、彼とどういう関係なんだろう・・・・

そういえば、彼らはこう言ってたっけ?
「最愛の人が自殺した・・・・
もしかして、この人が?」

彼の最愛の人・・・・?


真相は、まだ、わからないけれど、そんな気がしたんだ。
年齢も、同じ年だし・・・・

供えられているのは、ひまわりの花・・・・
まるで僕たちを結びつけてくれそうな・・・・
温室で育てられたのだろう。

僕は、そっとそのお墓に手を合わせた。

「僕もそのうちこの中か・・・・」

だけど僕は、やり残したことがまだ、たくさんある。
会いたい人もいる。

だから、1日1日を、大切にしていきたいんだ。

1日も無駄にできない。

「桜、もう散っちゃったね」
なっちゃんと、桜並木を歩いていた。

もうすっかり葉桜になりかけていた。

「ねぇ?なっちゃん・・・・」
「ん?」
「・・・もしも、僕が死んだらさ・・・・」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても・・・・
いつかだよ。いつか・・・・」
「・・・・・・・」
いつか死んだら、この桜並木のどこかに僕の一部を埋めてくれる?」

「そんなこと、できないわよ!」
「・・・会いに行くから・・・。命日になったら、なっちゃんにも、みんなにも」
「・・・・本気で言ってるの?」
「あはは。そうだよね?ずっと、先の話だよね?ごめんね」

僕は、笑った。
でも、なっちゃんは、寂しそうだった。

僕が、嘘をついているのかいないのか・・・・・

きっと、わからくなっていたからだろう・・・・・。


「でもね、僕は決めたんだ。」
決意をしたように、なっちゃんの方を見る。
「えっ?」
「僕は、夢を叶えるまで生きるって・・・そう決めたんだ。」
なぜだか思わず口にしてしまった。
なんのことだかわからないなっちゃんは、 
「何言ってるのよ。宏人は、夢を叶えつつあるじゃない。
これからもずっと生きていくのよ?
私と、ひまわり会のみんなと・・・」
「あはは。そうだった。ごめんね、変な言い方して・・・。」
そして、自然と手を繋いだ僕たちは、桜並木をゆっくり通り過ぎていった。

ねぇ?西田君。
僕は、君に会うためにもう少し頑張ってみようと思っているんだ。
こんなに近くにいたのに、君にちゃんと会うまでこんなにも時間が経ってしまうなんて・・・・。

そう、僕たちが入学してから、もうほぼ1年近くもたっていた・・・・

やっと、やっと出会えたんだ。
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