BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

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「東條?大丈夫か?」
ラッキーが、連れてきてくれた意外な人物は・・・・
「西田君?」
そう、ラッキーが、呼んできてくれたのは、西田君だった。
「ラッキーがきたから東さんになにかあったのかと思った・・・・。違ったんだな・・・。お前、昨日具合い悪そうにしてたよな・・気がつかなくてごめん。」

「気にかけてくれていたんだ・・・・ゴホゴホ・・でも、もう大丈夫だから・・・」
僕が、起き上がるのを制止して・・・
「大丈夫じゃないだろ?こんなに熱あるのに・・・一人で練習に残るなんて。なんで言わなかったんだよ・・・昨日言っただろ?風邪を甘く見るなって・・・・」
西田君は、本気で怒ってる?
「あはは~ごめん。」
「ふざけるなよ。笑い事じゃないだろ?お前、もし、東さんが気づかなかったらどうするつもりだったんだ」
「・・・・・・・」
東さんは、悲しそうな顔をしている・・・・。
「大丈夫。もう、無理はしない。ご心配おかけしました」
僕は、頭を下げた。
「本当か?」
「約束します」

そして、そんな約束から、3ヶ月が経とうとしていた。
西田君は、僕たちの仲間入りをしていた。
僕はそれがとても嬉しかった!
とおしで練習を、していたあとだった。
「あれ?西田君は?」
「今日は、彼女の月命日なんだってさ。お墓参りしてから来るらしいです」
「そっか。じゃあ、先に始めちゃう?」
「乾杯!」
僕たちの劇団ひまわり会のショーが、文化祭で披露できるようになったお祝いを、していた。
「長かったな」
「本当ですね」
「僕たちは、生きてるって、伝えることができるんですね」
みんなは、嬉しそうに話していた。
「宏人?どうしたの?食べないの?」
「なんか、食欲なくて・・・・」
「大丈夫?最近、痩せたんじゃない?」
「嬉しくて、胸一杯でさ!外の空気吸ってくるね。」
「うん、行ってらっしゃい」
疑うことなく見送るなっちゃん。
でも、僕は人なりの部屋で一人で倒れこんだ・・・・。
「ゴホゴホ・・・ゴホゴホ」
最近、咳が止まらないんだ。
「おかしいな。薬はちゃんと飲んでいるのに・・・・」
もう、限界なの?
この頃全然体が言うことをきかないきがする。
「しっかりしなきゃ・・・・」
「宏人?大丈夫?」
なっちゃんが、様子を見に来た。
「うん、大丈夫。これ、なっちゃんが、作ってくれたんだよね?せっかくだから食べようかなって・・・。いただきまぁーす!」
「へんな宏人・・・」
僕は、食べながら言った。
「ねぇ、なっちゃん・・・あとで話があるんだけど・・・・」
「えっ?ここじゃできない話なの?」
「・・・大事な話だから、できたら二人きりで・・・・」
「もしかして、プロポーズ?」
榊さんが、聞いた。
今のは、手話を使ってないのに・・・・
唇を読まれた?
「うーん・・それはまだ、かな」
「宏人さん、ここで発表しちゃえばいいのに」
「いや、あの・・・違うんだ・・・」
「違うの?」
不意にめまいがした。
少し、ヤバいと感じた・・・。
「宏人?」
「ごめん。最近、寝てなくてさ・・・。狭い部屋だけど、練習するよ!」
「でも、さっきから、顔色よくないわ」
「大丈夫・・・・」
でも、気がつくと、僕の体はぐらついていて・・・
倒れていた。
「宏人!」
「宏人さん!!」
みんなの声が微かに聞こえるだけだった。
僕はまだ、死ねない・・・・。
まだ、死にたくないんだよ・・・。
西田君の笑った顔を見るまでは、安心できないよ。
「宏人?宏人!大丈夫?」
「・・・・なっちゃん?」
目を開けると、泣きそうななっちゃんの顔。
頭には冷たいタオル。
「宏人・・・あなたまさか・・・」
なっちゃんは、なにかを感づきかけている。
僕は、それを遮るように・・・
「寝不足だって言ったじゃん。っていうか、風邪をこじらせちゃって・・・長引いていたんだ・・・。薬の副作用かも・・・・」
「でも、そんな感じじゃなかったわ」
「すごくよく効く薬みたいでさ・・・。今日、もらいに行く予定だったんだ・・・」
「本当なの?宏人・・・・」
「うん。だから、病院行ってくる・・・・」
一応、検診の日だし?
「一人で大丈夫?」
「うん、平気だよ?みんなは、練習してて?西田君も、もうすぐ来る頃だろうし・・・・」
そう言って僕は、家を出た・・・。
そう言うしかなかった。
嘘をつき続けるしか僕にはできなかった。
そして、
「大分体が弱ってきていますね。無理をしていませんか?ちゃんと決められた薬を飲んでいますか?」
「すいません。毎日が、楽しくて。約束したのに・・・。ちゃんと続けるって・・・」
「ところで・・・君が会いたいという人には会えたのかな?」
「はい!いま、同じサークルにいるんです!スカウトし続けたら、ようやくおれてくれました。」
「そうか・・・。実はね、わたしの息子も最近少しだが明るさを取り戻したように感じるんだ。きっと、いまの友達のおかげなんだろうな」
先生は、嬉しそうに息子さんのことを、話していた。
名前こそ出さないのに僕もなんだか自分のことのように嬉しかった。
まさかそれが同じ西田君を指していることにまだ、お互い気づいていなかったから・・・・。


ーもう、時間がない・・・ー
みんなに本当のことを、話すときかもしれない。検査の結果を聞きながらそう思っていた。
僕が生きていられる時間は、本当に少ない。
「東條君なら、聞いてくれるかな」
「えっ?」
先生が、真剣な顔をしている。いつも、穏やかなのに。なんだか切なそうに微笑む・・・。
「息子のことを、真剣に聞いてくれるのは君しかいないと思ったからね」
帰る前に突然そう言われて・・・
「さっきも話したように息子は最近友人ができたみたいなんだ」
「良かったじゃないですか。息子さんが、笑顔を取り戻せて・・・」
「まだ、本当の笑顔とはいかないけど・・・きっと彼の今の友人が、取り戻してくれるんじゃないかとわたしは信じているんだ。」
君はどうなんだね?その会いたかった人との関係は変わりつつあるのか?」
先生に、質問されて、素直に答えようと思った。
「はい!彼・・・、あっ、いい忘れてました。僕が会いたかったのは、男なんですけど・・・同級生で・・・、ものすごく人嫌いで・・・でも寂しそうで・・・
やっと最近笑うようになってきたんです。
僕も、彼の本当の笑顔が見たいです。生きているうちに・・・・。それが見れたら、僕は思い残すことはありません。」
「そうだったのか・・・。なぜだろう・・君とわたしは、まるで同じ人物を見ているようだね。これは、偶然だろうか?」
「(笑)本当ですね。」
そう、二人は同じ人物を見ていたのだ。
お互い会いたかった彼=息子と知るまでどれだけかかってしまったか・・・・。


    
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