BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

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ねぇ?西田君。
僕はね、いま君に会うためだけに生きたいって思ってるんだよ?
残りの命は、君だけのために使ったっていいって思ってるから。
もちろん、同情とか哀れみではないよ?
本気で君と向き合いたいからなんだ。

君を一人にしておきたくない。

でも・・・・。
世の中うまくいくことと、いかないこってあるんだね。


ある大雨の日だった。

みんなが帰ったあといつもより僕は、具合が悪く、苦しくてその場から動けなくなってしまったんだ。
「ゴホゴホ・・・・もう少しなのに・・・・・」

ガッシャ~ン 
机の上のものを落としてしまい、音が響いた。

でも、意識朦朧として、その場から動けない僕は、気づかずにいたんだ・・・・。

東さんが、忘れ物を取りに戻ってきたことに・・・・・。

「・・・・東條さん?そこにいるのは・・・・」

「・・・うっ・・・東さん?」
「あの・・・大丈夫ですか?」
「・・・うん、大丈夫だよ。めまいを起こしただけ・・・。風邪引いてるから・・・。」
「でもなんか、いつもより声に元気がないですよ?」
「な、何いってるの?いつもの僕だよ?」
僕は、苦し紛れに立ちあがり、 
「東さんこそ、何かを取りに来たの?もう暗いから、危ないよ?」
「・・・携帯を忘れちゃって・・・。」
「・・・え~っと、これかな・・・・」

僕は、東さんの携帯を彼に渡そうとした・・・
だけど、体が言うことをきかず・・・・・

「東條・・・・さん?」
気がついたら、東さんにもたれ掛かっていて・・・・ 


「東條さん?」
「・・・・ごめん・・・東さんのこと・・・送ってあげれないや・・・・ゴホゴホ・・・・」
僕は、意識が朦朧としていて・・・・ 
だけど、東さんは、僕のことを、しっかりと受け止めてくれていた。
「東條さん?しっかりしてください!まさか、ずっと具合が悪いの隠してたんですか?」
「・・・そんなこと・・・ないよ・・・」
「ワンワン!」

ラッキーが、僕の異常に気づいたみたいだ。
「僕には、わかりますよ?東條さんの声が、今日は、弱々しいって・・・・。見えなくてもちゃんと、東條さんの様子が、僕には伝わってきます。
いま、だれか呼びますから、休んでいてください」
「・・・大丈夫・・・。寝てればなおるから・・・。誰も呼ばなくていい・・・
東さんこそ、もう帰らなきゃ・・・・ゴホゴホ・・・・」
「お願いですから、言うことを聞いてください!ラッキー・・・」
「ワンワン」
「いいかい?誰でもいいから、呼んできて・・・この近くにいる、お前の信用する相手を・・・・僕は、ここで、東條さんを見てるから・・・
頼んだよ?」
「ワンワン」
ラッキーは、東さんの言うことを、理解したのか飛び出していった。
「頼んだよ、ラッキー・・・お前だけが頼りだ。」
東さんは、小さく呟いた。

「東さん、変わったね・・・ちゃんと、ラッキー育ててる。
まるで介護犬になったみたい。
よかったね、いいパートナーで・・・・」
「なに言ってるんですか・・・
あなたの声があったからいまの僕がいるんです・・・」
「大丈夫だよ、東さん・・・。僕はいま死ぬ訳じゃないし・・・そんな、泣きそうな顔しないで・・・・」
「悔しいです・・・。僕には、そばにいることしかいまは出来ないから・・・・」
そう言って、僕のために、涙を流してくれた。
優しいね、東さんは・・・・。
僕は、出会ったときから感じていたんだ。
東さんの優しさをきっと、誰かもわかってくれるって。
もしも、可能なら、僕のこの目を、東さんに提供してもかまわない。

そのうち、ドナー登録行かなきゃね。
「僕は、東條さんに感謝してるんです。
目が見えないこの僕を、宏人さんの、無邪気に笑う声が、歌声が・・・僕を、光の世界へと導いてくれました。今度は僕が、宏人さんを救います!」

宏人・・・・
東さんに、名前で呼ばれるのは初めてかもしれない・・・・。

「・・・・ありがとう・・・・東さん・・・・」

僕は、その言葉に安心してしまい、意識をなくした。

そのころ、ラッキーが、呼んできてくれたのは意外な人物だったから・・・・・。
    
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