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次の日、練習中にまた倒れてしまった僕は・・・
「宏人さん?大丈夫ですか?こないだから倒れてばかりですよ?なっちゃんは、テニスの試合が近いからしばらくこれないみたいだし・・・・」
「風邪、まだ治ってなかったんですか?」
「東條さん、一度病院にいって、検査した方が・・・
ただの風邪じゃなかったらどうするんですか?重い病気だったら・・・」
みんなが心配している。
でも、気づかれたくない・・・
「最近、よく眠れないんだ。」
「東條は、そればかりだな」
「西田君・・・・」
西田君は、話に入ってくると・・・
「たまにはみんなの言うことを聞けよ」
と、西田君は、名刺をくれた。
「前にも言ったけど、俺の父さん医者だから。」
「そう言えば、そうだった。」
そして、その名前を見て僕は目を見開いてしまった。
彼の父は、僕の担当医だった・・・・。
まさか、先生が、話してくれていた息子さんって・・・。
「お前を見ていると、母さんわや思い出すよ。だから、早いとこ治療しろよ」
「西田君は、お医者さんにならないの?」
素朴な疑問・・・
「今さら無理だよ。それに、俺の他に兄さんが二人いる。それぞれ違う分野でちゃんと活躍してるし、助け合ってる。父さんは、あんなことがあった俺に、好きなことをやれって言ってくれたんだ。兄さんたちもそれがいいって。俺はすごく恵まれていたことにやっと気づけた・・お前のお陰で。」
「そっか。そうだったんだ」
「帰りと言わず今すぐ行けよ」
「えっ?今から?」
電話をしたら、バレる!
「いや・・・今日は・・・」
「その体で続けても、いい演技はできないと思う。みんなに迷惑かけるだけ。みんながもしもそうなったら、東條だってそう言うだろ?素人が口挟むことじゃないけど・・・」
「・・・ううん、行ってくる・・・」
西田君が、そう言うなら・・・。
「宏人さん、ついていこうか?」
「大丈夫。みんなは、練習続けていて?」
「宏人?」
「あっ!なっちゃん・・
なっちゃんも、留守番よろしく」
そう言って、笑顔で出てきた僕だった。
「そっかぁ・・・先生の息子さんが、西田君で・・僕が探していた人も西田君で・・・
なぁんだ・・・同じ人のことを、言ってたんだ」
僕は、一人泣き笑いをしていた。
そしていつもより先生と、顔を合わせるのに緊張していた。
なんでだろう。
「おや?今日は、診察の日じゃないはずだよ?もしかして、苦しいのかな?」
「あの!先生・・・今日は、別の件も含めて話が・・・・」
そして、話すと・・・
「あはははははははは。」
豪快に笑われてしまった。
「先生?笑い事じゃないですよ?」
「まさか、君が、順の友達とは思わなくてね」
「僕もしばらく西田君のお父さんがお医者さんであることを、忘れてました。今日、たまたま名刺をくれて・・。と言っても、実は学校で倒れてしまって・・・。ぜひ、ってもらった名刺の名前を見て、驚きました。」
「・・・・大分体力が、落ちていますね。今日は、点滴だけで大丈夫だよ。でも、あんまり続くようなら入院めた必要になるから・・・」
「入院だけは・・・・」
「そう言うと思ったよ。だけど、今日は練習を出るのをやめなさい。熱が出るかもしれない・・。まだ、バレたくないんでしょう?」
「はい・・・あの・・西田君には・・・」
「安心しなさい。話すのは、君の許可を得てからにするよ。でも、また聞かせてくれるかな?息子の活躍とか・・・」
「はい、もちろんです。」
「それじゃあ、お大事に」
病院を、でたあと事情を聞いたのか、なっちゃんから電話がかかってきた。
めちゃくちゃいいタイミングだ。
「もしもし宏人?大丈夫?」
「うん。診察は終わったよ。そっちに一旦戻るね」
「宏人・・・辛かったらちゃんと言ってね?あなたは一人で抱え込みすぎなのよ。みんないるんだから。」
なっちゃんの優しさが胸に染みた。
「うん、ごめんね・・・ありがとう。」
そういえば、なっちゃんに話せてなかった。
あのとき倒れてしまったからきっかけがなくなってしまったんだ。
「あのさ・・・なっちゃんに話したいことがあるんだ。こないだ話せなかったこと話したいから・・・・」
なっちゃんには、話さなきゃ。
そう決意した。
きっとわかってくれると信じていたから。
「宏人さん、おかえりなさい」
みんなは、小屋の前で待っていてくれた。
「みんな、おおげさだよ~」
「だって、誰でも心配しますよ?あんな倒れ方をされたら・・・。もしかして、重い病気なんじゃないかって・・・・」
ドキッとしたけれど・・・
「ご心配おかけしました。
でも、今日は、練習に出るなって怒られちゃった」
「当たり前だろ?」
そういったのは、西田君で・・・
「じゃあ、今日はお言葉に甘えて休んでるね・・・。みんな、頑張れ!」
そうなんだ。
僕の元気は、みんなからもらってる。
みんなの笑顔と、声が、僕の元気の源だよ?
毎日過ごすなかで僕は、僕自身と闘いながらいつのまにか過ごしていた・・・・。
もう、逃げられない現実でもあったから・・・・。
そして、数日後・・・・僕はひどい頭痛に襲われていた。
「っつ・・・・・」
「宏人?どうしたの?頭痛いの?」
「・・・・・なっちゃん・・・?」
弱々しく答える僕・・・。
「顔色が悪いわ。今日の練習休んだら?
最近、どうしたの?
「・・・もう、嘘つき続けるのしんどいかも・・・」
僕は、独り言のように呟いた。
「えっ?なに?聞こえないわ」
頭痛はどんどんひどくなり、
「宏人?」
もう、立っていられなくなっていた。
「宏人?ひどい熱・・・・
とにかく、横になって?」
「・・・・なっちゃん・・・聞いてくれる?」
「えっ?」
「ハァハァ・・僕ね、嘘ついてた・・・・。」
もういま、言うしかない。
「本当は、もう・・・・・」
「えっ?なに?聞こえないよ・・・もうなに?嘘ついてたってどういうこと?」
「・・・・もう、生きられないんだ・・・・。僕はもうあと少ししか生きられないんだ・・・・。あの受験の帰りに、そう言われてた」
「えっ?どういうこと?」
なっちゃんは、突然の僕の告白に、目を見開き、顔がこわばっている。
「う、うそでしょ?」
「嘘、ついてた・・・・。だから、ごめん・・・・・」
「嘘なんしょ?宏人・・・・。これも、嘘なんでしょ?」
なっちゃんは、泣き始めた。
そうなるよね・・・。
「いきられないって言うのは、本当だよ。
嘘、ついていてごめん」
「全部うそだって言いなさいよ!今さら生きられないなんて・・・そんなの・・・そんなの!」
なっちゃんは、混乱している。
「でもね、なっちゃん・・・」
それから僕は、つづきをいおうとしたけれど・・・・
「ごめん・・・1人になりたいの・・・・」
なっちゃんは、泣き顔を見られたくないのか・・・
混乱がやまないのか部屋から出ていってしまった・・・?
「当初、言われた時間よりは、長くいきれてる・・・。なにせ、一年延びたんだもん。」
話の続きは、それだった。
「みんなにも話さなきゃ・・・・」
でも、本当は、それが一番怖かった。
居心地がよくなりすぎて・・・
そして一番話さなきゃやらない彼・・・
西田君に、このまま嘘をつき続けていきたいと思ってしまっていたから・・・・。
やっと、僕たちの輪に溶け込んだ彼・・・。やっと心を開きかけた彼・・・。
だけど、あんな経験をしてしまった西田君に、このことを、話してしまったら彼がどうなってしまうのか・・・
少し、想像してしまったからだ。
だけど、彼の笑顔を見るまでは、頑張るって決めたんだ。
だから・・・
「東條?」
「西田君・・・」
「大丈夫か?あんまり遅いから迎えに来たんだ。理子さんが東條が休んでいるから行ってあげてって。なんだよ、理子さんとケンカでもしたのかよ」
「ううん・・・違うよ?」
「彼女の様子変だった。お前が最近食欲ないみたいだし・・・。ちゃんと休んでいるのか?」
「大丈夫。休んだら頭痛治ったみたい。さっきすごくしんどくて、なっちゃんに心配かけちゃった・・・」
「頭痛?」
「もう治まったよ」
「今日の飲み会は中止だ。お前が参加しなきゃ意味ないからな」
「それなら行く!」
僕が立とうとしたら・・・
「いいよ。ちゃんと体を休めないとな。お前のことを見ててやれって言われているから・・・・」
「えっ?」
この言葉に僕はドキっとした。
いつもと変わらない西田君だけど、ほんとうは先生に僕のからだのことを聞いたんじゃないかって・・・。
「だ、誰を?」
と、ごまかそうとしたけど・・・
「そんなのお前以外誰がいるんだよ。担当医なんだってな」
「それって・・・・」
もしかして、僕の病気のことを・・・・。
「ひどい夏風邪を引いているみたいだからあんまり無理せず休めってな。まぁ、幸いタバコや酒は飲まないみたいだからいいけど・・・」
いつのまにかみんなが集まってきた。
「宏人さん、ゆっくり休んでください。文化祭まではまだ、時間ありますから」
「このお祝いはまた改めてだな」
なんの御祝いかわからないけど。
だけどこのとき、西田君が悲しそうな顔をしていたのを、僕は気づかなかったんだ。
僕のために・・・・・。
「ねぇ?西田君。今日は、なっちゃんを送って挙げてくれないかな?」
「わかった。お前一人で大丈夫か?」
「うん」
そう言ってなっちゃんを見たけどなっちゃんは黙り続けていた。
「理子さん?」
なぜか震えているなっちゃんを西田君は心配そうに見ていた。
「みんな、気をつけて帰ってね。僕はもう少し休んでから帰るから・・・」
そう言ってそれぞれの帰路を帰る途中・・・
「里子さん、大丈夫?」
そう西田君が言ったとたん・・・
「西田さん・・・・・どうしよう・・・」
突然抱きつかれ泣き始めたなっちゃんをきっと西田君はどうしていいかわからずに戸惑いを隠せずにいたんだ。
そう・・・彼女が泣いている理由がわからないから・・・・。
でも・・・
「里子さん、泣いていたらわからないよ・・・」
「宏人が・・・宏人が・・・」
「東條がどうかしたのか?」
「もう長くは生きられないって言うの。今まで嘘ついていてごめんって・・・。そんなことを言われてもどうしていいかわからないの・・・」
「えっ?」
西田君は、驚いている。
そしてもっと驚いたのは・・・
「東條、自分で話したんだ・・・」
西田君は、まるで知っていたかのように呟いた。
「宏人、無理ができない体なの。どれくらい生きれるかわからないらしいの」
「・・・・・・・」
西田君に抱きついたまま離れないなっちゃんの姿を僕は見てしまった。
「どうしたらいい?受け止めるべきなの?」
「・・・そうだね」
黙ったまま抱き合う二人。
僕もどうすればいいのかわからなかった・・・。
「宏人さん?大丈夫ですか?こないだから倒れてばかりですよ?なっちゃんは、テニスの試合が近いからしばらくこれないみたいだし・・・・」
「風邪、まだ治ってなかったんですか?」
「東條さん、一度病院にいって、検査した方が・・・
ただの風邪じゃなかったらどうするんですか?重い病気だったら・・・」
みんなが心配している。
でも、気づかれたくない・・・
「最近、よく眠れないんだ。」
「東條は、そればかりだな」
「西田君・・・・」
西田君は、話に入ってくると・・・
「たまにはみんなの言うことを聞けよ」
と、西田君は、名刺をくれた。
「前にも言ったけど、俺の父さん医者だから。」
「そう言えば、そうだった。」
そして、その名前を見て僕は目を見開いてしまった。
彼の父は、僕の担当医だった・・・・。
まさか、先生が、話してくれていた息子さんって・・・。
「お前を見ていると、母さんわや思い出すよ。だから、早いとこ治療しろよ」
「西田君は、お医者さんにならないの?」
素朴な疑問・・・
「今さら無理だよ。それに、俺の他に兄さんが二人いる。それぞれ違う分野でちゃんと活躍してるし、助け合ってる。父さんは、あんなことがあった俺に、好きなことをやれって言ってくれたんだ。兄さんたちもそれがいいって。俺はすごく恵まれていたことにやっと気づけた・・お前のお陰で。」
「そっか。そうだったんだ」
「帰りと言わず今すぐ行けよ」
「えっ?今から?」
電話をしたら、バレる!
「いや・・・今日は・・・」
「その体で続けても、いい演技はできないと思う。みんなに迷惑かけるだけ。みんながもしもそうなったら、東條だってそう言うだろ?素人が口挟むことじゃないけど・・・」
「・・・ううん、行ってくる・・・」
西田君が、そう言うなら・・・。
「宏人さん、ついていこうか?」
「大丈夫。みんなは、練習続けていて?」
「宏人?」
「あっ!なっちゃん・・
なっちゃんも、留守番よろしく」
そう言って、笑顔で出てきた僕だった。
「そっかぁ・・・先生の息子さんが、西田君で・・僕が探していた人も西田君で・・・
なぁんだ・・・同じ人のことを、言ってたんだ」
僕は、一人泣き笑いをしていた。
そしていつもより先生と、顔を合わせるのに緊張していた。
なんでだろう。
「おや?今日は、診察の日じゃないはずだよ?もしかして、苦しいのかな?」
「あの!先生・・・今日は、別の件も含めて話が・・・・」
そして、話すと・・・
「あはははははははは。」
豪快に笑われてしまった。
「先生?笑い事じゃないですよ?」
「まさか、君が、順の友達とは思わなくてね」
「僕もしばらく西田君のお父さんがお医者さんであることを、忘れてました。今日、たまたま名刺をくれて・・。と言っても、実は学校で倒れてしまって・・・。ぜひ、ってもらった名刺の名前を見て、驚きました。」
「・・・・大分体力が、落ちていますね。今日は、点滴だけで大丈夫だよ。でも、あんまり続くようなら入院めた必要になるから・・・」
「入院だけは・・・・」
「そう言うと思ったよ。だけど、今日は練習を出るのをやめなさい。熱が出るかもしれない・・。まだ、バレたくないんでしょう?」
「はい・・・あの・・西田君には・・・」
「安心しなさい。話すのは、君の許可を得てからにするよ。でも、また聞かせてくれるかな?息子の活躍とか・・・」
「はい、もちろんです。」
「それじゃあ、お大事に」
病院を、でたあと事情を聞いたのか、なっちゃんから電話がかかってきた。
めちゃくちゃいいタイミングだ。
「もしもし宏人?大丈夫?」
「うん。診察は終わったよ。そっちに一旦戻るね」
「宏人・・・辛かったらちゃんと言ってね?あなたは一人で抱え込みすぎなのよ。みんないるんだから。」
なっちゃんの優しさが胸に染みた。
「うん、ごめんね・・・ありがとう。」
そういえば、なっちゃんに話せてなかった。
あのとき倒れてしまったからきっかけがなくなってしまったんだ。
「あのさ・・・なっちゃんに話したいことがあるんだ。こないだ話せなかったこと話したいから・・・・」
なっちゃんには、話さなきゃ。
そう決意した。
きっとわかってくれると信じていたから。
「宏人さん、おかえりなさい」
みんなは、小屋の前で待っていてくれた。
「みんな、おおげさだよ~」
「だって、誰でも心配しますよ?あんな倒れ方をされたら・・・。もしかして、重い病気なんじゃないかって・・・・」
ドキッとしたけれど・・・
「ご心配おかけしました。
でも、今日は、練習に出るなって怒られちゃった」
「当たり前だろ?」
そういったのは、西田君で・・・
「じゃあ、今日はお言葉に甘えて休んでるね・・・。みんな、頑張れ!」
そうなんだ。
僕の元気は、みんなからもらってる。
みんなの笑顔と、声が、僕の元気の源だよ?
毎日過ごすなかで僕は、僕自身と闘いながらいつのまにか過ごしていた・・・・。
もう、逃げられない現実でもあったから・・・・。
そして、数日後・・・・僕はひどい頭痛に襲われていた。
「っつ・・・・・」
「宏人?どうしたの?頭痛いの?」
「・・・・・なっちゃん・・・?」
弱々しく答える僕・・・。
「顔色が悪いわ。今日の練習休んだら?
最近、どうしたの?
「・・・もう、嘘つき続けるのしんどいかも・・・」
僕は、独り言のように呟いた。
「えっ?なに?聞こえないわ」
頭痛はどんどんひどくなり、
「宏人?」
もう、立っていられなくなっていた。
「宏人?ひどい熱・・・・
とにかく、横になって?」
「・・・・なっちゃん・・・聞いてくれる?」
「えっ?」
「ハァハァ・・僕ね、嘘ついてた・・・・。」
もういま、言うしかない。
「本当は、もう・・・・・」
「えっ?なに?聞こえないよ・・・もうなに?嘘ついてたってどういうこと?」
「・・・・もう、生きられないんだ・・・・。僕はもうあと少ししか生きられないんだ・・・・。あの受験の帰りに、そう言われてた」
「えっ?どういうこと?」
なっちゃんは、突然の僕の告白に、目を見開き、顔がこわばっている。
「う、うそでしょ?」
「嘘、ついてた・・・・。だから、ごめん・・・・・」
「嘘なんしょ?宏人・・・・。これも、嘘なんでしょ?」
なっちゃんは、泣き始めた。
そうなるよね・・・。
「いきられないって言うのは、本当だよ。
嘘、ついていてごめん」
「全部うそだって言いなさいよ!今さら生きられないなんて・・・そんなの・・・そんなの!」
なっちゃんは、混乱している。
「でもね、なっちゃん・・・」
それから僕は、つづきをいおうとしたけれど・・・・
「ごめん・・・1人になりたいの・・・・」
なっちゃんは、泣き顔を見られたくないのか・・・
混乱がやまないのか部屋から出ていってしまった・・・?
「当初、言われた時間よりは、長くいきれてる・・・。なにせ、一年延びたんだもん。」
話の続きは、それだった。
「みんなにも話さなきゃ・・・・」
でも、本当は、それが一番怖かった。
居心地がよくなりすぎて・・・
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西田君に、このまま嘘をつき続けていきたいと思ってしまっていたから・・・・。
やっと、僕たちの輪に溶け込んだ彼・・・。やっと心を開きかけた彼・・・。
だけど、あんな経験をしてしまった西田君に、このことを、話してしまったら彼がどうなってしまうのか・・・
少し、想像してしまったからだ。
だけど、彼の笑顔を見るまでは、頑張るって決めたんだ。
だから・・・
「東條?」
「西田君・・・」
「大丈夫か?あんまり遅いから迎えに来たんだ。理子さんが東條が休んでいるから行ってあげてって。なんだよ、理子さんとケンカでもしたのかよ」
「ううん・・・違うよ?」
「彼女の様子変だった。お前が最近食欲ないみたいだし・・・。ちゃんと休んでいるのか?」
「大丈夫。休んだら頭痛治ったみたい。さっきすごくしんどくて、なっちゃんに心配かけちゃった・・・」
「頭痛?」
「もう治まったよ」
「今日の飲み会は中止だ。お前が参加しなきゃ意味ないからな」
「それなら行く!」
僕が立とうとしたら・・・
「いいよ。ちゃんと体を休めないとな。お前のことを見ててやれって言われているから・・・・」
「えっ?」
この言葉に僕はドキっとした。
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「だ、誰を?」
と、ごまかそうとしたけど・・・
「そんなのお前以外誰がいるんだよ。担当医なんだってな」
「それって・・・・」
もしかして、僕の病気のことを・・・・。
「ひどい夏風邪を引いているみたいだからあんまり無理せず休めってな。まぁ、幸いタバコや酒は飲まないみたいだからいいけど・・・」
いつのまにかみんなが集まってきた。
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「このお祝いはまた改めてだな」
なんの御祝いかわからないけど。
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僕のために・・・・・。
「ねぇ?西田君。今日は、なっちゃんを送って挙げてくれないかな?」
「わかった。お前一人で大丈夫か?」
「うん」
そう言ってなっちゃんを見たけどなっちゃんは黙り続けていた。
「理子さん?」
なぜか震えているなっちゃんを西田君は心配そうに見ていた。
「みんな、気をつけて帰ってね。僕はもう少し休んでから帰るから・・・」
そう言ってそれぞれの帰路を帰る途中・・・
「里子さん、大丈夫?」
そう西田君が言ったとたん・・・
「西田さん・・・・・どうしよう・・・」
突然抱きつかれ泣き始めたなっちゃんをきっと西田君はどうしていいかわからずに戸惑いを隠せずにいたんだ。
そう・・・彼女が泣いている理由がわからないから・・・・。
でも・・・
「里子さん、泣いていたらわからないよ・・・」
「宏人が・・・宏人が・・・」
「東條がどうかしたのか?」
「もう長くは生きられないって言うの。今まで嘘ついていてごめんって・・・。そんなことを言われてもどうしていいかわからないの・・・」
「えっ?」
西田君は、驚いている。
そしてもっと驚いたのは・・・
「東條、自分で話したんだ・・・」
西田君は、まるで知っていたかのように呟いた。
「宏人、無理ができない体なの。どれくらい生きれるかわからないらしいの」
「・・・・・・・」
西田君に抱きついたまま離れないなっちゃんの姿を僕は見てしまった。
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「・・・そうだね」
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僕もどうすればいいのかわからなかった・・・。
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