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しおりを挟む「おはよう」
次の日、何事もなかったかのように二人はいつものように僕に挨拶をした。
「お、おはよう・・・・」
あのあと僕は、二人がどうなったかを見るのが怖くて1人去っていったんだ。
聞けないんだ。
「東條、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。みんな心配かけたね」
僕は昨日の出来事を振りきるかのようにいつもの笑顔を振り撒いた。
今日は、講義がない日だから朝から練習ができる。
「東條さん、なんかあったのかな」
「なんか元気ないですよね」
昨日のことを知らないメンバーは、こそこそとなにか話していた。
今までは気にならなかったのになぜだか苛立ちを感じてしまった。
「みんな!しゃべってないでやるよ!」
と、いつもより、声を張り上げたら
「東條?何を怒っているんだ?」
「怒ってないよ」
「怒ってるよ」
自分でもなんでこんな言い方したのかわからない。
「いいから、準備してよ」
無論みんなにも・・・・。
いいや・・・ちがう・・・。
僕は・・・僕はきっと嫉妬していたんだ。
なっちゃんと、西田君に・・・・・。
「西田君、僕に遠慮しなくていいんだよ?」
「はぁ?何言ってるんだよ」
「君は、なっちゃんが好きなんでしょう?」
西田君はいいよね。
これからもず~っと一緒にいられるもん。
それを考えたら・・・イライラが爆発していたんだ。
自分でも驚くくらいに。
「東條・・・俺は・・・」
「なっちゃんのこと、よろしくね?」
「何言ってるんだよ!東條・・・」
「ごめん、一人になりたいから・・・。みんな、練習しててよ」
この場を逃げたくなっていた。
もうみんなと一緒にいられる時間が少ないことに限界を感じていたのかもしれない。
もうみんなと一緒にいられる時間が少ないことに限界を感じていたのかもしれない。
みんなと、笑い会える時間はあとどれくらいなんだろう・・・・・。
そんなことばかり、考えてしまうんだ。
「どうかしてるよね」
僕の目からは、涙が溢れていた。
今までこんなに泣いたことはなかった。
「死にたくないよぉ」
そんな何気ない僕の一言を、まさか西田君に聞かれていたなんて・・・・・。
「宏人?いま、なんて・・・」
「西田君、なっちゃんを好きなら本当に・・・」
今呟いた一言を、忘れてほしくて・・・
僕は別の話題をふろうとしたに・・・出てきたのはこんな言葉だった。
「お前が見ていてやらなくてどうするんだよ」
「だって、二人は・・・」
「彼女はお前のために泣いていたんだぞ?お前が心配だから」
「・・・・・・」
「そうよ!」
話に入ってきたのは、なっちゃんで・・・。
「なっちゃん・・・」
「どうして嘘ついていたの?どうして今まで黙っていたのよ!」
「ごめん・・・・」
「あなたが優しすぎるから・・・。いつも頑張り過ぎるから・・・。いつも何も言わずに笑っているから・・・・」
なっちゃんの声がだんだん泣き声に変わる。
「心配しないでよ」
「心配するに決まっているでしょう?あなたのことを一番わかっているのは私なんだから!!」
この言葉が、僕への最高の告白だった。
なっちゃんは、こんな僕のことをずっと好きだと言ってくれた。
こんな僕を変わらず愛してくれた。
「ごめんね、なっちゃん」
今なら素直に謝ることができると思った。
「ったく、心配させやがって」
「あなたが居なくなって困るのは、私や西田さんだけじゃないのよ?」
「えっ?」
「東條さん!!」
みんなが息を切らして僕のもとへ来た。
「東條さん、頼ってばかりでごめんなさい!気が付かなくてごめんなさい!!」
「苦しませてごめんなさい!」
みんなは、口々に僕に謝っている。
「みんな、東條に叱られてちょっと焦ったみたい。でも、みんなしょげずにこうして・・・・」
「・・・・・・・」
僕はなぜか言葉が出なかった。
「東條?」
「謝るのは僕の方なのに、なんでみんなが謝るの?」
「僕たち東條さんに任せきりだし・・・助けてもらってばかりだし・・・」
「僕はそれで怒っていたわけじゃないよ?僕の方こそみんなに当たってごめんね?」
「そうそう。彼は、ヤキモチ焼いていたんだ。つまり、嫉妬していたんだ」
「ヤキモチ?誰が誰に?」
「俺と里子さんが付き合うんじゃないかって」
「えっ?そうなの?」
真面目に聞く、斎藤さん。
「まさか、そんなわけないよ。僕は、里子さんの相談に乗っただけだよ。勘違いってわかったらもとの東條に戻ってくれたよ」
これは、西田君がついてくれた嘘?
それとも・・・・・
「なぁんだ。そうなんだ。」
みんなは、安心した表情になった。
どうやら、僕の病気のことはまだ話してないみたいだ。
というか、バレてないみたい。
でも、僕は知らなかった。
西田君は、もうすでに先生から・・・。
つまり、父親から僕の病気のことを聞かされていたことを・・・・。
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