BELIEVE~夢の先へ~

藤原葉月

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「みんな、心配かけてごめんね」
「そうですね。留守番組が恐らく退屈してますよ」
そう言って、練習場に戻る僕たち。

そのあと僕も含めてみんなが帰ったあと、なっちゃんと二人きりになった西田君はこう呟いていたなんて・・・・。
「どうして東條なんだよ!神様は意地悪だ!」
叫ぶように呟いたらしいんだ。
その声はもちろんなっちゃんに届いてしまっていて・・・・

「西田さん?」
「・・・・ごめん、理子さん。でも、俺知ってるんだよ、全部。宏人の病気のこと・・・。宏人は手術しないと手遅れになるって」
そう言って、西田君は涙をながした。
「知っていたのね・・・・」
「ついこの間だ。俺の父が担当医だとたまたま知って・・・。ずっと治療していると・・・。ただの風邪なのにおかしいと思ったんだ。父さんに聞かれたのがきっかけだ。お前の笑顔が増えたのは彼のおかげなのかって・・・・」
「・・・・・・」
「実はそうなんだと。俺を変えてくれたのは東條宏人だって・・・。」
「そうだったの・・・」
「理子さんが昨日泣いていたのは、宏人が自分から告白したから・・・なんでしょう?」
「えぇ・・・」
「俺も直接本人の口からちゃんと話してほしかった。そしたらもっと長く・・・・」
長くいられるはずだ。

「私達で彼を・・・
宏人に少しでも生きる力を与えてあげましょうよ。それが今の私達にできる唯一のことだと思うの」
そう言って理子が、西田君を見つめた。
「そうだな。彼は俺に生きる力を・・・
人を信じる心を与えてくれた。俺、これからは与えてあげたい。彼のおかげで見つかりそうなんだ」
「なにが?」
「俺の青い空・・・」
「青い空か~・・いいね」
そう言っているところへ
「ワンワン!」
帰ったはずのラッキーがいる。

「えっ?ラッキー・・・どうした」
「とにかく戻ってみましょう」
なっちゃんと西田君が急いで小屋に戻っていった時だった。

「東さん!」

倒れている東さんを発見!
その隣には榊さんも倒れていた。
「どうしたんだ?何があったんですか?」
「忘れ物を取りに来たら、部屋が荒らされていて・・・・」
榊さんが手話で伝えてくれている。
「あの人・・・西田さんに会いに来たらしいんですが・・・・」

榊さんは、その人を指した。
西田君がその人の方を見て顔色を変えた。


「まさか・・・!理子さん、二人の手当を・・・」
理子さんには、見せないようにして
「西田さんはとうするの?」
「俺一人で行くよ。嫌な予感するから。」
「えっ?でも・・・・」
「君たちは入ってきちゃだめだ。」
そう言って一人、恐る恐る小屋に入った。

戸を開けると、ナイフを西田君に向けている男と目があった。

「おまえ・・・」
西田君は、顔を強張らせている。
知り合いらしい。

「久しぶりだな、西田順。」
「何しに来たんだ」
「なにって。お前に会いに来てやったんじゃん。もっと嬉しそうな顔をしろよなぁ」
「出来るんわけないだろ?こんなに部屋を散らかして・・・。大事なセットも壊して・・・。一体何が目的?」
「目的なんてないさ。」
そいつはにやりとする。
「大事な仲間を傷つけてまた俺をはめにきたのか?傷つけるのは俺だけでいいはずだ!」
「・・・・ふーん。こいつらお前仲間なんだ・・・・」


そこにいたのは、震える斎藤さんと春日部さん。
「西田君・・・」

僕は、西田君とそいつのところに行きたかった。
けど、体が動かない。
「・・みんな戻ってきたんだ。」
「西田君、ごめん・・・。」
「・・・・やめてくれないか?ここにいるみんなはやっと会えた仲間なんだよ。俺はもう、お前のことを友達とも親友とも思っていない。縁を切りたい。お前のことを忘れたいから」
「・・・西田・・・相変わらずだな。ちんけなことやってんだな。まぁ?壊してやったけどさ」
「傷つけるなら、俺だけでいいはずだ。場所を変えよう。彼らは関係ないだろ!」
「西田君、ダメだよ!」
僕は止めようとした。
「ヤダね。まだ、やり足りなくてさ・・・」
「いいから出てけよ!」
「お前が憎いんだよ。
「憎ければ憎めばいい!だけど彼らは傷つけるな!!俺を変えてくれた奴らなんだよ!もう無くしたくない仲間なんだよ!出てってくれよ!」

そう言って、ドアの外へ追いやる。
「西田君・・」

「東條、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。何もされてないから」

「何が仲間だよ。何が大丈夫だよ!すぐ裏切られるに決まってる。逃げられるに決まってる!こいつらもすぐに・・・」

そいつはまだいなくなっていなかった。

「・・・・・・・」
「ほら、信じてないんだ?」
「残念だけど、僕は逃げないよ?もちろん、ここにいるみんなもね」
「東條!!」
「フン・・・《信じる》なんて言葉信じられるのかよ!!」
ナイフを振り上げられ、もうだめかと思った瞬間、西田君が僕をかばって手を切りつけられた。

「西田君!大丈夫?」
「言っただろ?誰も傷つけるなって。もういいだろ?あの時みたいに俺を笑いに来たくせに!」
 「・・・おまえはこいつらのために死ねるのか?体を張って死ねるのかよ!!」

彼は、大きな声を出した。

死?
そんなこと簡単に口にするなんて!!
「あぁ、今いる仲間がもし死にそうだったら命賭けてもてもいいよ?やっとそういう仲間に出会えたしな・・・」
西田君は落ち着いている。
「フン!いつまでもそうやって寝言を言ってればいい。後で捨てられて後悔しても遅いんだからな!!」

彼はそう言い捨てるとドアを蹴破り出て行ってしまった。

「西田君、大丈夫?血がでてる」
「俺は大丈夫。これくらい・・・。東條こそ怪我はなかったか?体弱ってるのに・・・みんなも・・・、びっくりさせてごめん」
「ううん・・・」

西田君のその優しい言葉だけで十分だ。

「それより、舞台近いのにいろいろ壊されちゃいましたね」

春日部さんが、ため息をつく。
「ゴメンなみんな・・・。俺のせいだ」
「大丈夫です、西田さん。何度でもやり直しましょうよ」
斎藤さんは言ってくれた。
「西田君、さっきの彼はもしかして・・・・」

僕は思い切って聞いてみた。
なんとなく思い当たる節が・・・

「・・・そうだよ。彼が、俺の元親友で、裏切り者・・・・」
「裏切り者・・」

「僕の恋人理子を襲ったんだ。そのショックで彼女は自殺した・・・」
そこまで話すと西田君は震えだした。

「西田君、もういいよ・・・・」
「でもずっと聞きたかったんだろ?俺が人嫌いになった理由・・・」

「もうこれ以上話さなくていい」
「東條・・・」
「みんなもさ、西田君のこと軽蔑しないであげてね?彼も傷ついてるから・・・・。すごく傷ついてるから・・・」
「軽蔑なんてしないですよ。だって、ここにいるみんなはそれぞれ悩みを抱えているし。それを知った上で一緒にいるんですから」
「そうだよ、西田君。僕らはいつでも君の味方だって言ったでしょう?これから一緒にやっていく仲間なんだから」
「ありがとう、東條。そう思えるのはお前のおかげだ。こうやって笑えるようになったのも」

そう言って僕が見たかった彼の笑顔が見れたんだ。

彼は笑ってた。

こころから・・・・。

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